今読んでいる、今月発売の岩波ブックレットは、森岡孝二・川人博・鴨田哲郎 共著、
「これ以上、働けますか? 労働時間規制撤廃を考える」 だ。
最近話題の、「ホワイトカラー・エグゼンプション」 を批判した本である。
これは偏見かもしれないが、岩波書店が発刊する図書だから、当然、労働者側の視点である。
戦前世代の母は以前、「岩波の本ばかり読んでいると、アカと呼ばれるから困る」 と私に言った。
内容は次のとおり。
はじめに - 労働時間規制が撤廃されると?
第一章 労働時間の過酷な実態を分析すると
第二章 日本版エグゼンプションが導入されたら
厚生労働省は、制度導入の法案を提出すると決めたので、もう手遅れなのか。
教育基本法改正や小学校英語必修化と同様に、審議会という 「やらせ・御用機関」 を利用している。
労働組合などの反対意見にも配慮したと言っているが、導入することに変わりはない。
厚生労働省は、少子化対策のためにも導入すると言っているが、こじつけとしか思えない。
今のフレックスタイムや、有給休暇の完全取得、1日8時間労働制の厳守で可能ではないか?
厚生労働省が、「アメリカ化」を望む財界寄りであることは否定できない。
労働基準法違反だとか、サービス残業の摘発だとか、過労死で労災認定だとか、
経営側にとって邪魔な規則は、全部なくしてしまえというのが本音だろう。
一体どのような日本にしたくて、こんなことを実施するのか、どうしても理解できない。
まず、「八時間労働制は、人権」 という原則を確認したい。
これは日本の労働基準法にも規定されていて、「最大労働時間」 だが、
いわゆる三六協定などで、本来は違法である時間外労働が可能になっている。
日本が、八時間労働制を含むILO条約の一部を批准していないことは、あまり知られていない。
戦後の復興を優先するために、国際人権規約の一部も批准していないくらいだから当然か。
こんな事実を学校で教えたら、「アカ教員・共産党員」 と攻撃されるだろう。
残業代さえ払えば残業時間は無制限でも合法だと言ったり、定時帰宅を罪悪視する職場は多く、
私のように個人の生活を守ろうとすると、重要な仕事から外される可能性もある。
また、本書では触れられていないが、1日8時間労働を始めた意外な人物がいる。
それはレンズなどの光学系研究者であるドイツ人のアッベである。
工場の職人に、1日8時間労働制と週休二日制を導入して、体調管理に配慮し、
常にベスト・コンディションで、レンズの研磨作業ができるようにしていた。
それは工場労働者(ブルーカラー)の話ではないか、と反論されそうだが、
管理職などホワイトカラーが、頭だけ使う、体力的に楽な仕事だとは思えない。
ホワイトカラー・エグゼンプションを、「自由な働き方の選択」 と宣伝しているが、
現時点で、自由な働き方を選択できるような労働者は、実在するのだろうか。
1日8時間では絶対に終わらない仕事量を課しておきながら、
残業するのは労働者の能力が低いからだ、と非難する頭の悪い経営陣。
「アメリカでは労働時間が長くなってきている。もっと残業しろ。」 と言った管理職もいたが、
アメリカのホワイトカラーが、解雇に対する恐怖から追い詰められていることを無視している。
それに労働時間の調査だが、統計発表は実は恣意的なものなので注意しなければならない。
年間労働時間が横ばい、あるいは微減のように報告されているが、
これはパートや派遣など、不安定な非正規雇用が増加した影響である。
雇用形態別や業種別、年齢層での違いなどは、報告書を読めば判明するのだが、
そこまで読む暇はないので、単純平均値を使って国民をだますことに利用される。
ただし、この制度の適用が望まれる人が、いないわけではないが、
その少数の対象者のために、全体が不利益を受けるのは避けたいものだ。
研究所には、土日でも正月でも夜中まで実験してしまう、不思議な社員が1人はいる。
ある会社では、その人を管理職にして残業代を払わなくても済むようにした。
本来は違法であるから、エグゼンプション制度によって合法化したいだろう。
実験が趣味の人もいるし、また、家族が相手にしてくれないので、夜中まで仕事をする人もいる。
有給休暇一斉取得日に申請書まで書いて出勤するのは、家族と一緒にいても苦痛だからのようだ。
他にも、あまり有名でない大学の出身でコンプレックスからなのか、
長時間労働で会社に貢献していることをアピールする社員もいる。
一体何と闘っているのだろうか。
そんな不健康な生活をしていて、もし病気にでもなれば、会社も保険組合も困るのに。
今の勤務先は、残業しなくても黒字なのだが、
今後この労働環境が、後戻りしないように期待したい。
(最終チェック・修正日 2006年12月28日)
「これ以上、働けますか? 労働時間規制撤廃を考える」 だ。
最近話題の、「ホワイトカラー・エグゼンプション」 を批判した本である。
これは偏見かもしれないが、岩波書店が発刊する図書だから、当然、労働者側の視点である。
戦前世代の母は以前、「岩波の本ばかり読んでいると、アカと呼ばれるから困る」 と私に言った。
内容は次のとおり。
はじめに - 労働時間規制が撤廃されると?
第一章 労働時間の過酷な実態を分析すると
第二章 日本版エグゼンプションが導入されたら
厚生労働省は、制度導入の法案を提出すると決めたので、もう手遅れなのか。
教育基本法改正や小学校英語必修化と同様に、審議会という 「やらせ・御用機関」 を利用している。
労働組合などの反対意見にも配慮したと言っているが、導入することに変わりはない。
厚生労働省は、少子化対策のためにも導入すると言っているが、こじつけとしか思えない。
今のフレックスタイムや、有給休暇の完全取得、1日8時間労働制の厳守で可能ではないか?
厚生労働省が、「アメリカ化」を望む財界寄りであることは否定できない。
労働基準法違反だとか、サービス残業の摘発だとか、過労死で労災認定だとか、
経営側にとって邪魔な規則は、全部なくしてしまえというのが本音だろう。
一体どのような日本にしたくて、こんなことを実施するのか、どうしても理解できない。
まず、「八時間労働制は、人権」 という原則を確認したい。
これは日本の労働基準法にも規定されていて、「最大労働時間」 だが、
いわゆる三六協定などで、本来は違法である時間外労働が可能になっている。
日本が、八時間労働制を含むILO条約の一部を批准していないことは、あまり知られていない。
戦後の復興を優先するために、国際人権規約の一部も批准していないくらいだから当然か。
こんな事実を学校で教えたら、「アカ教員・共産党員」 と攻撃されるだろう。
残業代さえ払えば残業時間は無制限でも合法だと言ったり、定時帰宅を罪悪視する職場は多く、
私のように個人の生活を守ろうとすると、重要な仕事から外される可能性もある。
また、本書では触れられていないが、1日8時間労働を始めた意外な人物がいる。
それはレンズなどの光学系研究者であるドイツ人のアッベである。
工場の職人に、1日8時間労働制と週休二日制を導入して、体調管理に配慮し、
常にベスト・コンディションで、レンズの研磨作業ができるようにしていた。
それは工場労働者(ブルーカラー)の話ではないか、と反論されそうだが、
管理職などホワイトカラーが、頭だけ使う、体力的に楽な仕事だとは思えない。
ホワイトカラー・エグゼンプションを、「自由な働き方の選択」 と宣伝しているが、
現時点で、自由な働き方を選択できるような労働者は、実在するのだろうか。
1日8時間では絶対に終わらない仕事量を課しておきながら、
残業するのは労働者の能力が低いからだ、と非難する頭の悪い経営陣。
「アメリカでは労働時間が長くなってきている。もっと残業しろ。」 と言った管理職もいたが、
アメリカのホワイトカラーが、解雇に対する恐怖から追い詰められていることを無視している。
それに労働時間の調査だが、統計発表は実は恣意的なものなので注意しなければならない。
年間労働時間が横ばい、あるいは微減のように報告されているが、
これはパートや派遣など、不安定な非正規雇用が増加した影響である。
雇用形態別や業種別、年齢層での違いなどは、報告書を読めば判明するのだが、
そこまで読む暇はないので、単純平均値を使って国民をだますことに利用される。
ただし、この制度の適用が望まれる人が、いないわけではないが、
その少数の対象者のために、全体が不利益を受けるのは避けたいものだ。
研究所には、土日でも正月でも夜中まで実験してしまう、不思議な社員が1人はいる。
ある会社では、その人を管理職にして残業代を払わなくても済むようにした。
本来は違法であるから、エグゼンプション制度によって合法化したいだろう。
実験が趣味の人もいるし、また、家族が相手にしてくれないので、夜中まで仕事をする人もいる。
有給休暇一斉取得日に申請書まで書いて出勤するのは、家族と一緒にいても苦痛だからのようだ。
他にも、あまり有名でない大学の出身でコンプレックスからなのか、
長時間労働で会社に貢献していることをアピールする社員もいる。
一体何と闘っているのだろうか。
そんな不健康な生活をしていて、もし病気にでもなれば、会社も保険組合も困るのに。
今の勤務先は、残業しなくても黒字なのだが、
今後この労働環境が、後戻りしないように期待したい。
(最終チェック・修正日 2006年12月28日)