2005年12月

この大晦日の夜は、たいていの人は格闘技か歌番組を観ていることだろう。
ただ私は、NHK教育テレビで午後8時半からの、「ETV特集・選」を観た。
「ゼロ戦に欠陥アリ」 は、日本海軍のみならず、日本人特有の体質を警告する番組だ。

20年ほど前にもNHKは、特集番組のある回にゼロ戦の欠点について放送した。
今回の放送と重複する内容も含むが、特に 「人命軽視」「問題先送り体質」 に注目している。

ゼロ戦を設計した技術者は、企画者である海軍上層部に意見できる立場にはなかった。
指摘された欠陥について海軍は知っていたが判断を誤り、その後の改良も裏目に出た。

判断を誤った者を解任することなく、その場限りの作戦で、精神論のみで戦争を遂行し、
そして最後には「神風特別攻撃隊」という、人間性を否定した作戦にまで到達した。

これは戦後も日本社会に残った問題である。
現在の耐震データ偽装や、JR西日本の脱線事故、薬害問題、アスベスト、
そして職場でのパワーハラスメントなどによる精神疾患の増加にもつながる。


山本七平著、「日本はなぜ敗れるのか」 という本も参考になるだろう。


ゼロ戦は極端な軽量化により、きりもみ飛行や旋回など、空中戦での運動性能は向上したが、
機体の強度不足から、急降下時には翼がねじれて空中分解する危険性があった。

資源の節約が優先したため、強度を犠牲にし、そして急降下速度を制限することで対応した。
そのため急降下で逃げる敵機に追いつけず、逆に急降下してくる敵機に次々と襲われた。

また、攻撃が目的の戦闘機に防御は不要ということで、防弾や消火設備という安全思想はなかった。
燃料タンクにも防弾措置がないため、弾が当たればすぐに火災となり爆発し、
貴重なベテランパイロットが次々に失われた。

戦地のパイロットから防弾の実施を要望されたが、海軍上層部は無視した。
「弾に当たらないように大和魂を見せろ」 と。


人命よりも機械の性能やコスト削減を優先し、現状を把握せずに、慎重派を精神論で黙らせる。

鎌田慧の著書に、「ひとを大事にしない日本」というタイトルがある。
この本のタイトル通り、日本では組織が優先されて人命の尊重は後回しだ。

だから、あの戦争から日本人は学んでいないとも言える。
過去を検証せず、反省もせず、そしてその場しのぎの対応で後手に回る。
いつになったら気づいて変わろうとするのだろうか。
来年は、明るい将来に向かう年になってもらいたいものだ。

(最終チェック・修正日 2006年01月03日)

10月に富士写真フイルムから、16倍速対応の DVD-R 用記録ディスクが出たそうだ。
だが、対応するドライブを持っていないので、店頭では気づかなかった。

http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj1406.html


自社開発品なので、独自の開発力はあるのだろうが、あまり投資意欲は沸かない。
写真フィルム需要は伸びないのに、工場を現状規模で維持する方針だ。
工場立地地域の雇用確保のため、神奈川県と協力していて、縮小できないのだ。
生産子会社として分離するくらいの覚悟がないなら、投資対象とする気も起きない。

それに研究員同士のライバル意識・主導権争い・学閥対立があるので、
どうしても研究の進展が遅いのが気になる。

プリンタインクについても、結局は他社を買収することになった。
中途採用の募集を年中出していたのに、本当にプロジェクトとして成立していたのだうろか。


この新規色素については、2004年12月に開発成功のニュースリリースがあった。

実はこの時点では、先に16倍速対応記録メディアを発売した
三菱化学メディアを意識したハッタリだと思っていた。


http://www.mcmedia.co.jp/japanese/news/press/0031.html

http://www.mcmedia.co.jp/japanese/news/press/0038.html


経済週刊誌の記事にもあったが、例えばCCDの自社開発において研究責任者は、
開発のめどが立っていないのに、「もうすぐ完成する」と役員に嘘を言ったそうだ。

そのため、導入が予定されていたソニーなどの他社製品を流用することなく、
研究開発者としてのプライドを満足させるデジタルカメラが完成した。

結果的になんとか発売予定までに完成したから、開発秘話のような取材記事になったのだろうが、
嘘までついて自社開発にこだわるプライドは、実は危険な要素ではないだろうか。

自分たちは優秀な研究者の集団であって、他社には負けないという自負があるのだろうが、
こういった過度のプライドや対抗意識、そしてシェアを奪いたいという意識には危険性もある。


だから今回の DVD-R 用色素についても、実際に店頭に並ぶまでは信用できなかった。

また宣伝文句としては、「重金属を極力使用しない新しい有機色素」とある。
確かに三菱化学のアゾ色素は、ニッケルなどとの金属錯体として利用している。
三菱化学の製品は、製造工程や廃棄物の段階で環境汚染をすると、富士写真フイルムは言いたいのか。

ニッケルを含む廃棄物を燃やすと、一酸化炭素との錯体が生成する可能性があり、
これは猛毒なので三菱化学のディスクは危険だとでも言いたいのか。

これは実際の DVD ディスクの廃棄方法に基づいた指摘なのだろうか。

有機物であっても発ガン性や毒性を示すものはいくらでもあるし、
環境中で微生物により構造変換を受けたときに、どうなるのか誰も予測できない。


「重金属」という言葉から人々が連想するのは、水銀やクロム、カドミウムなど、
これまで環境汚染・公害のニュースで取り上げられた元素名である。

一般人が持っている重金属に対するマイナスイメージを意図的に利用して、
自社製品の方が環境配慮型であるかのような先入観を与えようとしている。


ならば、写真用フィルムのハロゲン化銀は重金属を含まないのか?
フィルムの箱には、「重金属含有」という注意書きはないが。

有機EL材料にはイリジウムやジルコニウムなどの錯体があるが、それは重金属を含まないか?


「今まで環境に何も漏らしていないぞ。」 と反論するのだろうが、
その自分たちの方が優秀だから信用しろ、という態度が危ないのだ。


以前、フィルムの現像ミスに対する損害賠償請求のときに、
富士写真フイルムのとったひどい対応を覚えている人はいるだろうか。

その体質は今でも変わっていないと思う。
だから私は富士写真フイルムの株を買う気にはなれない。

今年は転職・退職・再度派遣就業と激動の年であった。
転職の失敗を通じて、自分の性格や幸せを感じる仕事とは何かを考えた。

現在の派遣先は、単独で人事を行えないため、長期で派遣のままかもしれない。
それでも残業を少なくすることが方針であるし、変な嫌がらせもないから合っている。

これまで、大学・派遣・正社員のすべてでパワーハラスメントを経験しているので、
給料などの待遇よりもまずは、人権が守られるコンプライアンス意識の高い職場を希望している。


今の職場では人権教育セミナーで、パワーハラスメントについても取り上げられた。
研修ビデオを見ると、過去の経験が思い出されて苦痛であったが、この姿勢は評価できる。

パワーハラスメントのチェックシートというものもあるが、
元々人権意識のない人に、いくら研修しても無駄だろう。

それに日本人一般の反応として、労働条件や人権について発言すると、
楽をしたくて自分勝手なことを言う奴だと決め付けられる。


部下が退職したり、仕事が進まなくても、自分の責任とは感じないのだ。
それでも、こんな精神論上司についていく、コピーのような社員がいるのも困る。
パワーハラスメントの土壌は受け継がれ、そして成果の出ない職場は何も改善されない。
誰か自殺でもしない限り、変えようとは思わないのだろう。

ただ、大学で学生が自殺したとき、遺書がないので自殺としては扱われなかった。
当時の研究室日誌は、自殺の原因が推測される部分があったため、いつの間にか封印されていた。

その学生は自分の車で帰宅途中、コンクリート壁に猛スピードで突っ込んだ。
しかし教授は研究室内で寄付金を募り、事故現場に反射板を取り付けて警察から表彰された。
パワーハラスメントの事実を隠し、自分の方針を正当化するために、いろいろと工作するようだ。


パワーハラスメントをする人は、少ない情報で決めつけて、自分勝手な解釈をするのも特徴だ。

私は上司から、「構造有機を研究した○○大学だから考え方は私と同じだよね。」と決め付けられ、
「○○大学だから毎日たくさん実験するように教えられたはずだ。」と圧力をかけられた。

私をスカウトしたこの上司は、私の派遣社員という経歴に対しても、
「派遣社員なんか定時で帰ろうとして会社に貢献しようという気がない」と決め付けた。

そして私が転職に際しての個人的希望を伝えようとしても、話を聞こうともしなかった。
「正社員になるのだから、会社のためにがむしゃらに働け。」としか言わなかった。

また更に、相手を追い詰めるためならば、あらゆる手段を用いてくる。
大学のときは、実家の母に脅迫電話があり、退職届を代筆するように迫った。
前職での上司は、「○○は土曜も働いている。少しは見習え。有休など取るな。」とうるさかった。
仕事がうまくできない社員の場合、親に電話して、「息子を精神病院に連れて行け」とまで言った。

本来は、こんな人こそカウンセリングの対象となるべきで、
多くの人を不幸にしたり、自殺に追い込む前に気づいてほしい。

でも50歳にもなってから、人権意識に目覚めることは期待できない。
だから子どものときの教育が大切で、人権重視の思想を教えなければならない。


私が希望するような職場が増えるように、地道な運動をしていきたいものだ。

今日は年内の業務最終日ということで、年末恒例の大掃除だった。
日本人特有の清潔感からなのか、その年のうちにすべてを清算したいのだろう。


日本では古い物を捨て去り、心機一転、新しい事に取り組むという文化があるようだ。

大昔は、天皇が崩御する度に都を変えていたそうだ。
宮殿を建て直す財政負担を軽減するため、平城京からは同じ場所に長くとどまることになった。

タバコやゴミのポイ捨ても、いらなくなった物を自分の身から早く離したい、
そして汚れた物から距離を置きたいという、独特の清潔感に起因しているのだそうだ。

国の機関が次々と独立行政法人となるのも、新しい機関に名前を変えれば、
過去の不祥事を忘れることができ、責任から解放されると感じるからではないか。


とにかく日本では、年末の大掃除が半強制的に行われる。
仕事が一日できなくて、人件費がその分無駄になろうとも関係ない。
基本的に日本人だけの仕事場だから、掃除が嫌いな人でも従っている。


確かに実験室内の清掃を業者に頼むと、安全教育が面倒だろう。
しかし、床や実験台に試薬やサンプル、装置を放置しなければ、大丈夫ではないか。

ドイツに留学したときは、実験室は毎朝掃除されていた。
もし実験台の上にサンプルを放置して紛失しても、それは実験者の責任である。
廃液だけは危険なので実験者が運ぶが、窓も定期的に拭きにくるし、ゴミも毎朝集めに来る。

研究者が掃除をするということは、階級社会のヨーロッパではありえないことだ。
それに加えて、掃除の仕事を労働者から奪ってはならないという理由もある。
自動販売機が少ないのは、それによって仕事を奪われる商店やカフェの従業員の反対があるからだ。


最近は家庭向けのハウスクリーニングを頼むことが増えてきたそうだ。
だから大掃除が好きなのではなく、面倒だけどやらないと気分的に落ち着かないわけだ。

私は既存の考え方にとらわれないので、特に年末だからといって掃除をすることもない。
単に1週間ほど連続休暇となるから、本や資料の整理をしようかと思うくらいだ。
それにこんな寒い時期に、わざわざ大掃除をしなくてもいいと思う。

まあそれでも、スーパーでは大掃除用グッズコーナーができて、安く買えるのでうれしいが。

フリーランスのドイツ語翻訳家として登録して約1年間経過した。
途中で中断もあったが、今年の翻訳分野と料金(税込み)を一覧にした。

 1月 老人歯科学の論文   独→日 \22,528
     化学物質欧州指令   独→日 \11,645
     申請受領書       独→日  \1,700
     ビジネスレター     日→独  \3,500

(転職活動・転職・パワーハラスメント被害の対応などで翻訳せず)

 8月 バイオ系特許        独→日 \95,396
 9月 有機化学系特許2件   独→日 \25.125
11月 食品関連特許2件    独→日 \92,000
    実業学校のカリキュラム 独→日  \5,000
12月 建物の断熱        独→日 \22,655
     ビジネスレター      独→日 \16,541
     接着剤関連の文献    独→日 \29,886
     ナノテクノロジーの文献  独→日 \40,000

合計 \365,976

この金額は、本業の派遣研究職で20時間程度残業したときの税込み月収相当だから、まだ少ない。
今年は失業の影響で給与所得は 320万円弱のため、翻訳の割合は 10% 以上になる。

12月だけを見れば、給与所得に対して 35% の金額になっている。
ここまでにならなくても、毎月の収入の 25% を翻訳で得られれば、副業としてはよい方だろう。

来年も毎月収入があるように頑張ろう。

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