2009年04月

新型インフルエンザの話題が出る前は、本年度補正予算の国会審議についての報道が多かった。
本当に経済対策・雇用対策・少子化対策になるのかどうか、様々な疑問点が提示されていた。

本予算の要求時に削られたものを、この補正予算でこっそりと復活させたり、
緊急とは思えない事業を 「○○緊急対策事業費」 と、無理やり名前を付けていることもある。

例えば農林水産省では、昨年度の第2次補正に、「国産牛肉消費拡大緊急対策事業」 2億円があった。
直接販売ルートの新規開拓による値引きと販促で、売上を増加させ、食料自給率を高める事業だったようだ。
http://www.maff.go.jp/j/supply/hozyo/seisan/090218_1/index.html
http://www.ssnp.co.jp/chikusan/topnews.php?entry=21580

この事業に採択された全国肉牛事業協同組合の例では、直接百貨店などに販売し、通常の3割引きにした。
実施店では売上が3倍になったというが、影響を受けた周辺の店舗も値下げに踏み切ったそうだ。
これを波及効果と言っているが、補助金をもらえなかった店舗は利益を失い、とんだとばっちりだ。

このように高学歴の官僚たちは、牛肉が安くなれば消費者は喜ぶはずだと、単純な思考回路の持ち主だ。

ということで、本年度の補正予算にも、様々な不思議な事業があるだろうと調べてみた。

文部科学省の補正予算案では、国立大学法人などに太陽光発電設備を導入するという。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/04/1261394.htm

【国立大学法人等の施設は、世界一流の優れた人材の養成と創造的・先端的な研究開発を推進するための
拠点であり、科学技術創造立国を目指す我が国にとって不可欠の基盤であることから、「第2次国立大学等
施設緊急整備5か年計画」に基づき、重点的・計画的整備の推進を図る必要があります。

この度、「経済危機対策」を踏まえ閣議決定した平成21年度補正予算案では、耐震化対策事業、太陽光発電
設備の導入、先端研究施設の整備、老朽研究施設のエコ改修等
を図るため、施設整備費補助金(文教施設費)
として664億円を計上しています。】

そして一覧表を見ると、北から南まで、太陽光発電と耐震・エコ再生がずらりと並んでいる。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/kokuritu/__icsFiles/afieldfile/2009/04/27/1262873_1.pdf

太陽光発電設備の導入は、停電などに備えた、研究機器の電源確保ということなのか。
政府の方針として、公共施設で積極的に導入するとなっているので、補正予算に便乗したのか。
先端的な研究開発を推進するというよりは、単なる太陽電池メーカー支援でしかない。

家庭用の普及が進まない現状を見て、他省庁に先駆けて大量導入して、主導権を握りたいだけなのか。
発電量などの具体的数値は不明だが、経済産業省が縄張りの電力会社と話はついているのだろうか。

「太陽光発電の導入拡大のためのアクションプラン」 では、各省庁が連携すると書いているが。
http://www.meti.go.jp/press/20090317001/20090317001-2.pdf


また文部科学省は、新設小学校などで設置実績がある特定のゼネコンに入札させて、支援するつもりか。
耐震工事も確かに必要だが、これも特定のゼネコン支援の目的としか思えない。

それに単年度で、全ての工事が実施・完了できるものだろうか。
無理やり予算を組んで人手不足の状態にすれば、雇用が生まれると単純に考えているのだろうか。
しかし、来年度以降の継続事業が期待できないならば、結局は非正規雇用のまま、1年延命するだけだ。

私も以前、災害時電源の確保のため、体育館の屋根を太陽光発電パネルにするように主張していたから、
小中学校も含めて、各国立大学や研究機関に設置するという事業自体は認めよう。

しかし、風力発電の推進は皆無であることから、はやり裏に何かあると思ってしまう。
電力会社が風力発電を嫌っていることと、外資が狙っていることに拒否感を持つからだろう。


ついでに他省庁の太陽光発電導入についても列挙しておく。
これだけ日本各地に設置するのだから、その発電量などの地域特性を調査研究してほしいものだ。

環境省の 「国の施設のグリーン化等のための施設整備」 など。
知床世界遺産センター、ルサフィールドハウス、白神山地世界遺産センター、野生生物保護センター等、
水鳥・湿地センター、軽井沢野鳥の森休憩所、新宿御苑。

経済産業省の補正予算案については、なぜか見つからなかった。

国土交通省は、「公共建築物への太陽光発電の導入促進等」 で198億円。


設置工事から実際の発電まで、追跡する番組や記事が出るかどうか注目しておこう。

(最終チェック・修正日 2009年05月02日)

大型連休の読書で、最初に読み終えたのは、4月発売の光文社新書
中川淳一郎著、「ウェブはバカと暇人のもの - 現場からのネット敗北宣言」 である。
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334035020

【私はニュースサイトの編集者をやっている関係で、ネット漬けの日々を送っているが、
とにかくネットが気持ち悪い。そこで他人を「死ね」「ゴミ」「クズ」と罵倒しまくる人も気持ち悪いし、
「通報しますた」と揚げ足取りばかりする人も気持ち悪いし、アイドルの他愛もないブログが
「絶賛キャーキャーコメント」で埋まるのも気持ち悪いし、ミクシィの「今日のランチはカルボナーラ
(*^_^*)」みたいなどうでもいい書き込みも気持ち悪い。うんざりだ。

――本書では、「頭の良い人」ではなく、「普通の人」「バカ」がインターネットを
どう利用しているのか? リアルな現実を、現場の視点から描写する
。】

目次は次の通り。

はじめに バカを無視する「ネット万能論」
第1章 ネットのヘビーユーザーは、やはり「暇人」
第2章 現場で学んだ「ネットユーザーとのつきあい方」 
第3章 ネットで流行るのは結局「テレビネタ」
第4章 企業はネットに期待しすぎるな
第5章 ネットはあなたの人生をなにも変えない

この本は、皮肉がいっぱいだが、それはネットに過剰な期待を持つなと、強く忠告するためだろう。
集合知ではなく 「集合愚」 と呼ばれる状況は、四字熟語で言えば、「玉石混交」 というわけだ。
確かに、単にクレームをつけるネタを探して罵倒するだけの行為は、何も生み出していないし。

本書を読んで、自分のネット利用状況やブログ作成の意味を、この連休中に少し考えてみようと思った。


以前は連絡手段というと直接会うか、手紙、電話、電報、FAXであったが、今は何でも電子メールだ。
職場の連絡も、回覧するよりは、メーリングリストを利用すれば即座に完了する。
会議室の変更もすぐに連絡できるので便利だ(ただしメールを見ないオジサン社員は困るが)。

図書館に行かなくても論文を検索できるし、電子ジャーナルでダウンロードできるから楽になった。
以前は海外の新聞を読む機会は少なかったが、今では電子版がPDFで提供される定期購読もある。

翻訳でも、ネット検索があるから調査もはかどるし、オンライン辞書の利用で解決した訳語もある。
仕事や個人的な趣味の調査では、必要な情報を図書館に行かなくても得られるのは便利だ。
ネット上の情報が全て正確とは言えないものの、一日中図書館で探すよりは時間も節約できる。

ネットバンキングや通販など、平日昼間は本業で忙しい私には、便利なサービスも増えてきた。


そしてブログは失業をきっかけに始めたのだが、書くという行為は気持ちの整理には役立ったかもしれない。
ただ、私の失業・転職の話や、読んだ本や記事のメモなど、一部の人以外にはどうでもいい内容だ。
特にドイツ語用例集など、最後まで読む人は数人に限られるだろう。

私は資料の明示をすることが多いので、リンク集の一つなのかもしれないが、信頼性は保証していない。
私の記事を引用したブログや掲示板の書き込みも見られるが、主張の根拠に使われることは本意ではない。
中には、私の主張とはまったく逆の意味で引用していることもあり、これは読解力を疑う例になるわけだ。

また、センシティブな話題、捕鯨・原発・英語教育などでは、過激なコメントが投稿されることもある。
一日200件程度のアクセス数しかないのに、存在を否定するためか、しらみつぶしのように攻撃してくる。
(最近はツイッターで取り上げられることもあり、アクセス数は500~1000件/日となっている。)


ネット上で議論するつもりは最初からないので、粗探しや勘違いコメントをする人を相手にする時間はない。
そんな人を相手にするよりは、合成法の改良を考えたり、外国語の勉強をする方が大事だ。

攻撃・非難以外にも、以前もコメント欄で記事作成を要請したり、掲示板のように自由に使う人がいた。


まあ、回答してもいいかなと思ったコメントには返答しているが、その回答に対して何もないのも失礼だ。
批判コメントにまじめに応える必要はないとも言われるが。
これは年齢や立場など無関係に、その時に思ったことをただ書き込んでいる人が多いという証拠だろう。


関連書籍として、連休中に読む予定の新書は、ちょうど正反対の内容と思われる
ベスト新書の樋口裕一著、「読ませるブログ - 心をつかむ文章術」 である。

(最終チェック・修正日 2010年02月23日)

ドイツでは、モンサント社の遺伝子組換えトウモロコシの栽培が禁止されているが、
ドイツの化学メーカーBASFが開発した遺伝子組換えジャガイモは栽培は、今年も許可された。

両方とも実験的栽培なのだが、遺伝子組換えジャガイモは工業用デンプンの原料で危険性がないそうだ。

ドイツの報道と、連邦食料・農業・消費者保護省の発表は次の通り。
http://www.sueddeutsche.de/wissen/946/466527/text/
http://www.bmelv.de/cln_044/nn_754188/DE/04-Landwirtschaft/Gentechnik/Amflora.html__nnn=true

この遺伝子組換えジャガイモは、Amflora という名称である。
開発したBASFの解説は次の通り(英語)。
http://www.basf.com/group/corporate/en_GB/innovations/research-verbund/research-projects/products/amflora

ついでに、連邦教育省の解説は次の通り(英語)。
http://www.gmo-safety.eu/en/potato/starch/32.docu.html


ジャガイモのデンプンも、アミロースとアミロペクチンの2種類あるが、開発した Amflora では、
アンチセンス法でアミロースを作る遺伝子が停止し、工業的価値のあるアミロペクチンのみ作るそうだ。

Amflora は食用ではなく、そのデンプンが、紙製品、化粧品、繊維製品、糊、建築物に利用できる。
BASFは、食品・飼料に混入させず、環境にも影響しない措置をとる能力があり、危険はないという。
ただ、計画の150ヘクタールではなく、わずか20ヘクタールに減らされている。
純粋に研究目的で種イモの生産をするだけだし、管理しやすい面積に抑えられたようだ。


ドイツの報道を見ると、この実験栽培許可はドイツ連邦政府が出したわけではなく、
食料・農業・消費者保護省が単独で出したようで、他の閣僚や与党幹部は、ノーコメントだそうだ。

州政府の環境相の中には、この栽培許可に失望していると発言する者もいた。
実験栽培のうちは管理できても、外見では区別できないから、大量栽培では混入事故が危惧される。

でも、アミロペクチンだけのジャガイモを料理に使ったら、味はどうなんでしょうね。
ある程度の軟らかさもないと、食べにくいのではないだろうか。

日本で報道される捕鯨関連ニュースは、シーシェパードの妨害行為ばかりで、
ノルウェーやアイスランドの情報が、日本語報道ではほとんど伝わってこない。

仕方なく、英語やドイツ語での報道を探して、その商業捕鯨を行う二カ国の情報を得ている。

また、ノルウェー語とアイスランド語の参考書と辞書を購入して、まだまだ知識は未熟であるが、
現地報道の中から、確認したい重要な部分をなんとか探し出して、情報の補足に努めている。

この連休中にノルウェー語の勉強を進めるつもりだったが、ドイツ語検定2級を優先することにした。
ということでしばらくは、英語とドイツ語報道のチェックが中心となる。


ノルウェーは既に今季の商業捕鯨を開始しており、4月11日に最初のミンククジラが捕獲された。
補獲割り当ては年間885頭で、2013年までこの頭数に設定している。
しかし悪天候などの要因で、いつもこの上限に到達せず、今年も500頭強で終了するだろう。
http://www.wdcs.org/news.php?select=363

アイスランドでは選挙の結果、EU加盟を訴える連立政権が維持された。
漁業相は以前、捕獲割り当ての見直しに言及していたが、現時点で捕鯨についての意思表明はない。
EU加盟条件に捕鯨中止が含まれるかどうか、今後の動向に注目したい。


アイスランドの捕鯨とホエールウォッチングについてのAFPの記事は次の通り。
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5gazCPxAevtXBNlR7uUtAANZ7EERQ

前政権が設定した補獲割り当ては、ナガスクジラ150頭、ミンククジラ150頭で、去年より激増した。
捕鯨の解禁日は6月1日であるが、地元では 「月曜日は不吉」 とのことで、翌2日から操業するという。

漁業が主要産業だからなのか、捕鯨業者が 「クジラ食害論」 を信じているのが気になる。
海洋生態系のバランスを保つために、捕獲割り当ての設定が必要だそうだ。

ただ過去の乱獲への批判からか、体長20m未満のクジラや、子連れの母クジラは獲らないと決めている。


奇妙なことに港には、捕鯨船と、ホエールウォッチングの観光船が並んで停泊している。
双方ともクジラを資源としているが、捕獲割り当てについては、当然ながら意見が異なっている。
観光客1人当たり、1日平均45ユーロを使うそうで、観光も漁業に次ぐ重要な産業だ。

ホエールウォッチング観光に来た、イギリス人とアメリカ人のインタビューが掲載されている。

イギリス人は、「捕鯨には大反対だ。捕鯨を正当化する科学的根拠など無い。金儲けのためだけだ。」 と。

それに対してアメリカ人は、「捕鯨は文化的なもので、伝統の問題だ。アイスランドの人たちにとって、
捕鯨が重要であることは理解できる。特にこのような経済危機のときには。」 と、理解を示している。


アイスランドに住んで12年になるドイツ人 Angela Walk によると、
アイスランドの鯨肉の大半は、観光客が興味本位で食べている」 とのことだ。

まあ、食べる食べないは、その人が決めることだから、反捕鯨国の人でも、食べる人がいても不思議ではない。
特に観光では、何度も行くことがないため、珍しい食べ物があれば試してみようと思うだろうし。

逆に日本人の私は、何度も書いているが、鯨肉を食べないと決めている。
ただし私は、他人に食べるなと言ったことは一度もなく、自分は食べないと言っているだけだ。

観光客の消費量はわからないが、捕獲頭数を増やしても、国内消費の道があるということか。
ということで、捕鯨推進の人たちは、アイスランド観光でもして毎日クジラ料理を食べてはどうだろうか。
アイスランド経済を助けることにもなるし、日本では少ないナガスクジラもたくさんあるようだし。

bemühen
他 (h)
2 再帰 sich4 bemühen 骨折る,努力<尽力>する
sich4 um jn. <et.4> bemühen i) …を得ようと努める

Gleichzeitig bemühte sich auch Fox um Infrarot-Bilder des Nachglühens mit Hilfe
des Gemini North-Teleskops, das auch auf dem Mauna Kea steht.
同時にフォックスはまた、マウナ・ケアに同様に位置するジェミニ北望遠鏡を用いてアフターグローの赤外線像を取得しようと努力した。
("GAMMA-RAY-BURSTS: Swift entdeckt neuen Rekordausbruch", astronews.com, 28. April 2009,
http://www.astronews.com/news/artikel/2009/04/0904-036.shtml

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