2007年09月

自然科学の研究で必要な外国語とは、やはり英語が第一番目に挙げられるだろう。

国際会議の公式言語は英語であり、自分が発表するだけではなく、
他者の発表を理解したり、質問するにも英語能力を鍛える必要がある。

論文誌も、ヨーロッパの雑誌であっても、最近は英語ばかりになってきた。

すると今後日本では、第二外国語を勉強しない科学者が増えるので、ドイツ語翻訳者の需要が増えそうだ。


私は高校3年のとき、大学では有機化学を専攻することを考えていたので、
その前からかじっていた中国語に加えて、NHKテレビ・ドイツ語講座で勉強を始めた。

実際に私の研究分野ではドイツ人が多く、読む論文の3割以上がドイツ語だった。

論文をドイツ語だけで出す人もいるので、最新の研究成果もドイツ語で読むことになった。
研究室での新着論文紹介セミナーでも、私は初回にドイツ語フルペーパーの解説をしてアピールした。

そして私は、「研究者になるには英語以外に少なくとももう一つの言語の知識が必要だ」 と発言し、
「ドイツ語なんて英語に似ているから単語の意味だけ辞書で調べれば理解できる」 と言う人と対立した。

そんな中、1995年にドイツの伝統ある論文誌が、英語の原稿のみを受け付けることになり、
つまり私の主張とは反対に、ドイツ語の地位がより低くなったことがショックだった。

それでもまだ、ドイツ語論文を受け付けている論文誌はあり、そこに投稿し続けたドイツ人もいる。


ドイツ語圏ということで、スイスの化学論文誌 "Helvetica Chimica Acta" もドイツ語論文が多かった。
現在でも、英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語の4ヶ国語で投稿を受け付けている。

しかし、2005年12号にドイツ語論文が1報出た後は、今月まで英語論文のみである。
21世紀になってからは、ドイツ語論文は年に1報あるかないかで、フランス語はもっと少ない。


ドイツ人は、哲学や科学の記述にはドイツ語が優れていると思っているが、
他の研究者に論文を読んでもらい、そして引用してもらうには、英語の方がいいと感じている。

ヨーロッパのエリートは3-5ヶ国語を使えるので、英語一つに苦労する日本人を笑っているかもしれない。
それでも、自然科学でのアメリカ優位、英語優位の状況は変えられず、不本意だが英語を使うようになった。

また、EU諸国で就職するためには、最低2年間は外国でのポスドク経験が必要となる。
どこの国でも通用する言語として、英語を選択するのは自然なことかもしれない。


それでも私はひねくれ者なので、今後もドイツ語の必要性を訴えることにしている。
過去の文献や特許を読むには、どうしてもドイツ語の知識が必要だから。

他の人も、フランス語やロシア語など、自分の研究分野で使いそうな第二外国語を学んでほしい。

そうすれば大学・研究所には、英語以外の外国語を知っている日本人研究者が何人かいることになり、
翻訳会社に依頼する前に内容の確認ができるだろうし、留学生や招待講演者の対応もよくなるだろう。


追記(2011年01月08日):
2010年に一度だけドイツ語の記事が掲載されたが、これは論文ではなく、
ドイツ語で行われた講演会について、再構成したものである。

2010年も実質的に、全ての論文が英語であった。

(最終チェック・修正日 2011年01月08日)

以前も書いたが、外国語を学ぶ目的の一つに、「日本で報道されない情報にアクセスすること」 がある。

1957年9月29日に、旧ソ連の核施設で爆発事故があり、今年で50年経った。

ドイツの新聞・雑誌では、この50年前の事故と放射能汚染について、特集記事を掲載している。
http://www.sueddeutsche.de/,ra16m3/wissen/artikel/619/135358/

英語の記事としては、例えば International Herald Tribune を引用しておこう。
http://www.iht.com/articles/ap/2007/09/29/europe/EU-GEN-Russia-Nuclear-Accident.php

モスクワ発AP電を掲載しており、グリーンピース・ロシアの計画では、
今も核廃棄物処理をしているマヤーク核施設について、閉鎖を求めるデモをするそうだ。

また、Russia Today というニュースメディアにも、英語記事があった。
http://www.russiatoday.ru/features/news/14891


この事故は、日本では原子力関係の報告書に、海外での事故例として紹介されているが、
今年で50年目ということでの特集記事などは、今のところどこにも見かけない。

被爆地広島の新聞である中国新聞では、過去に 「核時代 負の遺産」 というシリーズ記事で取り上げた。
http://www.chugoku-np.co.jp/abom/nuclear_age/former_soviet/010916.html
http://www.chugoku-np.co.jp/abom/nuclear_age/former_soviet/010923.html
http://www.chugoku-np.co.jp/abom/nuclear_age/former_soviet/010930.html

こういった内容を再び記事にするのは、今はタイミングが悪いと、原子力関係者に配慮しているのか。

柏崎刈羽原発だけでなく、六ヶ所再処理施設が注目されるきっかけを作りたくはないだろうし。

過去の事故に学んでいると言っていたのに、先進国ではありえないとされた、JCO臨界事故は起きた。

確かに日本では、チェルノブイリ事故やスリーマイル島事故と同規模の事故は、起きないかもしれないが、
事故で放射能汚染が広がれば、そこには誰も住めなくなり、何世代にも渡る影響が出ることを知るべきだ。

そして日本の原子力関係者の隠蔽体質や、国策の推進に取り入る御用学者の存在が、
ソビエトの体制と似ていると感じ、市民が監視しなければと気づくことが大切だ。

ミャンマー(ビルマ)軍事政権のニュースが気になったが、翻訳の推敲で忙しく、あまりチェックできなかった。

それでも休憩しているときに、いろいろなニュースを見るようにした。

国連での発言で、アメリカ要人が "Burma" と旧国名を使って、抗議の姿勢を示していた。

ドイツの新聞・雑誌のほとんども、民主化勢力の弾圧に抗議して、"Birma" としている。


軍事政権発足当初、日本では、「私たちの番組ではビルマと呼びます」 と宣言したテレビ局もあったが、
いつの間にか 「ビルマ」 ではなく、「ミャンマー」 と呼ぶところばかりになった。


先ほどのアメリカ要人の発言だが、この和訳の字幕スーパーについて、少々気になることがあった。

テレビ朝日の番組では、この発言の前に、「ビルマという旧国名を使って非難しています」 と一言あり、
そして字幕スーパーでは 「ビルマ」 と、発言に忠実な和訳が表示されていた。

しかしTBSの番組では、ブッシュ大統領が "Burma" と言っているにもかかわらず、
字幕スーパーは 「ミャンマー」 と、わざわざ対応しないように表記されていた。

ブッシュの発音は悪いそうだが、「ビルマ」 が 「ミャンマー」 に聞こえたはずはない。

もし現国名を書くとしても、「ビルマ(ミャンマー)」 とすべきだろう。


TBSはパパブッシュの発言でも、「あらゆる手段を用いて」 を 「武力を用いて」 としたことがあり、
TBSの都合なのか不明だが、発言内容を誤解させるように、わざわざ変えることが目立つ。

日本人の日本語による発言も、語尾を変えて反対の意味にしたこともあるから、意図的なのかもしれない。


私は翻訳をしているので、発言者が発したままを、日本語にすべきだと感じている。

それに 「ビルマ」 と発言したことは、発言者の抗議の意志を反映しているのだから、
その発言者の意図を抹殺するような、訳語の変更は失礼だ。

もしかすると翻訳者は 「ビルマ」 としたが、原語を確認しない校正で 「ミャンマー」 になったのか。

この点はTBSに問い合わせてみよう。

今年は 「国際イルカ年」 であり、国連環境計画が監督する。

公式の目的は、絶滅危惧種の保護を行うことで、海洋環境の改善につなげることである。

しかし、真の目的は、日本に捕鯨とイルカ漁をやめさせるために、国際的圧力をかけることである。

過去記事に示したように、今年の9月25日は "Japan Dolphin Day" であり、正午(現地時間)に、
世界各国の日本大使館・総領事館前で、イルカの虐殺に対する抗議デモが予定された。

イルカ漁の中止を求めているある団体のサイトは次のとおり。
http://www.savejapandolphins.com/

その日本語版は次のとおり。
http://www.savejapandolphins.jp/index.html

両者を比べて気づいた人もいるだろうが、英語版は "Save Taiji Dolphins Campaign" と、
「太地のイルカ」 を対象としているが、それに対して日本語版では、
"Save Japan Dolphins Campaign" と名指しを避けるかのように、ぼかしているのが気になる。

ちなみに、太地町の公式HPは次のとおり。
http://www.town.taiji.wakayama.jp/


デモが予定された、例えば、在ドイツ・デュッセルドルフ総領事館では、次のような注意喚起を行った。
http://www.dus.emb-japan.go.jp/profile/japanisch/j_aktuelles/070921_demo_iruka.pdf

日本のイルカ捕獲に抗議するデモについて

9月25日(火)午前11時から午後1時までの間、当館前においてデモが行われる予定です。

このデモは国際的なキャンペーン「Japan Dolphin Day」の一環として、
日本のイルカ捕獲中止の要請を目的として行われるものです。

これまでの情報では、デモは平和的に行われる見込みとのことでありますが、
同日は、このキャンペーンが世界各地で繰り広げられることもあり、
デモ団体が、何らかのきっかけで暴徒化する可能性は排除できません。

当館では、治安機関に当日の警察官派遣の要請を行うなどして、警備対策に万全を期しているところでは
ありますが、在留邦人の皆様におかれましては、むやみにデモ団体に近づいたり、
彼らを刺激する言動をすることにより、自らの生命・身体を危険にさらすことのないよう

十分に気をつけていただくよう、お願い申し上げます。]


日本が環境テロ集団と規定した、あのシーシェパードが参加を表明していたから、注意喚起したのか。
ちなみにシーシェパードの太地イルカ関連のサイトは、例えば次のとおり。
http://www.seashepherd.org/toxiclunch/

日本語ならばドイツ人が読めないと思ってなのか、総領事館の方が既に挑発しているような気もするが。

その後のニュースに何もないから、特に危険なデモではなかったのかもしれない。

(私の留学先の大学で起きた、反ナチスと親ナチスのデモ隊同士の衝突流血事件は、別記事にしておこう。)

国内は福田内閣発足や他の事件があり、イルカのことなど、どうでもよかったのかもしれない。


ドイツのメディアでは、抗議デモは成功したなどと報じているものもあった。

これはベルリンの日本大使館前でのデモを取材した記事。
http://www.pr-inside.com/de/demonstrationen-zum-japan-dolphi-r224755.htm

今年から新たに、「水銀で汚染されたイルカ肉が学校給食に使われている」 が、
捕鯨・イルカ漁に反対する根拠として加えられている。

これまでの食文化非難では日本国民の支持は少ないが、水銀汚染問題ならば注目してもらえる。
太地町では安全性検査をせずに学校給食に出したとも噂され、相手に攻撃要因を与えてしまった。


また、カナダのメディアでは、バンクーバーの水族館に対する抗議活動が報じられている。
http://vancouver.24hrs.ca/News/2007/09/26/4526387-sun.html

太地から展示用イルカを購入したことは、イルカ虐殺を支援していることだと抗議したそうだ。


イルカ肉・鯨肉を食用としたのは5000年以上も前からで、日本の伝統だと主張する人もいて、
先住民生存捕鯨と同様の扱いを要求しているが、アイヌから狩猟やサケを奪ったことは反省しないのか。

日本人は野蛮な虐殺行為をしていると非難され、欧米白人に侮辱されたと憤慨しているようだが、
立場が変われば、他民族を征服して伝統文化を破壊し、そして言語まで奪おうとしたではないか。

それに私は、クジラ・イルカが食卓に上ることがない家庭に育ったため、今も食べないだけだ。
しかし鯨肉愛好家は、私が食べるなと言ったと勘違いし、「アメリカの手先め」 と叫び、脅迫もした。

今回の記事の引用も、別に私はどちらかに賛成・肩入れしているわけでもなく、
海の生態系保全のための国際イルカ年が、日本を非難する運動に利用されるのが変だと言いたいだけだ。

(最終チェック・修正日 2007年09月29日)

ミャンマー(ビルマ)で仏教の僧侶たちが、反軍事政権デモを行っていた。
アウン・サン・スー・チー女史の解放も求めたため、大規模な民主化要求デモに転換した。

治安部隊が武力行使に及び、怪我人が出たとか、5人射殺されたという情報まで出た。

現時点でのニュース(日本語)は以下のとおり。
http://www.afpbb.com/article/politics/2289158/2182771
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-28066220070926

日本語では怪我人が多数出たことのみで、死者について書いていない。

ロイター(英語)では、1人死亡したことが記されている。
http://www.reuters.com/article/newsOne/idUSB58859920070926

ドイツのメディアでは、5人死亡したと報道しており、例えば S??ddeutsche Zeitung は次のとおり。
http://www.sueddeutsche.de/,tt2m4/ausland/artikel/109/134850/

S??ddeutsche Zeitung はリベラル系なので、国名を Birma(ビルマ)と表記している。

この5人死亡というのは、オスロにあるラジオ局 Democratic Voice of Burma が発表した情報だ。


何人死亡したのか、その情報の確認は今後も必要だが、
その前に、軍事政権が国民を弾圧していることを許してはならない。

軍事政権は以前、段階的に民主化を行うと言っていたが、今回の弾圧でウソだと証明してしまった。

アメリカ・ヨーロッパが、軍事政権に対して厳しい態度をとっているのに、
この点では日本はなぜか追随せず、世界一のミャンマー(ビルマ)支援国である。

経済援助であるODAでは、植林や人道援助だけを行っていると言うが、
経団連ではミャンマー軍事政権との会談もしており、市場として期待しているのだろう。

一応、在ミャンマー日本大使館のODAに関する記事を引用しておく。
http://www.mm.emb-japan.go.jp/profile/japanese/oda.htm


北朝鮮に対しては、経済制裁など強硬措置を声高に唱えているが、
民主化運動を弾圧しているミャンマー(ビルマ)も、同様の措置をとらねばおかしい。

今の臨時国会では、インド洋給油活動が主題だが、緊急案件として、
ミャンマー軍事政権非難決議でも出してほしいものだ。

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