2008年07月

国際シンポジウムに参加するため、近畿地方に出張している。
会議公用語が英語なので、部長から指名されて参加した。
発表せずに聴くだけだから気楽なものだ。
ポスター発表も日本人相手なら日本語で質問していいし。

企業展示ブースにも立ち寄って、新製品などの情報を仕入れた。

ドイツの出版社THIEMEのブースでは、有機合成のデータベースの説明をしていた。
Science of Synthesisのオンライン版である。
今の最新版は英語だが、古い版はドイツ語だ。
そのため、検索結果は英語とドイツ語の両方とも表示される。

私はドイツ語でも大丈夫だと説明すると、応対していた日本人スタッフが、ドイツ人スタッフを連れてきた。
どこの大学に留学したのかだとか、日本ではドイツ語を話す機会がほとんどないことなど、
簡単なドイツ語会話を3年ぶりにした。

週末にはドイツ語特許を日本語にしているとも説明した。
会社の仕事かどうか聞かれたので、フリーランスのドイツ語翻訳者だと説明した。
そのとき、指のジェスチャーを交えて''Mehr Geld.''と言ったら笑ってくれた。

簡単な会話は忘れていないから、ドイツ企業に転職しても大丈夫かもしれない。
翻訳がないときは、ドイツ語会話の復習をした方がいいのかな?

今月になって、東北大学歯学研究科の助教の論文について、ねつ造疑惑が指摘されている。
本人は否定しているものの、日本細菌学会は 「黒屋奨学賞」 の取り消しを発表した。

共同通信の報道は次のとおり。
http://www.47news.jp/CN/200807/CN2008072601000349.html

改ざん疑いで賞取り消し 東北大助教の論文で学会

日本細菌学会(理事長・笹川千尋東京大医科学研究所教授)は26日までに、東北大大学院歯学研究科の
30代女性助教らが発表した複数の論文に、データ改ざんとみられる不正があったとして、この助教が
受賞した学会の賞を取り消した。

笹川理事長は「捏造とまでは言えないが、長期間、多数の論文に改ざんとみられる部分があり、
単純ミスではあり得ない
と判断した。残念だ」と話している。

取り消されたのは、助教が今年3月受賞した、若手研究者をたたえる同学会の「黒屋奨学賞」。

学会の調査で、助教らが2001年から今年までに発表した15本程度の論文に、図表など30数カ所に
改ざんとみられる部分が見つかった。

1つの実験結果の写真を、複数の論文で違う目的の実験結果として使い回したり、ある細胞の写真を、
別の論文では異なる細胞として掲載したりしていたという。】

日本細菌学会のHPでは、現時点では調査開始の緊急通告しかないが、後日掲載されるだろう。
http://www.nacos.com/jsbac/
http://www.nacos.com/jsbac/04-6fair.html

【本学会会員より 「論文作成経過について調査の必要あり」 との指摘があった。】 とのことだが、
指導教授や推薦者、そして学会賞の審査員は誰も気づかなかったのだろうか。

実験の様子を見たり、ディスカッションしていれば、本人のレベルや性格は把握できるはずだ。
そして、データの扱いが不適切だったり、ねつ造癖と言うか、虚言妄想癖があれば気づくはずだ。

報道では個人名は出ていないが、学会賞の受賞者一覧で明らかである(消去前に参照してください)。
http://www.nacos.com/jsbac/img/03_0.pdf

研究者の情報は次のとおり。
http://read.jst.go.jp/public/cs_ksh_008EventAction.do?action4=event&lang_act4=J&judge_act4=2&knkysh_name_code=1000283271

今まで様々な受賞歴があり、論文も多いようだが、今後はどれだけ取り消されるのだろうか。
ねつ造論文を参考にして研究した人もいるはずだから、どこまで影響が広がるのだろうか。

「データを保存していたPCが壊れた」 などと言っているが、これも昔から使われた言い訳である。
大切なデータならばバックアップを取るのは常識だから、これでは研究者としての意識まで問われる。

データの保護だけではなく、改ざんや破棄を防ぐためにも、大学サーバーに実験生データを保存し、
自分の実験データであってもダウンロードのみとし、加工したデータの再登録ができないようにすべきだ。


ところで、この助教は博士課程で、私と同じ日本学術振興会特別研究員であった。
毎月20万円ほどの研究奨励金が支給され、更に研究費が年100万円くらいもらえる。
つまり、こんなねつ造癖のある研究者を育成するために、1000万円以上の国費が使われたのだ。

同じ特別研究員でも私のように、データ改ざんや実験廃棄物不法投棄を告発して失業する者もいれば、
逆に、ねつ造論文によってキャリアを形成し、大学教官というポストを確保する者もいるのだ。

本人が否定しているし、指導教授や博士論文の審査員へのとばっちりも嫌なので、処分は軽くなるだろう。
ねつ造疑惑だけでは懲戒免職にはならず、停職1ヶ月とか、減給10分の1が数ヶ月くらいだと思う。

気になるのは、ねつ造疑惑を指摘した人が、何か不利益を被るのではないかということだ。


私の研究室の後輩も妄想癖があり、学会発表内容の一部削除を、指導教授から命じられたことがある。
そんな困った性格でも、特別研究員となり、留学もして、助教として研究を続けている。
今回の事件で、ウソをついてはいけないと考え直してほしいものだ。

そして世間一般の人も、大学教官といえどもただの人だと認識してもらえればいい。

追記(2009年04月26日):
2009年04月21日に調査委員会の記者会見が行われ、論文11本に不正があったと結論された。
河北新報の記事は次の通り。
http://www.kahoku.co.jp/news/2009/04/20090422t13033.htm

【東北大大学院歯学研究科の女性助教(39)らが発表した研究論文16本に日本細菌学会が「不正がある」
として告発していた問題で、東北大の調査委員会は21日、「論文11本で不正が確認された」とする
調査結果を公表した。助教は不正を全面的に否定している。

論文の不正が指摘されていたのは助教と指導教官の教授2人。調査委は、助教らが口腔(こうくう)免疫に
関して2001―08年に発表した論文のデータ画像を検証。論文11本の20項目で細胞の組成を
分析したグラフや顕微鏡画像がほぼ一致した。

調査委は「自然界では異なる実験で結果が一致することは起こりにくい」と指摘。一つの実験結果を
使い回した捏造(ねつぞう)、改ざんだと結論付けた。

調査委は、助教らに論文の取り下げを勧告。大学は近く懲戒委員会を開き、処分を決める。井上明久総長は
「不正は、関連学会への信頼も失墜させ、遺憾に思う。関係者は厳正に処分する」との談話を発表した。

これに対し、助教は「再実験による証明も不要とするなど調査は不公正。懲戒処分を受けた場合、
法的手段で潔白を訴える」と話している。

教授の1人も論文を取り下げる意思はないというが、もう1人の教授は不正が認定されれば論文を
撤回するとしている。

細菌学会は昨年、若手研究者をたたえる「黒屋奨学賞」を助教に贈ったが、
「データ改ざんがみられる」として賞を取り消した。】

(最終チェック・修正日 2009年04月26日)

6月以降に翻訳の仕事を受注していないため、更にもう1社に応募することにした。
少しでも収入を増やして、借金を返し、生活を楽にしたいためでもある。

ドイツ語翻訳者募集の情報を見て、問い合わせメールを送ってみた。
休日が主体のフリーランスでも対象となるかどうかが心配だった。

すると1週間ほどして返事があった。
実際の翻訳量や納期は、翻訳者の事情を考慮するとのことで、応募用書類が添付されてきた。

いつものように、個人情報や職歴の他にも、語学関係の資格や経歴を記入した。
そしてトライアル希望分野は、化学・バイオ系で、英語とドイツ語を希望した。

この応募書類で審査をしてから、トライアル課題が送られてくることになる。

今は翻訳案件もないし、8月にはお盆休みもあるので、トライアル課題に取り組む時間はあるだろう。


親会社では今、「要員適正化」 という名の人員整理が行われており、1000人辞めさせる予定だ。
研究所の人員は、新規採用を抑えて自然減に任せるようだが、来年は子会社の整理が始まるかもしれない。

既に子会社同士の合併が始まっており、私の勤務先もどうなるか全く予測不可能である。

製薬メーカーが有機合成分野を縮小することないと思っているが、
今は上海などの受託会社に外注するのがはやっているので、常に最先端の合成知識が必要だ。

もしものときは、英語・ドイツ語翻訳者として独立するかもしれないので、
今からフリーランス契約を結ぶ翻訳会社を増やしておくのは、一種の保険となるだろう。


追記:
出張から戻ってメールを確認すると、トライアル課題が届いていた。
英語とドイツ語、どちらもバイオ系と化学系の特許を1件ずつ。
お盆明けまでに、合計4件のトライアル課題を提出することになる。
まあ、1件2ページくらいなので、なんとかできると思うが、こう暑いとやる気が出ないのが困る。
収入増のために頑張ろう。

(最終チェック・修正日 2008年08月02日)

トラックバックした過去記事にあるように、母は後期高齢者となり、新しい保険証が届いた。

今年度の後期高齢者医療保険料は年額で 75,400 円で、年金から天引きされる。
加えて、介護保険料は年額で 33,100 円であり、これも年金から天引きされる。

母の保険料総額は 108,500 円であるが、実際にはこれに加えて、扶養家族の保険料負担がある

母は世帯主なので、自分の後期高齢者医療保険だけではなく、
国民健康保険でも母の年金収入は、保険料の計算に使われている。

母のようなケースは報道でも聞かないので、ここで記録の意味でも取り上げよう。


障害者の姉はこれまで、母の国民健康保険で扶養者扱いだった。
つまり過去の制度では、健康保険は世帯ごとに1種類であり、姉は自分の保険料を払う必要はなかった。

ところが、今年度から母が後期高齢者医療保険制度に単独で加入することになり、
姉はこれとは別に、国民健康保険に加入する必要が発生した。

そしてやっと、姉に国民健康保険被保険者証が届いた。
交付年月日は平成20年8月1日であり、後期高齢者医療制度が開始した4月1日ではない。

保険証と一緒に、今年度の国民健康保険税納税通知書が届いた。
請求先は世帯主の母で、この場合は口座振替であり、年金天引きではない。

保険料は年額で 42,900 円である。
社会保険料控除に使えるが、去年までは払わなくてもよかったのだから、明らかに負担増だ。


負担増という話や、年金天引きはひどいという批判は聞くが、扶養家族の保険料負担は報道されない。

しかも国民健康保険税の明細を見ると、母は課税対象に入っているだけではなく、
後期高齢者支援金を払っている
ことになり、制度の不備を感じる。

後期高齢者の母が使うことのない国民健康保険で、課税対象に入っているのは不思議だ。
均等割の1人分の税額は、医療給付費分では 20,000 円、後期高齢者支援金分では 6,200 円だ。

ここでまた繰返すが、自分が使わない健康保険なのに、課税対象に入っていることや、
後期高齢者なのに、後期高齢者支援金を負担するのは、制度の不備を明確に示す事例として重要だ。

実際には減額措置があるため、均等割の 26,200 円が、そのまま負担増になるわけではない。
それでも、後期高齢者を課税対象に入れるのはおかしい。

母が世帯主というのは、住民票でそうなっているわけだが、
姉も障害者年金という収入があるので、個別に計算してもいいはずだ。

姉は2級障害者なので、年金は年額で80万円に満たない。
すると個別に計算すると課税収入がゼロになるから、最低限の保険料になるはずだ。

このようなケースは稀なのかもしれないが、私の家族に実際に起きていることだ。
モデルケースだけを考えても無意味だという例である。

(最終チェック・修正日 2008年07月26日)

昨日7月20日のテレビ朝日・サンデープロジェクトの特集で、ある農家のグループが取り上げられた。
日本の農産物を、農協などを通さずに、直接海外に輸出するルートを開拓するというものだ。

その番組内でドバイのスーパーマーケットが出てきた。
農林水産省が進める事業で、日本の食材を販売するコーナーが確保されているという。
値段が高すぎてあまり売れないにもかかわらず、販売業者は利益を上げる必要はないそうだ。

税金の無駄遣いということなので、農林水産省の事業について検索してみた。

すると、日本の農林水産物の輸出を促進するための事業があった。
http://www.maff.go.jp/sogo_shokuryo/yusyutu.html

農林水産物等海外販路創出・拡大委託事業(常設店舗活用型輸出対策)」 では、
販売店舗を展開する会社に委託費を交付するもので、今年度も公募されている。
http://www.maff.go.jp/j/supply/itaku/080512_2.html

ドバイに出店する場合は、年間5千万円以内が委託費として交付される。
何も売れなくても5千万円確実に入るなら、販売促進活動などの余計な経費をかける必要もない。

それで、平成19年度の委託事業でドバイに出店している、株式会社サングローブフードで検索した。
http://www.sgfd.co.jp/yushutu.html

これを見ると、既に今年の3月15日で終わっており、常設店舗なのに開設期間は6ヵ月半だけ
サンデープロジェクトの取材時には開店していたが、短期の事業なら、そんなに販売努力はしないだろう。

それで海外常設店舗の月例報告を読んだ。
http://www.maff.go.jp/sogo_shokuryo/yusyutu/kaigai/index.html

ドバイ店舗は9月開設なのに報告は10月からで、しかも最新報告は1月という手抜きぶりである。

10月期の報告には、商品の売れ行きだけでなく、記念パーティーの様子も写真入りで出ていた。
このパーティーに委託費の大半は使われたのか知りたいが、まだ決算書は出ていない。

その後の報告を見ても、あれが売れた、これが人気がある、値下げしたら売れたなど、
就業体験で八百屋をやってみた中学生が書いたような感想文
だ。

日本人が買っただとか、日本食レストランが買ったようだなどとあるが、
実際の購入者層の割合はどうなのか、販売単価はどうなのか、もっと具体的な分析を知りたい。

それに、売上高は書いてあるが、利益が出たかどうかは不明瞭である。
委託費がもらえるから、別に売れ残ってもかまわないということか。

こんな店舗、というよりも商品陳列棚のために、半年で何千万円も必要なのだろうか。
農林水産省の官僚が、現地視察と称して旅行するために作ったのではないだろうか。

国内で農林水産業をだめにしている農林水産省が、海外輸出だけバラ色の未来を用意するとは思えない。
単に予算を使う口実をつくるために考え出した事業ではないか。

今後も事業の効果を監視しなければならないだろう。

(最終チェック・修正日 2008年07月22日)

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