3月11日にアフガニスタン南部で、アメリカ陸軍の Robert Bales 2等軍曹が銃を乱射して、民間人16人を殺害した。
この軍曹は現在、アメリカ本土の基地内にある収容施設に移送されている。
今後は軍事法廷において、殺人容疑で起訴されることになったが、弁護側はPTSDなどの精神疾患を主張している。

例えば、朝日新聞の記事は次の通り。
www.asahi.com/international/update/0311/TKY201203110352.html (3月12日、乱射事件の記事)
www.asahi.com/international/reuters/RTR201203250001.html (3月25日、訴追の記事)
【[カブール 23日 ロイター] 米軍は23日、アフガニスタン南部カンダハル州で地元住民17人を射殺したなどとして、殺人と殺人未遂の容疑でロバート・ベイルズ2等軍曹(38)を訴追した。有罪となれば、死刑の可能性もあるという。

…司法手続きは所属地であるワシントン州タコマ近郊のルイス・マッコード基地で行われる予定。

弁護士は容疑者が「事件を覚えていない」としており、裁判では4度にわたるイラクなどへの派遣で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患ったと主張するとみられている。】

海外メディアでは、抗マラリア薬(Mefloquine、メフロキン)の副作用の疑いがあると報じている。
www.dailymail.co.uk/news/article-2120577/Was-Staff-Sgt-Robert-Bales-given-anti-malaria-drug-known-cause-psychotic-episodes-Afghan-massacre-Pentagon-ordered-emergency-review-drug-days-shooting.html
www.sueddeutsche.de/wissen/amoklauf-in-afghanistan-wahnvorstellungen-als-nebenwirkung-1.1319342

この抗マラリア薬は以前、Lariam(ラリアム)という名称でロシュが販売していたが、重篤な副作用問題のため撤退した。
今はジェネリック医薬メーカーが製造・販売している。
例えば日本では、久光製薬がメファキンの名称で販売しており、添付文書は次の通り。
www.hisamitsu.co.jp/medical/data/mephaquin_t.pdf

めまいや嘔吐だけでなく、深刻な事例としてパニック発作や錯乱、自殺願望などが報告されている。

以前にも、ソマリアに派遣されたカナダ軍兵士に、異常行動があったと報告されているし、米軍基地内で家族を殺した兵士の事例もあった。
www.cbsnews.com/2100-500164_162-538144.html


米軍では特別な場合を除いて投与しない方針となったが、アフガニスタン派遣軍では、マラリア感染予防として、毎週メフロキンを兵士に服用させていた。
しかし原則として、今回の軍曹のように、外傷性脳損傷を受けた兵士には投与しないことになっていた。

どんなに優れた医薬品でも、必ず副作用を伴うことを再認識すべきだ。
100年以上も販売が続くアスピリンであっても、胃粘膜損傷という副作用があるため、別の薬を同時に服用する必要があるくらいだ。

裁判がどうなるのか気になるところだが、医薬メーカーに勤務する研究員としては、副作用についてどのように取り上げるのか、続報をチェックしていきたい。