2011年07月

南極海調査捕鯨は、シーシェパード(SSCS)の執拗な妨害を受けてきたが、今年2月に調査期間を残したまま切り上げとなった。
日本鯨類研究所(鯨研)と水産庁のプレスリリースを引用しておこう。
icrwhale.org/110218ReleaseJp.htm
www.jfa.maff.go.jp/j/press/enyou/110321.html

【…2月18日(金曜日)、乗組員の生命・財産及び調査船の安全を確保する観点から、やむを得ず今期の調査を切り上げることとしました。】

その後、調査捕鯨をどのような形式で継続するのか、「鯨類捕獲調査に関する検討委員会」が開催された。
関係者や資源管理の専門家などの意見を聴取して、「中間とりまとめ」という文書が作成された(まとめから一部抜粋)。
www.jfa.maff.go.jp/j/study/enyou/index.html
www.jfa.maff.go.jp/j/study/enyou/pdf/chukantorimatome.pdf

【…
検討委員会では、我が国の鯨類捕獲調査に関して様々な意見が出されたが、大きくは「毅然とした態度で継続すべき」との意見であり、少数の「国際的批判や費用対効果に鑑み縮小・中止すべき」との意見も出された。
ただし、何れの意見も、調査船及び乗組員の生命・財産を危険にさらすことを是とするものではなく、鯨類捕獲調査を実施するためには、安全性の確保が不可欠であり、大前提であるという基本的な認識に相違はなかった。
…】

この中間とりまとめについて、日本の新聞の英語版が報じたためか、少数意見の「中止すべき」という部分についてのみ反捕鯨団体は強調し、「水産庁が捕鯨中止を選択肢の一つとして初めて考慮している」と宣伝している。

これは偏向報道と言われても仕方ないが、ただし議事録の中には、捕鯨関係者の意見としても、「鯨肉の需要低迷の問題」が出ている。
そして国に対して、鯨肉の需要喚起について要望をしている。
つまり、日本国内で鯨肉を欲している人たちはごく一部に限られ、販促強化をしなければならないほど、需要もないということだ。

この状況を変えようということなのか、鯨研では、「鯨友の会」という親睦会? を設立した。
icrwhale.org/tomonokai.htm

【本会は、鯨類資源の保護と持続的利用を推進する日本鯨類研究所の活動に賛同し、併せて、我が国の伝統文化の一つとしての鯨食文化を維持し、継承するため、調査副産物としての鯨肉の消費に貢献することと会員相互の親睦を図ることを目的としています。 

年会費5,000円コース(12月に定価より割安な調査副産物の鯨加工品をお届け
年会費10,000円コース(12月と6月に定価より割安な調査副産物の鯨加工品をお届け )】

「定価よりも割安な調査副産物の鯨加工品」は、3種類の中から選べるということだが、1セットで5000円の価値があるのかどうか、鯨肉を食べる人たちの意見をどこかで探しておこう。



ところで、鯨研は財団法人であるから、その公益性を説明したり、収支について公開する義務がある。
そこで農林水産省に、鯨研の「鯨友の会」について、問い合わせフォームから質問してみた。
すると次のような回答が得られた(条約の解説部分など、冗長な個所は省略した)。

質問:「…財団法人日本鯨類研究所が、調査捕鯨副産物の消費拡大などを目的に、『
鯨友の会』を設立しました。…所轄官庁としては、その活動内容や会費金額の妥当性などについて把握しているのでしょうか。…この会費を別項目で計上することや、会員にも公開する義務があることを指導できないでしょうか。」

回答:「
鯨友の会』の発足については、日鯨研より水産庁に対して事前に説明がありました。…調査で得られた副産物は、…政府の指令書に従い実行可能な限り加工・処分され、その取得金は次の調査活動に充当されています。このため、調査を安定的に継続する目的として調査主体である日鯨研が調査副産物の消費拡大を行うことは何ら問題ないものと考えられます。
また、日鯨研は財団法人であることから、その収支については透明性を確保する必要があります。このため、
鯨友の会』の収支については、他の会計項目と切り分けて管理するとともに、情報公開に資するよう指導しております。」

水産庁は私が質問した項目のうち、消費拡大の活動は問題ないこと、友の会の収支は別管理として情報公開すること、の2点のみ回答している。
「収支について透明性を確保する必要があ」るのに、
会費金額の妥当性については触れていない。
収支報告を公開するだけでかまわないということか。
それとも、この金額で納得した人だけ入会するし、「定価より割安」だから、水産庁は会費金額についてノーコメントということか。

私の質問はもう一つあったが、それは無視したいのか、無回答だった。

質問:「このような会が設立されるということは、日本では鯨肉需要がほとんどないことを自ら証明することになるのではないでしょうか。」

検討会の議事録にも、中間とりまとめにも、鯨肉消費の低迷・鯨肉在庫の増加という意見が取り上げられているが、これは少数意見として無視するのだろうか。




まあ、収支の情報公開を指導するという回答が得られたので、本会計年度の収支報告が公開されたら確認してみよう。

あと、捕鯨推進派・鯨肉食推奨派の人たちは、「鯨友の会」に入会するのだろうか。
調査捕鯨を支援するのならば、ついでに「賛助会員」にもなればいい(個人年会費は1口2000円で1口以上)。
icrwhale.org/01-G.htm

ちなみに、捕鯨関係者や一部の水産関係者から嫌われているWWFジャパンの会員である私は、年会費として1万円、そしてそれに加えて、熱帯雨林保護やサンゴ礁保護などの各キャンペーンに3千円から1万円の間で寄付をしている。
他人の家計に口を出すつもりはないが、WWFを反捕鯨団体として叩くならば、同時に鯨研を資金面から援助したらどうだろう。

阪神淡路大震災では、父の実家の屋根が落ちたため、解体して建て直した。
親族・親戚は全員無事だったものの、祖父母の死後の遺産相続でもめていたので、助け合うという意識は皆無だった。
このとき両親と一緒に、ダウン症の姉が手伝いに行ったのだが、「親戚に障害者がいると町中に知られて困る」と文句を言われてしまった。

3月11日の東日本大震災では、私の出身地である東北地方太平洋側が大きな被害を受けた。
子どもの頃の旅行や海浜学校、試合などで訪れた海辺の町は一変した。
小学校では、「大きな地震が起きたら津波が来る」と、いつも教えられていたが、頑丈な防潮堤をこの目で見ていたので、甚大な被害ということを、最初は信じられなかった。


母と姉が住んでいる実家は、電気とガスが止まっただけで無事だったが、2日間連絡できずに心配した。
余震も続いているので、工務店に頼んで補修の必要性について診断してもらった。

私の家族は無事だったものの、その後しばらくして、知人の家族の訃報や、火事で家を失った知人の話も届いた。
さらに東京電力福島第一原発の事故により、10年ほど前の勤務先が操業停止となるなど、これ以上知りたくないと思うようになった。
しかしニュースでは、何度も津波被害や原発事故の映像が出てくるため精神的に苦しみ、5月の連休明けまでは何もする気が起きなかった。

「被災地出身者ならばボランティア活動に行け」などと言われそうだが、ここでは言えない個人的な理由でためらっている。
その代わりに、勤務先や取引先などで、
放射性物質や原発事故のことについて質問を受けた場合、化学者として正確な情報を提供する責任を果たそうとしている。

また、父が農業関連の仕事をしていたこともあり、農産物の風評被害があったときは、例えば「茨城県産野菜のサラダ」などを購入した。
その他にも、購入額の1割が寄付される商品券や書籍を購入したり、教会での義援金寄付のバザーに商品を提供するなど、身近なところでできることをしている。

震災後に翻訳案件が全くなくなったが、外資系メーカーから代わりの仕事として、労働安全衛生法などに出てくる化学物質の構造式を ChemDraw で作成する業務を受注した。
請求書を発送するために郵便局に行ったところ、「東日本大震災寄附金付かもめ~る」を目にした。

「かもめ~る」とは、くじ付き暑中見舞はがきの愛称で、今年のかもめ~るについては次のように紹介されている。
立秋を過ぎると残暑見舞いになるため、「暑中・残暑見舞はがき」としているが、できるだけ暑中見舞として出すことが望ましい。
www.post.japanpost.jp/kamome/kamome/know/know1.html

絵入りやカーボンオフセットなど、いろいろと選べるが、今回は「東日本大震災寄附金付き」を選んだ。
1枚当たり5円の寄付金が上乗せされており、5枚購入したから25円の寄付金だ。
あまりにも少ない金額だと言われそうだが、それは送る相手の人数が少ないからである。
他にも様々な形で寄付をしているうちの一つと考えてほしい。

寄付金・義援金で放射性セシウム汚染が解消されるわけではないし、政治家・官僚・業界関係者たちが責任転嫁合戦をしているうちは、有効に使われることがないかもしれない。
それでも役立つと信じて、今後も「国境なき医師団」も含めた、NPO法人への寄付通じた支援を続けていきたい。


また今回の震災関連では、私が会員の自然保護団体WWFジャパンでは、「暮らしと自然の復興プロジェクト」への寄付金を募っている。
www.wwf.or.jp/campaign/revive/

寄付金は、持続可能な水産業の復興支援や、太陽光発電といった自然エネルギー利用の促進などに使われる。
私はまだ寄付をしていないが、構造式作成業務の代金約3万円が入金したら、1万円程度を寄付する予定である。

ところで、被災地の水産業と言えば、鮎川の捕鯨や三陸でのイルカ漁も入るだろう。
捕鯨推進派に嫌われているWWFジャパンは手を出しにくいかもしれないので、捕鯨推進派の人たちは、日本鯨類研究所が運営する「鯨友の会」に入会して、調査捕鯨だけでも、間接的に支援してはどうだろうか。
icrwhale.org/tomonokai.htm


注:「寄付」と「寄附」の違いについて。
元々、「付」は「手渡す」、「附」は「くっつく」という意味だったが、現在では両者の意味は混合して使われている。
法令では未だに「寄附」としているため、常用漢字表に「附」を入れて、用例にも「寄附」を示したのだろう。
www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/pdf/jouyoukanjihyou_h22.pdf

ということで、日本郵政は法令で使っている「寄附金」を選択したわけだ。

ちなみに、ある国立大学付属校の場合、戦前からあった小学校は「附属」であり、「くっつく」という意味に合う。
ところが、戦後しばらくしてから設立された中学校は、当時の当用漢字表を使った「付属」である。
常用漢字表に変わったが、学校名を「○○大学附属中学校」にする動きはないようだ。


(最終チェック・修正日 2011年08月01日)

治安が良い人権国家として評判だったノルウェーで、極右思想を持つ32歳の男性が爆弾テロと銃乱射事件を起こした。
逮捕されたブライビーク容疑者は、数年前から犯行を計画しており、現時点では単独犯と見られている。
容疑者の弁護士によると、25日月曜日から始まる審理において、本人が犯行目的などを発言するそうだ。

ノルウェー紙 Aftenposten の記事では、ウート島(Utøya; Utoeya)での標的リストの一人に、グロー・ハーレム・ブルントラン(Gro Harlem Brundtland)元首相が入っていたと報じている。
オスロでの爆弾テロで現首相など労働党閣僚陣を殺害し、そして元首相を島で射殺しようと計画していたようだ。
www.aftenposten.no/nyheter/iriks/article4182934.ece

【Etter det Aftenposten erfarer hevder 32-åringen at han opprinnelig planla å være på Utøya 
fredag, da den tidligere statsministeren og WHO-sjefen holdt tale for deltakerne på AUFs 
sommerleir.
「Aftenposten が得た情報では、この32歳の男は最初から、元首相であり元WHO事務局長が労働党サマーキャンプで講演をする金曜日にウート島に行くことを計画していた。」】


この記事を引用した時事通信の配信記事は次の通り。
www.jiji.com/jc/c

【ノルウェー紙アフテンポステンは25日、同国連続テロのアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)が首都郊外のウトヤ島の銃乱射で、ブルントラント元首相(元労働党党首)の殺害を計画していたと報じた。元首相は島で開かれていた集会に参加していた。

同紙によると、ブレイビク容疑者は供述で、元首相殺害を計画していたものの、島への到着が遅れたと話している。元首相はテロが起きた22日、この島で開かれた労働党の集会で演説し、事件発生前に島を離れたという。】

共同通信の配信記事では、ブルントラン元首相が移民受け入れ政策を推進していたことも紹介している。

【ノルウェー連続テロで逮捕されたアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)が警察の調べに対し、南部ウトヤ島での銃乱射の際、同国のブルントラント元首相の殺害を計画していたと供述していることが分かった。元首相は任期中に移民受け入れ政策を推進した。同国紙アフテンポステンが25日報じた。…】

(注:ノルウェー語の ..land では、最後の d を発音しないため、私が書く場合は 「ブルントラン」 としている。)

ブルントラン元首相は、11時10分から12時40分まで講演し、その後も数時間は島に残っていた。
ただ、元首相が既に島を離れた後に、ブライヴィーク容疑者は船で島に到着した。
そして警察によれば、17時27分に最初の発砲があったという。

移民受け入れ政策を進めた最優先ターゲットを逃した容疑者だが、労働党を支持する若者たちも彼の敵であり、「プランB」 として、射殺することに何のためらいもなかったそうだ。

そして本日25日に裁判所で始まった審理では、本人には罪の意識がなく、正しいことしたと告白しているという。
時事通信の記事は次の通り。
www.jiji.com/jc/c

【…弁護士によると、容疑者はこの場で自分の考えを説明してもよいと語っており、犯行に至った背景が明確になる可能性もある。裁判官は審理を非公開とした。

警察当局者によれば、ブレイビク容疑者はこれまで、黙秘せずに尋問に答えている。容疑者は爆弾テロと銃乱射の双方とも犯行を認めているものの、自分が正しいことをしたと考えており、「罪の意識はない」(同当局者)という。】


ところで、警察の対テロ特殊部隊デルタが、ウート島に到着するのが遅かったのではないかと批判されている。
ヘリコプターを使わずに、陸路でオスロから45kmも移動して時間がかかり、犠牲者が増えたのではないかと言われている。
これに関して、ドイツの ZEIT Online の記事を引用しておこう。
www.zeit.de/gesellschaft/zeitgeschehen/2011-07/oslo-polizei-kritik

特殊部隊移動用のヘリコプターは、ノルウェー軍のものを使うことになっていた。
ただ、オスロから離れた軍の基地へ移動するよりも、そのまま陸路で直接ウートヤ島に向かう方が早く到着するとの判断だった。
警察は監視用ヘリコプターを所有しているが、残念ながら当日はパイロットが全員、休暇を取得していて不在だった。
監視用ヘリコプターであっても、スナイパーを一人でも乗せて急行すれば、犠牲者は減ったかもしれない。


どこの国にも、極右思想を持ち、外国人排斥を主張する人たちがいる。
その人たちは、自分の国を一歩でも出れば、世界中で外国人として扱われることに気付いていない。

日本では小学校で外国語活動が導入されたが、本来の目的である異文化理解教育を忘れてはいけない。
そして、社会科教科書でも問題となっている歴史修正主義者を警戒しなければならない。
日本は、特定の国籍を持つ外国人を嫌う知事が、オリンピック招致活動をするような国である。
世論の右傾化に注意していないと、手遅れになるという意識を持たねばならない、と警告しておきたい。


追記(7月26日):
非公開審理でのブライヴィーク容疑者の発言の一部が、担当した裁判官から紹介された。
日本のテレビニュースのテロップでは、「イスラム勢力からヨーロッパを守る」 となっていたが、「マルキストとイスラム勢力からヨーロッパを守る」 というのが正確な訳だ。
反イスラム思想の持ち主という前提だから、反マルクス主義という情報は省略してもよいということなのか。

ところで、日本の麻生元首相に会いたいと書いていたそうだが、その理由として、「日本は単一民族・単一文明社会・単一文化・
単一言語・単一人種の国」 という発言を評価していたと思われるそうだ。
しかし、日本には少数民族としてアイヌ民族が住んでいることは国際的常識であり、国会ではアイヌ語も公用語である。

ノルウェーにも北部を中心に少数民族サーミ人が住んでおり、サーミ語もノルウェーの公用語となっている。
移民問題を抜きにして、国内少数民族を無視するという点で、麻生元首相(カトリック)と意見が一致したようだ。
キリスト教団体は、ブライヴィーク容疑者を非難する声明を発表しているが、麻生元首相のコメントも聞きたいものだ。


(最終チェック・修正日 2011年07月26日)

7月23日の朝は、いつものようにauひかりTVでBBCワールドニュースを選択した。
すると、ノルウェーの首都オスロでの爆弾テロについて、首相と法務大臣の記者会見が、英語同時通訳で中継されていた。
英語、ドイツ語、ノルウェー語のメディアを検索して、とんでもない凄惨な事件だと理解した。
その後、ウート島(Ut?ya; Utoeya)での与党労働党(AUF)のサマーキャンプで、銃乱射事件が起きたと続報が入り、ノルウェー人の容疑者が逮捕された(素直に投降した容疑者を射殺しないところが、人権優先のノルウェーらしいかもしれない)。
(注:?ya (oeya) は「島」という意味のため、ここでは「ウート島」とした。)

英語報道として、BBCの特設サイトと、記事のいくつかを引用しておこう。
www.bbc.co.uk/news/world-europe-14261716
www.bbc.co.uk/news/world-europe-14260297
www.bbc.co.uk/news/world-europe-14260195

ドイツ語報道として、例えば SPIEGEL Online の記事は次の通り。
www.spiegel.de/politik/ausland/0,1518,776134,00.html

また、ノルウェー語報道としてNRKの記事、そしてノルウェー政府HPから、首相の23日のスピーチを引用しておこう。
www.nrk.no/nyheter/norge/1.7723633
www.nrk.no/nyheter/norge/1.7724120
www.regjeringen.no/en/dep/ud/Whats-new/news/2011/transcript-of-the-prime-ministers-speech.html

最初の爆弾テロは自動車爆弾が使用されたと推測され、アルカイダ系イスラム過激派勢力のテロだという説も流れた。
ノルウェー軍はアフガニスタンに派遣されており、またリビアの攻撃にもNATO軍として参加しているなど、報復の可能性はあった。
しかし、労働党サマーキャンプ襲撃事件の容疑者 Anders Behring Breivik(オンダース・ベーリンク・ブライヴィーク)のプロフィールから、イスラム過激派ではなく、極右思想に染まったキリスト教原理主義の移民排斥主義者の犯行と報道されている。

(注:容疑者名のカタカナ表記は、ノルウェーのNRKニュースを聴いて採用した。「オンダース」という発音を紹介しているサイトもあるが、他のネイティブ録音のMP3ファイルでは 「アンネシュ」 の他に 「オンネシュ」 や「アネーシュ」、 「アンデシュ」 もあり、それぞれ方言の可能性もある。今後、確認したい。
姓の発音では、二重母音 ei は 「アイ」 なので、NHKのアンネシュ・ブライビークが一番近い。他のメディアはアンネシュ・ブレイビクとしている。
注2(8月15日):容疑者名のカタカナ表記は今後、VGテレビのアナウンスを参考にして、アネシュ・ブライビッキとしたい。)

今回襲撃された、労働党(AUF)のウート島サマーキャンプの紹介サイトは次の通り。
auf.no/-/page/show/utoya

この事件の直後から、Wikipedia では今回の事件に関するコンテンツが、容疑者の情報も含めて随時更新されている。
ブライビーク容疑者は、右派のノルウェー進歩党(FpU)で活動していたが、より極右思想に染まって脱退していた。
FpUは、事件の被害者と家族に対して弔辞を発表している。
fpu.no/2011/07/vi-kondolerer/

容疑者は、野菜などを栽培する園芸農家と称して、最近6トンの化学肥料を購入しており、この化学肥料から爆弾を製造したのではないかと疑われているが、販売業者は通常の購入量だと言っている。

ただ、以前からネット上に極右的書き込みをしたり、直前には犯行予告と思われる書き込みもしていた。
www.nrk.no/nyheter/norge/1.7724781
www.nrk.no/nyheter/norge/1.7724818
一応、日本語報道として、NHKのニュースを引用しておこう。
www3.nhk.or.jp/news/html/20110723/t10014411861000.html
【…
オスロで22日、首相府など政府の建物が集中する地区で大きな爆発があり、7人が死亡しました。現場では建物の外壁が大破し、割れた窓ガラスやがれきが広い範囲に散乱しており、警察は爆弾テロとみて捜査しています。さらにその2時間後には、30キロ余り離れたオスロ郊外のウートオイヤ島で開かれていた、与党・労働党の青年大会の会場で、男が銃を乱射し、地元警察によりますと、これまでに85人が死亡しました。大会には当時、10代から30代の若者およそ700人が参加していて、目撃者によりますと、警察官の制服を着た男が、若者たちに声をかけ、集まってきたところで突然、持っていた自動小銃を乱射したということです。警察は、現場にいたノルウェー人の32歳の男を発砲の疑いで逮捕しました。…ノルウェーの国営テレビは、男はアンネシュ・ブライビーク容疑者で、オスロ市内の男のアパートが警察の家宅捜索を受けたと伝えています。…容疑者の男がウェブサイトに行った書き込みなどから「極右の傾向がある」としています。また、ストルテンベルグ首相は、23日記者会見し、事件の背景について「ノルウェーにも極右の組織はあるが、推測は慎み、警察の捜査の結果を待ちたい」と述べるにとどまりました。】


ヨーロッパは多文化・異文化理解教育を進めていたはずだが、このように極右思想に染まり、
特に非白人系・非キリスト教信者を嫌う者は、残念ながらいるものだ。
特に経済危機後のヨーロッパでは失業率も上がり、国民に余裕がなくなったためか、外国人嫌いの本音が噴出している。
そしてヨーロッパに限らず
各地で、外国人排斥思想を持つ者による移民や留学生に対する襲撃事件が起きている。

私は旅行資金を貯めて、2年以内にドイツの友人を訪ねた後に、ノルウェーにも観光に行く計画を立てている。
ドイツもテロの危険性があるという警告がされているが、ノルウェーでも同様に周囲に気配りして行動しようと思う。

私が留学していたドイツでも、ネオナチと呼ばれる極右団体は数多くあるし、特に旧東ドイツ地域では失業率が10%を超えていることもあって、外国人研究者の家族が殺害される事件も起きているほど、外国人排斥思想がはびこっている。
そんなこともあってか、ルドルフ・ヘス副総統の墓がネオナチの聖地となっているという理由で、命日の8月17日が来る前、7月20日に
既に撤去されている
ただ、今度は教会が襲撃されるのではないかと心配だ。
www.afpbb.com/article/life-culture/life/2815326/7534859
www.sueddeutsche.de/bayern/wunsiedel-ende-einer-nazi-pilgerstaette-grabesruhe-nach-der-exhumierung-von-hitlers-stellvertreter-1.1123075

ところで日本での無差別爆弾テロというと、小学生の時に起きた三菱重工ビル爆破テロが思い出される。
また、サリンによる化学テロも、無差別テロということで、全世界を震撼させた。
その後も各地でテロが起きているが、日本でも狂信的団体がテロを起こす可能性はゼロではない。

また日本では、世界人権宣言や日本国憲法の精神を遵守すべきはずの政治家だけでなく、影響力のある言論人たちが、外国人排斥思想を国民に吹き込んでいる。
社会科教科書での歴史記述内容の問題について、様々な議論があるのは周知のことだ。

それに例えば石原都知事は、原発事故後に住民が避難した福島県沿岸部で空き巣などの犯罪が増えていることについて、「外国人が関与しているのに、政府は国名の公表をためらっている」という主旨の発言をしている。
www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/TEXT/2011/110610.htm


被災地での窃盗事件は増えていることは事実だが、警察の捜査が追い付かず、外国人の犯行という証拠は見つかっていない。
石原都知事は独自の情報源を持っているのか、それとも単なる先入観なのか、
国民に外国人犯罪が増えているという不安感をなんとかして植え付けたいようだ。
このような人物の影響のためか、朝鮮学校の生徒を襲う人がいたり、警察や入国管理局で外国人への嫌がらせ行為や暴行事件が起きるのだろう。

日本ではまだまだ人権意識が低く、外国人排斥思想など右傾化しやすいと危惧している。
外国人の人権を擁護するリベラル派日本人を、極右思想を持つ日本人が殺害するという事件も起きるだろう。
そして言論の自由・表現の自由が脅かされるのではないかと心配だ。

また、忘れてならないのは、イスラエルのラビン首相を暗殺したのは、パレスチナ人ではなく、極右思想を持ったユダヤ人であった。
同様に今回のノルウェーでのテロも、自分と異なる考えを持つ労働党員を狙ったもので、自国民同士が対立しているのだ。
ノルウェーを含めたヨーロッパで、これ以上、外国人排斥運動が広がらないことを祈りたい。


(最終チェック・修正日 2011年08月15日)

1930年に発見された冥王星は、当初は太陽系第9惑星とされていたが、惑星の定義が見直されて、準惑星(dwarf planet)に格下げされた。
この格下げ決定の半年以上前に、NASAは冥王星探査機ニューホライズンズを打ち上げていたが、惑星ではなくなっても、太陽系外縁部に無数に存在する天体の代表として、観測する意義はある。

2005年には新たに2個の衛星ニクスとヒドラが発見されたり、今年になって大気中の一酸化炭素が増えたと報告されており、ニューホライズンズによる調査結果は数多くの新知見をもたらすだろう。


そして7月20日のNASAの発表によると、ハッブル宇宙望遠鏡の観測で、冥王星に4個目の冥王星が発見された。
下に引用した写真で、P4という仮符号が付けられている小天体だ。
www.nasa.gov/mission_pages/hubble/science/pluto-moon.html

これでニューホライズンズの観測対象が1つ増えたわけで、予算を復活させて実現させたこの探査の意義が、より大きくなったと言えるだろう。


日本語記事として、アストロアーツの記事を引用しておこう。
www.astroarts.co.jp/news/2011/07/21pluto_moon/index-j.shtml

【2015年に冥王星に到着予定のNASAの探査機「ニューホライズンズ」のサポート観測を行っていたハッブル宇宙望遠鏡が、冥王星に新しい衛星を発見した。この衛星は仮符号としてP4という名前で呼ばれている。

これまで冥王星にはカロン、ヒドラ、ニクスという3つの衛星が既に発見されていた。P4の直径は13~34kmであり、最も大きいカロン(直径1200km)や、直径が32kmから113kmに収まると考えられているヒドラやニクスと比較すると、最も小さい衛星と言えそうだ。また、P4は冥王星の周りを約31日の周期で回っており、その軌道はニクスとヒドラの間にあることもわかった。

新しい衛星の発見によって、「ニューホライズンズ」が冥王星をフライバイする際の観測対象の候補がまた1つ増えたことになり、「ニューホライズンズ」による観測計画が多少変更される可能性もある。】


ドイツ語記事で読みたいならば、astronews.com の記事を参照してほしい。
www.astronews.com/news/artikel/2011/07/1107-022.shtml

【Mit Hilfe des Weltraumteleskops Hubble haben Astronomen einen weiteren Mond 
des Zwergplaneten Pluto entdeckt. Der kleine Trabant wurde bei einer systematischen 
Suche nach Ringen um Pluto aufgespürt und ist der kleinste Mond des Zwergplaneten. 
Der Durchmesser des vorläufig als P4 bezeichneten Mondes liegt nach Ansicht der 
Astronomen zwischen 13 und 34 Kilometern. …】


このように、観測機器の発達に伴って、新事実が次々と明らかになり、知識が増えることが自然科学の魅力の一つだ。

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