2010年08月

ab|geben* gab ab/abgegeben
I 他 (h)
1 a) (あて先の決められた物を直接または他人を介してある場所で)〔引き〕渡す,手渡す,手交<交付>する

Wer in Deutschland lebt, aber kein EU-Bürger ist und keinen deutschen Pass besitzt, soll bald
seine Fingerabdrücke in der Ausländerbehörde
abgeben.
ドイツで生活しているがEU市民ではない者、そしてドイツの身分証明書を所有していない者は、もうすぐその指紋を外国人登録局に提出することになるという。
("Ausweispflicht
: Millionen Ausländer müssen Fingerabdruck abgeben ", WELT Online,
18. September 2010,
www.welt.de/politik/deutschland/article9714147/Millionen-Auslaender-muessen-Fingerabdruck-abgeben.html

8 放つ,発する: Wärme <Energie> abgeben 熱<エネルギー>を放出する

Weil Glühbirnen nur fünf Prozent der verwendeten Energie in Licht umwandeln und den Rest
als Wärme
abgeben, gelten sie als extrem ineffizient.
白熱電球は使用するエネルギーのわずか5パーセントだけを光に変換し、残りは熱として放出するため、非常に非効率的であると見なされている。
("Glühlampen-Verbot: Das nächste Licht erlischt", Süddeutsche Zeitung, 30.08.2010
www.sueddeutsche.de/wirtschaft/gluehlampen-verbot-das-naechste-licht-erlischt-1.993995

auf|tauchen tauchte auf/aufgetaucht
自 (s)
2 ((比)) (思いがけなく)現れる,姿を現す


Gerade einmal vier Jahre war Penicillin auf dem Markt, da
tauchten 1947 bereits die ersten
widerstandsfähigen Bakterien
auf.
ペニシリンが市場に出てからわずか4年、そのとき1947年には既に、最初の抵抗力のある細菌が姿を現した。
("Antibiotika: Keime, wollt ihr ewig leben?", Frankfurter Allgemeine Zeitung, 28. Augst 2010,
www.faz.net/s/Rub7F74ED2FDF2B439794CC2D664921E7FF/Doc~ED824235BC5E440CB801A0F2B21D36A24~ATpl~Ecommon~Scontent.html

8月26日付けの Science 誌の目次を眺めていたら、気になるニュースがあった。
翻訳納期直前で忙しいが、メモしておこう。

10月6日からヨルダンで開催される国際会議の招待講演者に、イスラエル人が全く入っていないことが取り上げられている。
www.sciencemag.org/cgi/content/summary/329/5995/1006-a
(有料記事のため、全文は、図書館などで確認してほしい。)

招待講演者の一人、ノーベル化学賞受賞者の Roald Hoffmann 教授が、講演をボイコットするように呼び掛けている。
サイエンスの場である国際会議が、アラブ対イスラエルの政治に利用されていると、憤慨しているとのことだ。
また、IUPACに対しても、この国際会議のスポンサーを辞退するように訴えている。

この国際会議は、第11回Eurasia Conference on Chemical Sciences。
学会のHPは次の通りで、招待講演者の一覧は、「Eminent Speakers」 をクリックして確認してほしい。
www.euasc2s-11.ju.edu.jo/Public/Main_English.aspx

学会のオーガナイザーは、取り上げたテーマや時間の都合で、イスラエル人研究者を招待できなかったと説明している。
逆に Hoffmann 教授が、政治的利用をしていると批判している。


イスラエルと和平条約を締結し、外交関係もあるヨルダン政府ではあるが、イスラエル人研究者に入国許可を出せば、アラブ諸国内での立場は悪くなるし、もしかするとテロの発生も懸念される。

リゾート地の死海で開催することもあって、余計な事件を誘発したくないということかもしれない。


ところで、講演ボイコットを呼びかけている Hoffmann 教授は、アメリカで研究しているユダヤ系ポーランド人である。
略歴については、ノーベル財団のサイト(英語)で確認してほしい。
nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/1981/hoffmann-autobio.html

Hoffmann 教授が親イスラエルなのか、反アラブなのか、私は知らないが、他のユダヤ系の研究者は、どうするのだろうか。

「科学には国境はないが、科学者には祖国がある」 という、パスツールの言葉を思い出した。

続報があれば追記しておこう。


追記(9月14日):
アメリカ化学会の会員誌 Chemical & Engineering News の9月3日付け記事でも取り上げられていた。
アクセス制限はないので、Science 誌の有料記事が読めない人は、こちらを読んでほしい。
pubs.acs.org/cen/news/88/i36/8836news8.html

Hoffmann 教授は 2009 年から、他の中東地域の奨学金の話もあって、ヨルダンでの会議のボイコットを主張していたそうだが、この意見に賛成している人はほとんどいない。
著名な
イスラエル人研究者が招待されていないとしても、、自身の判断で口頭発表やポスター発表に参加すればいい。

ただ、ヨルダンの死海近辺というのは、旧約聖書でも重要な場所なので、政治的意図を感じる人は多いだろう。

(最終チェック・修正日 2010年09月14日)

ヒトの行動の進化を研究しているハーバード大学の Marc D. Hauser 教授の論文に、不正があるという噂が流れていた。

先週の Nature News で、この噂について取り上げていて、ハーバード大学が調査結果をほとんど公開していないと批判している。
http://www.nature.com/news/2010/100817/full/466908a.html

そして科学誌 Nature では今週の8月26日号の Editorial で、この不正論文問題が、共同研究者であった若手に悪影響を及ぼすと指摘している。
この記事は、無料でアクセスできるように設定されているので、興味がある人は読んでほしい。
http://www.nature.com/nature/journal/v466/n7310/full/4661023a.html

Marc D. Hauser 教授のHPは次の通りで、霊長類の行動学分野ではトップクラスの研究者とのことだ。
http://www.wjh.harvard.edu/~mnkylab/LPPI.html

ハーバード大学が詳細な報告書を出すか、メディアが新しい情報を書いたら、追記しておこう。

琉球大学では8月20日、「医学部附属病院 骨髄移植センター看板上掲式」 が行われた。
http://www.u-ryukyu.ac.jp/tmp/kotsuzui10082501/index.html

【沖縄において、発症頻度の高い成人T型細胞白血病リンパ腫(ATL)等の難治性血液腫瘍や重要再生不良性貧血の克服は必須である。さらに小児においては原発性免疫不全症や一部の先天性代謝異常症なども骨髄移植が唯一の根治療法である。このようなニーズに応えるべく、最適な化学療法と骨髄移植療法との併用及び安定的で効率的な骨髄移植療法の技術基盤を確立することを目的としている。】

しかし、引用した記事のように、琉球大学のある教授が、白血病に関する論文で不正を繰り返していたとして、
24日に懲戒解雇された。

【琉球大学は25日、大学院医学研究科に所属する40歳代の教授の学術論文で過去の実験データの流用などの不正が繰り返されていたとして、同教授を24日付で懲戒解雇処分にしたと発表した。氏名や年齢は公表していない。

記者会見した大学側の説明によると、米国の血液学雑誌から3月、教授らの研究グループが発表した白血病に関する論文に実験データの使い回しなどの不正があるとの指摘が寄せられた。大学が調査委員会を設置して調べたところ、教授が同大に着任した2002年以降にかかわった論文50編のうち38編に、過去の実験データの重複使用や使い回しなどの不正が判明した。

教授は調査に対し「元々自分たちが実験して得られたデータなので問題ないと判断した」などと説明したという。】

琉球大学の公式HPを見ても、この懲戒解雇処分については何も掲載されていない。


具体的な不正の内容はわからないが、この不正論文を基に治療方針を決めた患者がいれば、犯罪的行為だ。

私はボランティア活動の一つとして、骨髄ドナーに登録し、実際に3回候補となり、1回提供した。
また、骨髄バンクでは新たに、末梢血幹細胞移植を始める準備をしている。

患者に生きる希望を与えることができる研究・活動なのに、こんな医者・研究者がいることは残念だ。

不正論文で学位を取得した卒業生は、今頃何を考えているのだろうか。
当時は、指導教授に反抗できなかったのかもしれないが、不正に加担したのだから、学位返上は覚悟すべきだ。

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