2007年04月

今朝から翻訳作業を再開して、途中で買い物に出たが、午後5時過ぎには仮訳が終了した。

10ページしかない短い特許だし、明細書と請求項で重複する表現があるので、楽な方だった。

明日から推敲を始めて、連休明けに納品する予定。
訳語の選択について、十分に再検討する時間があるので楽だ。

年末年始は特許翻訳ばかりで掃除などの家事ができなかったが、今回はできそうだ。


ただ、他の特許と同様に、関係代名詞やカンマなどで文が続いて長いため、
集中していないと修飾関係を間違えたり、訳抜けという重大なミスをしてしまう。


今回の特許は、2成分の混合物を農薬として使うもので、"and" の訳にも注意している。
例えば、「AおよびBを含む混合物」 でもよさそうだが、「AかつBを含む混合物」 とした。

単なる成分名の並列ではなく、両者が必須構成要素で一体として使用されると表現するためである。


また、農薬の特許ということで、"application" を 「散布」 とするかどうかも要注意だろう。
文意によっては、「使用」 や 「用途」 という訳の場合もあるので、よく考えて推敲しよう。


推敲は一日空けてから行うのがよいので、よく寝てリフレッシュした頭で取り組もう。

私はフリーランスの翻訳家でもあるが、やはり本業があると、仕事が回ってくる機会は少ないようだ。

3月下旬に問い合わせがあったのだが、その日は送別会があったので、受注を逃した。

4月には1件決まったのだが、依頼主が突然キャンセルしたのでなくなってしまった。

そんなわけで、今回の英文特許和訳まで、約1ヶ月半は仕事がなかった。

今回の特許は殺虫剤関係である。
10ページと短いので、連休中に他の用事をしながらでもできるだろう。

最終的な翻訳料金は納品後に決まるが、手取りで5万-7万円台と思っておこうか。


いつもは化合物の構造式や実施例が出てくるのだが、
今回は、複数の殺虫剤の組み合わせが記載されているのみだ。

既知の物質では特許が取れなくても、複合組成物で活性の増幅が見られたり、
農薬の使用量が減るなど画期的な改善がなされれば、新たな特許になりうるわけだ。


今日は午後から約4ページを翻訳した。
少々疲れたので、これで寝ることにしよう。

明日からペースを上げて、連休後半は推敲だけにしよう。

本日4月26日は、チェルノブイリ原発事故から21年目である。

事故直後は、原発由来の放射性物質が飛来したことが、日本でも確認され、
しばらくの間は、牛乳や野菜などの分析値が報道されたこともあるが、その後何もなくなった。

ドイツ留学中は、チェルノブイリ由来の放射性核種が、キノコでまだ検出されると報道され、
妊婦や子どもはキノコを食べないようにと注意を促していた。

野菜や果物なども、なるべく地理的に遠い西側の、スペイン産などを選ぶ人もいたそうだ。


最近の日本の新聞報道では、この事故に関する映画の紹介などもいくつか散見され、
また、CS放送(ディスカバリー・チャンネル)では明日、ドキュメンタリーが放送される。

しかし地上波テレビでは、チェルノブイリ事故に関する特別な報道・放送は、現時点でない。

国内の電力会社の不祥事に注目しているためでもあるが、
チェルノブイリは地理的に遠くて実感が湧かないことに加えて、
「チェルノブイリ事故のようなことは日本では起きない」 と信じられていることの反映か。


本日の S??ddeutsche Zeitung 第7面は、「チェルノブイリ事故21年目」 とあり、
「原子力発電は環境を救わない」 との意見広告だった。

医師やIPPNW(核戦争防止国際医師会議)の支援者、計 2,086 人の名前が記されている。

彼らの主張は、「原子力発電が地球温暖化対策になるというのはウソ」 ということで、
以下に示す理由などが列挙されている。

「世界の435基の原発で供給しているのは、世界のエネルギー消費総量の3%しかない」

「化石燃料の10%を原子力発電に置き換えるだけでも、あと1000基の原発が必要」

「ウラン埋蔵量は、現在の消費量で約60年分で、原発を増設すればもっと早く枯渇する」

「化石燃料・ウランに代わる、再生可能エネルギー源を2050年までに見つける必要がある」

「暖房・輸送・電力のエネルギー効率を高める方が、原発増設よりも温暖化対策になる」


こういった政府や財界に対立する意見広告を載せる新聞は、日本では皆無だと思う。

日本原子力文化振興財団という国策宣伝団体が、原発推進の意見広告を出したから、報道に期待できない。

トヨタのハイブリッド車は推奨するのに、外断熱住宅や自然エネルギー発電への助成は少ない。


原子力資料情報室では本日、地球温暖化対策に原子力エネルギーの最大利用を唱えている
ジェームス・ラブロック博士に対して、公開質問状を提示した。
http://cnic.jp/files/20070426lovelock.pdf

学者が個人の研究成果を発表するのはかまわないが、
それを利用(悪用)する人間がいることを忘れてはならない。

S??ddeutsche Zeitung のニュースを見ていたら、ビールに関する本が紹介されていた。

Michael Rudolf 著、"Die hundert besten Biere der Welt" である。

著者はこれまでも、ビールに関する書籍を執筆している。

出版社のHPは次のとおり。
http://www.oktoberverlag.de/

書籍への直接リンクはないため、代わりにドイツのアマゾンの商品紹介を掲載する。
http://www.amazon.de/Die-hundert-besten-Biere-Welt/dp/3938568259


S??ddeutsche Zeitung では、「ビールのバイブルは、憎悪の対象にもなりうる」と、否定的な感じだ。
http://www.sueddeutsche.de/kultur/artikel/82/110971/

著者は原則として少量生産のビールを選んだそうだが、
生産量が多いロシアのビールが入っていることが指摘されている。

他にもいろいろあるようだが、買いたい本でもないので、記事を読むのはやめた。


ビール瓶の写真は次のリンクで始まり、100枚載っている。
http://www.sueddeutsche.de/kultur/bildstrecke/603/110493/p0/?img=0.0

46番目に紹介しているのは銘柄ではなく、単にジョッキについだビールの写真。
これはユーモアなのか、それとも読者が自分の好きなビールを入れればいいのか。
http://www.sueddeutsche.de/,tt9m3/kultur/bildstrecke/603/110493/p0/?img=45.0


ヨーロッパのビールばかりだと思っていたら、48番目にキリンビールが載っている。
http://www.sueddeutsche.de/,tt9m3/kultur/bildstrecke/603/110493/p0/?img=47.0

ドイツ人向けの本だから、大量生産のビールでもどうせ知らないから、かまわないということか。
できれば日本の地ビールで、本当においしい銘柄を紹介してほしかった。


私が飲んだことのあるビールは次の一つのみ。
http://www.sueddeutsche.de/,tt9m3/kultur/bildstrecke/603/110493/p0/?img=75.0

50銘柄くらいは飲んでいたが、ドイツだけでもかなりの数なので、ほんの一部である。

留学時に住んでいた街では、5種類のビールを生産していた。
日本の地ビールブームは沈静化したようだが、本物のビールの生産を続けてほしいものだ。

既に取り上げられている話題だが、冥王星が惑星から降格されるということで、
新たな定義として "Dwarf Planet" という分類が提案され、IAUで決議された。

文書は英語で書かれているため、"Dwarf Planet" を各国語に訳す必要がある。

ドイツ語では、同じゲルマン諸語ということで、ほぼ直訳の "Zwergplanet" である。

当初は日本語でも、直訳した 「矮惑星」 という仮称が付けられていた。

その後、正式名称の議論が続けられていたが、4月9日に日本学術会議から発表があり、
"Dwarf Planet" に対して、「準惑星」 という名称にすることで、とりあえず合意した。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t35-1.pdf

この中で、dwarf planet の定義自体にあいまいさが残ることを指摘しており、
「準惑星」 という新学術用語も積極的に推奨はしないと、中途半端な表現をしている。

参考意見の聴取には、文部科学省の役人も出席しているから、教科書の記載も気にしたようだ。

[dwarf planet の概念は、高校までの学校教育に必要なレベルを超えるものであると判断される。]

[適切な概念整理が進むまでの当面の間は、学校教育をはじめ社会一般においては、
この用語・概念を積極的に使用することは推奨しない。]

[社会的要請などからdwarf planet の日本語での表記が必要な場合は、「準惑星」と表記することを推奨する。
IAU 決議直後に用いた直訳的仮訳である「矮惑星」は推奨しない。]

様々な新事実の発見によって、定義や概念が変わることが自然科学ではあたりまえなのだから、
余計な教育的配慮ということをするのは、科学技術立国の考え方とは合わないと思う。


また、ここでは触れられていないが、報道では 「矮」 が常用漢字ではないことに加えて、
「背が低い、丈が短い、小さい」 という意味に由来する語感が良くないとされている。

天文用語でも白色矮星や褐色矮星があるし、園芸でも矮化という用語もあるのに。
常用漢字ではなくても、他の漢字に置換できない場合には、フリガナを付ければいいと思うが。

日本語での漢字使用は、英語でのラテン語・ギリシャ語由来の専門用語と比較されるが、
英語の "dwarf" は日常語と言える単語だから、専門用語の言い換えという問題は生じないだろう。



この漢字の語感が良くないという話は、実は江戸幕府の時代からある。

福沢諭吉が "competition" の訳語を 「競争」 としたところ、
幕府の役人が、「『争(あらそう)』 という漢字は好ましくない」 と反対したそうだ。

学術的な意味や、元の外国語の語源はどうでもよく、単に見た目や語感が優先されるわけだ。

これは別の話だが、「腥(なまぐさい)」 が 「月と星でかっこいい」 という理由から、
人名用漢字にしてほしいという要請があったが、これも本来の意味など無視する点が共通している。


そこで、「惑星に次ぐもの」 という意味から 「準惑星」 とするのが無難な選択のようだ。
「準」 の意味には、[それに次ぐものである。「準会員・準決勝・準急・準禁治産者」] とあるし。

「準」 を逆に英語へ直訳すると、"quasi" という選択肢もありうる。

翻訳で間違えないように、学術用語オンライン辞書などの充実を期待したい。

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