2009年02月

geschlagen
形 (schlagen された)
3 打ち負かされた,一敗地にまみれた
sich4 geschlagen geben 負けたとあきらめる,敗北を自認する

Ronny Ackermann, Eric Frenzel, Björn Kircheisen und Tino Edelmann mussten sich nach dem
Sprunglauf und 4x5 Kilometern Langlauf nach Fotofinish mit einer halben Skilänge
Überraschungssieger Japan geschlagen geben.
ロニー・アッカーマン、エリック・フレンツェル、ビョルン・キルヒアイゼン、そしてティノ・エーデルマンは、ジャンプ競技と4×5キロメートル・クロスカントリーの後、写真判定によりスキー板半分の長さで、予期せぬ勝者日本に負けたと認めるしかなかった。
("Ski Nordisch: WM-Silber für Deutsche Kombinierer", DW, 26.02.2009
http://www.dw-world.de/dw/article/0,,4059530,00.html

Fotofinish n. 写真判定
engl.: photo finish
DUDEN: Finish, dessen Sieger(in) nur durch Zielfotografie ermittelt werden kann.

水産庁の天下り団体、財団法人日本鯨類研究所(鯨研)は、名称からクジラ研究の専門機関とされるが、
そのHPのトップページを見るとわかるように、反捕鯨団体に対する批判宣伝活動に力を入れている。
http://www.icrwhale.org/index.htm

クジラの学術的資料を調べたいのに、新着ニュースはシーシェパードとの喧嘩のことばかり。
「鯨研通信」 という出版物もあるが、無料公開されているのは反捕鯨団体の批判記事が多い。
年間10億円近い税金を使い、公共性が高い事業をしている財団法人なのに、勘違いしているようだ。

鯨研が「科学的」事業をしているならば、クジラに関するあらゆる情報の公開を目指すべきだ。

そこで今回、私がメールで要望したのは、クジラの学名・英名・和名の一覧表を提示することだ。
まあ、無視されるかもしれないが、無視したという事実も重要な情報となるだろう。


この要望は、"bowhead whale" を 「セミクジラ」 と誤訳した、ロイター通信の和訳記事がきっかけだ。
その後の経緯も含めて、振り返っておこう。

契約翻訳者が使った 「英辞郎」 が誤りで、鯨研に問い合わせ後、「ホッキョククジラ」 に訂正した。

現在は 「ホッキョククジラ」 とするはずが、ほとんどの英和辞典が 「セミクジラ」 としていた。
一部の英和辞典では、セミクジラとホッキョククジラを併記しているものもあった。

一方、セミクジラ属のクジラには、"right whale" という英名がある。
最近は分類が細かくなり、"north atlantic right whale" 「タイセイヨウセミクジラ」 などとしている。

ただ、分類がおおざっぱだった頃の名残なのか、"right whale" の和名には、まだまだ混乱が見られる。

私が間違いを指摘した 「英辞郎」 だが、以前は 「right whale = セミクジラ」 としていた。
しかし最近、「right whale = ホッキョククジラ、グリーンランドクジラ」 と変更されていた。

加えて、【northern right whale セミクジラ、セミ鯨◆right whale=bowhead whale=
Greenland whale
=Balaena mysticetus。】 と、今だに "bowhead whale" と同義としている。

具体的に、西暦何年を境にして語義が変わったのか、その詳細は私は知らないが、
科学的調査を主目的とし、IWCに英語レポートを提出している鯨研ならば、正確な情報を持っているはず。

このような現状から、誤訳を防ぐためにも、学名・英名・和名の一覧を鯨研に公開してほしいと要望した。
生物種では、学名のみが正式名称であるから、まずは学名を示し、次に英名と和名を列挙してほしい。


このクジラ和名の誤訳についは、それほど大きな問題とはなっていないのだが、
「アメリカが先住民に絶滅危惧種のセミクジラの捕獲を許可した」 と騒いでいる人たちが一部だがいる。

ロイター記事の誤訳を教えてあげたのだが、それでもアメリカに対する怒りは収まらないようで、
「ホッキョククジラも数は少ない。数が多いミンククジラの捕獲に反対するな」 と、更にヒートアップ。


鯨研が、クジラに関する正確な知識の普及を望んでいるのならば、誤訳記事の訂正申し入れをしたり、
誤訳に基づいて勘違い発言をしている捕鯨賛成派に指導をするべきだと思う。

「クジラ食害論」 という水産庁が認めていない 「神話」 を流布しているのは、実は捕鯨賛成派だ。
反捕鯨団体の批判をすると同時に、間違いを流布する勘違い捕鯨賛成派も批判されるべきだ。

鯨研から返事が来たら追記しておこう。

会社の昼休みに S??ddeutsche Zeitung を見ると、アルゼンチン政府から国外退去命令の出ていた
ホロコースト否定論者のウィリアムソン司教が、ブエノスアイレスの空港に現れたとあった。
http://www.sueddeutsche.de/politik/879/459520/text/

掲載された写真にあるように、帽子をかぶりサングラスをかけているが、記者たちに見つかったようだ。
そして、近づいたジャーナリストに向かって拳を振り上げたところを、写真に撮られてしまった。

カトリックの聖職者といえども、根本は普通の人と変わらないのだ。
顔を隠して国外脱出を図ろうとするし、拳で威嚇する身振りも、ただの頑固なオジサンとしか思えない。


この記事中には、「ウィリアムソン司教は8番目の戒律を犯している」 とあった。
モーゼの十戒の8番目はカトリックでは、「隣人に関して偽証してはならない」 だそうだ。
つまりウィリアムソン司教は、この宗教的視点からも非難されているわけだ。


そして、ロンドンに到着した司教についての記事は次の通り。
http://www.sueddeutsche.de/,ra1m1/politik/940/459581/text/

ヒースロー空港では、怒りをあらわにすることもなく、無言で去って行ったそうだ。
ウィリアムソン司教の目的地や居場所について、聖ピウス十世会は、「何も言えない」 とだけ答えている。

イギリスにはホロコースト否定論者や反ユダヤの団体もあるので、相談していると言われている。
http://www.sueddeutsche.de/,tt3l2/politik/974/459614/text/

イギリス政府は、ウィリアムソン司教の帰国を歓迎していないが、イギリス国民なので住む権利はあるし、
宗教問題に触れることは避けたいなどの理由で、今後の動向を静観する模様だ。

ウィリアムソン司教は報道陣には何も答えていないが、バチカンには謝罪文を送ったという。
「歴史的観点からの発言ではない」 などと今頃言っている。
続く内容は、謝罪とは程遠いもので、カトリック教会内部の反発も鎮まることはないようだ。


ドイツやフランスでは、ホロコースト否定発言をすると逮捕されるため、
罪にならない国を探して潜伏・活動するのかもしれない。

やはりヨーロッパ社会を理解するには、2年間の留学だけでは無理で、
キリスト教を理解することが必須条件のようだ。

(最終チェック・修正日 2009年02月28日)

大気中の二酸化炭素を観測するNASAの衛星、Orbiting Carbon Observatory (OCO) が、
2月24日に打ち上げられたが、ロケットからの分離に失敗し、南極付近の太平洋に墜落した。

24日夜に、S??ddeutsche Zeitung の記事で知った。
http://www.sueddeutsche.de/wissen/856/459497/text/

日本語記事は少し遅れて、25日になってから出ている。
ミッションの解説には、日本との関係を追加している。
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2575040/3852986

NASAのサイトでの、このミッションの解説は次の通り。
http://www.nasa.gov/mission_pages/oco/main/index.html

打ち上げ失敗について、NASAの最初の発表は次の通り。
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2009/feb/HQ_09-039_OCO_failure.html

失敗の原因調査が行われているので、続報が出たら追記しておこう。


日本の温室効果ガス観測衛星 「いぶき」 は、2月9日に初観測データを取得し、正常に作動している。
http://www.jaxa.jp/projects/sat/gosat/index_j.html

NASAが失敗したため、日本の観測データを提供するのかもしれない。

受注した2件の英日翻訳のうち、短い1件の推敲が夕方までに終わった。
残り1件は130ページ以上で、納期もきつく、すぐ作業すべきだが、クジラのニュースが気になった。

水産庁がエコテロリストに指定したシーシェパード関連のニュースは、いつも大きく取り上げられているが、
日本の捕鯨関係者に都合の悪いニュースは、なぜか報道されないので、どうもバランスが悪い。

そして 「クジラのことなら何でもわかる」 と豪語する、鯨ポータルサイトにも出ていない。
http://www.e-kujira.or.jp/index.html

日本語での報道がないので、仕方なく、外国語報道を地道に探すことになる。

アメリカ TIME 誌の2月17日の記事が、数は少ないが、いくつかのブログや掲示板で話題になっている。
「クジラを殺すと世界の漁業を救うのか?」
http://www.time.com/time/health/article/0,8599,1880128,00.html

この記事は、Science, Vol. 323. no. 5916, pp. 880-881(2月13日)の論文を引用している。
「漁獲高を増やすためにクジラを間引くべきか」
http://www.sciencemag.org/cgi/content/summary/sci;323/5916/880

アリゾナ州立大学 Leah R. Gerber のグループが、いわゆる 「クジラ食害論」 を検証した。
日本政府が漁業ODAとセットで宣伝している、カリブ海とアフリカ北西岸で調査したそうだ。
(論文ダウンロードは有料コンテンツなので、月曜日に会社で読んでから、追記する予定。)

研究室のHPにある、プロジェクトの紹介は次の通り。
http://www.public.asu.edu/~lrgerbe/whales.htm


この研究の資金は、Lenfest Ocean Program という、PEW財団のプロジェクトから出ている。
http://www.lenfestocean.org/

この財団は、海洋生態学の研究、特に漁業の環境への影響に関する研究も支援している。
支援した研究の結果は、科学者の検証などを経て、持続可能な漁業の提案などに利用されている。

昨年も別の生態学者が、同様の研究について結果を発表した(IWCでも発表した)。
PEW財団のHPでも紹介されている。
http://www.pewtrusts.org/our_work_report_detail.aspx?id=40740&category=150

過剰な漁獲圧力と違法漁業が魚を減らしていることは、ナショナルジオグラフィックでも記事になった。
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/magazine/0704/index.shtml (2007年4月号)

なにがなんでも、クジラを犯人にしようという日本政府は、非科学的根拠に固執しているわけだ。


TIME 誌の記事に戻ろう。

「クジラ食害論」が出てきた背景は、次のように説明されている。
日本人一人当たり鯨肉消費量は30グラム程度で、「需要がない」 という批判に反論できない。
そこで、クジラと漁業が競合するという、「クジラ食害論」 が突然出てきたのだ。

それで Gerber らは、クジラを排除した場合のバイオマス変化を推測したところ、
商業的価値のある魚類に対して、クジラの影響は無視できるほど小さいということが判明した。

生態系は複雑であり、捕食者-被捕食者の1対1関係だけを取り上げる 「クジラ食害論」 は無意味。


今回も 「クジラ食害論」 が否定されたわけだが、日本政府の主張で正しいことは一つあるという。
それは、世界の漁業資源が危機に瀕しており、このままでは漁獲高の急激な減少が確実ということだ。

マグロ類の危機については、よく知られているが、他にもニシンやタラなど、主要な魚類が危険な状況だ。

捕鯨サークルには都合の悪い研究結果だが、漁業資源の危機についての認識は一致しているはずだ。
クジラ以外に漁獲高減少の原因があるならば、クジラにこだわって対策が遅れれば、元も子もない。

水産庁が、「感情的対立ではなく、科学的議論をすべき」 と主張しているのだから、
持続可能な漁業を推進するためにも、真の原因を特定し、一日でも早く国際的取り組みを提案してほしい。


追記(2月23日):
Science の論文を会社でダウンロードして読んだ。
論文本文は2ページと短いが、研究成果の要約の他に、「クジラ食害論」 の経緯もまとめてある。
まあ、Policy Forum という区分なので、論文というよりは意見書と呼ぶ方が合っているかも。

研究対象とした生物種のリストを見ると、クジラも魚も多岐にわたり、
実際の複雑な生態系を把握するために、適切なモデルを作ろうと努力している。

アフリカ北西岸からヒゲクジラ類を根絶した場合、漁業対象魚類バイオマスの増加はわずか 0.07% だ。
クジラの摂食量を5倍に見積もっても、増加はわずか 0.15%、10倍にしても 0.26% しか増えない。

それに対して漁業モラトリアムを実施すると、バイオマスはなんと 442% の増加となる。

つまり、ヒゲクジラ類が捕食する対象種と、商業的漁業の対象魚類とは重複しておらず、
「クジラ食害論」 など大ウソで、乱獲や環境変化、海の温暖化など、他の要因を考慮すべきだ。

しかし環境問題には政治が絡んでくるので、ODAと引き換えに捕鯨再開に賛成したりもする。
正しい手法で得られた科学的知見が、政策立案者の関心を引くように努力を続けるしかない。

ところで、日本の捕鯨サークルは、今回の論文は南極海が対象ではないとして無視するだろう。
ただし、カリブ海やアフリカ北西岸の発展途上国に、「クジラ食害論」 を宣伝するのはやめるべきだ。

結局のところ、毎年クジラを1000頭殺す理由を無理やり作っただけなのだ。
日本の調査捕鯨など、科学ではない。

追記(2月24日):
鯨ポータルサイトの 「鯨論・闘論」 では、「食害論」 の質問に対して、次のように答えている。
http://www.e-kujira.or.jp/geiron/morishita/1/#c50

【水産庁・森下丈二 参事官

一言でいえば,世界の海の中にはクジラと漁業が競合している可能性がある
ホットスポットがあるらしいというのが,もっとも正確ないい方だと思います。

捕鯨をめぐる議論の中では,日本が,「クジラが世界中で漁業資源を食べつくしているから,
間引きしてしまうべきだ」と主張しているように言われたり,逆に,「南極海ではクジラは
オキアミしか食べていないので,(世界中で)漁業との競合はない」という単純化された反論が
行われたりしていますが,両方とも極論です。

捕鯨問題ではしばしばこのような単純化された,白か黒かといった主張が行われ,
不要な対立を生んでいます
。】

ならば、IWCホガース議長の提案を蹴るのではなく、真摯な態度で妥協点を探ってほしい。
そして日本国内の捕鯨賛成者に対しても、極論を言わないように要請すべきだ。

ただ、【日本が,「クジラが世界中で漁業資源を食べつくしているから,間引きしてしまうべきだ」と
主張しているように言われ】 という表現は、反捕鯨派が極論を言っていると、宣伝する意図がある。

捕鯨サークルは、常に日本が正しいという前提で話をするので、調査捕鯨は科学ではなく政治なのだ。

追記(3月1日):
水産庁の森下氏は、「クジラ食害論」というウソを利用しているのは反捕鯨派と言っているが、
捕鯨賛成派でも、クジラが漁業を圧迫していることを子供たちに教えているから、批判すべきだ。

例えば、「ウーマンズフォーラム魚」のクジラキャンペーンでの、子供の感想を引用しよう。
http://www.wff.gr.jp/camp.html

【クジラは人間がとるより多くの魚を食べるから、クジラがかわいそうだといって
とらないのもよくないことがわかった。】

【クジラはかわいそうだけど、クジラが増えると漁師さんが困るから、
ちょっとは減らさないといけないなぁと思いました。】

(最終チェック・修正日 2009年03月01日)

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