私の本業は、製薬メーカー子会社での有機合成研究職である。
新規化合物の合成もするが、対照薬合成という他社特許化合物の合成が主体である。
既知化合物ならば簡単だろうと言われそうだが、特許や論文の合成法の再現性チェックはあなどれない。
追試で否定された論文のこともあるが、特許では再現できないようにわざと書くこともある。
「熟練した有機合成化学者」 であると自負するならば、そういったウソやごまかしに気づく能力も必要だ。
追試で確認された合成法のみ収録した Organic Sytheses (OS) というシリーズ本がある。
追試者の詳細なコメント付きなので、この本だけは、再現性について最初から全面的に信用してもいい。
http://www.orgsyn.org/
最近の捏造論文事件を受けて、学術雑誌でも生データの提出を求めるなど、審査が厳しくなってきた。
有機合成の専門誌 The Journal of Organic Chemistry (JOC) でも、スペクトルチャートの提出を求められる。
分析データの検討も厳格で、誤りが指摘されたり、追加データの提出が求められることもある。
この厳しい姿勢は、JOC を OS レベルの信頼性の高い雑誌にするために必要なことだ。
そして、今年の JOC の No.17 を見たところ、最初に編集部からの意見が掲載されていた。
タイトルは "Reporting Analytical Data" で、分析データの提出要請に応じない研究者がいると書いている。
http://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/jo901699f
2008年に編集部は15編の論文について、オリジナルデータを示さなかったために審査過程から除外した。
化合物の組成を示す高分解能マススペクトルや元素分析について、その生データが出せないのはあやしい。
ここまではよくある話だが、却下された論文のうち13編が、今年6月までに他の雑誌に掲載されたという。
うち6編では、分析データが化合物の構造と合致するものに置き換えられていた。
残り7編では、データはそのままだったり、別の分析法のデータになっていたり、不十分であった。
しかも4編では、JOC が却下してから数日以内に、他誌に投稿されていた。
つまり、分析データの不備を修正せずに、審査が甘い雑誌にそのまま投稿したということだ。
そんな論文が出回っているのだから、利用する我々には、追試で不備を見抜く能力が必要だ。
分析データの不備で却下した論文の数、そして他誌に再投稿してパスした論文の数は少ないものの、
著者の約3分の1が、JOC の指摘を無視して再投稿したことは、若手研究者の見本にならず、問題である。
JOC の論文は信頼性が高いことを再認識したが、他の雑誌では論文取り下げの発表が時々見られる。
最近も特許実施例のごまかしを見つけたので、これからも自分の腕を信じて再現性チェックを続けよう。
新規化合物の合成もするが、対照薬合成という他社特許化合物の合成が主体である。
既知化合物ならば簡単だろうと言われそうだが、特許や論文の合成法の再現性チェックはあなどれない。
追試で否定された論文のこともあるが、特許では再現できないようにわざと書くこともある。
「熟練した有機合成化学者」 であると自負するならば、そういったウソやごまかしに気づく能力も必要だ。
追試で確認された合成法のみ収録した Organic Sytheses (OS) というシリーズ本がある。
追試者の詳細なコメント付きなので、この本だけは、再現性について最初から全面的に信用してもいい。
http://www.orgsyn.org/
最近の捏造論文事件を受けて、学術雑誌でも生データの提出を求めるなど、審査が厳しくなってきた。
有機合成の専門誌 The Journal of Organic Chemistry (JOC) でも、スペクトルチャートの提出を求められる。
分析データの検討も厳格で、誤りが指摘されたり、追加データの提出が求められることもある。
この厳しい姿勢は、JOC を OS レベルの信頼性の高い雑誌にするために必要なことだ。
そして、今年の JOC の No.17 を見たところ、最初に編集部からの意見が掲載されていた。
タイトルは "Reporting Analytical Data" で、分析データの提出要請に応じない研究者がいると書いている。
http://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/jo901699f
2008年に編集部は15編の論文について、オリジナルデータを示さなかったために審査過程から除外した。
化合物の組成を示す高分解能マススペクトルや元素分析について、その生データが出せないのはあやしい。
ここまではよくある話だが、却下された論文のうち13編が、今年6月までに他の雑誌に掲載されたという。
うち6編では、分析データが化合物の構造と合致するものに置き換えられていた。
残り7編では、データはそのままだったり、別の分析法のデータになっていたり、不十分であった。
しかも4編では、JOC が却下してから数日以内に、他誌に投稿されていた。
つまり、分析データの不備を修正せずに、審査が甘い雑誌にそのまま投稿したということだ。
そんな論文が出回っているのだから、利用する我々には、追試で不備を見抜く能力が必要だ。
分析データの不備で却下した論文の数、そして他誌に再投稿してパスした論文の数は少ないものの、
著者の約3分の1が、JOC の指摘を無視して再投稿したことは、若手研究者の見本にならず、問題である。
JOC の論文は信頼性が高いことを再認識したが、他の雑誌では論文取り下げの発表が時々見られる。
最近も特許実施例のごまかしを見つけたので、これからも自分の腕を信じて再現性チェックを続けよう。