2008年05月

先日ダウンロードした、5月28日の Süddeutsche Zeitung の18面(科学面)を見ていたら、
「質量損失・天の川銀河は思ったより軽かった」 という見出しに気がついた。

オンライン版にはないため、写真を除いた全文を掲載しておこう。

Die Masse der Milchstraße ist offenbar nur halb so groß wie bisher vermutet. Das ergibt sich aus Daten
einer umfassenden Himmelsdurchmusterung, berichtet das Max-Planck-Institut für Astronomie in Heidelberg.
Um die Masse der Galaxis zu bestimmen, maßen Forscher die Geschwindigkeiten von Sternen in
verschiedenen Abständen vom Zentrum der Milchstraße. Mit ihrer zentrifugalen Bewegung widerstehen die
Sterne der Schwerkraft der Galaxis. Frühere Studien aus dem Jahr 2003 enthielten nur die
Geschwindigkeiten von 50 beziehungsweise 500 Sternen und führten auf eine Masse der Galaxis, die
zweitausend Milliarden (zwei Billionen) Sonnenmassen entspricht. Die neue, auf 2400 Sternmessungen
basierende Studie ergibt einen nur halb so großen Wert. Offenbar gibt es auch weniger Dunkle
Materie
als bisher gedacht.


ハイデルベルクのマックス・プランク天文学研究所の報告によると、天体サーベイの結果から、
我々の天の川銀河の質量は、これまで推定されていた質量に比べて、たった半分しかないと判明した。

そのためダークマターも、これまで考えられていたより、少ない存在量を考慮するだけで済むそうだ。


マックス・プランク研究所の、5月27日のプレスリリースは次のとおり(ドイツ語のみ)。
http://www.mpia.de/Public/menu_q2.php?Aktuelles/PR/2008/PR080527/PR_080527_de.html

(追記(6月8日):この研究グループが参加したプロジェクトの、英語でのリリースは次のとおり。
http://www.sdss.org/news/releases/20080527.mwmass.html

この研究の論文は Astrophysical Journal に秋ごろ印刷されるので、英語を読める人は待ってほしい。
英語の論文が出れば、やがて日本語でも解説記事が出るだろう。

(追記(6月8日):この論文の印刷前の原稿がPDFで提供されている。
http://arxiv.org/abs/0801.1232


これまでに行われた2つの研究では、観測された星は50個、あるいは500個で、
その運動の観測から、天の川銀河の質量を、太陽質量の2兆倍と推定していた。

太陽質量の2兆倍という研究結果に関する日本語での報道は、例えば次のとおり。
http://www.astroarts.com/news/2002/01/24nao515/index-j.shtml

今回の研究では、天の川銀河中心から様々な距離にある2400個の星について、
特に青色巨星・分岐星の公転速度をより精密に測定した。

公転速度の最大測定値は、天の川銀河からの脱出速度に相当し、それを基にして質量を計算できる。

自然科学では、観測技術の進歩や精度の改善によっても、次々と新事実が見つかるので面白い。
ただ、日本人が参加していない研究だと、ほとんど報道されないのは残念だ。

(最終チェック・修正日 2008年06月08日)

ブログ開設から1000番目の記事ということで、副業の翻訳ネタにすることにした。

3年前に2回目の失業を経験してから、もしものために、翻訳での副収入を増やそうとしている。

本業に影響しない範囲での副業ということなので、寝不足になるほどの無理はできないが、
今の職場は残業がほとんどなく、平日でも約3時間は翻訳に充てられるから、依頼を断ったことはない。

今年の翻訳料金収入は、昨日までに約70万円となったが、4月以降は1件のみで3000円だけだ。
打診はあっても、クライアントの都合でキャンセルとなった案件も多く、厳しい状況だ。

昨年度継続的に受注した英語特許和訳の案件は、プロジェクトが終了したので、今は何もない。
3月に納品した24万円の和訳も、単発プロジェクト用の募集だったので、これも今は何もない。

内職のような対訳データベース作りで月3000円くらい稼いでいるが、これでは少ない。

翻訳料金の目標は、毎月平均で5万円にしたいので、別の翻訳会社2社に応募することにした。


1社目は、英字新聞の記事を和訳する登録翻訳者の追加募集である。
募集要項を見たときの応募締め切りは来週だったが、既に掲載終了となっており、早めに行動してよかった。

実際の英語記事を和訳するトライアル課題が来たので、昨日翻訳して提出した。

この翻訳会社からは土曜日なのに返事が来た。
まあ、ニュースは毎日掲載するから、土日でも対応しているのだろう。

新聞記事に適した和訳という前に、ビジネス用語の和訳がわからず苦労したので、だめかもしれない。
もし合格したら、できれば科学技術系の記事の和訳を担当したいものだ。


2社目は、特許翻訳が主体の会社で、ヨーロッパ言語の翻訳者募集であった。
履歴書と職務経歴書の提出が求められたので、本業の化学研究職の書類を出して、専門知識をアピールした。

翻訳歴についても簡単に触れたが、特にドイツ語の場合、特許明細書の和訳経験だけでなく、
特許和訳のチェッカー経験や、特許審査結果の通知や異議申立書の和訳経験もあることをアピールした。


もしかすると2社とも、副業ではなく、翻訳専業のフリーランスを求めているのかもしれない。
ただ、そんな事情はわからないので、条件が合いそうなものには、とにかく応募を続けようと思う。

そしてあと20年近く実績を重ねて、定年後は翻訳者として食べていけるようになりたいものだ。

自然科学分野の魅力の一つは、知的好奇心を喚起する新しい発見が、毎日報告されることだ。
観測技術の進歩により、これまで見逃していた事実がわかることも多いが、それでも新鮮な驚きがある。

天文学でも様々な現象が発見されているが、ごく最近、小惑星の自転周期の最短記録が更新された。

4月25日にLINEARサーベイで発見された 2008 HJ の自転周期は、
4月29日の観測から 42.67±0.04 秒と、これまでで最短であると確認された。

この発見までの最短自転周期は、2000 DO8 の 78 秒であった。

イギリスの Science and Technology Facilities Council のプレスリリースは次のとおり。
http://www.scitech.ac.uk/PMC/PRel/STFC/Asteroid.aspx

ちなみに、ドイツ語での報道は次のとおり。
http://www.wissenschaft.de/wissenschaft/news/291833.html

日本語での報道は、今回も残念ながら、現時点では見つかっていない。

(追記(6月9日):日本語での報道(翻訳記事)がやっと出た。
気になるのは、この日本語記事中の自転周期は 42.8 秒と、英語記事よりも 0.1 秒長いことだ。
http://www.astroarts.co.jp/news/2008/06/09asteroid_2008hj/index-j.shtml


今回の観測は、Faulkes Telescope Project というイギリスの学校・大学が参加する教育プログラムで行われ、
ハワイやオーストラリアの巨大望遠鏡を、インターネットで自宅からでも、遠隔操作できるのが特徴だ。
http://faulkes-telescope.com/

地球に接近する小惑星の観測も、このプロジェクトで行われており、
4月に発見された 2008 GP3 の自転周期は 11.8 分であった。

このプロジェクトで観測した4番目の小惑星で、偶然にも最短記録が生まれることになった。
しかも発見したのは、56歳の定年退職者である。

2008 HJ のサイズ 12 m x 24 m から予測される理論的な自転周期と、観測値とはほぼ合っているそうだ。
今後も、地球に接近するサイズの小さい小惑星の観測を継続するという。


このプロジェクトに多数の学生が参加することで、アマチュア観測家でも天文学の発展に貢献できる。

日本のアマチュアも、彗星・小惑星・新星・超新星などの新天体発見や、軌道計算で貢献してきた。
ただ、巨大望遠鏡の遠隔操作で観測するというのは、あまり例がない。

ハワイのすばる望遠鏡と接続した話はあるが、学生が観測に使って何か発見したという報道は聞かない。

科学技術立国として、理系人材を増やそうとするならば、もっと最先端科学に触れる機会を増やしてほしい。
こういったプロジェクトに、一般人も参加できる国がうらやましい。

(最終チェック・修正日 2008年06月09日)

金持ちが出てくるテレビ番組も最近はあるが、景気が回復したという実感は、ほとんどない。
公的年金制度も破綻しそうだし、民間企業も不祥事続きで、このまま日本で暮らせるのか心配だ。

景気が回復しない原因に、行政や政治の無策や、余計な法規制を挙げる人もいる。

最近の新書でも、似たような内容の2冊が、1ヶ月違いで出版された。

・中森貴和著、「行政不況」(宝島社新書)
・門倉貴史著、「官製不況 なぜ『日本売り』が進むのか」 (光文社新書)

「行政不況」 では、規制強化や法改正の影響が主体で、こちらは後回しにした。
今回先に読んだのは 「官製不況」 で、より広範囲の実態を概観するのに役立つと思った。

「官製不況」 の章立ては次のとおり。

第一章 なぜ日本の株は下がり続けるのか?
第二章 モラルハザードと官製不況
第三章 なぜ「ワーキングプア」が増えるのか?
第四章 なぜ年金財政は破綻寸前なのか?
第五章 サブプライム問題と世界的なカネ余り

バブル崩壊後の経済政策が後手に回ったことも、最近の株価低迷も、「官製不況」 と呼ばれている。
判断が遅かったり、見当違いだったり、楽観視しすぎたり、専門家のはずなのにめちゃくちゃだ。

第一章では、日本の株価が低迷する理由について解説している。
21世紀になってからの経済成長は、構造改革とは無関係で、世界景気の好調に起因したものだった。

日本の構造改革が形骸化していることは、既に誰でも気づいていることであり、
それに株式を利用した三角合併も邪魔する日本には、誰も投資の魅力を感じない。


第二章では、規制強化の法改正の副作用とも言うべき悪影響を解説している。
耐震偽装問題がきっかけで建築基準法が改正されたが、これで住宅建設が滞り、幅広い業種に影響した。

また、貸金業法の改正で貸出金利を下げることになり、倒産する消費者金融も出てくるようになった。

他にも、投資信託などの金融商品のリスク説明が長すぎ、投資意欲がなくなるとも言われている。


第三章では、新自由主義経済のために、低所得者層が増加したことと、その対策が解説されている。
ワーキングプア対策を行わないと、消費は低迷し、税収も減少し、少子化も進行し、状況は悪化するばかり。

日本で行われている対策は、どれも中途半端で、自立支援には程遠い。
本書ではいろいろなアイデアの検証もされているが、政府・官僚が参考にするとは思えない。


第四章は、今話題の年金だ。
社会保険庁のデタラメ業務がなくても年金は、最初から破綻するような制度設計だった。
経済成長と人口増加が前提だから、「100年安心」 など大嘘だ。

連日の報道は、年金行政について不信感を増大させることばかりで、それも若者の未納率を上げている。
スウェーデンの例を紹介しながら、国民が安心できる制度作りを提案しているが、実現するだろうか。


第五章は、今も影響が続くと言われる、サブプライム問題だ。

日本政府が大好きなアメリカだが、住宅バブルを作り出したのに誰も反省しないし、
サブプライムローンの証券化商品の格付けが高めになっていたなど、いいかげんなことばかり。

世界的なカネ余りも、各国の不動産バブル発生の要因となっており、慎重な経済政策が求められている。

アメリカの景気低迷の影響が、BRICsなどの経済新興国に及ぶかどうかも解説されている。
全くないとは言えないが、BRICs各国は経済的自立の度合いが進んでおり、以前より影響は少ない。


結局のところ、何でも中途半端でタイミングを逃す日本は、どうしようもないということか。
それにしてもこんな国で、一体誰が得をしているのだろうか。

週末は短いドイツ語和訳をしたが、最近は急に仕事の依頼が減ったので、別の翻訳会社も探している。

英字新聞の和訳で募集していたので、登録フォームに記入して応募した。
すると本日、トライアル課題が送られてきた。

ある国の英字ビジネス紙について、その和訳記事を、オンラインで提供するプロジェクトだという。
既に登録している翻訳者では足りないようで、特別に若干名の新規募集を行っているそうだ。

トライアル課題は実際の新聞記事で、150ワード程度の短いものだ。
私が医薬メーカー勤務だからなのか、化学メーカーの買収記事である。

内容はそれほど困難ではないし、締め切りも余裕があるので、週末に取り組もうと思う。

本業では現在、対照薬合成の最終工程なので、集中力は昼間にとっておこう。


これは合格してから心配すればよいのだが、海外の新聞を和訳するので時差があり、
実際の翻訳作業は深夜になる可能性が高いのだ。

平日の昼間は作業できないため、記事1本を和訳するので精一杯だ。
まあ、こんな不利な条件では、最初から合格しないのではないだろうか。

ワード単価も安く、平均ワード数で計算すると、記事1本で1000円程度か。
毎日受注して、月20本の記事を和訳すると、約5万円の収入となる。

実際には3万円くらいだろうが、それでも家計の足しになるから期待しよう。

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