2009年06月

日本では特にニュースになっていないようだが、サノフィ・アベンティスが発売している
インスリンアナログ製剤のランタス(Lantus)に、発がん性の疑いがあるという論文が出て騒ぎになっている。

英語とドイツ語の報道は例えば次の通り。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601085&sid=aEiby7t0.yXc
http://www.sueddeutsche.de/,ra16l1/wissen/126/476635/text/

日本経済新聞では、海外市況のニュースの一部で取り上げている。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCWU1794.html

【医薬品株では、仏サノフィ・アベンティスが8.1%安となった。

クレディ・スイスのアナリストらは、サノフィの主力製品である糖尿病治療薬、持効型のインスリン製剤
「ランタス」の安全性に対し懸念が指摘されているものの現時点では情報が乏しいことから、業績や
バリュエーションの見通しに変更を加えることなく、投資判断を「アウトパフォーム」で据え置くと述べた。

サノフィ・アベンティスの広報担当者は、7万人の患者を対象に実施した臨床試験の結果に加え、
市販後調査のデータは、「ランタス」の安全性を裏付けていると述べた。】

サノフィ・アベンティスのプレスリリース(日本語)は次の通り。
http://www.sanofi-aventis.co.jp/live/jp/medias/E466ED3D-CB90-4FF8-AEA0-C7D529FA0CE9.pdf

フランス語および英語でのプレスリリースが正式とのことなので、英語版も引用しておこう。
http://en.sanofi-aventis.com/binaries/20090626_lantussafety_en_tcm28-25435.pdf


ランタスを使用している況薪鎤病患者の調査結果が、専門誌 Diabetologia に掲載されることになった。
その論文では、ランタスに発がん性の疑いがあるため、調査を継続すべきだと研究者が指摘している。
この悪いニュースのために、株価が急落したわけだ。

専門誌 Diabetologia には、29日火曜日に論文が出るはずだったのに、その前に情報が流れたようだ。

Diabetologia 編集部のコメントや論文などは、以下のリンクにまとめられている。
これだけ騒ぎになっているためか、論文は無料ダウンロードできる。
http://www.diabetologia-journal.org/cancer.html


疫学調査は専門ではないので、ここでは論文の内容を検討することはしない。
代わりに、ランタスに関する報道についてメモしておきたい。

日本糖尿病協会では、6月30日に次のように冷静な対応を求めている。
http://www.nittokyo.or.jp/kinkyu_lantus.html

【このほど、ヨーロッパ糖尿病学会(EASD)の学術雑誌に、インスリン製剤のひとつであるインスリン
グラルギン(商品名:「ランタス」(サノフィ・アベンティス社製)以下ランタス)について、
がんとの関連についての一連の論文が発表されました。

そのなかで、がんの頻度が高くなるという報告とそうではないという報告があり、
ヨーロッパ糖尿病学会では、「これらの研究について、現段階では何も結論は出ていない」としています。

これらのことから、現在治療でランタスを使用している方は、今回の情報が出たからといってインスリン
注射量を自己判断で変更したり、注射そのものをやめたりすることは決してしないでください。
ご自分のインスリン治療に不安がある場合は、ぜひ主治医にご相談ください。

日本糖尿病協会では、糖尿病の治療でインスリン注射をしている方がいたずらに不安を持つことの
ないよう、厚生労働省や日本糖尿病学会と連携しつつ、この件に関して今後も正確な情報を提供して
いきます。

厚生労働省からは正式な報道発表はないものの、日刊薬業の取材には答えている。
「もう少し情報収集をして冷静に判断する必要がある」そうだ。
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/gyosei/article/1226551518109.html?pageKind=outline

終チェック・修正日 2009年07月05日)

私は試験が嫌いだ。
より正確に表現すると、試験対策のために勉強しているという意識が嫌いだ。

私はひねくれ者なので、試験が近づけば近づくほど、試験とは無関係のことを始めてしまう。

共通一次試験直前には、中国のラジオ放送局、中央人民広播電台の開始アナウンスを書きとっていたり、
NHKドイツ語講座の復習をしたり、天体観測をしたりと、気分転換を超えるもので親を心配させたものだ。

そして今日は、ほぼ10年ぶりにドイツ語技能検定(新2級)を受験した。
会場が獨協大学ということもあり、ほとんどが学生だった。
獨協大学ドイツ語学科の学生なのだろう。

あいまいな部分は残ったが、旧2級よりはレベルが低く設定されていることもあり、7割以上はできたと思う。

旧2級は、ドイツ留学から帰国して6か月後に受験したが、一次通過のみで、二次面接で不合格となった。
帰国後は夜中まで実験させられて、ドイツ語を復習する時間が全くなかったことも原因だ。

まあ、独学だけでは気づかないことを確認する意味で受験するので、合格という結果にこだわりはない。


今回の新2級の問題は、前回と同様の形式となっている。
筆記試験は80分で、問題の構成は以下の通りである。

問題1は、名詞の複数形、動詞の不規則変化、語順、読むときの区切り。
問題2は、空欄に入る前置詞を選択。
問題3は、二つの文がほぼ同じ意味になるように空欄に入る一語を書く。
問題4は、空欄を埋める語を選択。
問題5は、文章の内容に合う文を選択。
問題6は、長文読解。
問題7は、会話文で、空欄に入る文を選択。

聞き取り試験は、会場のオーディオ設備が良好だったこともあり、ストレスもなく集中できた。
まだ体が覚えているのか、2級のレベルならば練習していなくても理解できた。
ただ、自分では聞き取りができたと思っているが、勘違いしているかもしれない。
どんな試験でも100%は無理なので、いくつかあいまいな解答は残ってしまうものだし、まあいいか。


ドイツ語検定2級を持たなくても、ドイツ政府の報告書や書籍などの翻訳で収入を得ているのだから、
これまでの翻訳経歴の方が、ドイツ語能力を証明するものとして有効かもしれないが。

それにしても出題者が文系だからなのか、今回も自然科学系の文章は出てこなかった。
ドイツは環境先進国なのだから、環境問題関連の長文くらいは出してほしいものだ。


検定試験は終わったので、翻訳がなければ、ノルウェー語とアイスランド語の勉強を再開しよう。
もし捕鯨のニュースが続くようならば、アイスランド語に集中しようと思う。

erwirtschaften
他 (h) うまくやりくりして手に入れる<達成する>

33 Milliarden Euro Umsatz hat Deutschland im Jahr 2007 mit der Nanotechnologie erwirtschaftet,
mehr als 60.000 Arbeitspl??tze h??ngen inzwischen davon ab.
「ドイツは330億ユーロの売上を2007年にナノテクノロジーによって達成し、
6万を超える雇用がこれまでにナノテクノロジーに依存している。」
("Nanotechnologie: Warten auf den St??rfall", ZEIT ONLINE, 25.06.2009,
http://www.zeit.de/2009/27/N-Nano?page=all

weder
((ふつう weder ... noch ... の形で)) …でもなく(…でもない)
2 ((副詞的:主語を同じくする文と文を結んで))

Die Wissenschaftler haben weder eine Erkl??rung f??r die Herkunft der Eisenkerne,
noch verstehen sie, wie die Teilchen ihre lange Reise durch das Weltall ??berstehen k??nnen.
「科学者らは鉄原子核の起源について理由がわからず、その粒子が宇宙空間の長い行程をどのように
もちこたえることができるのかもわかっていない。」
("KOSMISCHE STRAHLUNG: Eisenkerne aus dem All", astronews.com, 24. Juni 2009,
http://www.astronews.com/news/artikel/2009/06/0906-034.shtml

明日はドイツ語技能検定2級の試験だが、試験のために丸暗記するのは、私の主義ではないので、
今日もまた、自分が興味を持つドイツ語記事を読んで、そこで出会う単語や文法を確認している。

自然科学系の研究を紹介する wissenschaft.de というサイトを見てみると、
口臭原因菌の活動を抑制する物質が、コーヒー抽出物中に存在しているそうだ。
http://www.wissenschaft.de/wissenschaft/news/304737.html

イスラエル・テルアビブ大学のメル・ローゼンバーグ教授(Prof. Mel Rosenberg)の研究グループは、
コーヒー抽出物に唾液を加え、生成する気体物質・悪臭物質の検出を試みた。

世間では、「朝一番にコーヒーを飲むと口臭がきつくなる」 とも言われており、
特にミルク入りコーヒーを飲むと、口腔細菌がミルクの成分を分解して口臭が発生するとされている。

そこでまずはミルクなし、つまりブラックコーヒーではどうなるのか、データを取る必要があるわけだ。

ところが、予測とは逆に、悪臭は全く発生せず、代わりに心地よい香りを感じる結果になったという。
この結果からローゼンバーグ教授は、何か抗菌活性のある物質が含まれていると推測している。
具体的な化合物は単離されていないものの、口臭予防製品などへの応用が期待されている。

この発見を伝える、テルアビブ大学の記事は次の通り。
http://www.aftau.org/site/News2?page=NewsArticle&id=9909

ローゼンベルク教授自身のHPは次の通りで、口臭・体臭の研究をしているようだ。
http://www.melrosenberg.com/

日本でも 「ドクターメル」 と呼ばれ、自身が開発した靴の消臭スプレーや
口臭対策歯磨き粉の「Breath Refresher」 が、通販で人気のようだ。

【ドクターメルが開発の「ブレサノールTM」配合で長時間効果持続! くさ~い口臭とサヨナラ!】
このような文句を見ると、うさんくさい雰囲気がどうしてもしてしまうが、効果はどうなんでしょうね。

昔から飲まれているコーヒーなのに、21世紀になって新事実が発見されるのだから、科学は面白い。

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