2016年09月

昨年12月に、私が活動しているプロテスタント教会に所属する神学生から、ドイツ語の神学論文を読めるようになりたいと相談があった。
いきなり論文は大変なので、1年くらいかけて、月に1回ずつ、ドイツ語文法の勉強会をすることにした。

日曜日の教会は様々な奉仕があるので、ドイツ語学習に使える日は、月に1回しかない。
3回やってみたものの、神学生はいろいろと忙しいので、今年5月以降は中断していた。

そして10月から再開したいとの要望があったので、翻訳の仕事の合間に、少しずつ資料を作っている。
初級文法の学習を続けながらも、目標設定となるように、中級レベルの資料も合わせて説明する予定だ。

テキストは、神学生の希望により、「英語と一緒に学ぶドイツ語」(宍戸理佳・ベレ出版)を使っている。
自習用になると思って選択したものの、到達度を確認していないので、再開しても話が通じるかどうか不安である。

ということで、1997年度のドイツ語検定4級の試験問題から、筆記試験の前半部分(問1~問5)を指定して、10月2日までに、テキストを見ながらでも解くように宿題を出した。

わざと新正書法になる前の問題にしたのは、古い文献も読むために、今のうちに慣れてほしいからだ。
大変そうだが、指定した問題に出てくるのは、動詞 essen の現在人称変化のみなので大丈夫だろう。
とりあえず、この問題への取り組みを見てから、今後の学習方針を決めようと思う。

中級レベルの資料とは、ハイデルベルク信仰問答の問1である。
16世紀のドイツ語は大変なので、1997年に改訂された現代ドイツ語版の新正書法版(2012年)を使うことにした。

和訳は既に公開されているものの、語義や文法の解説と共に、私訳を示して、神学生のモチベーションを喚起しようと思う。

例えば、問に出てくる前置詞 in の説明は次の通り。

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Frage 1 Was ist dein einziger Trost im Leben und im Sterben?

問1 生きているとき、そして死に向かうときに、あなたに希望を与える唯一の慰めは何ですか。

im = in dem の融合形。
in 前 ((位置を示すときなどは3格支配、方向を示すときなどは4格支配)) (前置詞の格支配はテキスト146ページ) 
3 ((時間的)) a) ((時点を表す語と)) …〔のうち〕に: 〖3格と〗im entscheidenden Augenblick 決定的瞬間に | im Herbst 秋に

im Leben は「生きている間」。im Sterben は「死ぬとき」としてもよいが、「死ぬ瞬間」というよりも、ある程度の広がりをもった時間として「死に向かうとき」と考えた方がよい(英語ではbe dying)。

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前置詞の格支配を説明するか、それとも名詞の格変化を復習するのか、その日の様子で判断しよう。

an|spielen
II 自 (h)
2 ((auf jn. <et.4>)) (…のことを)ほのめかす,あてこする

Der Physiker Stephen Hawking und weitere 375 Wissenschaftler haben in einem offenen Brief 
vor einem Scheitern des Pariser Klimaabkommens gewarnt. Sie spielen mit ihrer Warnung 
deutlich auf den US-Präsidentschaftskandidaten4 Donald Trump an, der angekündigt hat, 
im Falle seines Wahlsiegs aus dem 2015 in Paris verhandelten Klimaabkommen auszusteigen.
物理学者スティーヴン・ホーキングほか375名の科学者は、公開書簡で気候変動パリ協定の頓挫について警告した。彼らはその警告によって、当選した場合に2015年にパリで交渉された気候変動協定から離脱することを予告したアメリカ大統領候補ドナルド・トランプに、明らかにあてつけている。
("USA: Stephen Hawking und Kollegen kritisieren Trumps Anti-Klimaschutz-Rhetorik", Süddeutsche Zeitung, 22. September 2016,
www.sueddeutsche.de/wissen/usa-stephen-hawking-und-kollegen-kritisieren-trumps-anti-klimaschutz-rhetorik-1.3173968

医療介護保険として、住友生命のWガードに加入していて、6月の見直し後は、毎月約1万8千円を払っている。
更新後は約3万1千円、更に年金受給年齢に達してからは約5万7千円となるため、確定拠出年金で貯めたお金は、全て保険掛け金に消える計算だ。
確定拠出年金が消えても、個人年金は65歳から10年間、毎年91万円以上もらえる契約だ。
しかし、長生きすると、三井住友銀行での相談では、75歳以降は資産がマイナスとなるシミュレーション結果が出た。

ということで、日本生命・みらいのチカラの提案書をもらったので、ネット保険も含めて、近くの駅前にある「保険の窓口」で、第三者的な意見を聞く予定だ。
医療介護保険を乗り換えて、トータルの支払金額を減らして、更に終身の保証を確保できるかどうか、検討したい。
加えて、現在の予定収入で、確定拠出年金の掛け金増額や、終身年金が契約できるかどうかも確かめたい。

まずは相談の準備のために、これまでの経緯と現状を確認しよう。

医薬メーカー子会社で契約社員として勤務していたときは、退職金がない契約だったため、自分で確定拠出年金の他に、民間の個人年金や積立投資で老後資金の準備を始めていた。
月の手取りは約28万円だったが、ボーナスが年間で4か月分あったので、毎年60万円程度、金融資産を増やしていった。

ただし、その子会社の解散後、派遣社員となり、1年くらい食いつないで、転職先を見つけようしていた。
ただ、通勤交通費も自腹となって、家計のやりくりは厳しくなった。
積み立て投資をやめたり、保険の見直しなどをしたものの、来年6月以降は、金融資産の売却を続けないと、赤字になる危険性が高まった。

そして、7月から翻訳専業となる決断をして、年金が足りなくても生活できるように、80歳まで働くことを考えている。
8月1日付けで個人事業主として登録して、青色申告で65万円の控除を受けて、節税しようとしている。

翻訳料金は10.21%の源泉徴収後で、7月は約11万円、8月は約50万円であり、9月の予定は約49万円である。
今後も繁忙期ならば、月50万円はありそうだが、30万円~40万円で変動するものと予測している。

翻訳業では、お金の計算の前に、品質と信頼性の確保が先で、収入は後からついてくるものだ。
ただ、生活に必要な支払いに加えて、個人保険や住民税の支払い、奨学金の返済などができるかどうか、確認が必要である。
実際の支出は、青色申告後の税額が決まってから計算可能なので、今年の支払い額を参考にして、多めに見積もっている。

ということで、2017年の予算を概算してみたところ、源泉徴収後の翻訳料金は、毎月平均で約39万円が必要と判明した。
光熱費などは多めに見積もっているし、実績では出費がゼロの項目、例えば、医療費や被服費などがあるので、約36万円あればなんとかなるだろう。
現時点で契約が有効な2社の案件で、この金額はなんとか達成できると思われる。

青色申告では、家賃(81,500円)の30%を経費にする予定なので、この節税効果でもう少し減るはずだ。
また、TradosのFreelance版へのアップグレードや、翻訳専用PCの導入のためにも、なんとか20万円は捻出したいものだ。
それでも住民税は、今年度の約33万5千円から少し減るとしても、30万円を予定して備えよう。

年間で約34万円払っている個人年金掛け金は、月当たり約2万8千円なので苦しいが、65歳以降に困らないようにするためにも我慢して払い続けようと思う。
このような老後のシミュレーションも含めて、「保険の窓口」で相談してみよう。

4月に派遣社員となったとき、推定年収が約200万円少なくなったため、家計見直しの一環で、本を買うのをやめた。
7月から翻訳専業となり、8月の翻訳料金が50万円を超えたので、読みたい本を再び買うことができるようになった。
ただ、翻訳案件が切れ目なく続いていて時間がないため、どうしても読みたい本だけを選んで購入している。

今月購入した本の1つは、岩波書店の雑誌 「世界」(2016年10月号)である。
www.iwanami.co.jp/sekai/index.html

読みたかった記事とは、「相模原事件の問い」。
・「語り」に耳を傾けて (熊谷晋一郎、東京大学准教授、小児科医)
・福祉番組の制作現場から相模原事件を考える (熊田佳代子、NHKプロデューサー)
・施設で生きるということ (有薗真代、京都大学非常勤講師、社会学者)

私の姉は、ダウン症に加えて、出産時の医療ミスにより、手足に軽いまひが残っている。
私は姉と共に、国立大学附属小学校に通ったが、姉が特殊学級にいたため、同級生からは、「あんな変なのを学校に連れてくるな」などの暴言を浴びせられた。

今は福祉団体のリサイクルショップで元気に働いているが、20歳までは治療薬の副作用で情緒不安定で
攻撃的だった。
書店で買いたい雑誌が売り切れだったとき、大声を出して騒いだこともある。
そのため、商店街やデパートから、迎えに来るようにと、苦情電話がかかってきたこともある。

姉の知能は、検査すると10歳程度なので、
いろいろと困った行動をしても、子どものままだと思えば許せるし、姉の分まで二人分勉強したから今の私があるのだし、クリスチャンになったのも、姉との関係を考えてたどり着いたものだ。

姉が障害者でよかったと、私は神に感謝できるようになったが、相模原事件の容疑者以外にも、障害者を排除したい人がいるので、姉がこれからも安全に暮らせるのかどうか心配している。

熊谷准教授の記事は、障害者(脳性まひ)の立場からのもので、事件の追悼集会で読まれた遺族のメッセージの他、海外も含めて寄せられた約400通のメッセージの一部も紹介している。
追悼メッセージは、熊谷准教授のHPで紹介されている。
touken.org/20160806tsuitosyukai/

また、この記事の最後に、自己決定の名の下で優生思想が作用し始めていることに言及している。
木村草太氏のエッセイも引用して、役に立つかどうかという国家的価値ではなく、
個人の尊厳・人権を優先すべきと指摘している。

この優生思想に基づく障害者虐殺について考えるとき、ナチスの犯罪について、再度学ばねばならないと感じる。

NHKでは戦後70年の2015年に、ETV特集で、「
それはホロコーストの”リハーサル”だった~障害者虐殺70年目の真実~」を放送した。
2つ目の記事にあるように、今週末
9月24日23時から、教育テレビで再放送される。
www.nhk.or.jp/docudocu/program/20/2259520/

ナチスの人道に対する犯罪について考えるとき、それは過去の話ではなく、現在にもつながっていることに注意しなければならない。
障害者や治療効果が見られない患者の安楽死について、ナチス台頭よりも前から、ドイツでは、「劣等な人間を淘汰し優秀な遺伝的素質を持つ人間だけを残す」という優生思想が広まっていた。
1920年には、「生きるに値しない命を終わらせる行為の解禁」という本が出版されているくらいだ。

そしてヒトラーは、
社会保障費を削減して戦費を調達するために、第二次世界大戦開始後に、精神障害者、知的障害者、回復の見込みのない患者を2年間で7万人を殺害した。
カトリック教会からの抗議があって一時的に縮小したものの、終戦までに20万人が殺害された。
薬物注射など様々な安楽死方法が実験されて、最終的に
毒ガスを使う方法が、ユダヤ人虐殺にも使われることになった。


ナチスの犯罪に加担した医師たちは、強いドイツ帝国を取り戻すために、正義だと信じて障害者を殺害していた。
相模原事件の容疑者も、一方的ではあるが、同様に正義だと信じて行動したように思われる。

再放送を一人でも多くの人が視聴して、現在の我々に対する警告として受け止めることができるように祈りたい。

(最終チェック・修正日 2016年09月27日)

12年前に副業として翻訳を始めてから、購入した紙ベースの辞書や専門分野の辞典、文法解説書など、語学関連書籍の半分以上を、確定申告では経費として計上してきた。


様々な病名が出てくる特許や報告書などの英日翻訳のときは、日本医学会の「医学用語辞典第3版」を購入して確認した。
本体価格が 14,000円もしたので、経費にできて助かった。

最近は何でもインターネットで調べるようになってきたが、紙ベースでしか得られない情報も、まだまだたくさんある。

日本は、学校教育も翻訳業界も、英語に大幅に偏っており、私が好きなドイツ語では、これまでの蓄積があるにもかかわらず、専門用語の和訳を探すときは苦労している。
インターネットで検索すると、翻訳会社や個人のサイトで、機械用語などのリストが公開されていることもあるが、信頼性について問題が生じたときに困るので、できれば出版物としてまとまった辞書の方が好ましい。

書籍の注文で使っている紀伊国屋書店BookWebでは、2か月に1回ほど、「ドイツ語」のキーワードで新刊書を検索している。
今日検索してみたところ、「科学技術独和英大辞典」が今月発売されることを知った。
www.gihodobooks.jp/book/3018-7.html

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ドイツ語特許の和訳案件を毎月受注しているので、この辞典が役立つと思い、購入を検討してみた。

内容見本のPDFをダウンロードして確認した。
www.gihodobooks.jp/data/preview/p_3018-7.pdf

対象となっている分野を見ると、環境・バイオ・リサイクルなど、既存の辞書では見つからない分野の用語もありそうだ。
また、略語が載っているので、調べる時間が少しは節約できるかもしれない。

価格は 4,104円と手ごろなので、すぐに注文してもよさそうだが、少々気になる点があった。
内容見本の6ページ目のCの項で、「蛋白質」という表記を見つけたからだ。
化学分野では「タンパク質」と書くので、違和感がある。

以前は、文部科学省の学術用語集では「タンパク質」で、日本医学会は「蛋白質」を推奨していると言われていた

参考資料は以下の、「医学用語の選択にみられる特徴」(国立国語研究所 第3回コーパス日本語学ワークショップ 2013年2月28日~3月1日)
しかし今では、医学用語辞典で検索すると、「タンパク質」となっている。
jams.med.or.jp/dic/mdic.html

分野の表記が、化学・バイオ・医薬なのだから、「タンパク質」にしてほしかった。
主要参考文献に出ている「医学大辞典」の出版年が1998年と古いため、「蛋白質」となったのかもしれない。

これに加えて面倒なのは、厚生労働省や農林水産省などでは、栄養成分表示で、「たんぱく質」としていることだ。
例えば、明治メイバランスという栄養食品の例を挙げておこう。
www.meiji.co.jp/meiji-eiyoucare/products/nutritionfood/meibalance_mini_brick/#anchor04

翻訳対象によって、又はクライアントによって、使い分ける必要があるのかもしれない。

それでも、これだけまとまった情報量の辞書は貴重なので、紀伊国屋書店で予約しておこう。

追記(9月25日):
紀伊国屋Book Webで注文可能となったが、店舗受取サービスが適用されないため、店頭で取り寄せの注文をした。
ネット注文で自宅に送付してもらう方が早いが、翻訳の
経費の領収書がほしいので、「独和辞典代として」と明記してもらうために、店頭で注文した。

ネット注文では、金額の入った領収書が本と一緒に送られてくるが、宛名は自分で記入しなければならないし、但し書きは「商品代金として」である。
税務処理用の領収書を発行してもらうには、ネット注文の領収書をネットビジネス部に返送して依頼しなければならない。
これは面倒なので、店舗で注文して、受取と同時に領収書を発行してもらうことにした。

追記2(9月27日):
今朝、紀伊国屋Book Webを見たところ、ウェブストアに在庫があるため、店舗受取サービスが可能になっていた。
ということで、時間がかかる店頭での取り寄せ予約をキャンセルして、オンライン注文での購入に切り替えた。
他の本と一緒に、日曜日に受け取ることにしよう。

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