2009年10月

私はこれまでに2回、交通事故で骨折し、警察の調書に被害者としてサインしている。

約10年前の事故では、「調書は作文だ」 などと言った○○県警警察官の態度に立腹したことがある。
つまり、死亡事故ではないため重要度は低く、適当に話を合わせて調書を書こうとしていたのだ。
警察官と検察の都合で調書が作られるため、交通事故の当事者には二度となりたくないと感じた。
このような警察では不祥事が起こると予言したが、その後、リンチ殺人を未然に防げなかったミスをした。


ここ3年間は、交通事故の当事者にはなっていないが、今週は事故の目撃者となってしまった。
最寄駅そばで、車が街灯にぶつかる瞬間を目撃し、駅前交番に届けたので、調書に署名することになった。


今週のある日、午後6時少し前、仕事を終えて駅に向かっていると、前方に左折してくる車がいた。
ただ、曲がる角度が少し変で、道の右側にしだいに寄って走ってきた。
右側に駐車するのかと思っていたら、突然大きな音がして、街灯が激しく揺れた。
街灯に激突したわけだが、その直前にブレーキ音は全くしなかった。

前部が50cmほどV字にへこんだ車に駆け寄り、「窓を開けて! 怪我はないですか。」 と話しかけた。
すると、建設会社の車を運転していた50代後半と思われる男性は、「怪我はない。大丈夫。」 と答えた。

「事故処理のために駅前交番に知らせましょうか。」 と聞くと、「警察は呼ばないでくれ。」 と言う。
助手席の男性も、携帯電話を掛けながら、「会社はすぐそばだから大丈夫。」 と、警察を嫌がっている。

物損事故で被害者はいないが、街灯やガードレールの修理費は税金ではなく、本人に弁償してもらいたい。
また過失ならば、保険金がある程度出るかもしれないので、警察による事故証明が必要なはずだ。
それでも警察を嫌がるのは何か怪しいので、私は男性の願いを無視して、駅前交番に事故の報告をした。

警察官4名が現場に向かい、残った警察官は飲酒運転を疑い、私に酒の匂いがしたかどうか質問した。
「飲酒はしていないと思う。」と私は答え、連絡先を書いて帰宅することにした。


翌朝、出勤前に交番で確認すると、その男性は、道路交通法違反の疑いで取り調べを受けたそうだ。
そして対物事故であっても道路交通法違反であり、市に対して賠償責任があることが告げられたという。
街灯には擦り傷程度で、基礎部分は破損していないように見えたが、これは調査しないとわからない。

警察官の話では、連絡を受けて交番に来た建設会社社長が激怒していたため、事故を起こした男性は、
警察に通報されたくないというよりも、社長に知られると困るというのが本音だったようだ。


本人が事故を起こしたことを認めたため、目撃者の証言はなくてもよいとのことだったが、
何日か経過したある日、夜10時半頃に、その駅前交番から電話があった。

その男性が建設会社に出勤しなくなり、連絡が取れないため、逃走した可能性が高いとのことだ。
逃げてしまうと、罰金刑では済まなくなるし、会社からは民事で訴えられてしまうのになぜだろうか。

その男性が運転していたことを証明するため、私の目撃証言を調書に書くことになったという。
それで当時の状況を思い出して説明し、その後、自宅に警察官が調書を持ってきて署名・捺印した。

警察官の話では、車の破損は見た目よりも深刻で、廃車になってしまうそうだ。
その建設会社社長は、保険を使わないと言っているそうだが、それも何だか変な話だ。
事故率で掛金が変わり、所有する車全部に適用されるので、廃車にした方が安いと思っているのかも。

ということは、100万円近くの弁償となるので、その男性は怖くなって逃げてしまったのだろうか。

車1台が廃車になって、社長が激怒するのもしかたないが、人的被害がなかったことを幸いと感じてほしい。
ミスをした社員に全責任を取らせて追い詰めるのではなく、もう少し人情を見せてほしいものだ。
懲戒処分は、減給10%・2か月くらいで許してあげてほしい。

夏に新規契約した外資系メーカーの翻訳プロジェクトは、スケジュールの都合で10月に初めて受注した。
製品データベースの和訳なので大量にあるが、週末中心の私には少なめに割り当てられている。

このメーカーでは、Idiom WorldServer という翻訳管理システムを導入している。
http://solutions.sunflare.com/product/idiomws_2/

私たち翻訳者には、Idiom Desktop Workこench という編集ソフトが無償で提供される。
このソフトと、発注時点で最新の翻訳メモリと用語集を利用して、翻訳作業を進めていく。

このプロジェクトでは、翻訳会社を通さない直接契約をしたため、ワード単価は通常の2倍である。
ただ、翻訳メモリとのマッチ率で単価は変化し、100% マッチでは 10% にまで下がる設定だ。

そのため、ワード数は多くても、今回の翻訳料金は4万円強と、期待したほどではなかった。
まあ、このプロジェクトは新製品が出れば続き、終わりがないから、トータルでは家計を助けるはず。


単価のことだが、他の翻訳者の話では、100% マッチの場合はゼロ円のことがあるそうだ。
報酬なしということは、100% マッチの場合は何も確認せずに作業を進めることになる。

ところが私の場合は、100% マッチでも、誤訳がないかどうかの確認が必要と指示があり、10% 分はもらえる。
まあ、作業を一瞬止めて、ちらっと見るだけだし、手間賃として 10% でもいいかなと思った。

実際に作業を始めると、150 セグメント程のファイルでも、100% マッチなのに2個所の修正が必要だった。

一つは、訳抜けと言える例で、"varying amount of anhydride" が、単に 「無水物」 だった。
100% マッチの修正は適宜行えるとのことで、「不定量の無水物」 を入力して、翻訳メモリにも登録した。


もう一つは、100% マッチであったが、そのセグメント単独では意味をなさないため、
後続のセグメント2つを結合して、意味のある文にしてから和訳した。

これはシステムの問題だが、原文にピリオドがあると、そこを文末と勘違いして分割してしまう。
そのため、細かく分割されたセグメントが、単独で 100% マッチと表示されることがあるわけだ。

この細切れのセグメントで 100% マッチだったということは、翻訳メモリの登録が変なのかもしれない。
自分の和訳を登録することはできるが、過去訳の削除は権限がない。
そのため、クライアントのチェッカーに申告して、翻訳メモリの修正をお願いすることにしよう。


他にも、原文の英語で、スペルミスを2個所見つけた。

"quantative determination" は、正しくは "quantitative determination" 、
"oleofins" は、正しくは "olefins" と解釈して和訳し、コメントを入れておいた。

以前も特許文書の和訳で、辞書にない単語で苦労したが、よくあるスペルミスとして登録されていた。
病気の名前などで間違えやすいスペリングをまとめたサイトもあるが、他の分野はどうなんだろう。

まあ、こんなことを言う私も以前、inter- と書き始めるところを intra- と、ミスしたことがある。

人間はミスをするが、複数の目で確認すれば、よりよいものに仕上げていける。
化学者の私がプロジェクトに参加することで、翻訳メモリが改善されるようにしたいものだ。


追記(11月1日):
和訳入力後、原文英語に出ている、あるパラジウム錯体の組成式が気になった。
パラジウムと配位子の比は2対3のはずだが、1対3で表示されていた。
併記してあったカタログ番号から調べて、2対3が正しく、原文のタイプミスだと判明した。

こういった訳語の選択ではなく、化学の専門知識が問われる場合は、私のような翻訳者が望ましいわけだ。
原文のタイプミスを既に3個所見つけたわけで、これはアメリカ本社に伝えられるだろう。

契約では、2回目の受注からワード単価が1円上乗せされるが、この貢献によって確実だろう。

(最終チェック・修正日 2009年11月01日)

翻訳で忙しいが、休憩時間にいろいろなニュースをチェックしている。
日本の南極海調査捕鯨はまだ始まらないので、クジラ関係のニュースは少ないが、いくつかメモしておこう。

国際捕鯨委員会(IWC)では、グリーンランドのザトウクジラ捕獲枠要求に対する投票を延期していた。
その後、作業部会で継続して協議されていたが、この10月に、さらに延期することが決まったそうだ。
IWCのプレスリリースには詳細はないが、環境保護団体の発表では言及されている。
ということで、来年3月の中間会合で、投票するかどうかが再度議題になるようだ。
http://www.iwcoffice.org/_documents/commission/future/PressReleaseOct09.pdf
http://www.wdcs.org/news.php?select=482

IWCは先住民生存捕鯨を認めているが、反捕鯨国は、ザトウクジラの捕獲だけは阻止したいようだ。

そのザトウクジラだが、オーストラリア海軍のフリゲート艦と衝突した個体が死亡した

perth now というメディアの短い記事は次の通り。
http://www.news.com.au/perthnow/story/0,21498,26277729-2761,00.html?from=public_rss

アンザック級フリゲート艦パースが演習中、浮上してきたザトウクジラと左舷船首で衝突した。
軍艦側に被害も負傷者もなかったのだが、そのザトウクジラは死んでしまった。

オーストラリア海軍では、厳格なガイドラインに従い、見張りも継続しているそうだが、
残念ながら、こういったクジラとの衝突事故を避けることができず、遺憾であるとしている。

ただ、クジラは海面に浮上する時、周囲に注意を払わないと言われており、避けるのは困難だろう。

記事では、その後の対応などが不明だが、その死亡個体を研究用に利用したのだろうか。
船舶との衝突でクジラが死亡した場合、その死を無駄にしないためにも、学術的利用を考えてほしい。

死亡個体を曳航できなくても、体長測定や個体の特徴を示す尾びれの写真を撮るほか、
DNA分析用のサンプルを採取することも、事前に訓練されていれば可能だったと思う。

また、これはガイドラインに既に含まれているのだろうが、演習海域の設定をする場合は、
直前に調査したり、海洋学者のアドバイスを受けて、クジラの回遊ルートを避けてほしいものだ。


日本の主要なクジラ研究者は、データ取得のために、積極的にクジラを殺しに行くわけだが、
今回の衝突事故のように、偶然死んだ個体を利用することも、科学的調査となりうる。

ストランディングの場合は、病気の個体ばかり調べている可能性もあるが、
衝突事故の場合は、健康な個体を調査する機会が提供されたと考えてもよいだろう。


そして、この1週間前には、アメリカNOAAの調査船がシロナガスクジラと衝突して死亡させている
この場合は、死亡個体が海岸に打ち上げられ、サンプル採取などが行われている。
http://www.pressdemocrat.com/article/20091022/news/910221004

日本語記事は、次のナショナルジオグラフィックを参照。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=2009102306

調査船 Pacific Star 号が海底地形の調査中に突然衝撃を受け、海面が血で染まった。
72フィート(約21メートル)長のシロナガスクジラ(メス)と衝突し、そのときの深い傷が原因で死亡した。
推測では、事故後に漂流して、数時間後に岩場に座礁してから死亡したようだ。

クジラ保護に熱心なアメリカとしては残念な事態だが、研究者にとっては貴重なサンプル提供となった。
カリフォルニア州立大学の研究者は、例えば、脂身を採取して汚染物質などの分析をするという。

骨格標本にもしたいそうだが、岩場は危険なために作業が困難で、腐敗するに任せているという。
ということで、付近の住民にとって今後は、悪臭が問題になるようだ。


ここでは言及されていないが、船との衝突事故は以前から問題視されている。
絶滅危惧種のタイセイヨウセミクジラの生息数が回復しないのは、船との衝突事故が原因の一つだという。
しかし、反捕鯨国の欧米は、クジラの生息域を避ける航行ルートの設定は、経済的理由でできないようだ。

グリーンランドにザトウクジラを捕るなと言うならば、クジラの回遊ルートを避けて航行してほしい。
1日余計にかかると輸送コストが大幅に上昇するが、それは反捕鯨国の消費者が払えばいいだろう。
一種の環境保護寄付金のようなものとして。

まあ、それは無理としても、殺してしまった個体を無駄にせず、研究目的で最大限に利用してほしい。

ところで日本の場合は、船舶衝突クジラの扱いはどうなっているのだろうか。
日本の関係者は鯨肉にしか興味がないから、研究目的に利用することは考えないのだろうか。
水産庁にまた質問してみようかな。

「2格名詞句の同格には2格を用いる」 という記事を書いたが、この同格の用法は3格も4格も同様だ。

例文があればメモしようと思っていたところ、ガンマ線バーストの記事で3格同格の例を見つけた。
http://www.astronews.com/news/artikel/2009/10/0910-043.shtml

赤字が先行する3格名詞、青字が後続の3格同格の名詞句で、VLA を補足説明している。

"Mit dem Very Large Array (VLA), einer Zusammenschaltung von mehreren Radioteleskopen,
visierten die Astronomen den Ort von GRB 090423 erstmals einen Tag nach der Entdeckung an."

「超大型電波干渉計(VLA)、つまり多数の電波望遠鏡のネットワークを GRB 090423 の位置に、
その検出の翌日に初めて、天文学者は照準を定めた。」

1格と4格の同格の例が見つかれば、ここに追記しておこう。


4格同格の例を追記(11月1日):
「ハーシェルの宝石箱」という名前の散開星団の記事で、4格同格の例があった。
http://www.astronews.com/news/artikel/2009/10/0910-044.shtml

"Der Sternhaufen ist sogar so hell, dass man ihn schon mit bloßem Auge beobachten.
Er wird zuweilen auch Herschels Schmuckkästchen genannt, einen Spitznamen, den er
dem englischen Astronomen John Herschel verdankt."

他動詞 nennen は、4格目的語のほかにさらに4格または様態を示す語句などを伴う。
4格目的語は ihn (= den Sternhaufen) となるが、ここでは受動文なので、主語 Er になっている。
残った Herschels Schmuckkästchen が4格名詞句で、einen Spitznamen 以下が同格。
天文学者のジョン・ハーシェルが名付けたことを補足している。

(最終チェック・修正日 2009年11月01日)

erlassen* erließ/erlassen
他 (h)
1 (法令を)公布する,出す
ein neues Gesetz erlassen 新しい法令を公布する
einen Haftbefehl gegen jn. erlassen …に対して逮捕状を出す

Das Amtsgericht Regensburg hat gegen den Holocaustleugner und Traditionalistenbischof
Richard Williamson einen Strafbefehl wegen Volksverhetzung erlassen.
レーゲンスブルク区裁判所は、ホロコースト否定論者かつ伝統主義司教であるリチャード・ウィリアムソンに対して、民衆扇動という理由で略式命令を出した。
("Wegen Holocaustleugnung: Strafbefehl gegen Bischof Williamson", Süddeutsche Zeitung, 26.10.2009,
http://www.sueddeutsche.de/politik/1/492358/text/

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