2006年04月

この連休の楽しみの一つとして、明るくなっている彗星の観察がある。

いつもは仕事への影響も考えて、夜更かしをしてまで観察することはない。
車に望遠鏡を積んで遠出も考えたが、観測スポットを見つける前に仕事が変わって転居している。

また、夜中に一人で星を見ていると、不審者として通報されるかもしれないので、
中学から大学まで毎日頑張っていた、変光星観測もしなくなってしまった。

だから自宅のベランダから観察できる天文現象ばかりだが、今回は久しぶりに気にせず観察できそうだ。


その彗星の名は、Schwassmann-Wachmann 3 だ。

発見者の名前がそのまま彗星の名前に使われるので、ドイツ人発見者だから、
シュヴァスマン・ヴァハマン第3」彗星となるわけだ。

国立天文台でもドイツ語読みの音訳だから、これが正式な和名なのかもしれない。
http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000207.html

彗星名の元が人名だから、本人の母国語での発音に近い音訳とするのが、礼儀なのだろう。
NHKもドイツ語読みなので、これからはドイツ語読みにするのがよいのか。


しかし、私は小学生の頃からこの彗星名を、「シュワスマン・ワハマン彗星」 と聞いていた。
これは英語読みの音訳だったわけだ。


化学で有名なドイツ人研究者の名前も、いつの間にか英語式に発音されることもある。
Seebach ゼーバッハ が シーバック に、
Diels-Alder ディールス・アルダー が ディールス・オールダー と。

日本人の名前をアルファベット表記しても、相手の国の読み方で発音されるので、違うこともある。

加えて例えばドイツでは、Tatsuya のように、名前の最後が a だと、
女性名と勘違いするので、心理的にどうしても Tatsuyo という発音になってしまうようだ。


日本でも、中国人名は日本の音読みのまま発音するし、
韓国・朝鮮系の名前は、いつの間にかカタカナ音訳になった。

翻訳でも名前をカタカナ表記する場合があるので、これからも注意しておこう。

(最終チェック・修正日 2006年05月04日)

今の就業先は、5月1日も2日も休みで、なんと9連休だ。
こんなに長い休暇は、日本では初めての経験である。

別の職場では有給休暇を取得したり、夏に振替休日を取って出勤のこともあった。

今回は自転車での遠出や、自転車通勤用の服を探そうと考えるなど、
パワーハラスメントに対処していた去年の連休に比べれば、雲泥の差である。

不安障害によりカウンセリングや投薬治療まで受けていたと、あの頃の苦しみを思い出した。

会社には、個人の学術雑誌や専門書を置いていたので、誰もいない夜に行って運び出したこともあった。
会社総務などにメールを書いたのも、夜に短時間で行った。

会社近くのスーパーでは、休日出勤している上司を一度見かけたので、
昼間に行くと上司だけではなく、その腰巾着に遭遇する危険性があったので緊張した。


解雇事例などで知識としてはあったが、被害者になって初めて、
私の人権意識・権利意識が、通用しない会社があることを実感した。

同様のことは大学ではあったが、この時代の企業で人権や法律を無視することはないと思っていた。
世間知らずなのかもしれないが、会社によってこんなにも職場環境が異なるとは驚きだった。


それまでは有機化学の研究職を探していたが、今の派遣先に移ってからは、
精神的にも肉体的にも、健康を維持できる、まともな職場環境が第一と、改めて感じている。

ドイツ留学で体験した生活の他、骨髄ドナーとなって健康の大切さを再認識したことも影響している。

5月1日はメーデーだし、この連休中に、日本の労働問題の勉強もしてみよう。

横須賀では、原子力空母が配備される計画で、反対運動も起きている。

これまでは通常型空母であったが、原子力空母が配備されるとなると、
どうしても汚染や事故など、原子炉の信頼性への不安・不信感が発生する。


ところで横須賀には、もうひとつ核関連施設がある。

原発用核燃料体を製造している、グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン(GNF-J)だ。

http://www.gnfjapan.com/

原発反対派には注目されていて、核燃料の搬出が監視・追跡されている。

あの臨界事故を起こしたJCOが操業を停止し、今はGNF-Jに注文が集中している。
核燃料サイクルを推進するため、これからはMOX燃料の製造もするそうだ。


見学会や納涼祭などの行事もあるので、周辺住民は、事業内容を核燃料製造と理解しているのだろう。

ただ、「ニュークリア・フュエル」 という社名は、どうもカモフラージュの疑いを持ってしまう。

東芝・GE・日立の合弁会社ではあるが、日本国内の会社なので、「螻貿確狙渋ぁでもいいはずだ。
周辺住民だけではなく、これから引っ越す人たちにも、日本語の社名の方が理解してもらえる。

英語の音訳の 「ニュークリア・フュエル」 ならば、間接的で本来の意味が薄まると思ったのか。
すると、"Nuclear Fuel" は、あまりなじみのない英語で、理解されなくて好都合という判断だろうか。

それともカタカナ名ならば、何か高度な専門技術を持っている、という雰囲気を醸し出せるのか。



別の企業では、「核燃料」 という直接的な表現が、誤解を生むこともあった。

三菱化学の研究所では、ウランとトリウムを含む試薬を所有していた。
法改正により届出義務があったが、忘れていたため違法行為として、大々的に報道された。

三菱化学のニュースリリースは次のとおり。
http://www.m-kagaku.co.jp/newsreleases/2004/20040607-1.html

「ウラン換算 991 g」 と言っても、放射性同位体の含有割合は、濃縮していないので少ない。
しかしウラン化合物は、「核燃料物質」 と呼ばれ、この専門用語が騒ぎを大きくした。
研究所近くの新築マンションでは解約があったり、子どもを別の幼稚園に転校させる親まで出た。

放射性物質の漏洩もなく、測定された放射線量が、バックグラウンドと区別できないとしても、
「核燃料物質が身近な場所に秘密裏に貯蔵されていた」 と誤解されると、もう取り返しはつかない。



こんなこともあるから、ニュークリア・フュエルとしておけば、気づかない人もいるので、
周辺の不動産価値が下がることもなく、誰も損をしないので幸せということか。


国際化というキーワードで、これから英語教育に力を入れるようだが、
すると住民は Nuclear Fuel の意味を、何年後かには簡単に理解するようになるわけだ。

ただ、核燃料という意味を知って、前述のようにパニックになるのは、英語知識とは別のことである。
それに、科学的知識を持っているかどうかは別として、国と企業は、反対運動を助長したくはない。
すると今度は、JCOのように、核燃料を推測させない社名になるのかもしれない。

言葉というものは、ある意図を持って使われる。
だまされないように気をつけよう。



ところで、ブッシュ大統領は、nuclear の発音が変だと言われているようだが、本当だろうか。

(最終チェック・修正日 2006年04月28日)

岐阜で行方不明だった中学生の遺体が発見され、その後、知り合いの高校生が逮捕された。

少年の凶悪犯罪が多発していると騒がれているが、統計上は激増というわけではないようだ。
日本人成人の凶悪犯罪よりも、少年と外国人は目立つということだろうか。

この殺人事件も、様々なテレビ番組で取り上げられ、あれこれと背景推理や解説がされている。

凶器や携帯電話が見つかったなど、断片的な情報が報道されるだけではなく、
学校の友人や近所の住人に、加害者・被害者について直接取材した証言も流されている。
ただ、そういった証言の信憑性の裏は取れているのだろうか。

精神的ショックを受けている友人や家族に、特に配慮した取材をしているとは思えないが、
まだ事件の詳細が判明していない段階で、こんなにもマスコミが力を入れるのはなぜだろうか。


そんなに加害者と被害者の詳細な情報や、交際関係を知りたい人が日本中にいるのだろうか。

周辺への取材という手法はあるわけだが、それが事件の真相に迫ることにつながるのか。
性格や交友関係、被害者のブログなどを分析して、思春期の教育に活かしたいのか。

私が感じるのは、殺人をする凶悪な者はこんな性格のはずだ、であるとか、
被害者側にも落ち度があるはずだ、という先入観・仮説を満足する結果を探したいという意識だ。

つまり、推測に基づいた更なる仮説を加えて、加害者・被害者のイメージ作りをしている。

そして、犯罪予備軍は周囲にたくさんいるという意識を刷り込んで、緊張関係を作り、
少年にも死刑適用ができるように、世論誘導をしたいのかもしれない。



事件の背景を冷静に分析することで、学校・家庭・社会での教育をどうすべきか議論できるだろうが、
それと報道で個人情報を日本中にばらまくことは、同一であるとは思えない。

それに遺族・家族が、このような報道で「さらし者」になることを望んでいるとも思えない。



今後、またどこかの週刊誌が、少年の顔写真などを掲載して問題となるだろう。

裁判前に社会的制裁を加えるのが目的のようだが、こんなことに時間を使うならば、
政治家や官僚、企業などの不正行為を告発する、真のジャーナリズム活動をしてほしい。

書店に行くと、英語関連の書籍が多数発刊されていることがわかる。
英会話教室の広告・CMも毎日見るが、日本人は英語能力を高めたいという欲求が強いのだろうか。

TOEICテストも新形式になるそうで、既に対策本も山積みだ。
履歴書にTOEICスコアの記載を求められるので、学生も社会人も必死になっているそうだ。

ある募集の条件にスコア800以上とあったので、私は1999年1月に830取ったが、転職できなかった。
研究職だから、英語能力だけで採用するわけではなく、それは当然のことだろう。
単に面接などで、「うらやましいスコアですね」 と言われるだけだ。


ただ世の中には、英語能力が高ければ、いい仕事に就いて出世できると勘違いしている人がいる。

ある医薬研究所に派遣就業したとき、TOEICスコアが900以上という社員がいた。

新入社員に対して、「お前が600取れるか、俺が900以上を維持するか賭けをしよう」 と、
何に対して競争したいのか、よくわからないことを言い出し、周囲の反感を集めていた。

社内留学制度でアメリカに留学したが、これほどの高いスコアでないと、研究で苦労するわけでもない。
別の社員は、英語が全く話せなくても、実験技術が高いため、最先端研究所で重宝されたこともある。


誰も興味がないのに、「今の英会話教室では俺と対等に話せるネイティブがいなくて困っている」 と自慢した。

加えて彼は、海外の受託合成会社との窓口で、英語での電話も大声で回りに聞こえるように張り切っていた。

彼は計算化学が専門だが、前部署でのトラブルで、なぜか専門外の有機合成チームに異動した。
理論は強いが合成能力が低いので、英語能力を自慢することで、対等になろうとしたのだろうか。

しかし英語能力ばかりを強調したためか、仕事で大失敗をすることになった。
海外の受託合成会社に、中間体などの製造を委託する仕事をしていたが、簡単にだまされたのだ。


彼は実際に現地の工場や研究所を視察し、相手の能力を判断して、契約交渉もして帰国した。
だが、発注からしばらく経っても仕事は全く進まず、取引相手は、のらりくらりと言い訳に終始した。

そこで部長じきじきに現地視察をやり直したところ、取引相手の社員は、
基本的な合成や分析の知識を持っていなかったことが判明した。

通常は前金として半額を支払うので、それを狙うためだけに、視察用だけのための分析室があったのだ。

英語の前に、化学の知識や、相手のレベルを見抜く眼力が必要だったが、
彼は語学力があるから仕事ができると勘違いしていたわけだ。


それに私が留学経験者ということで興味があったためか、会社の送別会の会場で急に話しかけてきた。

「転職はどこのコンサルタント会社に依頼してるの。」
「外資系にはトライしないの。」
「どこかに内定した経験はあるの。」 など、
会話ではなくインタビューだった。



こんな不愉快で失礼な奴は、いくら英語ができても、誰も相手にしなくなるだろう。



「会話かインタビューか」 と言えば、他にもこんな例がある。

NHK特集では、パリーグの首位打者を、2人の外国人選手が競っていることを取り上げた。
今は懐かしい、ブーマーとクルーズだ。
試合後に両チームの外国人選手が、仲良く食事をしているところでも取材は続いた。

女性の取材記者(通訳?)が、クルーズ選手に次のように質問した。
「こんなに仲良しだから、友達に首位打者を取らせてあげたいと思ったことはありますか?」

するとクルーズ選手は怒って、次のように返答した。
「俺たちは毎日真剣勝負をやっているんだ。 友達だからといって、そんなことをするはずない。
あんたは英語を上手に話すようだが、そんな失礼な質問を二度とするもんじゃない。」



最近は英語の早期教育がはやりのようだが、
英語が話せるだけで万事OKと、勘違いしないように教育してほしい。


(最終チェック・修正日 2006年04月23日)

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