カテゴリ: ドイツ語勉強メモ

予約注文していた三修社・アクセス独和辞典第4版が2月28日昼に入荷した。
教会でいろいろと作業をしてから、帰宅する途中で紀伊国屋書店に寄って受け取った。

何度も書いている化合物名の Benzol は、新しい第4版でも第3版と変わらず、ベンゾール,ベンゼンの併記だった。

「ベンゾールと呼ぶのはやめよう」と主張しても、日本企業が出願している特許でまだ「ベンゾール」を使っているので、死語にはなっていないということか。

第4版で新しく採録された言葉から2つ例示しよう。
まずはデジタル時代に、ほぼ毎日行っていることを表す動詞である。

googeln [他動詞] 〔…4を〕グーグルで検索する

スペースが少し余っているので、「ググる」も記載してよかったのではないだろうか。

スペリングで気を付けたいのは、Google が元になっている動詞だが、googlen ではなく、 googeln が正しいということ。

DUDEN では 2004年に既に掲載されていたそうだが、10年以上経過してようやく日本の独和辞典でも採用されることになった。
2010年刊行の第3版では twittern は載っていたので、以前は使用頻度の差があったのかもしれない。

もう1つ最新の言葉として COVID-19 が採録された。
以前紹介したように、これは中性名詞で、ふつうは無冠詞で使うことも書いてある。

また関連して、Coronavirus コロナウイルス も採録されている。

他にも細かいことだが、語義解説の階層区分が変わっているところもあった。

例えば、動詞 sorgen は、第3版では 1 自動詞の説明が①と②であったが、そのうちの②が第4版では、②と③にさらに分けて説明してあった。

また、新正書法に関連した説明を枠で囲って掲載している点が、学習用としても推薦できる特徴だろう。

例えば、旧正書法での見出し語 daß は、第3版では単に dass の旧正書法 という説明のみだったが、第4版では = 新 dass の次に枠で囲った dass と daß という説明が追加されているのは、ドイツ語を習い始めた人にとって親切だ。

古い言葉も載っている辞書と、新しい言葉が載っているアクセス独和辞典と、どちらも大切にして併用していきたいものだ。

ドイツ語メディアで新型コロナウイルスCOVID-19の記事を読むときには、当然ながら医学専門用語が出てくる。

これまで病名などは、翻訳の仕事も含めて、オンラインの独英辞書でまず調べて、次いで英和の日本医学会用語辞典で日本語表記を確認している。

基本的な筋肉や骨、臓器の名称などは、「医学・歯学・薬学・看護学生のための 独・英・和 総合ドイツ語」(大羽武、同学社)を参照することもある。

また、南山堂の「日英独医語小辞典」は購入していないが、電子版にするか、改訂されたら検討したい。
www.nanzando.com/books/01315.php
www.logovista.co.jp/LVERP/shop/ItemDetail

今回は簡単に、2種類の感染経路の名称についてメモしておきたい。

Tröpfcheninfektion 飛沫感染
(英 droplet infection)

Schmierinfektion 塗沫感染
(英 smear infection)
参考として、小学館独和大辞典第2版では、「不潔な手指による感染」。

以下の図の説明がわかりやすい(ZEIT, 03. Apr. 2020)
www.zeit.de/wissen/gesundheit/2020-04/coronavirus-zahlen-todeszahlen-infizierte-deutschland-italien-usa/komplettansicht
飛沫・塗沫感染

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者で安倍晋三首相と近い関係にあると言われている山口敬之氏から、望まない性行為による精神的苦痛を受けたとして、民事訴訟により損害賠償が認められた。

この判決については、ドイツも含めて各国メディアが取り上げている。

報道内容についてのSNS投稿などで目立つのは、海外メディアでは山口氏を紹介するときに、「安倍晋三首相と近い関係にあると言われている」という表現を用いているが、日本の大手メディアでは触れていないということだ。

断定せずに、「~と言われている」とか、「~と噂されている」と書けばいいのに。
それとも、山口氏が安倍首相と親しいことは、日本国内では有名なので、書かなくてもよかったと判断したのか。

このような訴訟の記事では、論文や特許ばかり読んでいては出会わない表現を学ぶことになる。
「安倍晋三首相と近い関係にある」のドイツ語表現について、Spiegel と Die ZEIT の記事から引用しよう。

Spiegel では動詞 nachsagen を使っている。

Der Beschuldigte ist der prominente Fernsehjournalist Noriyuki Yamaguchi, ein mächtiger Gegner. Ihm3 werden enge Beziehungen4 zu Premier Shinzo Abe nachgesagt.
被告は有名なテレビ局記者の山口敬之氏で、手強い相手である。山口氏は安倍晋三首相と近い関係にあると噂されている

www.spiegel.de/politik/ausland/japan-shiori-ito-gewinnt-schadensersatzprozess-in-vergewaltigungsfall-a-1302083.html

nach|sagen 他 2 (nach|reden) ((jm. et.4)) (…について陰口めいたことを)言いふらす,悪口を言う: Ihm wird Geiz nachgesagt. 彼はけちだとうわさされている

Die ZEIT では動詞を接続法I式にして、伊藤氏の発言として引用している。

Laut Ito wurde ein Strafverfahren kurz vor der geplanten Festnahme des Journalisten gestoppt. Ito führt dies darauf zurück, dass er enge Beziehungen zum japanischen Regierungschef Shinzo Abe habe.
伊藤氏によれば、その記者の逮捕が予定されていた直前に刑事訴訟手続きが停止された。伊藤氏は、彼(山口氏)が
日本の首相の安倍晋三氏と近い関係にあることがその理由だとしている。
www.zeit.de/gesellschaft/zeitgeschehen/2019-12/japan-shiori-ito-me-too-vergewaltigung-entschaedigung

「人間関係」を意味する Beziehung は、ふつう複数形の Beziehungen で使い、関係する相手を zu <mit> jm. (3格)で表す。

中山豊、「中級ドイツ文法」(白水社)209ページから

要求話法とは
 要求話法は広い意味では命令から要望,懇請,願望に至るまでの様々な言語的表現手段を含むものですが,ここでは,接続法I式を用いた要求表現のみを要求話法と言うことにします.

  Man nehme täglich dreimal eine Tablette.
 毎日3度1錠ずつ服用のこと.

 今日のドイツ語では第I式は,不定詞句,話法の助動詞,命令法などを用いた要求表現ほどには用いられなくなっています.

不定詞句:  Täglich dreimal eine Tablette nehmen.
助動詞:   Man soll täglich dreimal eine Tablette nehmen.
命令法:   Nimm täglich dreimal eine Tablette!
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有機化学の本から、要求話法の接続法I式の用例を引用しておこう。
置換アルカンの命名法についての説明の一部である。
Eberhard Breitmeier, Günther Jung, "Organische Chemie" (7. Auflage 2012), Seite 28

  Man suche die längste Kohlenstoff-Kette mit der höchsten Zahl von Substituenten.
 置換基の数が最大である最長の炭素鎖を探すこと。

ドイツ語の特許や自然科学系の記事でも、接続法を目にすることがある。

ほとんどの場合、「~と言われている」や、「~の場合に~であったと思われる」などの、第三者の意見の引用や、断定を避ける外交用法(婉曲用法)である。

今回は、太陽系外惑星に関する Max Planck 研究所の発表から、dürfen の接続法Ⅱ式、dürfte の使用例を引用しておこう。
www.mpia.de/aktuelles/2019-06-GJ3512b

Astronom*innen des CARMENES-Konsortiums haben einen neuen Exoplaneten entdeckt, der nach derzeitigem Wissensstand nicht existieren dürfte

CARMENESコンソーシアムの天文学者らは、現時点の知識水準によればおそらく存在しないであろうとされていた新しい系外惑星を発見した。

小学館独和大辞典第2版の説明は次の通り。
((話し手の推定を控え目に示す.否定はつねに推定の内容にかかる)) おそらく…だろう,…であるといってよいだろう

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