2007年07月

オハイオ州立大学の Philip Mazzocco 助教授と、ハーバード大学の Mahzarin Banaji 教授は共著で、
アメリカ白人がアフリカ系アメリカ人に対して持つ偏見についての、心理学的考察を発表した。

私が最初に気づいたのは、ドイツ語の記事で、次のとおり。
http://www.sueddeutsche.de/,ra14m3/wissen/artikel/98/124913/

元になったオハイオ州立大学の、研究ニュースは次のとおり。
http://researchnews.osu.edu/archive/blckcost.htm

掲載論文誌(オンラインジャーナル)は次のとおり。
Du Bois Review: Social Science Research on Race (2006), 3: 261-297
http://journals.cambridge.org/action/displayJournal?jid=DBR

論文の要約は次のとおり。
http://journals.cambridge.org/action/displayAbstract?fromPage=online&aid=1018408&fulltextType=RA&fileId=S1742058X06060206

この研究について私は7月25日に知ったのだが、アメリカでは既に6月には報道されていた。
「アフリカ系アメリカ人 vs テレビ」 などのタイトルで。

オンラインで5月には入手できたわけだが、日本では1ヶ月経つのに、
人種問題に関心がないのか、まだ報道されてはいないようだ(調査継続中)。


この研究報告書は15ドルでダウンロードできるが、ニュースで取り上げられたことだけメモしておこう。

ニュースでは、白人に対する2つの質問が強調されている。

1.今後の一生を、黒人として生活することになった場合、どのくらいの金額を要求するか。

回答は1万ドル未満が多かった。

2.今後の一生を、テレビなしで生活することになった場合、どのくらいの金額を要求するか。

回答は100万ドルが多かった。


このことから、「アメリカ白人は、黒人の貧困生活などイメージできていない」 と言えるだろう。
平均家計15万ドルの白人は、黒人になったとたんに、家計が5分の1になるとは知らないようだ。

黒人になったら、白人のときと同じ仕事には就けないかもしれないし、寿命も縮まるかもしれない。

それなのに1万ドルでもかまわないというのは、アメリカの現状を知らないということなのだ。

そのためか、奴隷の子孫に対する補償について、9割の白人が反対している。
この大半の白人が反対である理由付けのために、今回の心理学的調査が行われたそうだ。


一生テレビなしだと100万ドルというのも、テレビが普及・浸透したアメリカらしい。


同様の調査を日本でするならば、1番目は他のアジア諸国の国を挙げるのだろうか。
2番目はテレビなしよりも、携帯電話なしの生活の方が反応するかも。

ヨーロッパの白人はどうなのか、関連調査がみつかれば読んでみようか。

(最終チェック・修正日 2007年07月27日)

昨日、7月24日に、北陸電力「再発防止対策検証委員会」の第2回会合が開催された。
http://www.rikuden.co.jp/saihatsuboshi/index.html

地元の北國新聞でも報道されていた。
http://www.hokkoku.co.jp/_keizai/K20070725303.htm

[会合後、児嶋委員長は「異論を差し挟む余地がない対策だ。現場の士気も高いと感じた」と述べた。]

そんなに劇的に、北陸電力は変化したのだろうか。

毎日新聞によると、この児嶋委員長はプルサーマル推進派だからなのか、次のような気になる発言もした。

[児嶋委員長は、会合で原発の耐震性の議論があったとして、中越沖地震で
柏崎刈羽原発の一部で耐震設計上想定した揺れの約2・5倍を越える揺れを観測したことについて、
「むしろ原子炉そのものが安全だったことを評価したいという意見が大勢だった」と述べた。]



25日時点で議事要旨がまだ掲載されていないので、最初に第1回会合について追記しておく。

北陸電力の 「えるふぷらざ」 という広報誌の方が、詳しく記載されていた。
http://www.elfplaza.jp/contents/rinji/index.html

委員会での意見も掲載されているが、誰の発言なのか明記されていない。
マスコミを入れないことを検討しているのは、発言者が特定されないようにしたいためなのか。

特に対策5への意見で、2番目のものが気になる。

原子力は特殊な分野ではなく一般の技術である。
原子力だからという理由でのペナルティー強化は適切ではない。


これは原子力関係・大学関係の委員3名のうち、誰か、または複数の意見だろう。


追記:
第2回会合の概要が掲載された。
http://www.rikuden.co.jp/saihatsuboshi/02_iinkai.html

児嶋委員長の発言では、委員会の非公開を決定したというのが気になる。
原発推進派の発言ははっきりしているから推測できるが、それでも知られたくないのか。

委員会は非公開とし、委員会後の記者会見で公開することとした。
自由で忌憚のない議論で検証を深めることが必要と判断。]

次の発言は推進派の大橋委員ではないか。
[再発防止対策と合わせて、「原子力は基本的に安全」ということもしっかり説明していってほしい。]

そして次の発言は、児嶋委員長だと思われる。
福井では原子力が資産であるとの認識が醸成される等、安全への意識がこの数年間で変わってきた。
石川・富山もある意味で意識を変えるチャンスだと思う。]

推進派は議論の方向を、恣意的に誘導していると思われるが、これが中立な委員会と言えるのか。

(最終チェック・修正日 2007年08月04日)

新潟県中越沖地震により、自動車部品メーカーの工場が被災し、国内自動車メーカーのラインも止まった。
すると他の部品メーカーでも、生産しても意味がないので、連鎖してライン停止となった。

トヨタ自動車が世界に大宣伝している、「カンバン方式・ジャストインタイム」 の弱点が露呈した。

生産再開を早めたい自動車メーカー各社は、人員を派遣して部品工場の再稼動を手伝った。
そして24日から、一部の工場では自動車の組み立てが再開されることになった。

私が嫌いなトヨタ自動車の場合、社長が記者会見で次のように語ったという。

[7月23日19時1分配信 時事通信

トヨタ自動車は23日、新潟県中越沖地震の影響で休止していた工場の操業を24日に一部再開すると発表した。

19日夕から全国にある31の生産ラインすべてを停止していたが、24日にはこのうち20ラインを再開する。

渡辺捷昭社長は23日、都内で記者会見し、生産停止による影響は5万5000台程度になるとの見通しを
明らかにした上で、「台数のマイナス分はできるだけ年内に取り戻したい」と述べ、
休日操業などで穴埋めする考えを示した。


別の新聞では、「年内に取り戻せると思う」 と、表現が微妙に違うが、
年間生産台数の目標達成が、社長にとって最優先課題だということはわかる。

幹部の見解としても、「3日半程度の休日出勤で取り戻せる」 と報道されている。

「労働組合と相談することになる」 という発言も報道されているが、
なぜ労働者に説明する前に、マスコミや投資家相手に発言するのだろう。


このようにトヨタは、「自動車絶望工場」 の時代から、労働者を大切にせず、
生産目標の達成を絶対に優先させるという、人権無視会社なのだ。

確かに生産台数は、株主にも約束した目標だから、達成したいのは経営者としては当然だろう。
ただ、カンバン方式の弱点を放置した責任を、労働者に休日出勤させることで回避するのは理解できない。

地震の被害によってラインが止まったのは、決して労働者のせいではないのに。

今回のように、特殊な部品について、供給元の分散ができない場合、
カンバン方式の維持にこだわらず、在庫管理の部署を持ってもいいはずだ。

トヨタの労働組合は複数あるが、休日出勤拒否の闘争をするだろうか。
非正規雇用の労働者たちは、収入を増やすために反対しないかもしれない。

社長が勝手に、休日操業をすると決めたわけだが、労働者が服従すると信じているのだろうか。

ちなみに、全トヨタ労働組合のブログで、関連記事は次のとおり(トラックバックもしました)。
http://blog.goo.ne.jp/atunion/e/d8ae2513603074c55cea75fcd0fe8d85

ついでに全トヨタ労働組合のHPは次のとおり。
http://www.katch.ne.jp/~atunion/

非正規雇用の労働者は、休業補償がないと思われるので、相談してはどうだろうか。


これでトヨタが嫌いな理由が一つ増えた。
私は一生、トヨタの車を買うことはない。

(最終チェック・修正日 2007年07月25日)

EU・ヨーロッパ共同体は、多民族・多言語の集合体であり、
加盟国が増えるごとに、言葉の問題は大きくなっている。

公用語を英語やフランス語などの数ヶ国語に絞る案もあったようだが、
多様な社会を維持したまま、統合する道を選び、加盟国の公用語をすべて採用している。

それでなくても隣の国まで買い物に行ったりと、簡単に国境を越えて人が移動するので、
それに移民も多いので、外国語知識を持つ人の割合は、日本よりも多いことになる。

ドイツ留学のときも研究室には、6ヶ国語を話す語学マニアもいたし、
ルクセンブルク系アメリカ人は、4ヶ国語を話すことができる。

ゲストハウスのパーティーでも、6ヶ国語を話すオランダ人に会ったし、
観光地や空港では、英独仏のどれかがわかれば、なんとかなるので便利かもしれない。

ドイツのギムナジウムでは、2外国語を身につけなければ卒業できず、つまり大学にも進めない。
日本と同様に、まず英語を選択する生徒は多いが、2つ目はフランス語やイタリア語など自由だ。

今ではラテン語を選択することは減ったが、それでもまだエリート好みの言語ではある。
アジア人をサルの一種として軽蔑するヨーロッパ白人は、わざと目の前でラテン語を話すこともある。


そんなドイツだが、外国語教育に力を入れて、4ヶ国語を勉強させるギムナジウムもあるという。
「英語+ヨーロッパ2ヶ国語+非ヨーロッパ1ヶ国語」 で、これにラテン語も加わる。
http://jetzt.sueddeutsche.de/texte/anzeigen/391226

それは、チューリンゲンの森の中にある、ザルツマン・ギムナジウムだ。
http://www.salzmannschule.de/

1784年に、Christian Gotthilf Salzmann が設立した。
http://www.mdr.de/geschichte/personen/138959.html

学校HPの最初にあるように、6年ほど前から、「語学の特別ギムナジウム」 になっている。
とは言いながら、英語とフランス語のページは工事中ばかりなのは残念だ。

基礎教育が終わって、大学進学のためのギムナジウムを選ぶわけだが、
このザルツマン・ギムナジウムに入学すると、最初の5年生から英語が始まる。

それに英語のみでの歴史授業は、他校では7年生から始めるのに、既に5年生で始めているそうだ。

英語の集中講義や、イングランドの姉妹校での語学研修もあるから、教師が英語だけを使っても、
ドイツの学校なのに生徒は、(完璧ではないにしても)理解できるようになるという。

入学1年後の6年生からは、なんと 「非ヨーロッパ言語」 を選択しなければならない。
それは、「中国語・日本語・アラビア語」 から一つ選択する。

特に中国語がドイツではブームになっており、中国で仕事をする夢を持っている生徒もいる。
日本語は、やはり経済的な関係で注目されているようだ。

また、ヨーロッパは中東が近くて、歴史的にも関係があるので、アラビア語が入っている。
アラビア語を選択すると、シリアで語学研修というのもあるそうだ。

8年生では 「フランス語・スペイン語・イタリア語・ロシア語」 から一つ、
9年生では、その4ヶ国語から更に一つを追加選択することになる。

文法的に近いスペイン語とイタリア語を選択して、楽をする生徒もいるわけだが、
それでもドイツ語を含めて5ヶ国語を知っていることは、エリートとして競争に勝つために有利だ。

ここで、トルコ系移民が多いドイツなのに、トルコ語が入っていないのが気になるところだ。
記事の写真はギムナジウムとは無関係だが、花の説明にドイツ語とトルコ語を併記しているのに。
このあたりは、トルコをヨーロッパとして認めるかどうかの、潜在的意識が絡んでいるのかもしれない。


EU市民は、EU域内のどこでも仕事ができるのだが、言葉の問題は必ず付随してくる。
ドイツの失業者対策でも、ドイツ語圏のオーストリアやスイスを勧めることがあるが、選択肢は狭くなる。

もし経済発展をしている国の言葉がわかれば、移住して仕事ができるので、生き残るチャンスは増える。


それにしてもドイツの14歳は、経済発展をしている中国に注目して中国語を勉強しているのに、
日本人は英語こそが国際語だと信じ切っていて、英語の勉強にばかり傾注していて異常だと思う。

スーパー・イングリッシュ・ハイスクールを作ったり、小学校から英語を始めるのもかまわないが、
多様な国際社会で日本が生き残るためにも、多言語に人材を分散しておくべきではないだろうか。

本来ならば日本でも高校では、最低2ヶ国語を勉強すべきだと思う。
北海道や新潟ではロシア語、九州では中国語・ハングルといった地域の特徴があってもいい。

大学入試が悪いと言ってしまえばおしまいだが、中学・高校の6年間を入試英語対策に費やすよりも、
生徒が興味を持つ英語以外の外国語を、部活動ではなく授業として選択できるようにしてほしい。

私は漢詩に興味があったから高校2年から中国語も独学した。
それに化学者になりたかったから、高校3年からドイツ語も独学していた。

研究者になって実際に使うのは、英語とドイツ語だけになったが、
漢字の意味の違いについて、中国人留学生と話すきっかけができただけでもよかった。


「英語が完璧でもないのに、どうして他の外国語を勉強するのか」 と質問した人もいたが、
そんなことを言ったら、完璧な日本語を習得するまで英語の勉強すらできないことになる。

これは自己満足かもしれないが、知的好奇心を満たす何かに挑戦しているという意識が好きなのかも。


ドイツ人に負けないように、日本人も頑張ってほしいものだ。

柏崎刈羽原発は新潟県の立ち入り調査を受け、そして地震被害状況を公開した。

そのニュースの中で、東京電力の発表した漏洩放射性物質の量や放射能測定値について、
橋本哲夫・新潟大学名誉教授が、「妥当なデータ」 と確認したそうだ。

[7月21日18時0分配信 時事通信

新潟県中越沖地震で放射能漏れや火災など相次ぐトラブルを起こした東京電力柏崎刈羽原子力発電所について、県や柏崎市などは21日、安全協定に基づく、同原発の立ち入り調査を終えた。

調査メンバーの橋本哲夫・新潟大名誉教授(放射化学)は「(放射性物質の)漏れは非常に微量だ」と話した。

立ち入り調査の対象は、放射能を含んだ水が海水に漏れ出た6号機、放射性物質が大気中に放出された7号機など。
メンバーが、東電側からの説明を受けながら目視で確認した。

橋本名誉教授は調査後、「(水)漏れもヨウ素も非常に微量。東電が出したデータも妥当なものだ」と述べた。]


この橋本名誉教授は、原発に対してどういった立場なのか、検索してみた。

新潟大学の研究者総覧にプロフィールがあった。
http://researchers.adm.niigata-u.ac.jp/public/HASHIMOTOTetsuo_a.html

放射化学でも、分析が専門だから、東京電力の測定について判断できたわけだ。
次世代環境モニタリングシステムの開発もするなど、分析・測定の専門家だとわかる。

研究内容や学会発表のタイトルを見ると、考古学のための年代測定法開発もしているので、
原子力発電の推進派というわけではなく、専門知識のある学識経験者というだけかもしれない。


また、「新潟県原子力発電所周辺環境監視評価会議委員」 という組織のメンバーである。

今年3月26日に開催された、柏崎刈羽原発に関する第46回会議については次のとおり。
http://www.pref.niigata.jp/bosai/genshiryoku/niigata/hyouka-46/index.htm

このとき橋本教授(当時)は、制御棒引き抜け事象による臨界事故について、次のように質問している。

[メディアを賑わせている制御棒の引き抜けによる臨界について、マスコミは爆発するみたいなことを危惧しているようだ。  実験炉では制御棒をある程度抜いても爆発には至らないと認識しているが、発電炉についてはどう考えているか?

マスコミは大事故が起こったように報道するので、一般の人は恐怖心を抱いている。  報告がなかったことは如何なものかと思うが、我々も勉強する必要があるし、説明する側も十分に説明した方がよい。]

なんだか、不安をあおっているのはマスコミの報道の方だ、とするような発言だ。
専門家としては、科学の素人が本質を理解せずに騒ぐことが、不満なのかもしれない。


今回もマスコミは、前代未聞の事故が起きたと報道しているから、やはり不満に感じ、
橋本名誉教授としては、微量だから騒ぐほどのことではない、とでも言いたいのか?


原発推進派とは言えないまでも、東京電力の発表を補強する役割をはたしているようだ。
本人の意思はどうなのか不明だが、「学識経験者が言っているから」 と利用されそうな気もする。

大学は定年退官したわけだが、原子力委員会のメンバーでもあるから、
原発反対の立場から発言することはないと思う。

今後もニュースで確認しておこう。

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