2007年06月

今朝、ドイツの新聞・雑誌のサイトを閲覧していて、原発施設の火事の写真に驚いた。
よく読むと、100mくらい離れた場所にある変電設備の火災だった。

Spiegel 誌の記事は次のとおり。
http://www.spiegel.de/wissenschaft/mensch/0,1518,491337,00.html

S??ddeutsche Zeitung の記事は次のとおり。
http://www.sueddeutsche.de/wissen/artikel/59/120904/

設備が巨大で大量の油があるため、消火作業は困難であったというが、2時間程度で鎮火できたようだ。
念のため原発を停止したそうだが、電力不足になって電車や地下鉄が停まるなどの影響は出た。

負傷者が皆無で、原子炉にも環境にも影響がなかったためか、日本ではほとんど報道されていない。
現時点で確認できたのは、毎日新聞の速報記事のみであった。

[6月29日2時45分配信 毎日新聞
ドイツ北部ハンブルク近郊のクリュメル原発の変電施設で28日午後、火災が発生した。
消防当局によると、原子炉の損傷はなく、けが人もいないという。
地元警察報道官は「安全確保と警戒のため原子炉の稼働を停止した」と説明している。
消防隊員らが出動し、火災は2時間後に鎮火したという。]


原子炉そのものには損傷はなかったが、この火災の時期が悪かった。
原子力エネルギー利用の今後の方針を決める会議の直前であった。
その会議は来週火曜日から始まり、温室効果ガスの削減なども含めて、今後のエネルギー政策を決める。

環境大臣は原発廃止を主張するだろうし、グリーンピースなどの活動も激しくなるだろう。

今回停止した Brunsb??ttel 原発は2009年に、Kr??mmel 原発は2016年に廃炉予定。
老朽化した原発の延命ではなく、廃炉を早めることになるかもしれない。

逆に経済界は、原発の延命措置を主張し、温暖化対策の費用が経済に与える影響を気にするだろう。


ところで日本では、原発に接続した変電所で火事が発生した場合、すぐに対応できるのだろうか。

追記:
7月2日から火災現場の検証が行われる。
グリーンピースは既に抗議活動を開始している。
http://www.spiegel.de/wissenschaft/mensch/0,1518,491659,00.html

(最終チェック・修正日 2007年07月01日)

ポーランドの週刊誌 Wprost は、記事や表紙の合成写真などで何度も議論を巻き起こしている。

今回ドイツ人を憤慨させているのは、最新号の表紙の合成写真である。

AP配信の写真であるが、これを見ると、メルケル首相が胸をさらけ出し、
ポーランドの大統領と首相の兄弟が、左右の乳房をそれぞれ吸っているものだ。
http://www.sueddeutsche.de/,tt3m1/deutschland/artikel/878/120725/

日本語記事を探したところ、AFPのものがあった。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2245250/1725239


メルケル首相は 「ドイツにもポーランドにも報道の自由がある」 と、冷静に答えている。

編集長は、「ドイツ世論のテストだ」 と言い、その背景として、
「ドイツはポーランドの母親のように接しているが、実は偽者の母親だ」 とのこと。

ポーランドとドイツとは、戦後補償問題や国境確定などで他国より解決が早かったと言われていたが、
ポーランド首脳の最近の発言は、ドイツとの完全な和解が困難であることを示している。


ドイツからみてポーランドは貧しい東欧の国ではあるが、人件費が安いので、
チェコと同様に自動車工場などの進出先としては魅力があるようだ。

ドイツは過去を反省し、経済援助などで寛大な姿勢を見せていたわけだが、
ナチスに土地を奪われ虐殺されたポーランド人には、過去の記憶が染み付いているのだろう。

それに世界遺産のアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所跡地について、
「ナチス・ドイツの」 という形容詞を追加することを主張し、そして認められた。

明記しないと、ユダヤ人虐殺がポーランド人によって行われたと、誤解されるからだという。

日本の首相もアジアの国で、変な合成写真にされていたことがあった。
今後のドイツとポーランドの関係がどうなるのか、報道をチェックしていこうと思う。

(最終チェック・修正日 2007年06月29日)

北海道のミートホープ社で発覚した、牛ひき肉の不当表示事件について、農林水産省のリリースが出た。
http://www.maff.go.jp/www/press/2007/20070625press_11.html

この事件ではまた、農林水産省と都道府県との連携の悪さが露呈したため、当面の改善策も出された。
http://www.maff.go.jp/www/press/2007/20070625press_10.html

これまでも様々な食肉関係の事件があり、特にBSE問題のときの騒ぎは記憶に新しい。

今回の事件では、健康被害が報告されていないので、役所も内部告発を放置していたと思われる。

牛肉に豚肉が混入していたら、宗教上の理由から大問題になりそうだが、ここは日本だから無関係か。

ドイツの学食では肉の種類を入り口で毎日示していたが、日本で暮らす外国人は大変だろう。


また、私の父が生きていたら、最近の食肉偽装事件をどう思うのだろうか。

日本の畜産を変えようと努力し、私の父が始めた酪農モデルが、
農林水産省の後押しもあって、東北地方各地に導入されようとしている。

私の父は県経済連で牛乳関係の仕事をし、定年後は関連会社の食肉加工会社の副社長をした。
万年赤字だったその会社を、新商品の開発などで黒字転換させた。

万年赤字の甘えきった社風を一変させ、そして若手をドイツに派遣して新商品のネタ探しをさせた。
その若手社員はハムなどの工房で修行をし、帰国後に独自商品を作り出した。

特別なタレに漬け込み、香辛料を表面にまぶしたペッパービーフは、贈答用を中心に人気が出た。
その後、他の大手食品会社も同様の商品を発売するまでになった。


食肉偽装の話に戻ろう。

今回の 「牛ミンチ事件」 は、20年以上前から継続しており、あまりにもひどすぎるが、
食肉の産地偽装や不当表示は、これまで何度も指摘され、テレビ番組でも放映されてきた。

しかしながら、農林水産省や都道府県が業者を処分したという話は、ほとんど聞かない。
自民党の農林族だけではなく、食肉業者の背後にある圧力団体が怖いからだ。


ところで、こういった食肉に関する事件というのは、どの国でも起きているものだ。

私が留学していたドイツでも、冷凍鶏肉からサルモネラ菌が検出されたり、
古い肉を使ったドネルケバブ(円筒形に肉を固め、回転させながら焼いて削り切ったもの)もあった。

最近も、腐敗した肉を販売したとして、取調べを受けた食肉業者もいた。

すべてを疑って生きるのは疲れるのだが、健康のためにも気をつけたい。

これでロックフィールドなど、生産者のチェックもできている会社の株価が上がりそうだ。

ダイエットや健康食品のCMが多いと批判される民間衛星放送だが、
地上波ではなぜか放送枠が獲得できない、質の高いドキュメンタリーも多い。

今日6月24日と明日25日のBS-iでは、「動物保護を巡る大国の思惑」 が再放送される。
24日はウミガメについて、そして25日はクジラについてで、どちらも日本にも関係がある。

2002年に初回の放送で、何度か再放送したとのことだ。
初回放送後の進展状況を追加してほしいが、現在でも資料の一つとして意味があると思う。


一応、番組制作会社のHPをリンクしておく。
他の番組も、きちんと取材をして制作しているので、信用してもよいだろう。
http://www.jin-net.co.jp/index.htm


24日の 「経済制裁がもたらしたウミガメ保護の混乱」 の番組紹介は次のとおり。
http://www.bs-i.co.jp/app/program_details/index/KDT0503000

[経済制裁をも持ち出してウミガメの保護を推進するアメリカ
打撃を受けた漁民は、海岸を切り崩してエビの養殖場を作った…
本当の環境保護とは、一体何なのか…?

アメリカは、自国同等のウミガメ保護をしていないASEAN諸国からはエビの輸入を禁止するという
一方的な通達を、5年前、突然に打ち出しました。

アメリカが保護を訴えるウミガメは、実はタイの海にいるウミガメとは違う種類でした。

WTOは、アメリカに再考を求める判決を下しましたが、アメリカの態度は変わりません。

「環境保護」という言葉のベールに隠された大国の政治的策略とは何なのでしょうか。]


テキサス州の沿岸でのエビ漁で、絶滅が危惧されるウミガメが混穫されていると指摘された。
その環境保護団体の運動により、混穫防止の網が使われるようになり、漁獲高は激減した。

この混穫防止の網には科学的根拠もウミガメ保護の効果もなかったが、
アメリカはこの網の使用を規定した国内法を、なぜかタイなどに押し付けた。

アメリカでもタイでも、ウミガメの産卵場所をリゾートなどに開発したから絶滅危惧種になったのだが、
わかりやすい敵を作り、そして寄付金を集めたい環境保護団体は、エビ漁師をターゲットに決めた。

エビ漁では収入が確保できなくなったため、タイではマングローブ林を切り開いたり、
ウミガメの産卵場所である海岸を、エビ養殖場に変えてしまい、余計ウミガメが減る要因となっている。

またキューバではウミガメが貴重なタンパク源だが、虐殺しているとアメリカに騒がれて迷惑している。

キューバをワシントン条約締結国にすることで、ウミガメの甲羅を日本に輸入しようとしたが、
日本の自動車をターゲットにした経済制裁をするとアメリカが脅し、日本政府は輸入を断念した。

そのため、今はキューバでウミガメ保護と養殖の研究中だが、日本のべっ甲細工は壊滅寸前だ。

タイではウミガメの回遊の研究が始まり、科学的調査に基づく禁猟区や禁漁期間の設定を目指している。


良心的な科学者や自然保護団体の主張は、現場を知らない政府や活動家には届かないのだ。



25日の 「捕鯨論争最前線・クジラを巡る30年の戦い」 の番組紹介は次のとおり。
http://www.bs-i.co.jp/app/program_details/index/KDT0503100

[2001年7月、ロンドンで行われたIWCで、またしても日本の商業捕鯨再開は実現できませんでした。
しかし、これまでと違い、日本の立場に賛同する国が半数近くにものぼりました。
国際的に当然とされてきた「反捕鯨運動」に、今何がおこっているのでしょうか。
クジラを巡って対立する日本とアメリカを取材、論争の根源、転換期を迎えた反捕鯨活動を徹底検証します。

極秘で行われている日本の調査捕鯨。その現場に初めてテレビカメラが入りました。
そこには自らの信念で長期捕鯨に望むお父さんの姿や若者の姿がありました。

1972年第1回人間環境会議。この会議が「商業捕鯨全面禁止」のスタートでした。
この場に臨んだアメリカの秘密文書を入手。アメリカの思惑の背景に迫ります。

科学的データの乏しいまま始まった「商業捕鯨全面禁止」。
そのバックアップに"利用された"環境保護団体…。
しかし今は立場が逆転。保護団体にアメリカ政府が牛耳られている!? ]


捕鯨賛成派も反対派も、そして中立派も、この番組を共通の資料の一つとして観ておくべきではないか。


追記:
時間の都合かもしれないが、水産庁と日本鯨類研究所の関係については触れていなかった。
官僚の天下り規制が強まると、水産庁関係者は日本鯨類研究所の理事になれないかもしれない。

番組では北西太平洋での捕獲調査の映像もあったが、これと同じ調査を他の機関ができるだろうか。
今年から公募にしているが、結局はこれまでの随意契約と同様に日本鯨類研究所が採用されるだろう。

また、捕鯨文化を守ろうと言っているのに、有明海を殺しているという矛盾もある。
次回は、こういった政策の矛盾についてドキュメンタリーを作ってほしいものだ。

(最終チェック・修正日 2007年06月27日)

反捕鯨国ドイツ国内向けということなのか、ドイツの週刊誌 Stern のHPには、
日本の南房総の和田漁港で行われた、今年最初のゴンドウクジラの解体作業が、写真で紹介されている。

ただ、解剖や動物の内臓に慣れていない人は、見ない方がいいと思う。
http://www.stern.de/wissenschaft/natur/:Walschlachtung-Japans-Hunger-Wale/591557.html


和田漁港での鯨解体についての紹介は、次のとおり。
http://www.gyokou.or.jp/100sen/100img/100sijitu/si034.pdf

この説明にあるように、解体作業は一般公開されており、写真のように小学生の見学も行われている。

Stern の写真に戻ろう。
タイトルは "Walschlachtung: Japans uners??ttlicher Hunger auf Wale" で、
「クジラ捕殺:クジラへの貪欲な日本の渇望」 としておこう。

"Schlachtung" は 「(家畜の)屠殺」 だが、クジラは家畜ではないので、「捕殺」 とした。
"Hunger" は 「空腹」 ではなく、ここでは比喩的表現の 「強い欲求、渇望、熱望」 であろう。


1枚目は、解体が始められた体長10mのゴンドウクジラと、それを見ている小学生。

キャプションでは、2007年最初のクジラ解体であることと、
今年は調査目的で約60頭の希少種のクジラが殺されることが説明されている。

2枚目ではなぜか、「商業捕鯨をしている4地域の一つ」 と紹介しながら、
「捕鯨の特別許可をIWCで得ることに失敗した」 と矛盾する表現。

3枚目では解体はまだそんなに進んでいないが、キャプションでは、
「商業捕鯨モラトリアムを、ノルウェーとアイスランドは承認せず、商業捕鯨をしている」 と説明。

4枚目では、皮とその内側の分厚い脂肪層が除去され、赤身があらわとなっている。
キャプションでは、特別に許可される場合とは、例えば 「真に科学的な目的」 と説明。
加えて、「ノルウェーと日本は、モラトリアムを覆そうと何度も試みている」 とも。

5枚目では赤身を骨からはがしている場面のようだ。
そして、「科学的調査をするという口実で日本はクジラを捕獲し、その肉を販売している」 と。

6枚目では、赤身がはがされて背骨が現れたところ。
キャプションでは、商業捕鯨再開に向けた最近の動向についての説明。

7枚目は、切り離された頭部が、血液で真っ赤に染まった床面に置かれた写真。
2007年に日本は、伝統的意味での沿岸捕鯨は許可されるべきという提案に失敗した。

8枚目は、背骨の間を切ろうとしているように見える。
「鯨肉食は日本の食文化の一部であると、日本は論証している」 と紹介しているが、
"der Verzehr von Walfleisch sei Teil seiner Esskultur" と、接続法第擬阿覆里楼嫐がありそう。

9枚目は、血の海と長靴。
10トンのゴンドウクジラが、バラバラに解体された。

10枚目は、脂身の処理のようだ。
「日本はナガスクジラとイワシクジラの捕鯨を望んでいる」 とWWF関係者の発言を引用し、
そしてその2種類のクジラも、絶滅危惧種であると紹介している。

11枚目は、切り離した頭部から、更に脂肪層などを切り取ろうとしているところ。
2006年のIWC年次会合で、日本、ノルウェー、アイスランドおよびその他捕鯨賛成国は、
約20年間で初めて票決を勝ち取った、と説明。

12枚目は、その頭部が細かく解体される途中。
日本の致死的調査を批判するWWF関係者の話として、
「クジラを殺さなくても科学的調査はできる。胃の内容物や遺伝子を知りたければ、
皮膚サンプルを採ればできる」 と紹介している。


ドイツは反捕鯨国だから、説明が日本に不利になるように書くのは当然のことだ。
他の記事でも、なるべくグロテスクな写真を選ぶようにしているのも、意図的だろう。

ただ捕鯨賛成者は、「日本人はクジラを無駄なく利用する」 と主張しているのだから、
こういった解体作業の現実を世界に知ってもらえば、証明できるのではないだろうか。


こういった写真の掲載は、やりすぎではないかと思う人がいるかもしれないが、
ドイツでは例えば、生きているブタの頚動脈を切って殺し、ソーセージになるまでを見せている。

食べ物がどこから来て、どのように加工されているのか、捕鯨抜きでも食育として学ぶべきだろう。

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