2012年01月

私の勤務先では、国内開催の学会や講習会・講演会であれば、年に最低1回は本人の希望通りに出張できる。
ただし、会社負担の海外出張は役員のみなので、私が希望しているドイツでの国際会議参加は、全額自己負担になる。
まあ、ドイツの知り合いを訪ねる個人旅行も兼ねているので、自己負担の方が気楽でいい。
ドイツに行きたいのは、ANAが導入したボーイング787に乗るためでもある。

1週間分の旅費と学会費用は、夏のボーナスで十分にまかなえる。
ただしその分、投資に回す資金が減るので、代わりに翻訳案件をたくさん受注したいものだ。

昨年は1月にドイツ語和訳を1件納品した4万円強の収入だけだった。
あの東日本大震災後に、翻訳会社からの問い合わせ数が激減した。
クライアントの予算の都合なのか、納期がより厳しくなり、ワード単価の引き下げ要求もあり、相見積もりで他社に奪われることもあった。
期待していた外資系メーカーの翻訳プロジェクトも、社内システム環境の見直し作業のために一時中断してしまった。

その外資系メーカーからの連絡を待っていたところ、短い案件であったが、A社からは日英翻訳のチェッカーを、B社からは独日翻訳をほぼ同時に依頼された。
A社の案件は、ネイティブが翻訳した英文について、化学専門家から見て添削するものだ。
これは時間がかからないだろうから、B社のドイツ語和訳を同時受注しても大丈夫だと判断した。

2件合わせて、源泉徴収後は1万円強の収入と少ないが、空港税の支払い分にはなりそうだ。
A社はチェッカーの仕事なので、英訳が届くまで待つことになるから、当然ながらB社のドイツ語和訳を先に始めた。
日本では販売されていない、機能性エコ洗剤の製品紹介である。
消費者向けの宣伝資料なので、言葉遣いは、「○○をご存知ですか?」のように、ですます調が基本である。

最近は日本でも多機能洗濯乾燥機が増えたが、ドイツの洗濯機では温度設定10℃単位だったり、洗い方の選択肢がやたらと多い。
そのためか、「デリケート衣料モードで温度は20℃から40℃の範囲」などと、一番性能を発揮する使用条件が書いてあった。

ワード数は約650なので短いものの、その洗剤メーカーのHPでエコラベルのことや、容器キャップの容量なども確認した。
認証したNGOの報告書や、「計量キャップの半分(15 ml)」という部分を確認するため。



A社の英訳チェックは簡単だろうと思っていたら、全部訳し直した方が早いほど、ひどい英文だった。
最初は日本人が書いたと思って問い合わせたところ、医学系のネイティブが英訳したものだという。
このままでは困るので、化学系のネイティブを探してもらい、その英訳ができあがるまで、B社のドイツ語和訳を納品することにした。

そしてまともな、ネイティブが書いたと信じてもよい英文が届いた。
ただ、化学系学科を卒業したという経歴なのに、「原子量(atomic weight)」と「原子質量(atomic mass)」の違いを知らないようだった。
それにカンマが抜けているという基本ミスもあったので、ネイティブといえども日本人に直されるような人もいるわけだ。
日本人も同じで、社内報の原稿チェックをしていると、何を言いたいのか意味不明の文章に出くわすことがある。
やはりネイティブ信仰は捨てるべきだ。



また、「the degree of ionization of ..」のように、普通の英語ではあるが、論文形式の科学英語らしくない表現があった。
論文のスタイルとして推奨されているのは、「the ionization degree of ..」のように、語順の通りに一目でわかるようにすることだ。
他の例としては、「the dependence on temperature of ..」ではなく、「the temperature dependence of ..」の方が好ましい。

このA社の案件はトライアルということなので、今回のネイティブと私の組み合わせでクライアントが納得すれば、化学英語分野の全訳プロジェクトに採用される可能性がある。
チェッカーの単価は翻訳者よりも安いが、平日の帰宅後に短時間でこなせる副業としては魅力的だ。

2月以降も順調に受注できることを祈りたい。


追記(2月5日):
A社から、日英翻訳チェッカーのトライアルに合格したとの連絡があり、全文翻訳が決まったとのことだ。
私がネイティブの英語について、化学者の立場から本音を言ったことが功を奏したようだ。
化学分野のスケジュールが記載されていたが、生物分野は未定とのことだった。

この連絡の前に、外資系メーカーから2万7千ワードを超える英日翻訳を依頼されたので、生物は断るつもりだった。
しかし、他に誰もチェッカーがいないとのことなので、トライアルで合格した私が担当すべきだろう。
まともな英訳が来れば、同時受注でも大丈夫だと思う。

本業での実験の疲れがまだとれてないので、この土日は1時間ほど昼寝をしてしまった。
化学分野のチェックは決まったので、専門用語の確認と、英文の予測を2時間ほど行っただけ。
このチェッカーの仕事は時給制で、今日の作業により、税込み3000円の収入が確保された。

(最終チェック・修正日 2012年02月05日)

様々な化学物質を用いる実験では、毒物・劇物・危険物の知識が必須だが、悪臭対策も必要である。
快適な実験環境で仕事をしたいこともあるが、他の部屋に悪臭物質が流れ込んだり、外に漏れることは絶対に避けなければならない。
反応中には何も起きなくても、反応後の処理時にpHを間違えたりすると、悪臭がしたり、刺激性のガスが発生することもある。

ドイツでの報道によると、ドレスデン工科大学化学科の学生実験室で19日午後、無機化学の実習中に複数の学生が悪臭に気付いた。
そのうち一人が、めまいと吐き気を訴えたため、病院に搬送された。
何が起きたのか、何が発生したのか不明だったが、ニンニク臭がしたという証言と、その学生の症状から、毒性のヒ化水素が発生したと思われたため、化学棟から全員退去し、学生実験室にいた学生も念のため救急手当てを受けた。

この事故発生後の、1月19日時点でのドイツ語報道をいくつか引用しておこう。
www.sueddeutsche.de/panorama/tu-dresden-mehrere-verletzte-nach-chemieunfall-1.1262494
www.spiegel.de/panorama/0,1518,810247,00.html
www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5hn27A10vVnL0Q1CFG-5sOAqE_YUw

ところが、警察と消防隊の現場検証では何も痕跡が出なかったため、悪臭ガスが一体何だったのかは20日時点でも不明のままだ。
学生が病院に搬送されたものの、健康被害は
特に見られなかったというプレスリリースを、ドレスデン工科大学は発表していた。
また、悪臭騒ぎのあった学生実験室は刑事警察の捜査のために閉鎖されているが、化学棟のその他の場所では、退去措置は解除されている。
tu-dresden.de/aktuelles/newsarchiv/2012/1/chemieneubau/newsarticle_view
tu-dresden.de/aktuelles/newsarchiv/2012/1/chemieneubau/newsarticle_view
現時点では、その悪臭ガスについて不明というのが公式見解だが、ヒ化水素はありえないという報道が20日に出てきた。
以下に引用した報道は、「事故はなかったのではないか?」という主旨のものである。
www.mdr.de/nachrichten/chemieexperiment100_zc-e9a9d57e_zs-6c4417e7.html

ドレスデン工科大学で無機化学を研究している Michael Ruck 教授は取材に対して、「第1セメスター(第1学期)の学生実験で、ヒ化水素が発生するような実験は行っていない」などと答えている。
www.chm.tu-dresden.de/ac2/ (教授の紹介ページ)

ニンニク臭という証言から、何かの実験操作ミスでヒ化水素が発生したと予測されたが、学生が感じたほどの濃度であれば、現場検証時に何も検出されなかったことは不思議である。

ということで、もう1つの可能性として、学生のいたずらが挙げられている。
「建物の外壁にニンニクをこすりつけていた学生がいた」という証言もあり、その臭いが換気システムを通じて、学生実験室内に流れ込んだのだろう。

しばらくすれば真相は明らかになるだろうから、続報をチェックしておこう。
(最終チェック・修正日 2012年01月28日)

Geraus m.
((もっぱら次の成句で)) jm. den Geraus machen ((話)) …に止めを刺す,…を殺す<破滅させる>
Bereits im Dezember 2006 hatte ein Sonnensturm die Esa-Satelliten "Cluster II", "Envisat" 
und das Gammastrahlen-Observatorium "Integral" gestört.
 Dem japanischen Satelliten3 
"Adeos-2
"
 hatte offenbar eine Eruption im Jahr 2003 den Garaus gemacht.
既に2006年12月に太陽嵐は、ESAの人工衛星「クラスター2号」と「エンビサット」、そしてガンマ線天文衛星「インテグラル」を故障させた。日本の人工衛星「アデオス2号」は明らかに、2003年の爆発で破壊された。
("Sonneneruption: Tabula rasa im All", SPIEGEL Online, 21.01.2012,
www.spiegel.de/wissenschaft/weltall/0,1518,810571,00.html

外交官や一部の大使館員には、いわゆる外交特権があり、駐車違反などの軽微な罪であれば無罪放免となることが多い。
ただし、どんな犯罪でも見逃されるというわけではなく、不適切な行為が続けば国外退去を求められることもあるし、派遣国政府が恥の上塗りを避けるために呼び戻すこともある。

ドイツの複数のメディアでは、この前の日曜日にベルリン西部の小川で北朝鮮大使が無許可で釣りをしていて、警察に注意されたことが報じられていた。
この男性は、漁業許可証だけでなく、身分を証明するパスポートすら持っていなかったが、身元照会をしたところ、本人の申告通り、北朝鮮大使と判明したため無罪放免となった。

ドイツの報道はいくつかあるが、ベルリンの Berliner Morgenpost と B.Z. から記事を引用しておこう。
www.morgenpost.de/printarchiv/titelseite/article1884584/In-trueben-Gewaessern.html
www.morgenpost.de/berlin-aktuell/article1884326/Polizei-ertappt-Botschafter-beim-illegalen-Angeln.html
www.bz-berlin.de/bezirk/spandau/nordkorea-auf-fischzug-in-berlin-article1366105.html
www.bz-berlin.de/bezirk/spandau/ruepel-diplomaten-nutzen-status-aus-article1367059.html

B.Z. に掲載された北朝鮮大使の顔写真と、釣りをしていた現場の橋(撮影:Olaf Wagner)。

また、日本語報道としては、AFP日本語記事を以下に引用する。
http://www.afpbb.com/article/politics/2852141/8336479

【…ベルリン西部のハーフェル川で、無許可で釣りをした駐ドイツ北朝鮮大使が現地警察当局に警告された。…

同国の法律は無許可で釣りをすることを禁じており、違反した場合は罰金や2年間の懲役が課せられることもある。現地警察がハーフェル川で釣りをしていた男に許可証の提示を求めたところ、身分証も許可証も所持していなかった

同警察が男に英語で法律違反行為だと告げると、男は笑顔で自分は北朝鮮大使であると答え、そのまま釣りを続けたという。…

その後の調査で男が本物のリ・シホン(Si Hong Ri)駐ドイツ北朝鮮大使であることが判明し、外交上の免責特権により、警察がそれ以上の措置をとることは出来なかった。

現地警察当局の報道官であるクラウス・アイゼンライク氏は同紙に、「外交官は人々の模範となるべきだ。犯罪をおかしても罰せられないとは、市民は納得がいかないだろう」と語った。

同紙は「リ大使が魚を釣って夕飯用のメニューに加えようとしていたのか、ただ楽しんでいたのかは分からなかった」としている。】

外交的配慮なのか、対応したノルトライン・ヴェストファーレン州の警察のHPには、何も掲載されていない。
www.gdp.de/gdp/gdpnrw.nsf/id/Home_de

AFP日本語記事でも、事件の概要把握はできるが、ドイツ語記事から少し補足をしておこう。

引用した写真にある橋は、リ大使(53歳)のお気に入りスポットで、以前から無許可のままで、何度も釣りをしていたという。
警察に発見されたのは15日14時頃で、その時点では「自称」北朝鮮大使だったが、その後の身元調査で本人と確認された。
一般人ならば罰金200ユーロを払うことになるが、外交特権を持ち出されてしまい、結局は無罪放免となった。
B.Z. が、ベルリンの北朝鮮大使館に電話取材をしたところ、「ジャーナリストは不快だ」と言われたそうだ。

無罪放免となったわけだが、警察は違法行為の現場を押さえ、そして身元照会もしたので、書類作成という事務作業を、ドイツの税金を浪費して行うことになった。
書類の件名は、「大使(朝鮮民主主義人民共和国)による密漁」で、この件についてドイツ連邦外務省に報告した。

この密漁事件が、北朝鮮の新体制を揺るがすことはないが、外交特権を悪用する大使館関係者は他国でも同様に見られる。
サウジアラビア大使館員はオイルマネーがあるはずなのに、病院から請求された治療費について、何と支払い拒否をしている。

特に多いのが交通違反で、駐車違反、飲酒運転、速度違反が大半を占める。
ほぼ泥酔状態のロシア外交官が、駐車車両5台に突っ込んだこともあるし、韓国外交官がアルコール検査で運転不可と指摘されたのに、そのまま運転して立ち去った例などが報告されている。
2010年の罰金総額は、ベルリンだけで15万ユーロを越えて、これまでの記録を更新したほど危険な状況だ。

日本の大使館員は出てこなかったが、彼らは代わりに家賃の高い広い家に住み、ワインや高級調度品の買付などで税金を浪費しているはずだ。

外交官の目に余る行為が目立ち、外交特権のはく奪もできないため、ドイツの政治家の中には、「外交官は目の上のたんこぶ」と呼ぶ人もいる。
受け入れ国の法律を尊重してほしいと、派遣国政府に要請することしかできないようだ。

そう言えば10年くらい前、東京駅前の横断歩道上に外交団ナンバーを付けた大型車が2台駐車して、私の進路を妨害した。
その車から出てきたドライバーに、「ここは横断歩道だ。すぐにどけ。」と何度も怒鳴ったが、「Sorry。すぐ行く、すぐ行く」と答えるのみで無視された。
いくら外交特権があっても、受け入れ国の市民に不愉快な感情を植え付けることは、外交官として失格ではないのか。

nach|regeln
他 (h) 調整しなおす,調節しなおす

nach.. ((主として分離動詞の前つづり;つねにアクセントをもつ)) 1 ((時間的)) c) ((点検・コントロールの意味が加わって)): nachzählen 数えなおす

regeln 他 (h) 規制<整理>する,制御<調整>する

nach|stellen I 他 (h) 3 (時計の針を)遅らせる → 過去の「うるう秒」は追加のみだったため、同義とみなせる
Doch zuletzt hatten sich mehrere Länder, darunter die USA und Frankreich,
für die Abschaffung der Schaltsekunde stark gemacht. Sie führen vor allem an, 
dass weltweit Computer manuell
 nachgeregelt werden müssen.
しかしついに、アメリカとフランスを含む多数の国々が、うるう秒の廃止について自信を持った。世界中でコンピューターを手動で調整しなおす必要があるということを、とりわけ引き合いに出している。

("Globale Zeitmessung: Die Schaltsekunde darf weiterleben - vorerst", Spiegel Online,
20.01.2012,
www.spiegel.de/wissenschaft/technik/globale-zeitmessung-die-schaltsekunde-darf-weiterleben-vorerst-a-810316.html
 
sich4 für et.4 stark machen
 ((話)) …のことに自信満々である;…にえらく肩入れしている

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