2006年05月

有機合成実験で、反応の進行をモニターする方法は様々である。

基本的で簡便な分析手段はTLCで、毎日何枚も使う身近なものだ。
大学時代は有色化合物だったため、肉眼で変化がわかるので便利だった。
単純ではあるが、展開溶媒や発色剤など、いろいろな工夫や勘が必要となる。

次によく使っているのが、HPLCとGCだ。
HPLCの方が楽なので使用頻度は高いが、検量線を作って定量するにはGCを使っている。

反応混合物をサンプリングして、特定の官能基の存在をプロトンNMRで確認することもあるが、
リン31やフッ素19といった感度のよい核種で、反応追跡をすることも多い。


派遣就業をするようになり、企業ではLC/MSやGC/MSを使う機会ができた。

今までのHPLCやGCの分析では、原料が消失して、何か生成物ができたことはわかったが、
それが本当に目的物なのか、それとも予想外の生成物なのか、判断しにくかった。

MSと組み合わせることで、クロマト分離されたそれぞれのピークに対して、
その対応する成分の分子量を知ることができ、反応中に判断できるので便利だ。

正確には、観測されたイオンの質量数が、分子量に等しいわけではないが、
イオン化法などの特徴を知った上で利用するならば、大きな間違いを犯すことは少ない。


ただ、会社によっては、LC/MSを反応追跡に使わないところもあった。

ある会社で派遣就業してしばらくして、分析業務についてのアンケートがあった。
私はその前の就業先で、毎日LC/MSで反応追跡をしていたので、要望を書いてみた。

すると分析グループからの返答は予想外のものだった。

「LC/MSは本来、反応追跡に使用するという目的のためにあるのではありません。」
「TLCやNMR、IR、HPLCなどで分析したり、反応混合物の一部を処理して分析しても、
どうしても反応追跡が不可能であるということを証明してから、利用を検討すべきです。」


分析グループとしては、合成グループのためにメンテナンスをしたくはないし、
何百万円もする装置を、他の分析法でもできる反応追跡だけに使うのは、もったいないと思うのだろう。

他にも、NMRについてのメールの内容からも、何かグループ間の軋轢を感じていた。

ルーチンワーク測定は分析グループの担当者が行うが、定時後は合成担当者が測定してもよかった。
そのため私も講習会を受け、NMR使用のライセンスを取得することにした。

だが、分析グループ責任者からのメールは、どうも不愉快なものであった。

「博士ということで、能力的にはNMRの使用を認めてもよいとは思いますが、
急ぎではないサンプルは、翌日に測定担当者に依頼するのが原則です。」

「定時後に測定して構造を決定し、その日の夜のうちに次の反応を開始しないと、
どうしても困るような人を想定してますので、ライセンスを取得したにもかかわらず、
定時で帰宅して、一度も測定することはなかったというのでは困ります。」


以前からトラブルがあったそうなので、メンテナンス担当としては、使わせたくないのだろう。
実際に他のメールでも、「使いたいのであれば、メンテナンスも義務となる」 とあった。

長時間残業をせまる職場だったが、不愉快だったので、一度も測定しなかった。

こんなに社内で対立して、仕事の進展に寄与するとでも思っているのだろうか。
自分のグループに主導権があるかのように主張して、何の意味があるのだろうか。

まあ大学でも、「この装置は○○には触らせない」 ということもあったので、
人間関係がこじれると、研究とは関係ない、醜いものを見ることになるわけだ。

本日のNHKクローズアップ現代では、「小学校で英語が必修化・波紋は」と題して、
現在、国際理解教育の中で行われている小学校での英語教育の現状について放送された。


低学年ではゲームなどを使った、楽しむ授業をしているようだが、
高学年で英作文を取り入れた頃から、生徒の二極化が顕著となるそうだ。

現在は必修ではないが、心配になって英会話教室や塾に通う生徒が増えているという。
他の教科でも、授業についていけない生徒がいるのだから、英語も例外ではないのだ。


現状のままで必修化をすると、現場は混乱することは明らかで、その対策や取り組みも行われている。

小学校では文法よりも、コミュニケーション手段ということを主眼とする方針のため、
「伝えたいことを、どう相手に伝えるのか」 というテーマで、「福笑い」 の教材化が例示された。

最初は単語を知らなくても、Up や Down、Right などの方向を示す語や、
A little や More などの程度を示す語の感覚を、ゲームから身に着けるそうだ。

また那覇市では、中学の英語教員が小学校で研修し、その後中学に戻って、
義務教育を通じた一貫性のある英語教育を実施しているとのことだ。


いろいろと努力しているのはわかるが、この短時間の番組内では、
日本人が日常生活で、なぜ英語を必要とするのかは示されなかった。

加えて、週一回程度の授業頻度や、担任が英語授業を行うなどの文部科学省の方針は、
あまりにも中途半端で、これで本当に英語がわかるようになるのか、余計に不安になる。

「こんな授業では、子どもの英語力がまったく育たない」 ということで、
資金力のある家庭では、学校を無視して塾に通わせたり、通信教育に力を入れるだろう。

ベネッセは、小学校英語の必修化が、更なる事業拡大のチャンスだと期待している。
文部科学省が学習指導要領を変えるだけで、特定の業種では利益拡大の機会が与えられる。
これは、ある意味で公共事業みたいなものだ。
加えて、英語や国際化関連で、公益法人などの天下り先を作るにも便利だろう。


ゲストの教育専門家は、「担任が英語でのコミュニケーションに四苦八苦している姿を見せて、
生徒と一緒に英語を学んでいく」
 のが、生徒に英語の基礎をつける方法だそうだ。

これだと、父兄から担任が突き上げをくらうネタが増えるだけで、
英語ができないことによる、教師の精神疾患が増加するだろう。


どうせ格差社会・階級社会になるそうだから、これから英語だけできても、下層から這い上がれない。
費用対効果を考えれば、本当に外国語を必要としている人だけ特訓すればいいのではないか。

もし小学校英語が、ゆとり教育のように、数年で撤回された場合、誰が責任を取るのだろうか。
そんなことより、このチャンスに英語教材を売りつけて、大もうけすることを考えようか。

(最終チェック・修正日 2006年05月17日)

サッカー・ワールドカップ開催まで、あと一ヶ月を切った。

日本とドイツの成績の他に、今回も各国代表に帰化選手がどれくらいいるのか気になる。

両親の国籍が違うために、二重国籍となっている選手の場合、
ワールドカップに出場可能な国の代表となるために、国籍を選択することがある。

他には、中東やアフリカなどで、ブラジル人などを資金援助する約束で帰化させることがある。

このとき名前を完全に変えずに、元の綴りを帰化先に合わせて、少し変えるくらいではないか。

例えばアメリカに移住したドイツ人が、GutmanGoodman にするようなものだろう。
このとき、元のドイツ名での意味に対応した、英語名になっている。


日本でも、サッカー、卓球、ソフトボールなどで帰化選手はいる。
帰化後の名前を見ると、どうもアジア系とその他では違うような気がする。


サッカー選手の名前の場合、「三都主」と漢字表記だが、元の読みの「サントス」を踏襲している。
ロペスも漢字表記にしたものの、発音すると、日本人風には聞こえない。
ラモスはカタカナだが、それでも日本人風の苗字にはしなかった。
外見が日本人離れしているし、受け継いだルーツを残すためにも、そのままがふさわしいのだろう。

では、日本に帰化したサッカー選手が、温泉や銭湯に行ったら、どうなるだろうか。
顔が知られた有名人だから、外見が違っても、日本人として扱ってもらえるだろうか。

日本に帰化したジャーナリスト(白人)が、家族を連れて温泉に行くと、「外国人お断り」とあった。

「私は日本国籍を持つ日本人です。」 と説明したものの、「外見でだめ」 と言われたそうだ。
彼の妻は元々日本人だから入浴できたが、二人の娘のうち一人は、「外見でだめ」 だったそうだ。

もし名前を「山田太郎」にしても、外見が外国人(白人)のままでは、日本人とは認められないのだ。



相撲でも帰化後に日本風の名前にしているが、本名のカタカナ音訳では反対されるのだろうか。
もし琴欧州が日本に帰化したら、あの風貌で日本風の名前にしてしまうのか?
相撲は国技だそうなので、日本風にしないと、横綱審議会が何か苦言を呈するのかもしれない。



他の競技では、卓球やソフトボールの元中国人選手は、完全に日本風に変えている。
アジア系は外見で日本人と区別しにくいので、日本風の名前にしないと違和感が際立つのだろうか。
日本のチームと一心同体となるためには、日本風の名前がふさわしいのだろうか。

また、外見が日本人に似ていたり、日本人が差別意識を持っているアジア系、
そして国内のアイヌ民族、朝鮮・韓国系などでは、日本名を使う方が、
余計な心配をすることなく、日本人社会に溶け込めるので、賢明な選択のようだ。


日本生まれの在日韓国人の女性と、当初はそうと知らずに交際したことがあるが、
ある日、動物園でのデートの後、外国人登録証を見せられて、本名を明かされた。

私は特に驚くことはなかったが、日常の仕事では日本名だけを使っており、
やはり日本は人権後進国なのかと、がっかりしたことを覚えている。

特にアイヌ民族は、元々住んでいた先住民族なのだから、アイヌ名のままでも生活できるように、
後から北方に進出(侵略)したヤマトの意識を、国際化と言う前に変えてほしいものだ。




帰化による改名で思い出すのは、小学校での台湾籍のクラスメートだ。

担任の話では、彼の父は医師で、帰化した方が日本で働くには都合がよいとのことだった。
そして占いなどで日本風の姓を決め、母と妹は名も占いから変えたそうだ。

彼は雪国には似合わない色黒であったり、当時人気の漫画キャラクターに似ていたこと、
そして国交のない台湾籍で姓も一文字だったからか、からかわれることが多かった。

日本名になってしばらくすると、以前のような、からかいやいじめはなくなり、
中学・高校と進むにつれて、新しく出会ったクラスメートは、彼が帰化したとは思いもしなかったろう。

だから、元の台湾名の姓のままでは、日本人になったとは判断してもらえず、
小学校であったような、不当な扱いは一生続いたのかもしれない。


少子化対策で、移民を受け入れるという話も聞くが、差別がなくなり、
出身国にこだわらず、新しい日本・日本文化ができるように祈りたい。

テレビのチャンネルを変えていたところ、たまたま都知事の定例会見が流れていた。
ちょうど記者からの質問に回答しているところだった。

何人目かが、オリンピック招致に向けての羽田空港拡張・国際化について質問した。
都知事は不満げに、「羽田は既に国際化している」 と言った。

そして、「ダウンタウン、と言っても下町じゃないよ、中心部の意味だけどね」 と言い、
「ダウンタウンに一番近くて使いやすい空港は羽田の他にはない」 という内容の回答をした。

すると質問もされていないのに、「横田も…」 と付け加え、演説が始まった。

都知事は以前から、米軍横田基地の民間利用を要望していたので、なんと資料も用意していた。
何かのきっかけがあれば、この演説をしようと準備していたのだろう。

羽田空港から横田基地に話が移ったと思ったら、次は米軍再編の話に飛んだ。

「政府間合意」などのキーワードを持ち出し、日本政府の見解や、翻訳がおかしいと言い出した。


そして、「最近とは違って、昔は文法ばかり勉強したから」 と言い始め、
この the の意味を講釈する気はないが、the となっている意味は大きい」 という話になった。

他にも定冠詞 "the" がついた個所を例示していたが、どうも趣旨はわかりにくかった。

文書の一部を唐突に取り上げて演説されても、こちらは何とも判断できないので、聞いているだけ。
記者も 「質問は羽田だけです」 と言えばいいのに、さえぎることもなく、言いたい放題。

定冠詞がついているので、それより前の文書の部分で既に言及されているか、
または以前から既に政府間合意していた事項だということだろう。

せっかく都知事のホームページもあるのだから、その定冠詞の解釈も含めた見解を載せてほしい。


ところで、「昔は文法ばかり勉強した」という都知事だが、フランス語では失態を演じたという。
自分の作品 「太陽の季節」 の碑にフランス語訳の題名を刻んだのだが、定冠詞の選択を間違えた。
フランス語には男性名詞と女性名詞があり、定冠詞もそれに応じて使い分けねばならない。

自分で勝手に、石原流文法を作ったわけでもあるまいし、単なる無知か、勘違いか。
それとも間違いを指摘してくれる、本当の友人に恵まれなかったのか。


それにしても、質問されていないことなのに、自説の演説に強引に持っていくとは、不思議な人だ。
他人の話や質問は邪魔だと思うのに、自分の発言で他人の時間を奪うのは関係ないわけだ。

こんなのが都知事をしているので、東京には住みたくないものだ。


(最終チェック・修正日 2006年05月29日)

ある英会話教室のCMが新しくなった。

映画「日本沈没」のシーンが出てきて、国民は皆、海外に移住するそうだ。
そこで海外移住という、ごくわずかな可能性に備えて、英語を勉強しようとなっている。


こんな非現実的なことを持ち出して、どうして一般人のモチベーションが高まるのだろうか。

「このCMを見たから英語を勉強しようと思う奴なんていない」 と、笑うだけのジョークなのか。
このような漠然とした理由で英語を勉強するほど、日本人は時間も金も余っているという皮肉か。

それとも、英語への日本人の漠然とした憧れを表現したということなのか。



確かに私も半分冗談として、原発事故や国家財政破綻などで日本に住めなくなることを想定し、
海外移住を選択肢にできるように、外国語を勉強していると説明したことがある。

実際には、英語放送を聴いたり、本を読むために英語の勉強を始めた。
つまり、新しい世界や情報への、好奇心が出発点である。

また、私は研究で、英語とドイツ語の資料を読む必要があり、また留学志望のため勉強した。

中国語は、中国切手を収集していたこと、中国製の書道用具(筆と紙)を使っていたこと、
漢詩の韻を音で感じるため、そして研究室に中国から留学生が来たことが、勉強した理由である。

スペイン語は、大学バレーボール部に、元メキシコ代表選手がいたから少し勉強した。

エリートの教養としてではなく、何か必要性があって勉強したのだ。

その英会話教室は赤字転落なので、どんな理由でもいいから生徒を増やしたいのかもしれない。


追記:
本当に移住するとなっても、日本人が数万人単位で難民キャンプに入るだろうから、
単独で生活するわけではないので、日本語だけで大丈夫ではないだろうか。

加えて移住先に、英語圏を想定しているのも不思議だ。
中国に移住するにも英語、ロシアに移住するにも英語、中東に移住するにも英語、
アフリカの旧フランス植民地に移住するにも英語。

こういった先入観で洗脳すれば、英語関連産業で儲けることも簡単だろう。

(最終チェック・修正日 2006年05月13日)

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