2008年02月

大量の翻訳案件で忙しく寝不足の毎日だが、1回目納品分の推敲が終わったので、
昨日購入した大修館書店の「英語教育」3月号の特集記事を読んでいる。

特集のタイトルは、「今こそ異文化理解教育を!」 である。

[「英語で自分を表現する」ためには、リスニングやスピーキング
といった技能を身に付けさせるだけで十分だろうか。
国際化が進むなかで、今、日本人に本当に必要な異文化理解教育を考える。]

最初の記事が印象的であり、それは大谷泰照・名古屋外国語大学教授の
「異文化理解教育が今、日本に必要なわけ」 である。

大谷教授の著書には、同じような趣旨のものがある。
「日本人にとって英語とは何か 異文化理解のあり方を問う」 だ。
http://thistle.est.co.jp/tsk/detail.asp?sku=21062


日本人の言語文化意識として、母語(日本語)一辺倒か、英語偏重か、という極端な動きを指摘している。

幕末には攘夷運動があったが、薩英戦争などで外国に敗れると、急に英語に擦り寄り、
そして欧米列強の仲間入りを目指して何でも模倣し、「英語国語化論」まで登場する。

しかし軍事大国化すると今度は「英語教育廃止論」が出現し、戦争中は「鬼畜米英」とまで言っていた。

ところが敗戦後は、急に英会話学習ブームがやってくる。

と思ったら、経済大国となると、中学での英語必修化に反対する勢力が出始め、
そして中学での英語授業時間数は週3時間にまで削減されてしまった。

その後のバブル崩壊・不良債権問題で、経済でもアメリカに負けてどん底に落ち込むと、
またまた英語に擦り寄る態度が見られ、小渕内閣では「英語第二公用語化論」が出現し、
文部科学省は「英語が使える日本人」の育成のために政策立案をするようになる。

日本語と英語の間で、ふらふらと往復しているだけの日本人は、歴史から何も学んでいないように見える。

ヨーロッパでは、EUの公用語は23ヶ国語もあり、学校での外国語教育では、
母語を犠牲にせずに、更に2ヶ国語の習得を目指している。

日本人が大好きな英語は、EUでは公用語の一つであるだけで、決して他を圧倒しているわけではない。
イギリスでも英語文化以外の世界を知るために、19言語も選択できるようにしている。

多様な文化・言語が共存することがヨーロッパの常識であり、
「日本語か、それとも英語か」、などと二者択一を迫るような、日本人の感覚は理解されない。

あのアメリカでさえ、9.11テロの原因として、異文化理解教育の不足を反省しており、
これまで関心の薄かったアラビア語や中国語などを重要語に指定して、教育を強化している。

それに対して日本人の多くは、英語を学べば国際化すると勘違いしているし、
国内で本当に必要なのは、留学生や労働者が増えているアジア系の言語の知識のはずだ。

しかしこのたび改訂が予定されている学習指導要領では、外国語で言及されたのは英語のみで、
これまでも教科として存在していたフランス語・ドイツ語だけでなく、中国語なども無視されている。

つまり文部科学省としても、これからの日本人は英語さえ勉強していれば国際的に通用すると考え、
私のように英語・ドイツ語の両方を使い、趣味で中国語・スペイン語を習う人は想定していない。


まあ、英語偏重の日本になれば、ドイツ語ができる私は有利な立場になるかもしれない。
それに私は非主流派でも気にしないので、独自の考えを公表していこうと思う。

特集の他の記事では、異文化理解教育の実践についても書かれているので、後で読んでおこう。

日本が南極海で実施している調査捕鯨(鯨類捕獲調査)は、今回もいろいろと話題を提供している。

日本鯨類研究所に「環境テロリスト・海賊」と呼ばれているシーシェパードは、
追跡船の燃料補給を終えて、捕鯨を再度邪魔するために出港準備中だという。

ごく最近は、オーストラリア税関のチャーター船が、捕鯨の様子を撮影し、その映像を全世界に向けて発信した。

日本政府や捕鯨関係者は抗議しているが、この印象的な映像は、捕鯨反対国の政府を動かした。

ドイツ政府のニュースリリースでも、「残酷な行為」をやめさせようという、強い意志を表明していた。

EUは昨年11月、日本の調査捕鯨に対して強い懸念を表明したのだが、
今回の映像をきっかけにして、EU構成国に対して、捕鯨反対で団結するように促している。

EUのニュースリリース(英語)は次のとおり。
http://ec.europa.eu/fisheries/press_corner/press_releases/2008/com08_17_en.htm

駐日代表部の日本語仮訳は次のとおり。
http://www.deljpn.ec.europa.eu/home/news_jp_newsobj2651.php

最初の部分には、オーストラリアが発信した映像のことにも触れている。

[欧州委員会は、日本の捕鯨についてあらためて懸念を表明するとともに、
調査捕鯨に対する強硬な姿勢を支持する。

世界中でテレビ画面に映し出された映像によって、科学調査を隠れみのに、
捕鯨に対する国際的な禁止措置を軽視する国の存在が再認識させられた。


欧州連合(EU)の加盟国は、クジラ類の保護のために力を合わせなければならない。]

更に環境担当者の次の発言も引用されている。

[「テレビに映し出される残酷な映像からは、捕鯨の実態が痛切に伝わってくる。

これは、EUがこれまで以上に一致団結して捕鯨に立ち向かわなければならないことを示している。」]

また、グリーンランドの先住民生存捕鯨と、日本の調査捕鯨とは違うことにも言及している。

[EUは、IWC条約で認められている、先住民が生存のために行う捕鯨については、
それが科学的な助言に基づく捕獲量の範囲内にとどまっている限り、反対していない。

グリーンランドの先住民の例がこれに該当し、彼らにはナガスクジラとミンククジラの捕獲が認められている。

しかし、欧州委員会は、日本が行っているような科学的調査を装った捕鯨については非難している。]

そのため今後はIWCにおいても、調査捕鯨の再定義を議論する意向のようだ。

今年は5月末から約1ヶ月間、チリでIWCの会合が開催される。
ここでもまた、いろいろと揉めるだろうし、直後の洞爺湖サミットも心配される。


しかし日本では、オーストラリア政府に対する抗議の声は聞くものの、
他の捕鯨反対国のドイツや、EUの発表に対する抗議は、政治的配慮のためか、なぜか弱いようだ。

ヨーロッパの環境団体の中には、日本の家電製品のボイコットであったり、
捕鯨国のアイスランドやノルウェーへの観光旅行を取りやめるように呼びかけている。

日本の捕鯨関係者も対抗して、ヨーロッパの車やブランド品のボイコットや、
ヨーロッパへの団体旅行の中止でも呼びかけてはどうか。

本当に実施したら、ヨーロッパの経済状態は悪化するであろう。


ところで皮肉なことに今年は、European Year of Intercultural Dialogue(欧州異文化間対話年)だ。
http://www.interculturaldialogue2008.eu/

しかしこれは、EU加盟国が増えたことに対応して、「多様なヨーロッパ」を理解することが目的で、
日本を含めた捕鯨国のことは「異文化」ではなく「異質文化」のためか、まったく考えていないようだ。

これではノルウェーもアイスランドも、絶対にEUに加盟できないことになるだろう。


先日はCNNで、和歌山・太地のイルカ漁の映像も流れたから、これからもいろいろなことがあるだろう。

今週末からの翻訳作業は、24万円もらえる、化学物質データベースの作業に専念する。

私は主に週末に翻訳をしているが、大容量のファイルを担当することとなった。
それで、当初の納期までに全部は終わらないことが判明し、分割納品することで合意した。

平日もコツコツと和訳作業を進めたかいもあり、今日の午後3時頃には、
25日の第一回目分割納品までの作業を終えることができた。

最終納期は3月上旬だが、推敲も2日以上はかかるはずだから、今のうちに作業を進めておこう。


作業の途中ではあるが、TRADOSの導入を再検討している。
それは、全く同じ表現が出てくるからだ。

これは、同じ情報が重複してデータベースに登録された可能性もあるが、
そんな内容のことはともかく、書いてあることは全部翻訳するのだから、作業が楽な方がいい。

作業していると、「あれ? 全く同じ記載が前にあったような気がする。」 と気づくことがあり、
フレーズの一部を検索してみて、一字一句すべてが同一のデータが見つかることが多い。

それに2万ワードを超えるファイルについて、訳語や表現の統一を行うには、
私の記憶だけではどうしても頼りなく、翻訳メモリが使えるTRADOSは有益だ。

価格は12万円を超えるわけだが、データベース和訳が継続するならば、購入してもよいだろう。
今回の案件では税引き後に22万円入金するし、ソフト代金は必要経費として所得控除に使えるし。

ただし今は、TRADOSの練習をする時間もないので、来月の納品後にゆっくり考えよう。


ところで今日は、化合物名の間違いを含むデータ2個所を見つけた。
この案件では、正しい表記が推測できるものは、原文ママとはせずに訂正するルールになっている。

ある化合物の代謝物について記載されているのだが、化学的にありえない化合物名であった。
正しい化合物名を推測後、代謝経路に関する資料をネット検索で探した。

すると経済産業省の化合物安全データを集めた資料中に、様々な化合物の解説が見つかった。

そして代謝経路の説明を確認して、正しい和訳とし、翻訳コメントには訂正理由を書いた。

ところが参考にした資料でも、化合物名が間違っていることに気づいた。
日本政府の公式資料中に、化合物名の誤りが放置されていることは、少々困った問題だ。

ということは、翻訳ではやはり翻訳対象の分野に関する専門知識が必要と言うことだ。

原文の間違いに気づくためには、今回は化学や生化学の知識が必要であり、
参考にする日本語の資料を読みこなすだけではなく、
その資料にも間違いがあるかもしれないから、ここでも専門知識が必要だ。

だから専門知識を生かして、会社を辞めて翻訳専業になる人もいるのだと、理解したような気もする。

私の場合は、本業の有機合成で成果を挙げているので、しばらくは翻訳は副業のままでいこう。

ただし副業とはいえ、英語・ドイツ語がわからず困っている人のために、責任を持って作業しよう。

連休中に作業した、ディーゼルエンジンに関するドイツ語和訳だが、
翻訳会社でのチェックで、10個所ほどの確認事項が発生した。

昼休みにメールが来ていることを知ったのだが、私の携帯電話では添付ファイルを開けない。
Windows Mobile 付きの携帯電話にした方が、今後は対応できるかもしれないと感じた。

そこで修正・確認事項をメール本文に写してもらい、内容を確認した。
しかし、本業の勤務時間中には対応できないため、帰宅してからの作業となった。

2個所は誤訳であった。
これは私の勘違いであり、誠に申し訳ないことである。

チェック項目の大部分は、訳語の選択を変えることで、意味がわかりやすくなった。

また、4個所はコメント機能を使って、訳注として追加説明を入れることになった。

元のドイツ語原稿には書いていないことを、和訳であれこれ追加することは、私は避けたいと思っている。
それで訳語が定着していない場合や、具体的内容があいまいな場合には、訳注をつけている。

結局、修正版を提出したのは、帰宅から約1時間半後であった。

クライアントには、納品が明日にずれることを了承してもらったそうだ。

まあ、私が翻訳専業ならば午前中に訂正して、納期もずれなかったわけだが、
副業として活動しているため、どうしても日中は対応できないのは、仕方ないことだ。

それでも依頼が来るのは、こういった修正の要請に対しても、できるだけ早く、素直に応じるからだ。
翻訳者の中には、チェッカーの指摘に対して激怒する人もいたり、修正を拒否する人もいるそうだ。

中には、チェッカーの力不足による誤解という場合も確かにあり、翻訳者のみが悪いとは言えない。
今回の案件も、ドイツ語と自動車の両方がわかるチェッカーがおらず、和訳の違和感を指摘している。

ドイツ語翻訳を受注するのならば、ドイツ語チェッカーも採用すべきではないだろうか。

他社で私は、ドイツ語特許和訳のチェッカーを一度頼まれたことがある。
このときは、基本的な単語や文法事項を間違えている和訳に苦労した。

もう少し実績を積めば、5年後くらいにはチェッカーに格上げしてもらえるかもしれない。

ディーゼルエンジンの話は読んでいても面白かったので、苦労した分、自分では得をしたと思っている。
寝不足にはなったものの、知識も増えて6万円もらえるのだから、よしとしよう。

それにしても、自動車技術の専門家には、ドイツ語ができる人は少ないのだろうか。
日本の自動車メーカーは、ドイツにも支社があり、社員を派遣しているはずだが。

翻訳を依頼してくるところを見ると、長い論文を読む能力はないのかもしれない。
英語の報告書や論文でも、楽に読んでいる人は少ないはずだし。

すると私への依頼は、増えることはあっても、減ることはないだろう。
どんな依頼が来てもいいように、常に様々な分野に興味を持って、情報収集をしておこう。

今日はドイツ語和訳の仮訳が終わり、少し余裕ができたので、ドイツ語ニュースサイトを見てみた。

すると Der Spiegel の記事で、北朝鮮(DPRK)がネット通販をしていると出ていた。
http://www.spiegel.de/netzwelt/web/0,1518,533174,00.html

本文はAP配信の英語記事をドイツ語に翻訳したものだが、タイトルとリード部分を和訳してみよう。

北朝鮮はeコマースを発見した

共産国製のオフロード車やボクシンググローブはいかがでしょうか?
大丈夫だと、北朝鮮のショッピング・ウェブサイトが演出している。
しかし、そこで実際に何か買おうとしても、主に技術的障害で失敗する。]

ドイツ語が読めない人もいるので、元の英語配信記事を探すと、
International Herald Tribune 紙の2月4日の記事があり、AP配信記事そのままである。
http://www.iht.com/articles/2008/02/04/technology/net.php


こういった北朝鮮ネタは、日本のテレビ局も飛びつくはずだが、
今はギョーザ事件で忙しいのか、私の記憶では、現時点で取り上げていないと思う。

それで検索してみると、朝鮮日報の日本語サイトがヒットした。
http://www.chosunonline.com/article/20080128000022

日付は1月28日で、この後に韓国からのアクセスが集中したためか、接続できない状態だという。
それで2月4日の報道では、「先週月曜日(28日)以降はアクセスできなくなっている」 とある。

他に日本語の報道を探すと、CNNの日本語サイトがあった。
http://www.cnn.co.jp/business/CNN200802090010.html

日付は2月9日で、AP配信記事を元にしているから、アクセス不能のことにも触れている。

ただし気になるのは、その北朝鮮通販サイトの使用言語の記述である。

まずAP配信記事では、次のように、日本語も使えることが書いてある。
[The Web site - available in Korean, English, Chinese, Russian and Japanese - ]

先のドイツ語記事でも、そのまま翻訳しているので同様である。
[Auf einer Webseite, die in Koreanisch, Englisch, Chinesisch, Russisch und Japanisch
aufgerufen werden kann, ]

しかしこの配信記事を和訳したCNNでは、「商品はハングル、英語、中国語などで紹介され」 と、
ロシア語と日本語が使えるという情報が消されている


日本の報道ではしばしば、外国語の配信記事の一部を省略して和訳することがある。
字数の関係なのかもしれないが、「ロシア語、日本語」と入れるだけだから、意図的な省略か?

ほとんどの日本人はまず最初は、日本語で報道内容を知りたいはずだ。
このニュースを取り上げたブログでも、日本語は使えないと解釈した人もいるから、正確な報道を望みたい。

日本語が使えるとなると、興味を持った日本人がアクセスして、何か問題になると心配したのか?

うっかりクレジット番号を入力してしまうと、これまでもアメリカなどのサイトであったように、
登録費用や月会費のような、毎月5ドル程度の不可解な請求が来るようになるのかもしれない。

それにクレジット番号などの情報の売買を禁止していない国では、使用そのものが危険な行為だ。

それでも配信記事を掲載するならば、省略せずに和訳して掲載してほしい。
通信社との契約で編集権があるのだろうが、記者の意図や努力などが入っている記事を変えてほしくない。


話が脱線してしまうが、副業で翻訳をしているので、原文と和訳の違いは、どうしても気になってしまう。
今回のニュースでも、日本語だけを情報源にしていたのでは、誤解する危険性があると認識した。

そのため私は、外国語で書かれた元の資料にアクセスするためにも、外国語を勉強する意義があると思う。

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