2012年04月

30年以上前、小学校高学年の社会科の授業では、「とる漁業から、つくる漁業へ」ということで、水産物養殖を中心に、サケの人工ふ化などについても学んだ。

最近でも燃料費高騰に加えて、乱獲や密漁による資源量減少のため、効率的な養殖漁業が注目されている。
そして今では、山の中でヒラメやフグを養殖している事例まである。

天然産の方が身がしまっていておいしいと言われるが、グルメではない雑食性の私には、養殖ものでも気にしない。
それよりも、WWFジャパンの会員としては、自然環境に配慮している水産物なのかということに関心がある。

例えば、イオンで買い物をするときは、海のエコラベルであるMSC認証のサケやカツオを購入することにしている。
www.wwf.or.jp/activities/nature/cat1136/cat1143/ (WWFジャパンでのMSCの説明)
www.topvalu.net/brand/csr/msc.html (イオンのMSC商品の紹介)

私は高給取りではないので、ボーナス時や翻訳料金が入った時くらいにしか買えないのが残念だ。
ということで、由来や環境配慮がはっきりしない水産物を買っているのではないかと、いつも心配してしまう。

養殖水産物についても同様に、環境配慮をした生産方式であることを認証するシステムが適用されることになった。
それはASC(Aquaculture Stewardship Council)認証で、以下のようなロゴマークが決定した。
www.asc-aqua.org/index.cfm (ACSの4月17日のニュースリリース)
www.wwf.or.jp/activities/2012/04/1057826.html (WWFジャパンでの説明)


養殖では環境保護の観点から、これまでにも様々な問題点が指摘されてきた。
WWFジャパンの説明から引用しておこう。

【…養殖産業は、一方で環境に害を及ぼすさまざまなトラブルの原因にもなることがります。*

・養殖場建設による自然環境の破壊
・水質や海洋環境の汚染
・薬物の過剰投与
・エサとなる生物(天然資源の魚などを含む)の過剰利用
・養殖された魚が病害虫を自然界に持ち込む
・養殖場から逃げ出した個体が外来生物として生態系に影響を及ぼす


さらには劣悪な労働環境のもとでこうした養殖業が行なわれているケースも指摘されており、社会的な問題にもなっています。】
(*: 下線部の脱字を補足した)

エサ用の魚の過剰利用としては最近、南太平洋のマアジの乱獲が問題視されている。
欧米先進国の他にペルーやチリといった南米関係国が、禁漁や漁獲制限といった国際ルールについて協議しても、中国やロシアが参加していないため、マアジの乱獲は続き、絶滅の危機にある。

また、養殖場から逃げ出した例の一つとして、日本では霞ヶ浦のアメリカナマズを挙げておこう。
国立環境研究所の解説は次の通り。
www.nies.go.jp/kanko/news/20/20-4/20-4-02.html

現時点では、ティラピアとパンガシウスの認証条件設定が完了しており、申請を受け付ける準備が整っている。
早ければ今年の夏にも、ASC認証ティラピアが、ヨーロッパで販売されるそうだ。

日本の養殖業者もASC認証の取得を目指してほしいものだ。
ただし、ASCの設立にもWWFが関与しているため、
MSC認証のときのように、国内水産関係者の一部が反対して、日本独自のエコラベルを作るかもしれない。
今後の動きにも注目しよう。
 

データベース翻訳の推敲は5月に始めることにして、4月中はこれまで保留していた外国報道のチェックをしている。
外国語(英語・ドイツ語・ノルウェー語・アイスランド語)を読むので、頭は疲れるかもしれないが、翻訳の仕事ではなく趣味で読むので、気分転換になるからよいだろう。

日本の南極海調査捕鯨(実質的商業捕鯨)が終わると、次は北大西洋でのノルウェーとアイスランドの商業捕鯨が話題となる。
シーシェパード(SSCS)の妨害行為で、日本の鯨肉在庫が足りなくなると予想され、両国が日本への輸出を狙っているとの噂も聞く。


ノルウェーはミンククジラのみを捕獲しており、捕獲枠は3年連続で1286頭に設定している(2月17日発表、ノルウェー語のみ)。
ノルウェー政府の主張では、科学的根拠に基づく持続可能な捕獲枠とのことだ。
www.regjeringen.no/nb/dep/fkd/pressesenter/pressemeldinger/2012/kvote-for-fangst-av-vagekval-i-2012.html

しかし、ノルウェー国内の消費低迷や燃料費高騰などの影響で、この捕獲枠の半分程度しか獲っていない。
ということで環境保護団体やクジラ保護団体は、アイスランドのナガスクジラ捕鯨にターゲットを絞って活動をしているようだ。

アイスランドの商業捕鯨だが、昨年も実施されたミンククジラの捕鯨は、4月開始予定と報道されていた(政府発表なし)。
去年の鯨肉販売は好調だったので、今年の捕獲枠216頭は、天候次第では達成可能かもしれない。

www.icelandreview.com/icelandreview/search/news/Default.asp

クジラ・イルカ保護団体のWDCSの調査では、4月28日に最初の水揚げがあったと報告されている。

www.wdcs.org/news.php

実際にアイスランド国内の報道でも、写真付きでミンククジラ1頭の捕獲が確認できる。
www.visir.is/hrefnu-landad-a-isafirdi/article/2012304279963 

ミンククジラよりも、昨年中断したナガスクジラの捕鯨の再開の方が大きく取り上げられている
保護団体はナガスクジラを絶滅危惧種と主張しているし、日本への輸出目的で捕獲することを違法だとも主張しているからだ。
skessuhorn.is/default.asp (アイスランド語)
grapevine.is/News/ReadArticle/Iceland-Set-To-Hunt-Fin-Whales-Again
www.wdcs.org/news.php

アイスランドでナガスクジラ捕鯨をしているのは Hvalur hf. 一社だけで、Kristj?n Loftsson 社長は日本の需要動向を見て、今年は捕獲再開を決めたようだ。
予定では捕獲枠内の150~170頭になるとのことだ。
ただし Loftsson は、夏から捕鯨再開するという、Skessuhorn 紙の報道を否定しているそうだ。

昨年2011年は、捕獲枠が設定されていたものの、ナガスクジラ漁は中断していた。
これはEU加盟交渉とは無関係で、2010年捕獲分の冷凍肉が残っていたことと、東日本大震災の影響で日本国内での需要が減ったと判断したからである。
1年以上前の冷凍鯨肉も残っている、という報道は次の通り(輸出量が間違っていることに注意)。
grapevine.is/News/ReadArticle/Years-Old-Whale-Meat-Remains-Unsold

2011年は捕鯨はしていないものの、日本への冷凍ナガスクジラ肉輸出を6回行い、合計で約941トンであった。
肉の部位や品質が違うのか、日本の取引先が毎回変わるのか、価格はキロ当たり約500円から約1100円までまちまち。
2012年は1月と2月に連続して、約130トンずつ輸出しているが、価格には約4倍の開きがある。
4月30日に更新された統計では、3月の輸出量はゼロであった。

それはともかく、SSCSの妨害により、2年連続で南極海調査捕鯨での捕獲頭数が激減したため、日本では鯨肉が足りなくなると予想しているようだ。
それで在庫の輸出だけではなく、捕鯨も再開して対応しようということかもしれない。

6月頃に始まると思われるので、その頃に報道を再チェックしておこう。


追記(5月8日):
アイスランド国内メディアでは、ナガスクジラ漁の再開を断念するという報道がされている。
www.ruv.is/frett/langreydar-ekki-veiddar-i-sumar (アイスランド語)
grapevine.is/Home/ReadArticle/Fin-Whale-Hunt-Likely-Canceled (上記リンクの記事を紹介した英語記事)
 
Kristj?n Loftsson 社長は日本側バイヤーとの交渉を続けていたが、震災の影響で日本国内での鯨肉需要が回復していないため、予定していたナガスクジラ捕鯨を再開しないとのことだ。

2010年に148頭を捕獲して冷凍保管していたが、2011年は1頭も捕獲せずに輸出のみであった。

まだ在庫があるので、今年も輸出だけになるかもしれない。
既に1月と2月に、約130トンずつ輸出している。

「日本国内での鯨肉需要が回復していない」という言葉が、捕鯨業者と鯨肉取扱業者から出ているが、アイスランド産ナガスクジラ肉の品質が悪いためなのか、それとも日本での鯨肉需要が低迷したままなのか、本当の理由は部外者にはわからない。

追記2(5月12日):
様々な事情でナガスクジラ漁は中止になったと報道されたが、保護団体のWDCSは信じていない。
www.wdcs.org/news.php

以前も、捕鯨をしないと一度発表したのに、しばらくして覆したことがあるからだ。
ということで、7月くらいまではアイスランドの報道をチェックした方がいいだろう。

追記3(6月2日):
ナガスクジラ漁はしていないが、日本への輸出は継続している。
3月はゼロだったものの、4月にはいつも通りに約130トンの冷凍ナガスクジラ肉を輸出している。
在庫がなくなるまで、捕鯨はしないのかもしれない。

(最終チェック・修正日 2012年06月02日)

外資系メーカーのデータベース翻訳が一通り終わったので、少し休憩して、推敲は5月の連休にまとめて行うことにした。
ということで、翻訳作業中に録画しておいたテレビ番組を観たり、様々なニュースをまとめて読んでみた。

石原都知事の挑発的で下品な発言は、私にとっては無意味で何も学ぶものがないため、本音では無視したいところだ。
ただ、私が望む自由で民主的な社会の実現に対して、害悪となる発言が多いので、記録の意味で取り上げておこう。

最近の尖閣諸島買い取りや、南京大虐殺に関する発言が話題となっているが、今回はオリンピック招致活動を推進しているはずの石原都知事が、種目にあるバスケットボールが嫌いだということをメモしよう。

4月6日の定例記者会見での発言では、スポーツ振興や子どもたちの夢など念頭になく、ただ個人的感情を下品に吐き出しているだけだ。
こんな都知事がいるのでは、オリンピック招致を成功させようと言われても、誰も信用しなくなるだろう。

会見テキスト版のリンクは次の通り。
www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/TEXT/2012/120406.htm

【…
【記者】日本プロバスケットボールリーグのbjリーグというバスケットリーグがあるんですけれども、その東京のチームが去年の東日本大震災で解散に追い込まれました。子供たちにバスケットの魅力を伝えたいと、今年の10月から始まる新シーズンで名前を変えて、新しいチームとして復活することになりましたけれども、東京をスポーツで盛り上げたいとするこの新しいチームに、知事からのメッセージをお願いします

【知事】バスケットなんて見たことがない、この頃。ちっとも面白くないよ、あんなの。背の高い奴だったら、バスケットに興味持つんだったら、バスケットの高さを50センチとか30センチ高くしたら良いんだよ。そうしたら、どんな大男でもダンクシュートができない。

IOC(国際オリンピック委員会)っていうのはかなりいろんな問題があって、背の低い日本人とかシナ人とか、とにかく東洋系の人間の方がピンポン強いから、ピンポンの台を少し高くしようと言い出したことがあった。彼らは平気でそういうことをやる。オリンピック種目じゃないけど、F1なんかも、ホンダのエンジンが強いとそれを抑制するためにルールを勝手に変える。だから何も、あんな大男の、白人とか黒人ばかりがスターになる、シナ人だって、とんでもなく大きな男がスターになる、ただ大きいだけなんだから、あんなもの。だったら大きな人間でも通用しないみたいに、腕の力が強くてシュート力のある人間が正確に得点できるみたいに、バスケットのかごをあと50センチ高くしたら良いと思いますよ。それなら私はファンになるけどね。ということ。】

ゲームを観る気がないのだから、ダンクシュートが高身長選手だけの特技と勘違いしている。
スポーツニュースなどで取り上げている、豪快なシーンだけが印象に残っているのだろうか。
ダンクシュートは派手であっても、得点は2点で変わるわけでもないし、一つ間違えばオフェンスチャージを取られるリスクもある。

身長の話になったためなのか、日本人など東洋人が世界の中で不利な立場に置かれていると、好き勝手なことを言っている。

最後に、シュート力がある選手に有利なルールにしろと言っているが、嫌いで観ていないから、3点シュートを知らないわけだ。

記者が質問した東京のバスケットボールの新チームは、「東京サンレーヴス」として、来シーズン(2012-2013)からの再出発を目指している。
tokyo-probasketball.com/

東京がホームのチームなのに、しかも東京都が推進する「武蔵野の森総合スポーツ施設基本計画」で建設されるアリーナに入る予定なのに、都知事が市民の努力を全く顧みないのは、残念と言うよりも、東京都民がかわいそうだ。
www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2010/08/70k89100.htm (基本計画の概要) 

2020年夏のオリンピック・パラリンピックの招致が失敗することを望む人たちは、この都知事の下品な態度を利用してはどうだろうか。

Vergleich m. -〔e〕s/-e
2 [法] 和解,和議 einen Vergleich schließen 和解する,和議を結ぶ

Mehr als 10.000 Nutzerinnen der Pillen haben in den USA Klage eingereicht - wegen der erhöhten
Thrombosegefahr. In einigen Fällen soll sie auch tödlich gewirkt haben. Mit Hunderten Klägerinnen
hat Bayer nun Vergleiche geschlossen.
その避妊薬の使用者1万人以上が、血栓症リスクが高いことを理由に、アメリカで訴訟を起こした。いくつかの症例では、避妊薬が致命的な影響を与えたとされている。そのためバイエル社は、数百人の原告と和解した。
("Thrombosegefahr durch Anti-Baby-Pille: Bayer zahlt 107 Millionen Euro an Klägerinnen",
SPIEGEL Online, 27.04.2012,
www.spiegel.de/wissenschaft/medizin/0,1518,830239,00.html


Klage f. -/-n 3 [法] a) 訴え,訴訟 gegen jn. eine Klage 〔bei Gericht〕 einreichen …を相手に訴訟を起こす

2月下旬に始めたデータベース案件は大量であり、2か月経過してやっと、残り約500ワードとなった。
この案件では、原文にスペルミス以外にも様々な間違いが見つかったため、引用文献を確認するなどの調査が増えた。

調べてみても、キーワードをつなげただけのような英文や、前置詞などが欠落している不完全な英文は、和訳不可能として保留することになった。

推敲する時間を入れると、当初予定していた連休前の納品が厳しくなった。
今回は依頼元のデータベース自体に不備があるということで、納期を延ばしてもらい、連休中に訳文の見直しをすることにした。
つまり本業は休みでも、副業は連日営業ということになる。

それでも連休前には仮訳が終わりそうなので、今日の休憩時間はソファーに寝転んで、auひかりTVでナショナルジオグラフィック・チャンネルを観た。
先月観たドキュメンタリーの再放送なので、わざわざ観なくてもと思われるかもしれない。
ただ、字幕の誤訳が一つあることを指摘したので、修正されたことを実際に確認したかった。


第二次世界大戦での連合軍のドイツ爆撃作戦についての番組で、爆撃機の進路が間違っていたことに気付いた。
英語では「.. headed to east.」だったが、日本語字幕では「..西に向けて」となっていた。

この番組は同時録画をしていたので、放送終了後に再確認してみると、やはり字幕の和訳が間違っていることが判明した。

そこでナショナルジオグラフィック・チャンネルに対して、問い合わせメールを送って調査してもらった。
回答まで2週間ほどかかったものの、私の指摘通りに誤訳であることが判明し、再放送時までに修正するとのことだった。
そして本日の再放送を確認すると、修正後の和訳である「東に向けて」になっていた。

イギリスの空軍基地を離陸した爆撃機がドイツを空爆するのだから、進路は東に決まっている。
だから英語のナレーションを確認しなくても、「西に向けて」という誤訳・誤記は、日本語原稿だけでも気付くはずだ。

実際の字幕翻訳は、番組最後に表示されるように、有限会社ワンダフルライフに委託している。
www.wonderfullife.co.jp/index.html

ただ、委託先が誤訳・誤記に気付かなかったとしても、日本語版監修の最終責任は、ナショナルジオグラフィック・チャンネルを運営しているFOX JAPANにある。
www.ngcjapan.com/global/company/


専門知識を持つプロの翻訳者が作業していても、このように単純なミスをしてしまうのだ。
それに納品前後のチェックでも見逃されることがあるのだ。
私も自分の翻訳で誤訳をしないように、そして推敲に時間をかけて、まともな翻訳を納品するように、注意深く作業したい。

ナショナルジオグラフィック・チャンネルの番組では、日本語吹き替え版でも、誤訳が見つかっている。
天文学関連の番組で、「青色巨星」であるオリオン座のリゲルが、ナレーションでは「赤色巨星」になっていた。
これも連絡したので、今後の再放送では修正版となることだろう。

さらに例を挙げると、北大西洋の火山活動の話をしているのに、「アイスランド」のはずが、「アイルランド」と言っていた。
これは国名の勘違いとして、よく例示されるものだが、このようなケアレスミスはなくしてほしい。

また、「放射性物質の崩壊」のはずが、「放射性物質の劣化」と言っていた。
英語版では「decay」だと思われるが、この単語は複数の意味を持つ。
他の単語でも意味が複数あるのは普通のことだから、分野ごとに専門用語の確認が必要だ。

翻訳者を目指す人は多いし、翻訳スクールも日本中にあるが、いくら優秀な人材を育成しても、誤訳というものは根絶できないのだろうか。


追記(4月28日):
データベース翻訳がやっと終わったので、推敲は5月の連休中にすることにして、録画していた番組を観た。
ナショナルジオグラフィック・チャンネルで先週放送していた、ホロコースト関係の番組だ。
死体の山が何度も出てきて緊張するが、ドイツ語翻訳者としては、このようなドイツの負の面も知っておくべきだろう。

ところでこの番組の字幕では、「forenstics team」を「化学捜査班」としていた。
強制収容所のガス室の話も出ていたので、「化学」でもかまわないと言う人もいるかもしれない。
ただ、気になったので戻って英語アナウンスを再確認した。

ここは「科学捜査班」としてほしいので、メールで修正依頼をしておいた。

(最終チェック・修正日 2012年04月28日)

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