2012年12月

gehören
自 (h)
2 a) ((zu et.3 <jm.>)) (…の)一部<一員>である,(…に)所属する,(…の)中に数えられる

Wäre Zeta Ophiuchi nicht von so viel Staub umgeben, dürfte der Stern mit zu den hellsten 
Sternen3 am Himmel gehören und im Optischen hell bläulich leuchten.
もしも、へびつかい座ゼータ星が、これほど多くの塵に囲まれていなかったならば、この星は天空で一番明るい恒星の一つに数えられ、そして可視部で明るい青色に輝いていたことだろう。
("SPITZER: Schneller Riesenstern im Schlangenträger", astronews.com, 27. Dezember 2012,
www.astronews.com/news/artikel/2012/12/1212-033.shtml

注:形容詞の名詞的用法
「im Optischen」では、形容詞「optisch (可視の)」が、「可視部,可視光」という事物・抽象概念を示す中性名詞に変化している。
optisch が修飾する名詞は、文意から容易に予想でき、「Bereich」または「Licht」である。
通常の表記では「im optischen Bereich (可視領域で)」、または「im optischen Licht (可視光で)」となる。

(最終チェック・修正日 2013年01月04日)

今まで何度も書いていることだが、新聞・雑誌・テレビ番組の日本語版で、誤訳や字幕表記のミスに、毎月必ず1回は遭遇している。
私の本職は化学研究職ということもあり、主に自然科学・環境関連の記事や番組に興味がある。
専門だからなのかもしれないが、英語原文を確認しなくても、和訳だけで違和感を持つことがある。
そして問い合わせをしてみると、たいていは私の指摘が正しいと認められて、記事や字幕、ナレーションの修正が行われている。

これも何度も書いているが、自分の翻訳の勉強のために日本語版を利用しており、決して翻訳者やチェッカーの批判をするためではない。
休日中心の副業翻訳をしているため、納期に追われるニュース翻訳も映像翻訳も担当できないので、将来の準備のために利用したいのだ。

auひかりTVで視聴できるディスカバリー・チャンネルは、翻訳会社と共同で映像翻訳者養成講座のプロジェクトを実施したので、和訳は信頼できると考えていた。
しかし、本日12月28日20時から放送された「なるほど百科テレビ:アルミニウム」では、元素名のナレーションに違和感を持った。


新しい防弾ガラスについて説明している部分で、窒素を含む酸化アルミニウム素材のアロン(ALON)を紹介している。
構成元素名のところで、窒素のことを「ニトロゲン」または「ニトロジェン」と言っているように聞こえた。
録画はしていなかったので、来年1月4日の再放送で確認しておこう。
(追記:2013年01月04日6時からの再放送で確認したところ、ナレーションは「ニトロゲン」となっている。)


ディスカバリー・チャンネルのHPで番組紹介を見たところ、2010年11月14日付けのレビューが2件登録されていた。
ただし、元素名についての指摘はなかった。
ということは、2年以上もそのまま放置されていたことになる。

酸素を「オキシジェン」としていないのに、窒素だけ英語読みになるのは変だ。
この件は問い合わせ中なので、回答が来てから追記しておこう。


数年前、ドイツ語特許和訳のチェッカーをしたとき、「ケイ素」が「シリチウム」になっていて驚いた。
このときの担当翻訳者は理系ではないとのことで、「芳香族」が「芳香属」になっていたり、化合物の命名法が間違っていたりと、修正作業に予想外の時間がかかって大変だった。

また、あるニュースサイトの和訳記事では、「ケイ素」を「シリコン」としていた。
シリチウムよりはまだ良いかもしれないが、サイエンス記事ならば、成分の元素名は「ケイ素」という日本語表記にしてほしい。
シリコンを使うと、どうしてもデバイス関係の記事という印象を持ってしまう。

理系知識を持たない翻訳者が担当したとしても、チェッカーやマネージャーには理系人材を確保しておくべきだろう。

Klimagas n. -es/-e
(Treibhausgas) 温室効果ガス

Ein ganz anderer Weg, um die CO2-Nuss zu knacken, sind Bakterien. Füttert man sie 
mit dem Klimagas, machen sie daraus Kohlenwasserstoffe wie Ethanol, Propanol und Aceton.
CO2の難問を解決するための全く異なる方法とは、バクテリアである。バクテリアに温室効果ガスを与えると、エタノールやプロパノール、アセトンといった炭化水素をガスから生産する。
("Ressource CO2: Vom Klimakiller zum Rohstoff", SPIEGEL Online, 26.12.2012,
www.spiegel.de/wissenschaft/technik/kohlendioxid-klimakiller-als-rohstoff-a-873928.html

ミュンヘン近郊のガーヒンク(Garching)には、ミュンヘン工科大学の研究用原子炉施設 FRM II がある。
www.frm2.tum.de/

この FRM II では、高濃縮放射性ウランを中性子源に用いて、物理や化学、生物学、医学の基礎研究が広範に行われている。
また医療分野では、腫瘍に中性子を照射するという方法で、がん治療も実施されている。

中性子をそのまま使う研究だけではなく、核反応にも利用して、炭素14などの放射性核種の合成も行われている。
化学や生物学では、反応機構や代謝経路などの研究で、放射性炭素14で標識した化合物を使うことがある。
取り扱いには特別な設備が必要なため、非放射性同位体の炭素13で代用することもあるが、現在でも様々な基礎研究に必要とされる放射性核種である。

発電用原子炉よりは小型で、出力20Mwだとしても、放射性物質や設備の管理は厳重に行う必要がある。
しかし FRM II では定期検査時や燃料棒交換時に、冷却系統のトラブルなどが見つかっている。
それに加えて、報告義務があるトラブルも多く、管理体制についても批判されていた。

そして先月11月9日には、放射性炭素14の漏洩のために、原子炉は停止された。
年間放出許容値の上限に近付いたための措置とのことだが、詳細については公表されていない。
その後の洗浄処置で再利用可能となったため、12月6日から再稼働している。
ただし21日からはクリスマス休暇で停止している。
研究施設の発表は次の通りで、今回の漏洩では許容値を超えていないとのことだ。
www.frm2.tum.de/aktuelles/news/einzelnews/article/30-zyklus-fortgesetzt/index.html

施設関係者や周辺住民に被害はなかったものの、あまりにも簡単な発表のため、バイエルン州議会の緑の党やドイツ社会民主党は、今回のトラブルについて情報公開を求めている。
ドイツメディアの報道を、2件引用しておこう。
www.sueddeutsche.de/muenchen/abschaltung-des-garchinger-reaktors-spd-fordert-aufklaerung-1.1556203
www.abendzeitung-muenchen.de/inhalt.garching-erhoehte-radioaktive-werte-forschungsreaktor-abgestellt.e2052bd0-69d7-432e-af8a-38e88d625a5e.html

過去の軽微なトラブルも含めて、ミュンヘン工科大学とバイエルン州政府環境省は、原子炉を管理できていないと批判されている。
連邦放射線防護庁(Bfs)は FRM II の管轄権限を持っておらず、今回は放射線量の測定を行っただけである。

大学側は、核反応で合成した放射性炭素14の漏洩は、原子炉の管理と直接の関係がないとも説明している。
つまり、中性子源の原子炉は管理できているが、中性子を使う外側の実験施設での問題と言いたいようだ。

放射性核種は基礎科学の実験で必要な場合もあるので、動物実験などと同様に情報公開をして説明責任を果たすことが、研究を行うための最低条件ではないだろうか。

私は社内報の編集委員をしているためか、テレビニュースなどのテロップに誤字があると気になってしまう。
また、副業で英語・ドイツ語翻訳をしているためか、海外ニュースやテレビ番組の日本語版で誤訳があると、これも気になる。
番組制作や翻訳のプロが仕事をして、そして内部でのチェックを受けてから出しているはずなのに残念なことだ。

漢字変換ミスや誤訳は、誰でも犯してしまうケアレスミスであり、決して私だけは完璧だと言いたいのではない。
自分の翻訳やチェッカーの仕事にも活かすために、私の解釈が正しかったのかどうかを知りたいのだ。
それで、「これは間違いではないのか?」という疑問を持ったときに問い合わせをして、誤訳だったのかどうかを確認している。

映画の字幕でも誤訳を見つけてしまい、せっかくの娯楽の時間なのに、興ざめしてしまったこともある。
ある映画では、「bone marrow(骨髄)」が「脊髄」になっていた(後日発売されたDVDでは「骨髄」になっていた)。
また、CIAが出てくる映画で、「our Company」を「我々の会社」としている字幕に、違和感を持ったこともある。

auひかりTVで視聴しているナショナル・ジオグラフィック・チャンネルでも、残念ながら何度も誤訳に遭遇している。
その度にカスタマーセンターにメールで連絡して、誤訳や誤記だと確認されれば、修正してもらっている。
そして修正後の再放送の連絡が来てから再度録画予約して、改めて記録として残している。

今回修正依頼をしたのは、「ナショジオベスト10」に選ばれた「黙示録:ヒトラーの台頭 #2 ナチスの躍進と戦争」であった。
番組開始から約23分後、ヒトラーの演説内容の日本語字幕が「新星ドイツ帝国」と出た。
しかしこれは漢字変換ミスで、「新生ドイツ帝国」が正しいのではないかと感じた。

演説では「.. neue Deutsche Reich ..」、英語字幕では「.. new German Reich ..」だから、「新生ドイツ帝国」になるはず。
ということで、今回もメールで質問したところ、やはりミスであった。
12月25日22時からの再放送以降は、修正版を放送すると連絡があった。

他の部分は、違和感の全くない和訳ナレーションになっているのに、こんな単純なミスをしたまま納品してしまうとは。
納品後のチェックでも見逃されて放送され、そして私が気付くまで何度も再放送されてしまった。

初回放送が4月だったのに、私の指摘が最初とのことなので、誤記に気付かない人が多かったのか。
それとも日本人の頭の中では、「新星」という誤記があっても、「同音異義語の新生のことだ」と、自動的に変換されてしまうのだろうか。

ナショナル・ジオグラフィック・チャンネルの日本語版を担当しているのは、FOXインターナショナル・チャンネルズ株式会社である。
番組制作や映像翻訳は他社が行っているものの、最終的に放送内容をチェックする責任があるはずだ。

FOX側の説明では、放送前のチェックは必ず行っているものの、今回は最終チェックまで誰も気づくことなく、放送してしまったとのことだ。
再放送前の再チェックは行っていないため、誤訳・誤記を見逃した場合は、いつまでもそのまま放送されるそうだ。

今回は今年のベスト10という特集だったのだから、放送前に再チェックしてもよかったはず。
あるいは、映像翻訳会社との契約を見直して、初回放送の時点で内容チェックに協力を要請できるようにしてもよいだろう。

私は自分の好みの番組だけを選んで視聴し、たまたま日本語字幕やナレーションに違和感を持ったときだけ質問している。
ということは、誤訳を探す目的で24時間体制で精査すると、もっと見つかるのかもしれない。

誤訳・誤記を完全になくすことはできなくても、ケアレスミスのチェックだけはしっかり実施してほしいものだ。

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