2008年04月

ドイツの民間研究機関が、原子力発電が地球温暖化防止に貢献しない、という研究結果を発表した。
http://www.fr-online.de/in_und_ausland/wirtschaft/aktuell/?em_cnt=1324132&
http://www.sueddeutsche.de/wissen/artikel/625/171124/

原発推進派の言うように、「発電自体の二酸化炭素排出量はゼロ」 なのだが、
発電所建設や燃料運搬、施設の運用時を含めた排出量は、発電kW時当たり32gと計算された。

この値は実は、太陽電池の3分の1で、しかも水力発電の40gよりも少なく、原発推進派に有利だ。

より排出量が少ないエネルギー源は、風力の24gと、バイオガス利用地域暖房の-409g。
バイオガスでは、温室効果の大きなメタンガスを二酸化炭素に換算しているので、値はマイナスとなる。

ドイツは都市部近郊でも酪農が盛んだし、生ゴミ回収もあるので、バイオガス原料は入手しやすい。
このバイオガスを使って小規模発電を行い、廃熱を暖房や給湯に使えば、原子力発電など不要だという。

他の先進国のマネをするのが好きな日本だが、なぜか環境対策については無視するようだ。
日本の省エネ技術は世界最高だと言う割には、原子力発電に代わるエネルギー源を開発しようとしない。


前置きが長くなったが、日本の原子力政策について知るには、内閣府原子力委員会のHPを見るとよい。
http://www.aec.go.jp/

今回は、4月22日に行われた第21回原子力委員会定例会議の資料を読んだ。
それは、「原子力平和利用推進と核不拡散強化のための提言」 である。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2008/siryo21/tei-si21.htm

核不拡散問題検討会の提言の副題は、「地球温暖化とエネルギー安全保障の同時解決に向けて」 だ。

この文書でも最初の方で、原子力発電が地球温暖化防止に役立つと宣伝している。

[原子力発電は、発電の際にまったく二酸化炭素を排出しないことから、
地球温暖化を防止する極めて有効な手段である。]

地球温暖化防止という観点は最近言い始めたことで、日本の原子力政策は別の思惑があって開始された。
温室効果ガス削減が目的ならば、原子力以外のエネルギー源も総合的に検討すべきだ。


今回はこの点よりも、解体核兵器由来のウランとプルトニウムの利用について気になった。
提言の3番目は、「核軍縮の促進と解体核の有効利用」 である。

被爆国である日本は、核兵器廃絶や核テロリズムの防止を、世界に求めていくのが当然の行動であろう。
ただし、核兵器の解体で得られた核物質を、原子力発電に利用する点で心配である。

核兵器の削減によって得られる核物質は、原子力発電の燃料として再利用することができる
旧ソ連の解体核兵器から得られた高濃縮ウランは、希釈されて軽水炉用のウラン燃料として利用されている。
同様なことは、プルトニウムについても可能であって、解体核兵器のプルトニウムのMOX燃料としての
利用の加速を、わが国が率先してG8の機会などを通じて提唱すべき
である。]


核兵器がなくなることはうれしいが、原子力発電によってプルトニウムが増えることは気になる。
最終処分をどうするのか、何万年も管理できるのか、何も解決していないのに、利用だけは推進される。

「もんじゅ」 の再開申請や、フルMOX燃料の大間原発の建設決定などとリンクした動きなのに、
報道は、北朝鮮やシリア、イランばかりで、この核不拡散問題検討会の提言は取り上げていないようだ。

プルトニウム利用を率先して提唱するということは、洞爺湖サミットでも議題にするのだろうか。
地震国日本に、世界の核燃料が集中することは危険だと思うし、誰も日本政府を信用していないと思う。

もしかすると私の老後は、日本に住めなくなる可能性もあるので、海外移住の道も考えておこう。

企業では最近、コンプライアンス研修や人権研修、環境研修などの実施が当然となっている。
そして、パワーハラスメントも、人権侵害として認知されるようになってきた。

労働環境の改善を目指して、ワーク・ライフ・バランスという考え方も、よく聞くようになった。
残業の削減や、有給休暇の取得が奨励され、効率的に働くことが求められるようにもなった。

私はドイツ人ほど休むわけではないが、危険物や毒物を扱う仕事中は集中力を使うため、
週休2日だけではストレス解消に足りず、有給休暇を毎月平均して1日は取得する方が望ましい。

私は脳波に異常があり、9歳までは毎年2回くらい、熱性けいれんで意識不明となっていた。
5年ほどの投薬治療により、脳波は正常になったものの、その後もストレスでの発熱は続いている。

それに骨髄移植のドナーとなって実際に提供してからは、健康であることの幸せを感じており、
仕事で無茶をして、わざわざ不健康になることがバカらしくなってきた。

だから、よほどのことがない限り残業はしないし、無茶な要求をする会社での勤務は続かない。
派遣社員でも正社員でも、すぐに辞めた会社は、人権無視だと感じたからである。


5月1日はメーデーで、私の勤務先は休みだが、たいていの会社は就業日とのことで、
最近のメーデーの集会は、直近の週末に実施されるようになった。

26日に行われた今年のメーデー中央大会で、連合の高木剛会長は、
「休みたいなら辞めればよい」と発言したとされる日本電産・永守重信社長を批判した。

連合HPに掲載された、高木会長の挨拶全文は次のとおり。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/rengonews/2008/20080426_1209016677.html#01

来賓の舛添大臣は、「労働関係法令はきちんと遵守してもらわないといけない。
きちんと調査し、指導すべきは指導し、法律にもとるものがあれば厳正に処分する
」 と約束した。


23日の朝日新聞の報道は次のとおりで、(人権侵害によって)業績が好調だと自画自賛している。

[「休みたいならやめればいい」――。日本電産の永守重信社長は23日、記者会見で「社員全員が
休日返上で働く企業だから成長できるし給料も上がる。たっぷり休んで、結果的に会社が傾いて
人員整理するのでは意味がない」と持論を展開。10年間で売上高が6倍超という成長の原動力が
社員の「ハードワーク」にあることを強調した。

今後も積極的な買収戦略を進め、10年度に売上高1兆円、15年度に2兆円に押し上げる青写真も披露。
「成長しているからこそ休みが無くても優秀な技術者がどんどん転職してきてくれている」と
現路線に自信をみせた。]


つまり、世界をリードする最新技術を開発できる場が提供されるならば、
健康を維持できる労働条件よりも、給料やボーナスの金額の方が優先ということか。

「日経ビジネス」2003年1月27日号の 「もっと働け日本人」 という特集記事を思い出した。
http://www.nikkeibp.co.jp/archives/227/227804.html

永守社長が長時間働きたいなら、それは個人の自由裁量なのだからかまわないだろう。
ただしその持論や人生観を、社員に強要したならば、それはパワーハラスメントという人権侵害だ。

それに休日返上で働くということは、労働基準法を無視する会社であると公言したわけだ。
労働基準監督署が調査し、残業や休日勤務の実態と、有給休暇取得状況を公開してほしいものだ。

業績が急成長して投資家は楽しいだろうが、人権侵害で得られた利益を配分されるのは、納得できない。


何度も書いているが、私はある化学メーカーに派遣社員として勤務したときに、長時間残業を拒んだ。
派遣契約では残業は月15時間までだったし、派遣会社の三六協定でも月42時間が上限だ。

すると直属の上司からは、「残業しない者に重要な仕事をさせるわけにはいかない。」 や、
「他部署から応援も来ているのに、派遣社員が定時帰宅したとなると問題視される。」 などと言われ、
そのまた上司からは、「残業は無制限だ。法律なんかクソ食らえだ。」 と暴言を浴びせられた。

そして、「金を払っていれば合法だ。他の派遣社員はもっと残業しているぞ。」 とまで言われた。

その後は本当に楽な合成ばかりで、実験補助のような扱いであった。
しかし新入社員が結果を出さないということで、私が手伝うことになり、1ヶ月で改良合成法を示した。

いくら長時間労働をしても、アイデアがなければ、何も問題は解決しない。


日本電産のHPは次のとおりだが、採用情報には 「休日を取得するな」 とはどこにも書いていない。
それどころか、「家庭と仕事の両立支援制度」を実施していると紹介している。
http://www.nidec.co.jp/ir/index.html

加えて、「CSR憲章」 まであることに、驚いてしまった。
http://www.nidec.co.jp/news/indexdata/2008/0417-002/CMFStandard1_content_view

[3)人権の尊重
当社は、強制労働や児童労働が無く、社員一人ひとりがお互いの個性を認め合い人権が尊重される
差別の無い職場環境を目指します。

4)労働安全と衛生
当社は、会社と社員の協力のもと、職場における社員の安全と健康を確保し、
社員がその能力を十分に発揮できる職場環境の形成に取り組みます。]


社長がそんなにハードワークを求めているのであれば、実際にどのくらい労働しているのか、
そして疾患を抱える社員がどのくらい少ないのか、そして満足している社員の声も公開すればいい。

こんな人権無視の会社ならば、胃潰瘍で入院した回数を自慢する社員がいそうだ。

今回の報道について、日本電産には問い合わせメールを送ったが、回答は期待していない。

こんな会社の株は絶対に買わないし、その製品もなるべく使わないようにしたいものだ。


追記(4月28日):
日本電産から、朝日新聞の記事について、発表があった。
http://www.nidec.co.jp/news/indexdata/2008/0428/CMFStandard1_content_view

最初から、この文書のような表現で、適切に説明していればよかったのではないか。
朝日新聞の記者が誤解したとしても、こんなにも極端に違う解釈にはならないと思う。

それに、朝日新聞が報道してから4日後に反論するのは遅すぎる。
合併交渉などのスクープ記事では、その日のうちにプレスリリースが出ることと大違いだ。

26日に連合会長が批判して、ネット上でも話題となったため、仕方なく発表したように見えてしまう。

もしかすると、担当部署がしっかり休みを取っているので、対応が遅れたのだろうか。


追記2(5月1日):
なぜか今日は、日本電産のサイトに接続できない。
「www.nidec.co.jp という名前のサーバが見つかりませんでした。」 というメッセージが出る。
メーデーということで、何かサイバー攻撃でもあったのだろうか。

(最終チェック・修正日 2008年05月01日)

sorgen
自 (h)
3 ((für et.4)) (…を)ひき起こす,(…の結果を)もたらす

Zweifellos wird der Fund jedoch für Gesprächsstoff unter Besuchern und Machern der am heutigen
Freitag im Berliner Technikmuseum beginnenden Ausstellung zu Plancks 150. Geburtstag sorgen.
間違いなくこの発見は、本日金曜日にベルリン技術博物館で始まるプランク生誕150年展示の観覧者や主催者の間で話題となるだろう。
("Verwirrung um Vornamen Gestatten, Planck, Marx Planck", Süddeutsche Zeitung, 24.04.2008,
http://www.sueddeutsche.de/wissen/artikel/621/171120/)


Rechtsextreme und ausländerfeindliche Überfälle sorgen immer wieder für Aufsehen und
Erschrecken.
極右的で外国人敵対的な襲撃は再三再四、人目を引き、そして恐ろしい結果をもたらす。
(Deutschland: Rechtsextremismus, ZEIT ONLINE,
http://www.zeit.de/themen/deutschland/rechtsextremismus/index

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今年は、ノーベル物理学賞受賞者のマックス・プランク(Max Planck)の生誕150年である。

量子力学の講義では、最初の頃に 「プランク定数」 を勉強する。
また、マックス・プランク研究所の名称でも有名である。

ベルリンの博物館では、4月26日から10月5日まで記念展示が行われる。
http://www.mpg.de/ueberDieGesellschaft/profil/geschichte/maxPlanckAusstellung/
http://www.dtmb.de/Aktuelles/Sonderausstellungen/Max-Planck/index_en.html

誕生日は1858年4月23日で、画像に示したように、ドイツでは記念切手が4月10日に発売された。
切手には、本人の直筆からとった、"Max Planck" の文字が入っている。

ところで最近、"Marx Planck" が本名であるという噂が出てきた。

ドイツのテレビ局NDRの4月23日の放送案内は次のとおりで、エイプリルフールの話題ではない。
http://www3.ndr.de/ndrtv_pages_std/0,3147,OID4724168_REF2466,00.html

また、Der Spiegel と S??ddeutsche Zeitung の記事は次のとおり。
http://www.spiegel.de/wissenschaft/mensch/0,1518,549404,00.html
http://www.sueddeutsche.de/wissen/artikel/621/171120/

生誕地である Kiel の教会の洗礼名記録簿に、"Marx" と書かれていたそうだ。
筆跡鑑定でも実際に "r" が書かれていることが判明した。

次の画像のリンクで、教会で洗礼を受けたときに "Marx" と命名された記録が読み取れる。
http://www.spiegel.de/img/0,1020,1160153,00.jpg

役所の住民課での登録は、プランクの誕生から16年後に始まったため、
この教会の洗礼記録のみが、1858年当時の公式記録として認められるそうだ。

Marx は、元々ラテン名の Marcus をドイツ語風にしたもので、一般的な名前である。
キリスト教に関係する名前だから、洗礼のときに Marx と名付けられても不思議ではない。

ところが Max-Planck-Gesellschaft は、本人が10歳のときに書いた手紙の署名を例示して、
「Marx ではなく、Max であり、博士論文もその後の研究発表も Max である。」 と説明している
http://www.mpg.de/bilderBerichteDokumente/dokumentation/pressemitteilungen/2008/pressemitteilung20080424/index.html

可能性として、洗礼名の記載時に誤記したか、ミュンヘンに転居したときに Max に変えたとも言われている。

まあ、どちらにしても、本人が Max だと書いたので、Max のままでいいだろう。
マックス・プランク研究所が、マルクス・プランク研究所に改名することはないと思う。

S??ddeutche Zeitung を読んでいたら、「排泄物から作るプラスチック」 という記事が気になった。
http://www.sueddeutsche.de/,ra16l1/wissen/artikel/406/170905/

オランダの Agroplast 社が、ブタの尿から尿素を生産する試験的プロジェクトを開始するそうだ。

ブタの排泄物を機械に通すだけで、尿素の結晶が単離できるようになるという。
この機械を農家が利用すれば、原油や天然ガスに依存しない、新しいプラスチック原料の確保が可能になる。

Agroplast 社のHPは次のとおり(英語)。
http://www.agroplast.info/Agroplast-ENG/index.html

尿素については、TECHNOLOGY の項で説明されている。
http://www.agroplast.info/Agroplast-ENG/product_4.html

開発中の All-In-One タイプのプラントが完成すれば、単に尿素を生産するだけでなく、
処理が困難な家畜排泄物の減量にも役立つだろう。


日本では、尿の液肥化や、もみがらと混ぜて堆肥化など、農業の範囲内でのリサイクルが検討されているが、
排泄物から尿素を取り出して工業原料にしようという話は、今のところ聞いたことがない。

家畜の糞尿処理が不十分であったり、不法投棄されるなどの事件が起きているが、
悪臭などでやっかいものの廃棄物が、工業原料の生産に利用できれば、対応も変わってくるだろう。

生産コストがどうのこうのと言う前に、こういった新しいアイデアを検証する風土を養いたいものだ。
つまり、誤解を恐れずに言えば、理系人材がリーダーシップを取らなければ、何も進まないのだ。

その他の排泄物利用についても、継続して調査してみよう。

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