2008年08月

原子力資料情報室の記事で、「地球環境保険制度」について取り上げられていた。

【アメリカでの原発建設に日本から金融支援? ごまかしの「地球環境保険」に異議あり】
http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=696

日本の開発途上国援助であるODAでは、省エネ技術の供与など、温室効果ガス削減を目的とした、
「クールアース・パートナーシップ」という国際環境協力をすることになった。

今年1月26日に福田首相がダボス会議で提案したことを、有言実行というわけだ。
また、洞爺湖サミットでも、日本の省エネルギー・新エネルギー技術を海外移転するとも言っていたし。

外務省の 「クールアース・パートナーシップ」 の紹介は次のとおり。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/bunya/environment/cool_earth_j.html

その中に、「民間プロジェクト支援等」 という項目に、「貿易保険」 が取り上げられている。

【(独)日本貿易保険(NEXI)に地球環境保険制度を創設し、我が国企業の関与する気候変動緩和対策に
資する案件(省エネ・新エネ等)への輸出、投資、貸付に適用。】

ここに出てくる、独立行政法人日本貿易保険のHPは次のとおり。
http://www.nexi.go.jp/

そして、この地球環境保険制度の創設についての発表は次のとおり。
http://www.meti.go.jp/press/20080729001/20080729001.html

最初の添付資料では、【我が国とともに地球温暖化対策に真剣に取り組んでいく開発途上国を
支援していく
こととしました】 とあるが、二つ目を見ると、内容の説明が少々異なる。

開発途上国に限定せず全世界を対象に10年間で2兆円の保険引受枠を設定することにより、
制度の利用を促進する。】

原子力資料情報室では、この 「開発途上国に限定せず」 という食い違いを批判しているわけだ。

そして保険制度の適用対象を見ると、「原子力発電関連」 もあるから、
アメリカに原発プラントを輸出する場合でも、この保険制度を利用できることになる。

途上国に輸出して、わざわざ高いリスクを負うよりも、アメリカに輸出する方が楽なはずだ。

このように原子力ムラでは、身内のビジネスが円滑に進むように、恣意的に制度を作っている。
環境対策・温暖化対策ならば反対しにくいだろうと考えて、自分たちの利益のために悪用しているのだ。


今回の保険制度とは関係ないが、高レベル放射性廃棄物の地層処分の候補地募集でも、
二酸化炭素の地層処分にも転用できると言って、原子力研究は温暖化対策に貢献すると宣伝している。

研究者も、自分の研究に資金が集まるように、我田引水・自画自賛に余念がないようだ。


追記:
今年10月に発足する日本政策金融公庫は、国際協力銀行の国際金融部門を引き継ぐ。
http://www.kouko.org/

行政改革の方針から政府系金融機関が統合され、先進国向け投資金融は原則廃止されるが、
アメリカ政府の要請に応えて、原子力発電関係は特別扱いをすることが、政令で決定された。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2008/siryo38/siryo1.pdf

【今年10月に発足する日本政策金融公庫では、先進国向けの金融は原則行わないこととなっているが、
国際競争力向上のため必要な場合は、政令を制定することにより、先進国向け投資金融は可能。

8月26日、政令が閣議決定され、原子力発電に関する事業については、先進国向け投資金融が可能となった。】

このように原子力ムラでは、自分たちに都合のよい制度を、着々と準備している。

(最終チェック・修正日 2008年09月04日)

カナダのフリージャーナリスト Declan Hill の著作に、サッカー界は困惑しているようだ。
9月2日にドイツで発売の "Sichere Siege" では、ワールドカップでの八百長試合についても書かれている。

著者の紹介は次のとおりだが、この本についてはまだ掲載されていない。
http://www.declanhill.com/

不正行為の経済学に関する会合が10月にドイツで開催されるが、
その招待講演者なので、その前に著書を発売しておこうということかも。
http://www.icgg.org/corruption.lecture_2008.html

【Declan Hill is an award-winning investigative academic, journalist, documentary maker and television
news anchor. He specializes in reporting on organized crime and international issues.

In the last few years he has completed documentaries on the killing of the head of the Canadian mafia,
blood feuds in Kosovo and ethnic cleansing in Iraq. He has also made documentaries in Kurdistan, Bolivia,
India, Mexico, and Turkey. Mr. Hill has worked for CBC Radio ("IDEAS", "Tapestry", "Dispatches",
"The Current", "Iraq Unit"), CBC Television ("the fifth estate", "Disclosure", "Newsworld" and "Newsworld
International"), BBC Radio World Service and BBC Radio 4.

Currently, Mr. Hill is a Chevening Scholar at Green College, University of Oxford.】

(一部掲示板では、著者の経歴を考察せずに非難する記載もあるが、この経歴ならば信用してもよいだろう。)

出版社のHPの新刊案内は次のとおりで、内容紹介は9月1日に掲載予定だ。
http://www.kiwi-verlag.de/36-0-buch.htm?isbn=9783462040678

ドイツのアマゾンでは予約を受け付けていた。
http://www.amazon.de/Sichere-Siege-organisiertes-Verbrechen-manipuliert/dp/3462040677/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1220113449&sr=8-1


著者にインタビューした Der Spiegel の記事は次のとおり。
http://www.spiegel.de/sport/fussball/0,1518,575337,00.html

英語でのインタビューは次のとおり。
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,575586,00.html

この記事で言及されているのは、2006年のサッカーワールドカップ・ドイツ大会で、
ベスト16のブラジル対ガーナの試合での八百長疑惑である。

これは、3対0でブラジルの勝利だったが、アジアのある賭博シンジケートが、
「2点差以上でガーナの負け」 に大金を賭け、結果を誘導したとのことだ。

著者が3年間かけた賭博マフィアの調査によると、ガーナの元ゴールキーパー Abukari Damba は、
バンコクの賭博代理人とガーナ選手との間の秘密連絡員だったそうで、そして予定通りに3点差で負けた。

この本が発売されれば、その内容も詳しく報道されるだろう。
ドイツ語版での発売のようだが、オリジナルは英語なのかどうか、もう少し探してみよう。

(追記(9月1日):この本は、カナダ、フランス、イタリア、ドイツで同時発売だから、4ヶ国語か。

英語のタイトルは "The Fix: Soccer and Organized Crime"
カナダのアマゾンでは英語版の予約を受付中(フランス語版もある)。
http://www.amazon.ca/Fix-Soccer-Organized-Crime/dp/0771041381/ref=pd_bbs_sr_1?ie=UTF8&s=books&qid=1220270381&sr=8-1

出版社のHPでは次のとおりだが、内容の紹介はなかった。
http://www.mcclelland.com/catalog/display.pperl?isbn=9780771041389


400ページ以上も訳すのは大変だから、このブラジル・ガーナ戦の部分だけ読んでみたい。
まあ、この分野の専門家が和訳して出版するだろうが。


また、Der Spiegel では、ドイツのリーグ戦についても、疑惑の試合の事例を挙げている。
そして簡単ではあるが、オウンゴールなど、疑惑が指摘されている場面を説明している。

ブンデスリーガでは2004年に、審判の買収問題が発覚したのだが、その後も八百長は続いていたのだ。

金儲けをしたい人がいる限り、このような八百長試合はなくならないのだろう。
残念なことだ。

追記:
Bild 紙の取材に対して、疑惑のブラジル・ガーナ戦をスタジアムで観戦した皇帝ベッケンバウアーは、
「その試合が何か変だとは思わない。結果は驚くようなものではなかった。全世界が見ているワールドカップの
ベスト8を決める試合を。不正操作する者がいるなど考えらない。」 と語った。
http://www.bild.de/BILD/sport/fussball/2008/08/31/wett-mafia/brasilien-spiel-unserer-wm-gekauft.html

追記:
時事通信の配信記事は次のとおり。

【W杯ドイツ大会で八百長?=ドイツ誌が報じる

[ベルリン30日AFP=時事]サッカーの2006年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会の決勝トーナメント
1回戦、ブラジル-ガーナ戦で八百長が行われたと、9月1日発売のドイツ誌シュピーゲルが報じることが
30日、分かった。

アジアの賭博シンジケートが八百長を働き掛け、ガーナの元代表選手が仲介役を務め、ブラジルが2点以上
取って勝つことに巨額の金がかけられた、としている。試合はブラジルが3-0で勝った。記事は、
近く出版されるスポーツ界の賭け事に関する本の著者、カナダ人ジャーナリスト、デクラン・ヒル氏の情報に
基づいている。

ヒル氏はまた、2004年-05年シーズンのドイツリーグの2試合でも、八百長があったと主張している。(2008/08/31-00:58)】

追記:
Der Spiegel の報道をきっかけに、ブンデスリーガとドイツサッカー連盟が、
疑惑を指摘された2試合について調査することになった。
http://www.spiegel.de/sport/fussball/0,1518,575394,00.html

この本には、著者が既にFIFAやドイツサッカー連盟に取材したことが書いてあったり、
世界的なサッカー賭博の問題に気づいていないと批判されたためか、行動に移したようだ。

実際に発売されれば、もっとニュースが出てくるはずだから、後でまとめておこうと思う。

(最終チェック・修正日 2008年09月01日)

毎年どこかで渇水被害があるが、毎日雨が続くと、日本では水不足にはならないと勘違いしてしまう。
水利権の問題もあるが、日本では工夫すれば、飲料水確保の問題は軽減できると思う。

ただ、降水量が少ない中東地域で、しかも経済が発展中のアラブ首長国連邦は苦労している。
昔は、南極の氷を運んでくるという話もあったが、実際には海水淡水化が行われている。

S??ddeutsche Zeitung の記事では、海水淡水化のコスト低減で、沿岸部での飲料水確保が可能になったこと、
そして新たな環境問題が発生していることを取り上げている。
http://www.sueddeutsche.de/wissen/108/308056/text/

アブダビにある Abu Dhabi Water & Electricity Authority(ADWEA)は、
ガス火力発電所での電力供給の他に、コジェネレーションでの熱を利用した海水淡水化も行っている。
http://www.adwea.ae/en/

これまで淡水化装置はエネルギー消費が多く、一部の高級クルーザーや潜水艦に搭載されるのみだった。
しかし大幅なエネルギー効率の向上とコスト削減により、海水淡水化は儲かる商売に変化した。

世界では1万3千ヶ所以上で海水が淡水化され、毎日ほぼ500億リットルが生産されている。
この水量は、EU市民の半分の消費量に相当するそうだ。

淡水化の方法には複数あるが、今は特殊な隔膜と電気を使った、電気透析法が注目されている。
ドイツのジーメンス社では、電力消費を従来の半分にすることに成功したという。
1,000リットルの水を得るためには、1.5kWhの電力消費で済むという。

それでも地下水くみ上げよりは電力消費は多いし、海のミネラルバランスが崩れ、
漁業などに被害が出るという、新たな環境問題の原因ともなりうる。

他にもいろいろ書いてあるが、私が気になったのは、日本での淡水化の紹介であった。
日本では既に8ヶ所の原子力発電所で、海水淡水化が実用化されているとのことだ。

調べてみると、原発立地の都合で、水の確保が困難な場合があるため、
原発の発電そのものと廃熱を利用して海水淡水化を行い、必要な真水を得ているという。

この記事を離れて、もう少し調べてみると、社団法人日本原子力産業協会が2年前に、
海水淡水化の現状と原子力利用の課題 -世界的水不足の解消をめざして-」 を報告した。
http://www.jaif.or.jp/ja/news/2006/desalination_summary.html
http://www.jaif.or.jp/ja/news/2006/desalination_report.pdf

「日本として、原子力利用による淡水化事業の国際的展開について、中長期的観点からその実現を図るべく、
国を中心に将来構想などを検討していくことが重要。」 とあるように、原子力淡水化を推進したいようだ。

報告書の中でも、原子力発電が地球温暖化対策だけではなく、水不足解消に役立つと宣伝している。
そして毎回のことだが、原子力発電こそが問題解決の切り札であると自画自賛している。

【淡水化には、熱や電力の形態でのエネルギーが必要であり、(中略)原子力は電力というエネルギー
形態で、現在では大きな役割を占めるようになってきており、炭酸ガスによる地球温暖化対策の観点から、
今後、更なる大きな役割を果たしえる潜在的な可能性を秘めている。

(中略)電気以外への熱利用、とくに淡水化への利用には先進国でもその関心は高まってきている。
実際飲料水が不足している地域は途上国が多く、淡水化のためのエネルギー源として原子力の導入に関わる
技術移転など、先進国の今後の役割も重要となってきている。】

そして最後に、日本の役割として、次のように結論している。

【世界の淡水化ニーズは今後とも高まると予想され、化石エネルギー源の限界や地球環境保全の観点から、
原子力利用による淡水化は今後重要性を増す
と予想される。IAEAでも原子炉利用という観点から、重要な検討
課題として取り上げられている。さらに、フランス、韓国、中国、米国などの原子力技術国では原子力の
「淡水化」を具体的な利用項目として掲げ、国策の一環として取り組んでいる。しかし、日本では、原子炉
および淡水化技術の双方とも保有しているにも係らず、一部民間がフォローしているのみで、淡水化利用への
関心はほとんどみられない。

このような現状から、原子炉および淡水化に関して高度かつ成熟した技術を有する我が国としても、世界的な
流れに乗り遅れることなく、原子炉と淡水化技術、あるいは原子炉利用の淡水化技術の輸出という国際展開を
検討すべき
状況に来ているものと思われる。そのような将来構想を実現していくためには、2つの技術の
組み合わせに関連した課題や問題点の解決が急務である。】

原子力ムラの我田引水・自画自賛には驚かないが、自分たちのビジネスについては、
必死になって存続意義を考え出すようだ。

(最終チェック・修正日 2008年09月06日)

ドイツの消費者団体 Foodwatch が、農業分野での温室効果ガス放出について、ドイツの民間研究所である
Institut f??r ??kologische Wirtschaftsforschung GmbH (I??W) に研究を委託した。

Foodwatch のニュースリリースと報告書は次のとおりで、温室効果ガス削減のためには、
有機農業製品を単に食べるのではなく、特に牛肉と乳製品を除いた食生活が望ましいとしている。
http://www.foodwatch.de/kampagnen__themen/klima/klimastudie_2008/index_ger.html
http://www.foodwatch.de/foodwatch/content/e10/e17197/e17201/e17219/foodwatch-Report_Klimaretter-Bio_20080825_ger.pdf

I??W のホームページは次のとおり(ドイツ語と英語)。
http://www.ioew.de

研究所の報告書は次のとおりで、菜食主義の勧めというよりは、温室効果ガス対策を考えるときに、
農業分野(小麦・豚肉・牛肉・乳製品の生産と輸送)での放出は無視できない、という指摘が趣旨である。
http://www.ioew.de/home/downloaddateien/SR%20186_08.pdf

そして小麦・豚肉・牛肉・乳製品の生産と輸送について、また、食生活のパターン(肉・乳製品なし、
肉なし、すべて摂取)について、一人当たり年間CO2排出量を、自動車の走行距離で換算している。

AFPの記事では「中型車」としているが、具体的には「BMW 118d」というディーゼル車だ。
BMWを買う人がどれだけいるかは問題ではなく、エコカーの代表として比較対象となった。
そして走行距離当たり排出量は、119g-CO2/km で換算している。
http://www.cleangreencars.co.uk/jsp/cgcmain.jsp?lnk=201&model=942&description=BMW%201%20Series

数値については、AFPの記事どおりなので、ここに掲載することはしないが、
自分が食べる牛肉の量や、運転する車種で、計算しなおすのも、環境教育に使えるだろう。


牛肉と乳製品を含む食生活では、有機農業での生産品であっても、メタンの影響が大きい。
牛肉を中心とする食生活が非難されるのは、このメタンの放出である。
そして同様に、牛乳やチーズなどの乳製品も、メタンの放出が計算に入るので、環境に悪い食品になる。

この研究では、牧草を用いた伝統的酪農でも、温室効果ガス削減にあまり貢献しないことを指摘している。
これは、ドイツ特有の問題点を含んでいるようだ。

沼沢地や湿地を排水して、牧草地や農地に変えているのだが、そのため泥炭層が露出することが問題だ。
これまで嫌気状態だった泥炭層が露出して、酸素に触れることで、温室効果ガスの発生を促してしまう。

伝統的な土地の利用法でも、温室効果ガス削減の目的のために、農業政策として考慮すべきである。

日本政府はセクター別対策を主張しているが、農業分野の試算があるのだろうか。
ドイツは秋蒔き小麦だが、日本ではコメで計算するのだろう。
後で探してみよう。

日本経済新聞のサイトにある 「NETアイ プロの視点」 に8月25日、
「あぶり出される科学技術政策の無駄」 という記事が掲載された。
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/shimizu/

日本経済新聞では何年か前にも、科学技術分野の予算や成果について、批判記事を掲載したことがある。
今は政府の無駄遣いを追及するキャンペーンがはやりだが、科学技術政策もその対象となっている。

【「COE(卓越研究拠点)と称される優れた研究所は各国でもせいぜい数カ所しかない。
日本ではそれを150カ所もつくるというのか。そんなにあったらCOEと言わないのではないか
」。
8月初めに自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」が開いた文部科学省の「政策棚卸し」。
政府の不要な政策を洗い出す会合で、文科省の説明に出席者から厳しい声が飛んだ。

文科省が説明したのは「グローバルCOEプログラム」という事業。2011年度まで150ほどの大学に資金援助して
世界最高水準の研究拠点にするという計画で、今年度の事業費として340億円の予算がついている。
大学への資金援助といっても実質的には若手研究者の雇用、大学院生への経済的支援が中心で、
出席者からは「これではばらまきに近い」と酷評された。結局、この事業への判定は「今のままなら不要」だった。

科学技術関連予算は1996年度から始まった基本計画の第1期5年間が合計で約17兆円、2001年度からの
第2期が合計21兆円強、そして 2006年度からの第3期は26兆円を想定している。財政状況が厳しいなかでも
予算が増えているので、各省は熟慮もせずにとりあえず予算枠を確保してばらまくという習性に陥りつつある。
資金がすべて独創的な研究に注ぎ込まれるのならともかく、研究システム改革と称して役所が補助金を
ちらつかせて天下り先を確保しようとしたり、権限強化を狙ったりする傾向も強まっている。

科学技術に絡んだ政策は本来、実施後も総合科学技術会議が評価し、要不要を判断してもおかしくはない。
しかし、同会議は科学技術基本計画でさえ第1期、第2期とも終了後の総括、評価をあいまいにしたまま、
第3期の計画をつくり、予算をつけている。つまり研究では成果主義を言い続けながら、政策は成果主義が
貫かれていないのが現状だ。「ポスドク1万人計画」など失敗とされる政策で、きちんと総括せずに
うやむやのうちにごまかしてやめたものもある


研究費の配分は文科省なら日本学術振興会や科学技術振興機構、経済産業省なら新エネルギー・産業技術
総合開発機構など各省それぞれの傘下にある独立法人が行っている。こうした独立法人の活動は科学技術
予算の無駄を排すという観点で必ずしも精査されてはいない。活動のなかには国の機関が行うべきなのか
疑問視されるような事業も多いが、総合科学技術会議も各省もチェックが甘くなっている。】


「科学技術で日本の未来を建設する」 という理由で、「建設国債」 という実質的な赤字国債を出した。
「研究費補助金」 ではなく 「研究委託費」 であれば、建設国債を財源にできるという裏技だ。

研究者側も、「財源が建設国債ならば、いくらでも増やせる」 と大歓迎していた。

しかし、文部科学省の考えた政策で、これまでに大成功したものはあったのだろうか。
結局のところ、他省庁よりも予算を取りたいために考え出した案で、成果を出すことは二の次だ。

「ポスドク1万人計画」が失敗だったと指摘されているが、つまり私も失敗作の一部分なのだ。
4年もポスドクをやったのに、ポスト不足で派遣社員となり、今は契約社員で年収も低いまま。
大学に戻る前提で海外留学の資金が援助されたのに、一民間企業の業績に、わずかに貢献するのみ。

もしかすると文部科学省は、批判が厚生労働省・社会保険庁に向いている間に、
自分たちの好きなように予算を使える仕組みを、作ろうと画策しているのかもしれない。

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