2011年11月

月に1回か2回ほど、日曜日の午前中に東京都内で用事があるため、眠いが9時前に出かけている。
交通費を節約したいのが本音だが、クリスマス関係行事の準備の手伝いも頼まれているので、
来月12月は毎週行くことになるだろう。

その目的地は少々急な上り坂の上にあり、勾配は見た目で10%以上あると思われる。
一方通行のその上り坂の途中に、大きなワゴン車(1ナンバーなので普通貨物車扱い)が路上駐車していた。
すぐ横の建物を見ると、あるホテルの1階で営業していたカフェバーが閉店していて、改装工事中であった。

警察官ではない私には、道路使用許可の有無を確認する権限がないため、代わりに駐車方法について注意した。
急勾配の坂道に駐車しているのに、タイヤの車止めがないことを指摘したが、いつものことながら無視された。
作業員に注意していた間に、青いタイルで覆われたドーム状の物体を乗せたクレーン付きトラックが、ワゴン車の後ろに駐車した。
5分ほど余裕があったので、スマートフォンで管轄の警察署を検索し、そして電話で違法駐車取り締まりの要望をした。

用事を済ませて3時間後、帰りに同じ坂道を降りていたところ、ワゴン車がまだ駐車中だった。
しかもクレーンで10メートル長以上のガラス板を吊り上げ、作業員全員が補助しながら、歩道上を通過させているところだった。
この作業で歩道をふさがれたため、歩行者はやむなく車道を歩くことになり、非常に危険な状況であった。
加えて、このクレーン付きトラックは、アウトリガーで路面に固定していたものの、ワゴン車と同様にタイヤに車止めはなかった。

そこで再び警察署に電話をして、午前中に取り締まりを依頼した場所に、同じ車が駐車していることを告げた。
帰宅してから警察署から報告があり、午前中に警察官が現場で移動を求めたところ、ワゴン車もトラックもすぐに移動したという。
警察官の指導によって移動したということは、道路使用許可を取得していなかったと推測される。

しかし、午後にかけて作業をしていたということは、警察官がいなくなった頃を見計らって戻り、改装工事作業を始めたということだ。
午後の通報後は、トラックは荷物の積み込み作業中ということで、口頭による厳重注意を行い、ワゴン車だけを移動させたという。

歩行者に対する危険性だけではなく、坂道での駐車自体が危険である。
道路交通法第44条の「停車及び駐車を禁止する場所」には、次のように書いてある。
【1.交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂又はトンネル】

勾配5%でもクレーン付きトラックが関与した死亡事故例として、池袋警察署の資料を引用しておこう。
www.ikerokyo.or.jp/sho_idokuren_sibo.pdf
【…坂道にクレーンを駐車していたにもかかわらず、タイヤの車止め等の逸走防止対策が講じられていなかった…】

警察からの説明後、そのホテルに電話して、この危険な改装工事作業について
総支配人と話をした。
12月上旬に新規開店するレストランの改装工事中で、その日はピザ用の石窯を搬入するために、クレーン付きトラックが来たという。
ただし、そのレストランのオーナーに店舗部分を賃貸しているのは、ホテルの親会社であり、総支配人は詳細を知らなかった。
道路使用許可を取得しているかどうかも知らず、単に安全に作業してほしいという要望を伝えただけだったという。
その「安全」とは、ホテルのチェックアウト時間後から午後2時までの間ということで、つまりホテルの利用者の安全のことだけ。
歩行者はその時間帯も通行しているのに、そこまでは意識していないことが判明した。

総支配人には、レストランのオーナーへの伝言を頼んだ。
何も事故が起きなかったから良かったものの、安全軽視の業者を使うようなレストランは信用できない」と。

私には少々こだわりがあり、マルゲリータがおいしい店で、しかも禁煙の店を、時間があれば探している。
このレストランには石窯が搬入されたわけだから、味は期待できるはずだ。
しかし、これまで説明したように、安全意識の欠如した内装業者に発注し、現場の状況も把握しないようなレストランは信用できない。

テナントとして入居する前に、場所の確認をしているはずだから、搬入作業などで道路使用許可が必要なこと、そして歩行者の誘導要員を配置すべきだと認識していただろう。

今回のレストランだけではなく、美容院や衣料品店でも、開店前の工事で非常に嫌な体験をした場合、抗議することにしている。
例えば、業者が歩道にトラックを駐車したため、ベビーカーを押している夫婦が車道を歩くことになってしまった。
また、内装業者が車道にトラックを駐車し、さらに歩道には塗料缶を並べていて歩きにくく、しかも可燃物である塗料缶の横で喫煙していた。

大企業ではなくても経営者はコンプライアンス意識を取引先にも求めるべきであり、自分の店のサービス向上だけを考えるのではなく、改装作業の業者に対しても、安全管理の徹底や、道路使用許可申請の確認をすべきだ。

このレストランでピザを食べる気はしないが、目的地への途中にあるので、どんな店なのか外からのぞいてみよう。


経済破綻後に成立した現アイスランド政府は、EUに加盟して、ユーロ導入による立て直しを考えている。
アイスランド国民への世論調査では、賛成・反対はほぼ拮抗しているという報告もあれば、反対が多いという結果が出たりで、本当のところは国民投票をしてみないとわからない。

経済再建のためにEU加盟交渉を始めたわけだが、環境問題などの他の分野でも、EUの政策と矛盾しないように調整する必要がある。
アイスランドの加盟は絶対に無理だと噂されているが、それはアイスランドが再開した商業捕鯨がEUの方針に反するから。
クジラだけではなく、野生生物の保護政策について、EUの環境政策基準に合わせることが、加盟条件になると推測されている。

本来EUでは、多様な文化・民族の相互理解を推進するはずなので、アイスランド特有の捕鯨文化は認められる可能性はある。
例えば、国民のほとんどがカトリック教徒のマルタでは最近まで、憲法で離婚を禁止していたのだし。


捕鯨に関してEU内では、デンマークはグリーンランドとフェロー諸島の外交を代理する立場のため中立だ。
しかし、強硬な反捕鯨国であるオランダが特に中心となって、EU議会では捕鯨反対決議を採択している。
そしてアイスランドへの質問書にも、捕鯨に関する質問が含まれていた。

今のEUは、アイスランドの加盟交渉をしている余裕はないと思われるが、先週から環境部会での事前交渉が始まっている。
アイスランドのメディアの報道では、交渉に参加している外務大臣の話を引用して、EU側から捕鯨問題については、何も言及がなかったとある。

Iceland Review Online の英語記事と、アイスランド語の記事を引用しておこう。
www.icelandreview.com/icelandreview/daily_news/
The European Union will not make remarks on commercial whaling in Iceland at the opening of the environmental chapter during the ongoing accession talks, as Icelandic Foreign Minister ?ssur Skarph??insson stated this week. …】

ruv.is/frett/engar-athugasemdir-vid-hvalveidar

【Evr?pusambandi? mun ekki gera athugasemdir vi? hvalvei?ar ?slendinga vi? opnun umhverfiskafla a?ildarvi?r??nanna. …】

まだ会合が始まったばかりなので、この時点では、EU側の態度が変わったなどとの結論を出すことはできない。
環境関連の話題はクジラだけではなく、回遊性魚類や渡り鳥なども含めた広範囲のものだから、最初から商業捕鯨の話を持ち出して混乱させるようなことは、EU側も避けたいはずだ。
まあ今年は、アイスランドがナガスクジラ漁をしなかったため、EU内の強行派を思いとどまらせたのかもしれないが。

捕鯨については、ある種の妥協点・交換条件が交渉議題になると、私は推測している。
グリーンランドと同様の先住民生存捕鯨を選択し、かつ、日本などへの鯨肉輸出を断念すれば、EU加盟が認められるかもしれない。

本格的な交渉は2012年前半に始まるそうなので、アイスランドの捕鯨の扱いについてもフォローしておこう。

私は副業で英語・ドイツ語翻訳をしており、誤訳や勘違いをしているかもしれない、というプレッシャーをいつも感じている。
そのためか、海外ニュース記事などの日本語翻訳記事を読んでいても、誤訳がないかどうか気になってしまう。


過去記事で何度か取り上げたように、翻訳者が使っていたオンライン辞書自体が間違っていたり、翻訳者が構文解釈を間違って反対の意味にしていたり、特定の分野で使う専門用語を全く知らないと思われるケースにたびたび遭遇してきた。

年間の案件数は少ないものの、私も翻訳者として対価を得ているので、こうした誤訳例を集めて原因を考え、自分の翻訳作業を反省する材料にしている。
翻訳作業は、単語1個の調査に1時間かかるという極端なこともあり、いつも納期厳守というプレッシャーとの闘いでもある。
品質確保のためにチェッカーを通してからクライアントに納品されるが、翻訳者自身が責任を持って推敲していることが前提だ。

何回かチェッカーの仕事をしたことがあるが、あるドイツ語特許和訳では基本単語ですら誤訳があり、構文解釈も自己流のようで、私が40%ほど翻訳し直すことになった。

和文英訳チェッカー案件の打診が最近あったからというわけでもないが、ロイターやAFP、CNNといった海外ニュース配信会社の日本語版を読むときに、特に注意している。

今年の過去記事では、AFPBB Newsでの誤訳や疑問点について取り上げることが多かった。
www.afpbb.com/

単純な誤訳や、専門用語の表記方法についての指摘が多いものの、正しい情報を配信することを要望することは、利用者の権利である。
しかもAFPBB Newsでは、ブログへの記事引用を許可しているのだから、誤訳を引用したブログ記事が増殖しては困るだろうし。
以前もクジラの種名を間違えた記事が多くのブログで引用され、「アメリカは絶滅危惧種のセミクジラを殺している」と憤慨している人もいた。
私の指摘によって訂正されたものの、ネット上では誤訳に基づく引用記事がいつまでも残っている。

確かに免責条項として、翻訳精度について保証はしていないが、誤訳の放置は困るし、契約翻訳者やチェッカーの能力も高めてほしい。
www.afpbb.com/copyright/#article6
第6条(AFPニュース写真等に関する免責)
弊社は、AFPニュース写真等及びAFPニュース和文記事、BB写真等、BB和文記事の内容の真実性並びにAFPニュース翻訳記事及びBB翻訳記事の翻訳精度について一切の保証をいたしません。】

AFPには要望しているのだが、できれば原文の英語記事へのリンクを付けてもらうと、和訳に疑問があるときに確認しやすい。
いろいろなキーワードで検索して、元の英語記事を探しているのだが、どうしても見つからないこともあるので。
翻訳精度について免責条項を設けるくらいならば、「翻訳記事の内容について疑義が生じた場合、英語記事を正本とする」と、新たに追加して英語記事のリンクを表示することも考慮すべきだろう。

私の指摘は無関係と思われるが、日本語版を運営している株式会社クリエイティヴ・リンクでは、ニュースエディター兼翻訳者を募集している。
www.clc.net/service/index.html (クリエイティヴ・リンク社の運営サービス紹介ページ)


翻訳者ディレクトリでの募集要項を抜粋しておこう。
www.translator.jp/job/
【No. 4771
募集ジャンルと言語  AFPBB Newsのニュースエディター兼翻訳者(英→
募集対象地域     東京都港区まで通勤可能な方
募集人数        若干名
募集期限        2011年12月9日
応募資格        【歓迎するスキル】
・チームワークを得意とし、並行して複数の作業を行える方
・デジタルメディアに興味のある方
・写真やその他のビジュアルジャーナリズム(動画やグラフィックなど)などに               
関わった経験がある、もしくは興味がある方
…】

応募フォームから、条件などについて、一部補足しておこう。
国際ニュースの編集、翻訳、校正。仏AFP通信が配信した英語のニュース記事を編集、翻訳、校正し、サイトに上げるまでの作業すべてに携わります。

正社員、もしくはパートタイム
シフト制、土日勤務の可能性あり】

フリーランス翻訳者の募集ではないため、私には関係ない話だが、できれば科学記事の翻訳が得意な人を採用してほしい。
誤訳があるかもしれないなどと心配することなく、のんびりと和訳ニュース記事を読みたいものだ。
追記(11月29日):
CNN.jpも英語記事の和訳を担当する編集者を募集している。
aiasahi.jp/recruit/newsdesk201105.htm
CNN.co.jpに掲載する海外ニュース作成のディレクション、編集
・記事にするニュースの選定
・ニュースの執筆、編集
・在宅翻訳者から納品される原稿のチェック
…】

CNN.jpでも和訳記事の誤訳はたびたび見つかっている。
例えば、コペルニクスの遺骨のDNA鑑定の記事で誤訳をしていたが、指摘しても訂正しなかった。
ドイツのバイエルン州を「ババリア州」とするなどの、違和感のある用語選択も見られた。

この募集ではトライアル課題も添付されている。
ただ、できれば科学・技術関係記事のトライアルも、追加してほしいものだ。
他の通信社も似たようなものだが、理科系知識が不足した翻訳者が多いようなので、誤訳をしない優秀な人を採用してほしい。

(最終チェック・修正日 2011年11月29日)

ヨーロッパで大騒ぎとなったウシの病気と言えば、BSE(ウシ海綿状脳症)である。
変異プリオンはヒトにも影響し、新型クロイツフェルト・ヤコブ病の発症が大問題となった。
私がドイツ留学していた時期は、まだイギリスの問題だったため、学食では「安全なドイツの牛肉を使用」という掲示をしていた。

帰国後しばらくしてから、ドイツでもBSEが発生したため、6か月以上滞在した私は、今でも献血ができない。
骨髄ドナーとしての登録情報利用は一時保留となったが、現在ではその制限が解除されている。

BSE騒ぎが終息したドイツだが、今度は未知のウイルスに感染したウシがノルトライン・ヴェストファーレン州で見つかった。
家畜伝染病などの研究をしている Friedrich-Loeffler 研究所(FLI)が、オルトブニヤウイルスの一種と思われるウイルスを検出した。

主に吸血昆虫により媒介されるオルトブニヤウイルス属の病原体は、オセアニア、オーストラリア、アフリカでよく見られるが、ドイツではまれである。
今年の夏以降、ノルトライン・ヴェストファーレン州で飼育されているウシで、原因不明の40度を超える発熱や、乳量の減少などが見られた。
通常の検査方法では病原体が判明せず、FLIがメタゲノム解析を行ったところ、あるウイルスが検出された。
そのゲノム解析の結果から、アカバネウイルスによく似ているものの、未知のオルトブニヤウイルス属らしいと判明した。

また、オランダの農場80か所でも同様の発症が見つかっており、同じウイルスが原因と考えられている。
しかし、今回検出された新ウイルスが、本当に原因病原体なのかどうかの結論は、まだ出せないという。



ウイルスの培養法や検査方法の開発が進められているが、元々今回の新ウイルスがどこから来たのか、いつから潜伏していたのか、既知のウイルスがヨーロッパで変異したのか、それは全く不明である。

畜産業では病原性大腸菌やサルモネラ菌の他、チーズのリステリア菌汚染が注目されているが、今回の新ウイルスの情報にも注意していきたい。


フクシマ事故後の放射性セシウムなどの汚染は、福島第一原発周辺だけではなく、日本全体に広がっていることがわかってきた。
首都圏でも何か所か、ホットスポットと呼ばれる高濃度汚染地点が発見されており、食品汚染も含めて不安が消えることはない。

放射性物質管理を担当する文部科学省では、空間放射線量をリアルタイムで監視しようということで、補正予算に放射線量監視システムの導入費用を計上し、入札を行った。
その入札の結果、5月に福島県飯館村に計測器を無償提供した株式会社アルファ通信が、第一次補正予算の600台分を落札した(公式ブログの記事を参照)。
alphatele-marutoku.blogspot.com/2011/08/blog-post.html

【…文部科学省は、福島県内の学校及び公共施設など2700ヶ所に、放射線量を常時計測し、インターネットで開示する「リアルタイム線量測定システム」の導入を決定いたしました。第一回の競争入札を7月25日に実施し、当社もこれに応札したところ、7月29日に同省から落札業者となった旨の通知をいただきました。
…設置場所周辺の放射線量を常時測定し、累積、公開表示できるシステムとして緊急開発した「安心生活」…の性能と実績(すでに福島市、伊達市、南相馬市、飯舘村などで稼働中。東京都は8月中に都庁前に設置)が評価されたものと思っております。】


アルファ通信が飯館村に無償提供したことの公式ブログ記事、そして設置を報じた読売新聞の記事は次の通り。
alphatele-marutoku.blogspot.com/2011/05/blog-post.html
www.yomiuri.co.jp/national/news/20110528-OYT1T00356.htm

【…福島県飯舘村の役場前に28日、放射線量を常時測定して表示する機器が設置された。

東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、東京のシステム会社が開発し、同村に無償で設置した。

機器は、子供の身長に合わせ、高さ50センチの空気中の放射線量を測定。電光掲示板(縦計約30センチ、横約25センチ)に、10秒ごとに更新された数値が表示される。…

…菅野典雄村長は「村民は正確な放射線量を知りたがっており、これなら多くの人が数値を見ることができる。住民の説明資料にも活用したい」と話していた。
(2011年5月28日11時48分 読売新聞)】

ところが、実際に設置することになった「リアルタイム線量測定システム」は外観も変わっている。
装置の説明書と小学校での設置の様子の記事は次の通り。
www.alphatele.com/images/housyasenryousokuteikoukaisystem.pdf
alphatele-marutoku.blogspot.com/2011/10/blog-post.html

設置が始まったのに、測定誤差が大きいということで仕様変更を文部科学省から要請された。
しかし納期に間に合わないということで、契約解除となってしまった。
文部科学省の報道発表は次の通り。
www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/11/1313395.htm
【…第一次補正予算600台について、本年8月以来、物品供給契約…を締結した受注業者により、納入に向けた作業が行われてきましたが、放射線測定器が要求される技術仕様を満たさないこと等により、契約書上の納入期限(10月17日)を経過しても、なお未納の状況が継続しており、11月18日付けをもって当該受注業者との契約を解除し、新たな業者を選定し直すこととしました。…】
ところが各報道をチェックすると、文部科学省は実物を見ずに書類だけで一般競争入札をしていた。
「公的機関で校正された」と業者が主張し、証明書があったとしても、新たに第三者機関でのダブルチェックをすべきだった。
なんだか悪徳通販業者にだまされたような、ばかげた話であり、とてもエリート官僚のすることとは思えない。

朝日新聞、東京新聞、NHKの報道の抜粋を列挙しておこう。

www.asahi.com/national/update/1118/TKY201111180480.html
【文部科学省は18日、福島県内の学校や公園で放射線量を計測する「オンライン線量計」を発注した業者との契約を解除したと発表した。測定精度が低く、結果の送信ができないなどのトラブルで納期が守られなかったためと説明している。

この業者は東京都中野区の「アルファ通信」…。朝日新聞の取材に「納入が遅れたのは文科省から大幅な仕様変更を求められたため。訴訟も検討すると反論している。
…】

www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011111990070851.html
【…
放射線量の測定器をめぐっては、誤差の大きな製品が出回っているとして国民生活センターが注意を呼び掛けていた。そんな中、国が発注者の事業で、事前に性能を見抜けなかった。審査の甘さが背景にあったとし、同省は外部の専門家にも評価に加わってもらうなどの再発防止策をまとめた。

先月十七日には納入されるはずだったが、通信エラーや、測定値が実際より四割も小さいケースもあった。測定器は米国製で、同社が調整したが、納期を一カ月過ぎても改善できなかった。…
残る二千百台は入札の手続きを実施中。放射線取扱主任者の資格を持つ社員がいることなど参加条件を厳しくしたという。
会見した文科省の渡辺格科学技術・学術政策局次長は「業者から出された仕様書を信用していた。…」と話した。】

www3.nhk.or.jp/news/html/20111118/t10014058371000.html
【…先月17日にシステムを作った東京の通信会社から納入できないという連絡があり、文部科学省が調べたところ、このシステムで測定した放射線量が正しい値に比べて最大で40%ほど低い値になっていたうえ、通信に障害があり、データをリアルタイムで公表できないことが分かりました。
この会社は改善を申し出ましたが、14日の新たな期限までに納入できなかったことから、文部科学省は18日、契約を解除し、今後、別の会社と契約を結んで…来年2月までにシステムを設置し直すことになりました。
文部科学省は…「入札の審査方法に改善すべき点があった。今後は外部の専門家を加えるなどの対策を取りたい」と話しています。】

アルファ通信の説明書を見ても、測定器は「シンチレータ半導体」とあるだけで、アメリカのどこの会社の製品なのか、校正した機関はどこなのか、何も明示していない。

それに、「米国RSSIの認証を取得した自社製の放射線測定器で…」と書いてあるが、これは電波を発する無線設備に関する認証のことで、決して放射線測定器の認証ではない。
訴訟するのは勝手だが、このような誤解を招く表現を用いる会社を、私は絶対に信用しない。

放射能汚染と震災復興というキーワードで補正予算を獲得することが、官僚の主要な活動目標なのだから、測定器の実物の評価など、考えることもしなかったのだろう。


追記(11月23日):
文部科学省の本年度第一次補正予算の概要は次の通りで、放射線モニタリングは6ページ目にある。
www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2011/07/05/1305347_1.pdf

福島県における網羅的な空間線量調査 9.1億円」の中に、リアルタイム測定装置の導入が含まれている。
この予算での測定装置の予定価格は不明だが、落札価格から単純計算すると、1台約61万円と超大安売りである。
落札業者のアルファ通信は、この福島県での実績を元に全国で定価販売して、利益を狙ったのかもしれない。

通常の一般競争入札では、落札額が予定価格を大幅に下回った場合、落札者の事業実施能力の調査が行われる。
しかし、今回の補正予算は緊急措置ということや、既に設置した装置の改良版という説明で、能力調査を省略したのだろう。

ちなみに、東京都のモニタリングポストの説明は次の通りで、その説明を参考にしてほしい。
ガンマ線を測定対象としており、「○○ベクレル」からエネルギーを示す「○○グレイ」に変換し、さらに「○○シーベルト」を算出している。
monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/sokutei/sokutei.html

また、学習院大学・田崎晴明教授(理論物理学)による、ガンマ線測定とシーベルトへの換算の解説例は次の通り。
www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/docs/BqToSv.pdf
www.gakushuin.ac.jp/~881791/halJ.htm (大学の教官紹介ページ)

(最終チェック・修正日 2011年11月23日)

↑このページのトップヘ