2008年02月

本業では2種類のサンプルの合成が終了し、後は分析結果が揃うのを待つだけとなった。
すべてのデータが集まるのは週明けとなるため、本日は有給休暇を取得し、1時間長く寝た。

ドイツ語翻訳料金(6万9千円)と、英語特許和訳料金(10万円)の請求書を、各翻訳会社に送った。
それぞれ3月末日および4月10日に振り込まれ、クレジットの支払いなどが滞納になる危険性は減った。

また、銀行で通帳の繰越をしたり、書店で専門書や新書を物色したり、デパ地下で新商品を購入したりした。

買い物も済んでJR駅で電車を待っていると、翻訳会社から緊急連絡のメールが来ていた。
現在作業中の、化学物質データの和訳案件についてである。

この案件では、大規模なデータベースを分割して、10人以上の翻訳者で分担して和訳しているが、
何人かの納品物は、クライアントの指示を無視しており、大幅な修正が必要とのことだ。

あまりにも修正個所が大量になるため、全員が自分の納品物を再点検することになった。

そこで私は、今日からの翻訳作業予定を変更し、先日納品した分について再度推敲を始めた。

私の場合は、それほどひどい欠陥はなかったが、専門用語の見直しをして修正した。
また、主語と述語が離れすぎている場合は、意味がわかりにくいため、語順を修正した。

明日は車検で外出するが、午後は4時間くらいかけて推敲を続け、まともな修正版を再納品する予定だ。


それにしても、募集時のトライアルに合格しているのに、どうして納品物をつき返されるのだろうか。

理由の一つとして、今回のような学術資料の表現に慣れていないことが、まず挙げられる。

注意事項に、「動物名はカタカナ表記」 だとか、「文末は、~である。~であった。」 などがあり、
自然科学系では普通のことであっても、一般的には知られていないのだと実感した。

更にこの案件では、翻訳者からの質問後、クライアントから指示が追加される形式のため、
自分の解釈で一度和訳しても、指示が増えるたびに、最初から和訳を見直す必要があった。

もしかすると時間的に間に合わなくて修正しなかった、あるいは、これはよくないことだが、
後から指示されたことに対して、気分的に従いたくない、という反応だったのかもしれない。

加えてこのデータベースには誤字が多く、医学や化学の専門知識がないと、正しく修正できないため、
料金以上の作業が求められることから、嫌になって反発したのかもしれない。


別の翻訳会社の担当者に聞いたことがあるが、クライアントからの質問に回答しなかったり、
意味が不明な点や、誤訳の可能性の指摘に対して、激怒する翻訳者もいるそうだ。

そういったビジネスマナーを知らない翻訳者には、ペナルティとして料金の減額が行われる。

私も一度、ドイツ語特許和訳のチェッカーをしたことがあるが、誤訳を含む、あまりにもひどい和訳で、
訳文を全部最初から作り直す必要があり、作業料金を2倍もらいたくなった経験をした。


これは憶測だが、ワード単価が11円と少し低めなので、優秀な翻訳者が応募しなかった可能性がある。
このデータベースの内容からすると、作業の難易度も含めて、ワード単価13円が最低ラインだと思う。

データベース和訳というのは、官庁の競争入札でも普通に見られる案件である。
落札するためには低価格で入札することになり、結局は翻訳料金が下がってしまう。

今回のクライアントが官庁かどうか、それは現時点では不明だが、
随意契約見直しだとか、税金の適切な使用という観点では、仕方のないことだ。


約3年前にフリーランス翻訳者として登録したとき、優秀な翻訳者が既にたくさんいると思っていて、
私のような化学者に仕事が回ってくるのかどうか疑問で、あまりあてにしていなかった。

ところが、平日の昼間に作業ができないにもかかわらず、毎月必ず新規案件の打診がある。

翻訳会社の担当者に聞いてみると、自然科学系の専門知識を持つ翻訳者が不足しているとのことだ。
語学関連の雑誌でも、特許翻訳などの実務翻訳のニーズについて特集していることがあるくらいだし。

ということは、専門知識を持つ人たちが、会社の残業をやめてフリーランス翻訳者になれば、
より高品質の和訳が世に出て、「なんだこの和訳は!」 などとイライラすることもなくなるだろうか。

私の語学力がどれだけ貢献しているのか不明だが、これからも翻訳を続けて、役に立とうと思う。


追記:
分割納品分のチェックが済んだので、翻訳会社にメール添付で提出した。
誤訳が1個所あったので、チェックしてよかったと思う。

これで週末は、残りの和訳に集中できる。

昨年10月発売の新書を、今月になってやっと読むことができた。

荻上チキ著、「ウェブ炎上 -ネット群集の暴走と可能性」(ちくま新書)だ。

著者本人の紹介記事があるので、引用しておこう。
http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20071006/p1

また、朝日新聞に掲載された、香山リカ氏の書評は次のとおり。
http://book.asahi.com/review/TKY200711060219.html

章立ては次のとおり。

一章 ウェブ炎上とは何か
二章 サイバーカスケードを分析する
三章 ウェブ社会の新たな問題
四章 ウェブ社会はどこへ行く?

ネット環境が普及するにつれ、掲示板やブログで個人的意見を発表できるようになった。
私の場合、雑誌などへの投書がボツになっても、ここに掲載できるので便利だと思う。

ただし、投稿者の発言などが発端となり、大量の批判的コメントや、暴力的表現での非難が集中し、
関係者が謝罪を繰り返したり、閉鎖に追い込まれるブログさえ見られるようになってきた。

一章で紹介されたブログやサイトの実例は、批判的コメントが集中して炎上したものだけではなく、
遺失物の捜索に協力したり、折り鶴の作成を呼びかけたりと、多様な側面の存在を示している。

この本では 「サイバーカスケード」 という言葉で、「炎上」や「祭り」という現象を考えている。

ヤフー辞書による説明は次のとおり。
http://dic.yahoo.co.jp/newword?ref=1&index=2008000108

[カスケードは「滝」という意味で、最初は個人の考え方であったものが、共感を集めることによって
次第に大きなものとなってついには集団行動を引き起こすというインターネット上の現象。

最初のうちは、攻撃的な意図をもたずに書き込まれた意見が、同調者が集まることで
次第に主流の意見であるかのようになってしまい、攻撃性を帯びていく。]

多様な意見を受け入れるように思われたネット社会だが、サイバーカスケードが起きると、
両極端な主張のみが残り、中間的で客観的な意見は排除されてしまう危険性がある。


この本を読んでいくと、ネット社会の特殊現象と思われた「炎上」や「祭り」は、
実は昔から似たような状況のバッシングや騒ぎがあったことに気づく。

都市伝説とも言えるような架空の話題も以前から存在し、口コミがネット掲示板になっただけだろう。

それに特定の対象を執拗に攻撃することも以前からあり、特に選挙前には不審な宣伝ビラや、
特定の政党や候補者を非難する怪文書が出回ることはよく知られている。

また、過激な意見を言う人が増えたわけではなく、単にメディアが変わって顕在化しただけ。
加えてサイバーカスケードにより、「空気を読んだ」同調コメントが増えただけだろう。


ところで、不用意な投稿・発言というのは本人では自覚できず、批判的コメントでやっと気づくものだ。
人それぞれ価値観も違うので、私が普通だと思っていても、他人から見れば不謹慎な発言かもしれない。

例えば、「海外留学経験のある私から見れば」 という書き出しで、日本社会の批判をしたことがある。

すると 「アメリカに留学したからといって偉そうに言うな」 だとか、「日本が嫌なら帰国するな」
などの批判があった(日本のある会社でも言われたから、ネット上だけの特徴ではない)。

このブログでも小学校英語や捕鯨問題など、両極端の意見が出やすい話題では、厳しい批判もあった。
私は皮肉屋だから、ある一定数の人たちを、どうしても過度に刺激してしまうようだ。

私の記事を読んだ人が同調することを、どうしても阻止したい人がいるということなのか。
アクセス数が1日100件程度のブログを、そんなに危険視しなくてもいいと思うのだが。

それでも記事に書き方には気をつけておきたい。
これまでに何度か、2ちゃんねるを含む掲示板に記事が引用されているからだ。

引用の意図が不明な場合もあったので、私の記事が予想外の事態の引き金とならないことを願う。

翻訳は本日の分割納品分が無事に済んだので、今日はあまり進めずに、
ドイツのグーグルニュースをざっと見ていた。

すると、「ポルシェの工場でガス爆発」 というニュースを見つけた。

塗装の乾燥工程で爆発したようで、ポルシェ911の製造ラインが完全に停止しているという。

例えばロイターが配信しているが、日本のサイトではまだ掲載されていない。
ロイターの英語記事は次のとおり。
http://www.reuters.com/article/rbssConsumerGoodsAndRetailNews/idUSL2540642920080225

ロイター記事のドイツ語版は次のとおり。
http://de.reuters.com/article/companiesNews/idDEKOE53719320080225

複数の配信記事を元にした Der Spiegel の記事は次のとおり。
http://www.spiegel.de/auto/aktuell/0,1518,537512,00.html

ドイツのポルシェ社のニュースリリース(ドイツ語)は次のとおり。
http://www.porsche.com/germany/aboutporsche/pressreleases/?pool=germany&id=2008-02-25

しかしポルシェ・ジャパンには掲載されていないので、日本では重要ではないのか?
http://www.porsche.com/japan/jp/aboutporsche/pressreleases/pj/


2月25日の早朝5時頃に、Zuffenhausen にあるポルシェ911生産ラインの塗装工程で爆発があった。

現時点で被害と原因の詳細は不明だが、スプリンクラーの作動によって塗装工程と
組立てベルトコンベアが水に浸かったため、最低限2、3日は停止するそうだ。

シートやエンジンの製造工程には被害がなかったそうだ。

ポルシェ911の生産能力は、1日で160台であるが、販売へ影響はまだ不明だ。
ただ、カイエンはライプチッヒで生産し、ボクスターはフィンランドで生産しており影響なしだという。

被害が軽微だという予想なのか、ポルシェの株は、昨日の終値とほぼ同じ価格で取引を終了した。


私はVW派なので、金持ちになってもポルシェには乗ることはないが、
この生産停止で納品が遅れると心配する人は、日本にもいるのだろう。

それにしても、外車の話は日本人は好きなはずだが、日本語の報道にはどうしてすぐに掲載されないのか。


追記(2月26日):
一日遅れで日本経済新聞で小さく扱われていた。

[更新: 2008/02/26 20:10
独ポルシェ、本社工場で爆発事故・主力車種の生産を一時停止

独ポルシェは25日、主力車種「911」の生産を一時停止すると発表した。
同日に独南部シュツットガルトの本社工場で爆発事故があり、
同車種の製造ラインが使用不能になったため。
復旧までに少なくとも2―3日間は生産が停止するという。(フランクフルト支局)]

たったこれだけ。
経済紙なのに、3月3日の株式分割が予定通り行われることには、一言も触れていない。

従業員2名が軽傷だが、すぐに復旧しそうだし、たいしたことはないから報道しないのか。


追記2(2月28日):
生産停止は予想よりも長く、今週末まで続くことになった。
これで生産台数は約800台減少することになる。
http://www.ftd.de/unternehmen/autoindustrie/323777.html
http://www.finanznachrichten.de/nachrichten-2008-02/artikel-10214013.asp


追記3(2月29日):
本日の発表では、乾燥オーブンの不具合が修正され、3月3日から生産再開とのことだ。
今週生産できなかった800台は、特別措置により、2008年中に追加生産するという。

(最終チェック・修正日 2008年02月29日)

ドイツ・ザールラント州の地震は、採炭が原因ではないかと推測されているが、
2月21日にノルウェー・スバールバル諸島で起きたM6.2 の大地震では、油田掘削原因説が出ている。

日本は地震国なのに、他国の地震はあまり興味がないのか、被害がないものは、ほとんど報道されない。

2月21日の早朝(現地時間午前3時46分)に、スバールバル諸島近海で地震が起きた。
震源は海底から 10 km、マグニチュードは 6.2 と推定されている。

ロイターの配信記事は次のとおり(英語)。
http://www.reuters.com/article/scienceNews/idUSL2173668320080221?sp=true

幸いなことに、津波もなく、人的被害も報告されていない。
余震が何度か観測されており、あと数日は続き、3回くらいは起こると予測されている。

スバールバル諸島では、2月26日に植物種子保存施設の開設式典があるが、延期の必要はないという。

ノルウェー付近で起きる地震は、通常は小規模なものばかりで、これまでの最大地震は、
同じくスバールバル諸島で1976年1月18日に起きた、M5.5 の地震であった。

そのため今回の地震は、ノルウェー観測史上最大の地震である。

ノルウェーの研究機関 NORSAR のHPでは、この地震についての報告が随時アップデートされている。
http://www.norsar.no/NDC/recenteq/svalbard.html

地図上に震源と規模が図示されており、余震が続いていることが一目瞭然だ。
もし大きな余震が陸域で起こるならば、被害がでるのではないかと危惧される。


では、ノルウェーでの報道はどうなっているのか探してみた。
ノルウェー語はわからないので、新聞などの英語版で調査した。

その一つは Aftenposten という新聞である。
http://www.aftenposten.no/english/local/article2269271.ece

ロイターなどの配信記事と大差ないが、最後のところに気になる記載があった。

ノルウェー沖での油田掘削が、今回の地震に関係しているのではないかと、仮説のような書き方をしている。

ノルウェー沖では海底油田・ガス田の開発が行われており、油田探査活動も継続されている。

油やガスを汲み上げれば、確かに地下の状況は変化するのだが、
陥没の可能性はゼロではないにしても、どういった根拠でこの仮説が出てきたのかは不明だ。

今後は研究機関が海底地形の調査も含めて、詳細に報告するだろうから、それを待ってから考えよう。

日本に来たドイツ人留学生が驚くことの一つに、地震が多いことがある。

ドイツでは地震の発生自体が少なく、もし起きても震源は地下深い場所なので、地表ではほとんど感じない。
しかし日本に1年も住んでいれば、3回くらいは有感地震に出会うから、びっくりするわけだ。

私がドイツに住んでいた2年間でも、ドイツ国内で地震の話は聞かなかった。
実験室でも、器具や溶媒びんなどの転倒防止措置はなく、地震国日本との感覚の違いを体験した。

バルカン半島やイタリアでは地震の被害があったのに、地質学的には大きく異なるようだ。


そんな静かなドイツだが、南西部のザールラント州では、今年は既に30回もの地震を観測している。
1月3日のリヒタースケール 3.4 の地震に続き、2月23日には 4.0 の最大地震で軽微な被害も出た。
http://www.sueddeutsche.de/,ra8m1/panorama/artikel/151/159717/
http://www.focus.de/panorama/welt/saarland_aid_262502.html

ザールラントは炭鉱で有名であり、ドイツの石炭会社 Deutsche Steinkohle AG は、
「地震動は採炭に関係しているらしい」 と発表し、地震発生地域 Primsmulde S??d での採炭を中止した。

会社のHPは次のとおりだが、週末ということもあって、ニュースリリースは出ていない。
http://www.rag-deutsche-steinkohle.de/index.php?id=2


震源は地下約 1500 m で、マグニチュードは 4.5 と推定されている。

震源近くの Saarlouis では、教会が被害に遭い、崩れた煙突の一部で車が壊れ、停電も起きた。
主な被害は煙突や屋根の一部が剥がれ落ちたもので、人的被害は報告されていない。


ザールラント州政府は Deutsche Steinkohle AG に対して、採炭中止を要請しているが、
今すぐに炭鉱事業から撤退することは否定している。

ドイツでは炭鉱の閉鎖が計画されており、こういった炭鉱由来の地震が頻発すると、
閉鎖が早まって失業するのではないかと、炭鉱関係者は心配している。

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