2009年12月

2004年に発見された小惑星アポフィス(Apophis)は、最初は地球への衝突が心配されたが、
2036年4月13日の最接近でも、衝突確率は25万分の1であり、気にしなくてもよいレベルとなった。
http://neo.jpl.nasa.gov/news/news164.html
http://neo.jpl.nasa.gov/apophis/

ただ、地球に衝突する可能性のある小惑星は約1千個見つかっており、今後も増えると予想される。
今年11月6日には直径 7 m の 2009 VA が、地表から約 14,000 km を通過し、過去3番目の近さだった。
http://neo.jpl.nasa.gov/news/news166.html

ということで、SF映画にも出てくるように、小惑星を破壊または軌道をずらす方法が提案されている。
最近ロシアを中心として、その方法を議論する秘密会議が行われているようだ。

AFPの記事では具体的な方法が示されていないため、代わりに Voice of Russia の記事を引用しよう。
2か月前の10月21日の記事であるが、秘密会議は既にマルタで行われていたそうだ。
http://english.ruvr.ru/2009/10/21/2087898.html

地球への衝突を回避する方法は、既に多数提案されている。
核爆弾以外で、一番荒っぽい方法は、ガンマ線レーザーで小惑星を破壊する方法だ。
小さな小惑星ならば軌道を変える方法もあるそうだが、全ての小惑星に有効な方法ではないようだ。

どの小惑星で検証実験をするのかというと、地球に接近することで有名になったアポフィスが候補だ。
まずはアポフィスに探査機を送って着陸させ、位置測定の精度を上げるための電波発信機を設置する。
また科学者は、小惑星の岩石の組成にも興味があるので、一石二鳥のプロジェクトになるだろう。

2020年までに小惑星に探査機を送る計画で、国際的協力体制で行われるという。
多分日本も参加するだろうが、計画を検討する秘密会議には呼ばれていないようだ。

AFP日本語記事には、【欧州、米国、中国などの宇宙研究専門家も参加する】 とあり、
「など」 の中に日本も入っているように思われるが、英語記事を見ると、それは違うようだ。
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5g-NtMHSdrWginRoUJPLcI7Ak38aw

【.. an international project involving Russian, European, US and Chinese space experts.】

AFP日本語記事を担当する翻訳者が、どうして 「など」 と入れたのか不明だが、
現時点では日本は呼ばれず、ロシアの他は、欧州、アメリカ、中国だけと解釈した方がよい。

なんだか、国連安全保障理事国だけで話をまとめようとしているように思える。
中国は有人宇宙飛行に成功しており、大型ロケットが利用できるから入っているのだろう。
国際的イニシアチブを取るような会議では、日本が参加しても、あまり貢献できないのかもしれないし。

日本は小惑星イトカワに探査機を送った実績があるが、その技術は計画が決まってから求められるのかも。
そして多額の資金が必要な時になって、ようやく日本に声がかかるのかもしれない。

また、事業仕分けで話題になったスパコンだが、こういった小惑星の軌道計算でも威力を発揮するはずだ。
NASAでは、軌道に及ぼす影響として、太陽と惑星の他、月と3大小惑星の重力だけを考慮している。
もし日本が世界一のスパコンを開発すれば、他の天体の影響や非重力効果も加えて計算できるはずだ。
また、発見翌日に地球に最接近する小惑星も見つかっているので、迅速に計算する必要もあるし。

このように、何か課題があれば、それを解決しようとして科学・技術は進歩する。
何もしなくても、アポフィスが地球と衝突することはないと思うが、科学の発展のきっかけになってほしい。

人の判断とは常にバイアスがかかっているのだと、冷静に考えることが必要だ。
少数派であっても、メディアでの露出が多かったり、発言が目立つと、多数意見だと勘違いしてしまう。

クジラ・イルカの問題でも、日本人の全てが、鯨肉を日常的に食べているわけではないし、
反捕鯨国と呼ばれる国の市民全てが、シーシェパードを応援しているわけでもない。

しかし客観的に考えようとしても、当事者とその支持者にとっては、感情的になるのは避けられないようだ。

日本の捕鯨関係者は、捕鯨と鯨肉食は日本の伝統文化であり、他国がとやかく言うものではないと主張している。
そして水産庁の担当者が食文化の話で例示するのが、オーストラリアでカンガルーを食用にしていることだ。

最近、岡田外相が、オーストラリアのスミス外相や、オーストラリアのメディアに対して、
この 「鯨肉食は日本の食文化」 という話をしたことが、様々なところで引用されている。

Radio Australia のインタビューは次の通りで、岡田外相の発言は英訳されている。
このインタビュー番組には、グリーンピース・オーストラリアの代表も参加して、意見交換が行われた。
http://www.radioaustralia.net.au/pacbeat/stories/200912/s2768625.htm

このインタビューの話はいろいろなところで引用されているので、ここでは特に取り上げない。

代わりに岡田議員の公式ブログから、12月28日 「調査捕鯨―互いの食文化を尊重して」 を紹介しよう。
http://katsuya.weblogs.jp/blog/2009/12/%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E6%8D%95%E9%AF%A8%E4%BA%92%E3%81%84%E3%81%AE%E9%A3%9F%E6%96%87%E5%8C%96%E3%82%92%E5%B0%8A%E9%87%8D%E3%81%97%E3%81%A6.html

【… 「日本の文化についてよく理解してもらいたい。日本の国民にとってクジラを食べるということは、
オーストラリア人にとってビーフを食べるのと同じようなものだ」と、冗談半分でそう言った
わけですが、
それまで非常に友好的に議論をしてきたスミス外相が、その瞬間に顔がこわばり、黙ってしまいました。
そういう大変センシティブな問題が、このクジラの問題なのです。

… オーストラリアの新聞社がインタビューにまいりまして、… この問題の質問を受けました。

… 「… 絶滅の危機に瀕しているクジラについて、これを捕らないというのは理解する。しかし、そうでない
クジラもある。そういうときに、『クジラは特別だから』という観点で、クジラを捕ることに反対をすると
いうのは違うのではないか。お互いそれぞれの国に文化があり、『食』というのは重要な文化の一部である。
日本人は先祖伝来クジラを食べてきた。オーストラリアにも、日本人なら食べないものを食べる文化がある
かもしれない。お互いそのことを理解するべきだ
」と申し上げたわけです。

… そのオーストラリアの新聞に社説が載りました。その彼(記者)が書いているわけですが、私が
申し上げたことと同じようなことを彼は主張していて、「もし、日本人がオーストラリア人の乗る船の
行き先をさえぎって、積んであるカンガルーの肉を問題だとして声をあげたら、オーストラリア人は
どう感じるだろうか。お互いの文化・食習慣を尊重すべきではないか」と書いてありました。 …】

ここでも岡田外相は、「捕鯨は日本の伝統文化、鯨肉食は日本の食文化」 という視点だけで、
調査捕鯨が海洋生態学研究として正しい手法なのか、税金の投入は妥当なのか、には興味がないようだ。

岡田外相は気付いていないようだが、オーストラリア野党・影の内閣の環境大臣 Greg Hunt は、
「調査捕鯨は科学研究ではなく、鯨肉確保が目的だと岡田外相が認めた」 とまで主張している。
http://www.greghunt.com.au/

前置きが長くなったが、岡田外相が言及したオーストラリアの新聞を探してみた。
内容からみて、多分 The Australian 紙の 12月17日付け Opinion だと思われる。
タイトルは、「Who says whales are spiritual?(クジラが神聖だと言っているのは誰?)」 だ。
http://www.theaustralian.com.au/news/opinion/who-says-whales-are-spiritual/story-e6frg71x-1225811211654

この論説では最初に、立場を逆にして、オーストラリア人に冷静に考えるように促している。
「カンガルーは殺してもよいが、クジラはだめ」 というダブルスタンダードに気付かせようとしている。
また、一部のオーストラリア人がクジラを神聖だと考えていても、他の皆がそうすべきだとは言えない、と。

【もし日本の活動家たちが、輸出の途上でカンガルー肉を台無しにしたときの怒りを、想像してみよう。
もしその海賊たちを東京のメディアが称賛したときの反応を、想像してみよう。そしてオーストラリア人は、
「我々はカンガルーを何世紀も殺してきたし、他国の文化を押し付けるな」 と、言うだろう。】

そして論説は、「日本では、持続可能な捕鯨は、漁業の別の形態に過ぎない」 とも書いている。

【持続可能な範囲内での捕鯨とは、漁業者がいつも行ってきたことである。
日本が主に捕獲している南極海のミンククジラが、過去20年間に激減したという確たる証拠はない。】

ここまでは、岡田外相の主張に沿った論説のように思えるが、最後に厳しいことを書いている。

【ある種について心配するのであれば、クロマグロに集中すべきだ。
大西洋のクロマグロは絶滅に瀕しており、太平洋では特に日本によって過剰に漁獲されてきた。】

岡田外相は、このマグロに関する記述には言及していない。
クジラとは関係ないから無視したのか、それとも元々読んでいないのか、それはわからないが。

この論説は、捕鯨の擁護ではなく、クジラよりも絶滅に瀕した種に目を向けさせることが目的ではないか
捕鯨を妨害する団体に寄付するよりも、サンゴ礁の保護や、養殖技術の研究に使う方が役立つし。

また、これは考えたくないが、捕鯨の妨害をやめて、マグロ漁の阻止を始めようというのだろうか。

日本の食文化にとっては、鯨肉よりもマグロなどの魚の方が、重要な地位を占めているはずだ。
マグロ類がワシントン条約の対象とならないよう、日本は漁獲規制の強化を主張しているが、間に合うのか。
ならば、調査捕鯨に使っている12億円を、マグロ資源管理や養殖推進に使うべきではないだろうか。

日本の食文化を守りたい岡田外相は、マグロやカツオなどの資源についてどう考えているのだろうか。

(最終チェック・修正日 2010年01月02日)

bestatten
他 (h) ((雅)) ((jn.)) (死者を)葬る,埋葬する

Kopernikus' Schädel- und Beinknochen sollten unter einem Altar der Kathedrale bestattet werden.
コペルニクスの頭蓋骨と脚の骨は、大聖堂のある祭壇の下に埋葬されるとのことだ。
("Astronomie-Revolutionär: Kopernikus soll noch einmal bestattet werden", SPIEGEL ONLINE, 29.12.2009,
http://www.spiegel.de/wissenschaft/mensch/0,1518,669316,00.html

少額の積立投資を毎月継続することは、投資の基本の一つである。
積立投資については、様々な雑誌に取り上げられ、「年100万円貯める方法」 などの特集もある。

これまでに定期預金積立以外に、投資信託、純金・プラチナ、るいとう、プチ株を経験してきた。
来年1月からは、投資信託とプチ株(カブドットコム証券の端株取引)の積立を開始することにした。

投資信託については既に、三菱東京UFJ銀行とイオン銀行で取引があるので、正確には積立再開だ。

イオン銀行では、設定金額は1千円からなので、少額投資に向いている。
ここでは2銘柄について、それぞれ月2千円の積立を再開する。

BRICs株式インデックスファンドについて、毎月5千円の積立を再開する。
三菱東京UFJ銀行の投信積立では、一部の銘柄で設定金額下限が1万円から5千円に引き下げられている。
毎月1万円では、少々きついと感じるが、5千円ならばなんとか継続できる金額だ。
http://direct.bk.mufg.jp/info_news/keizoku_plan/index.html

ワールド・リート・オープン(毎月決算型)は、カブドットコム証券の 「千円積立」 で再開し、
三菱東京UFJ銀行の特定口座にある残高については、1月下旬にカブドットコム証券に移管予定だ。

カブドットコム証券の 「千円積立」 についてのプレスリリースは次の通り。
http://kabu.com/company/pressrelease/2009/20091225.asp

三菱東京UFJ銀行よりも少額の、月2千円に設定できるし、販売手数料が無料なのも魅力だ。
不動産投信の将来は不透明だが、投資の勉強ということで継続したい。

銀行からの移管手続きについては、いろいろとあったので、改めて記事にしておこう。


カブドットコム証券の 「千円積立」 では、プチ株(端株)の積立も設定できる。
お気に入りのロック・フィールドではなく、東レで積立をすることにした。
月3千円の設定だと、毎月5株の積立になる予定だ。
東レは配当利回りが1%を超えることの他、炭素繊維と海水淡水化技術を評価して投資する。


2月からは、確定拠出年金個人型の拠出額の上限が 23,000円まで引き上げられる。
個人年金保険も含めると、毎月の積立投資は 61,997円、年間では年払いも含めて、904,140円となる。
そしてボーナスから10万円の定期預金をすれば、年間100万円の資産形成ができる計算だ。
翻訳料金は年間で50万円から90万円の予想なので、この積立額は実現可能だろう。

追記(12月18日):
プチ株の千円積立は、東レをやめて東邦銀行にした。
プチ株の買付も含めて、現時点で400株である。
3月中旬までに1000株にして、来年は株主優待金利で定期預金を作成する予定。

(最終チェック・修正日 2010年12月18日)

人は誰でも間違いをするものだが、翻訳対象の原文にスペルミスなどがあると困ってしまう。
間違っていることを確認して、修正した和訳にするために、余計な時間を消費してしまうからだ。

過去には特許文書で、存在しない単語に遭遇したことがある。
特に病名などの一般的には使わない単語では、スペルミスが多発する傾向があるようだ。
病気の解説をするサイトでは、よくあるスペルミスの一覧を掲載しているくらいだし。

存在しない単語ならば、間違いということだけはすぐに判明するが、
ありそうな単語の場合、間違いなのかどうかは、その分野の専門知識がないと判断できないだろう。

今回は、ある天然物の研究を紹介する記事で、「antibiofueling activity」 という表現が出てきた。
「antibiofueling」 は、ありそうな単語だが、「抗バイオ燃料化活性」 とは一体何だろうか。

この天然物は藻類から単離されたため、バイオ燃料を生産する別の藻類と混ぜると、代謝を妨害するのか。

こんな活性の話は聞いたことがないので、その天然物の論文を調べることにした。
すると、正しくは 「antibiofouling activity(抗生物付着活性)」 だと判明した。

最近はバイオ燃料がはやっているので、執筆者は biof の後は、無意識にタイプしたのかもしれない。

クライアントは29日も営業中とのことなので、この原文の間違いについてメールで連絡した。
翻訳対象はアメリカ本社の製品パンフレットなので、年明けにでも修正するのかもしれない。

今回の間違いは、見積書作成時にざっと読んだときには気付かなかった。
そこで翻訳作業を中断して、文書の最後までじっくり読んで、他には間違いがないことを確認した。

明日からは残りの部分を和訳して、新年は推敲だけできるようにしたいものだ。


ところで漢字の世界では、本来存在していない幽霊文字がJISに登録された、という失態が有名だが、
今回の antibiofueling のように、ありそうな単語の場合は、検証されずに新語辞典に載るだろうか。


追記(1月23日):
納品した和訳の検収が終わり、請求書を送付した。
クライアントからの連絡では、私が指摘した通りに修正した日本語版を作成するそうだ。
単なる英文和訳ではなく、専門分野なので、原文の間違いを指摘できたことはよかった。
元の英語版が修正されるかどうか、しばらくしたら確認してみよう。

(最終チェック・修正日 2009年01月23日)

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