カテゴリ: 原子力問題

昨年12月11日から定期点検をしている九州電力玄海原発3号機で、放射性物質を含む1次冷却水が漏れていたことが発覚した。
最初の報告は、1次冷却水を浄化するポンプの軸受温度が高くなったという警報についてだったが、実際には過去最大の冷却水漏れであった。
しかし、原子力ムラの常識で動く九州電力は、質問されるまで汚染水漏れを公表せず、しかも「報告の基準がない」や、「環境への影響はない」という釈明をしている。

過去最大規模の汚染水漏れを報じた、朝日新聞の記事は次の通り。
www.asahi.com/national/update/1213/SEB201112130008.html
【九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)3号機の1次冷却水が漏れていた問題で、放射性物質を含む約1.8トンの水漏れは1994年3月に運転を始めて以来、最大規模だったことがわかった。九電が明らかにした。

九電は「通常起きる範囲の水漏れ」として指摘を受けるまで公表しなかったが、これまでにはなかった大きなトラブルだった可能性がある。
…】

さらに、設備内で収まった場合には報告義務がない、という言い訳を報じた記事は次の通り。
www.asahi.com/national/update/1214/SEB201112130064.html
【…ほかの電力会社にある水漏れトラブルについての具体的な公表基準を九電がつくっていないことがわかった。明確な規定がないことが、水漏れの公表の遅れを招いたかっこうだ。

…九電は当初、地元の佐賀県や玄海町、報道各社に水漏れは伏せていた。

…冷却水漏れの場合、所定の溝からあふれ出すなど国に報告義務がある場合だけ公表する。それ以外は「社会的な関心などを勘案して決める」としており、基準はつくっていなかった。今回は冷却水がすべて溝に収まったため「公表する必要はない」と判断したという。】

九州電力は、やらせ質問問題も含めて、「社会的な関心」を大いに集めているが、原発推進派に世間の常識は通じない。
地元自治体や住民たちとコミュニケーションをとる意思はないようだ。
それはプレスリリースの発表の仕方からも一目瞭然である。
九州電力HPのプレスリリース一覧でタイトルを見ても、「冷却水漏れ」というキーワードは見つからない。
www.kyuden.co.jp/press_2011.html

そこでトップページの中ごろにある「 原子力・環境・エネルギー」の項目から、「原子力情報」をクリックし、さらに「お知らせ」をクリックすると、ようやく「平成23年12月9日 玄海原子力発電所3号機 定期検査の状況について」にたどり着く。
www.kyuden.co.jp/nuclear_notice.html
www.kyuden.co.jp/library/pdf/nuclear/nuclear_notice111209-2.pdf

まあ、トップページの一番下にある更新一覧には、「2011年12月09日 玄海原子力発電所3号機 定期検査の状況について掲載しました。」とあるが、このタイトルで、「汚染水漏れに関する情報だ」と理解できる人はいない。
ここで注目してほしいのは、タイトルが「定期検査の状況について」であり、また内容を見ても報道にもあるように、冷却水漏れについては全く触れていない点だ。
【…運転中のC充てんポンプ軸受温度高の警報が発信したことから、予備機に切り替え、準備でき次第、点検することとしました。
なお、プラントは停止しており、安全性には影響はありません
点検結果については、改めてお知らせします。】

その後、自治体や報道機関には知らせたようだが、過去最大の冷却水漏れについて、自社HPでは発表していない。
その代わりに、報道に対する見解として、「玄海3号機充てんポンプ水漏れに関する報道について」を掲載している。
www.kyuden.co.jp/report_index_111214.html

【新聞各紙に「玄海原子力発電所3号機の充てんポンプからの1次冷却水漏れ公表せず」等の報道がなされておりますが、今回の事象は1次冷却材を浄化するポンプのシール部より水漏れが発生したものであり、漏れた水は設計・設置していた受け皿から所定のタンクに回収する系統内での事象でした。したがって、外部への漏えいは無く、環境への影響もありませんでした。

今回の情報提供に関し、皆さまから様々なご意見を頂いており、今後の情報公開については丁寧な対応に努めていくことといたします。

なお、当社は汚染水が外部に漏れ出すなどの事象が発生すれば、量に関わらず、直ちに公表することとしております。】

つまり想定内のことであれば、「社会的関心」は無視して、自分たちの都合で決めた基準で発表するかどうかを決めると言っているのと同じだ。
こんな対応をする会社は、社会的責任を考えない、最低ランクの会社と言われても仕方ない。
手遅れになる前に、原発廃止の方針をすぐに選択すべきだ。


追記(12月17日):
ポンプの軸が折れていたことが判明し、九州電力は16日に、今度はプレスリリースで情報を出している。
「玄海原子力発電所3号機 C充てんポンプの点検状況について」というタイトルからは、汚染水漏れの事実から意識的に逃げようとする姿勢を感じる。
www.kyuden.co.jp/press_111216-1.html

【…本日、ポンプの主軸が折損していることを確認しました。また、モータ側軸受部の油切りの変形及びモータ側メカニカルシールの損傷跡を確認しました。
今後、詳細調査を実施し、主軸折損等の原因を究明します。

なお、プラントは停止しており安全性には影響ありません。また、当該ポンプのシール部より水漏れが発生しましたが、漏れた水は設計・設置していた受け皿から所定のタンクに回収する系統内での事象でした。したがって、外部への漏えいは無く、環境への影響もありませんでした。】

過去最大のトラブルという認識をしているはずだが、原発推進派の立場では、そんなことは絶対に口にできないのだろう。
放射性物質を含む1次冷却水が漏れたのに、未だに単なる「水漏れ」と言い続けて、人々が忘れるのを待つのだろうか。

(最終チェック・修正日 2011年12月17日)

国際原子力機関(IAEA)の11月11日付けプレスリリースによると、ヨーロッパ各地で微量の放射性ヨウ素131が検出されたそうだ。
検出された濃度では健康被害は起きず、また半減期が8日と短いことから、フクシマ事故由来ではない。
しかし現時点では、その発生源が特定できていないため、関係機関と協力して調査中とのことだ。
www.iaea.org/newscenter/pressreleases/2011/prn201124.html

【The IAEA has received information from the State Office for Nuclear Safety of the Czech
Republic thatvery low levels of iodine-131 have been measured in the atmosphere
over the Czech Republic in recent days
.

The IAEA has learned about similar measurements in other locations across Europe.

The IAEA believes the current trace levels of iodine-131 that have been measured do not
pose a public health risk and are not caused by the Fukushima Daiichi nuclear
accident in Japan
.

The IAEA is working with its counterparts to determine the cause and origin of the iodine-131.
…】

ロイターの英語配信記事は次の通りで、発生源の可能性として放射性医薬品と原子力潜水艦などを挙げているが、いずれの場合も原則として厳重に管理されているため、なぜヨウ素131が環境中に放出されたのか謎のままだ。
www.reuters.com/article/2011/11/11/us-nuclear-iodine-iaea-idUSTRE7AA4U020111111

日本語記事としては、NHKニュースを引用しよう。
www3.nhk.or.jp/news/html/20111112/t10013913891000.html

【…IAEAは11日、チェコの原子力規制当局が、この数日間にごく微量の放射性物質のヨウ素131を大気中から観測し、ヨーロッパの各地でも同じように放射性ヨウ素が観測されたと発表しました。また、世界各地で核実験を監視しているCTBTO=包括的核実験禁止条約機構もヨウ素131が先月下旬以降、ロシア、スウェーデン、それにオーストリアに設置している観測施設で検出されたことを明らかにしました。このうち、オーストリアでは、現地の当局が先月17日以降、ヨウ素131を観測していて、その値は最大で1ナノシーベルトと、福島第一原子力発電所の事故のあとにオーストリア国内で観測された値の100分の1程度だったということです。放射性ヨウ素は、ハンガリーやドイツなどでも観測されており、ヨーロッパ各地で放射性ヨウ素が観測されたことについて、IAEAは「原発事故が原因である可能性は低い。検出された値は低く、人の健康への影響はない」と話しています。…

ヨウ素131は、病気の検査や治療など主に医療用にも使われています。ヨウ素131をはじめ、医療や研究目的などで製造される放射性物質については、病院や研究所、企業などに安全に管理する責任がありますが、不適切な管理が報告されるケースも少なくありません。】
引用した記事にもあるように、IAEAに最初に報告したのはチェコの原子力関係機関だが、その後は核実験監視システムも含めて、ヨーロッパ各地で微量のヨウ素131が検出されている。

ドイツは脱原発路線を選択したということもあり、各メディアで大きく取り上げられている。
代表として、SPEIGEL Online と S?ddeutsche Zeitung の記事を引用しておこう。
www.spiegel.de/wissenschaft/technik/0,1518,797269,00.html
www.sueddeutsche.de/wissen/jod-messungen-radioaktive-strahlung-ueber-europa-1.1187120

ヨウ素131は10月下旬から検出されていたそうだが、検出限界ぎりぎりの値、数マイクロベクレル単位であった。
地表に落ちたヨウ素131は、牛乳や野菜を通じて人体に入るが、測定値を信じるならば、健康に影響はないと考えてよいだろう。
「健康に影響はない」という根拠は、「飛行機で大西洋を横断したときに浴びる放射線量の4000分の1」だから。
今回のヨウ素131よりも、25年前のチェルノブイリ事故で放出されたセシウム137の方が、未だに影響が大きいはずだし。

放出源が特定されていないことが不安を増大させているものの、測定値から考えて最も可能性が高いのは、放射性医薬品ではないかと言われている。
患者の尿からなのか、アンプルの不適切な処理なのか、それとも余った放射性医薬品・検査薬を不法投棄したのか、それはまだ不明だ。
ヨウ素131の半減期は8日と短いので、これ以上心配することはないという意見もあるが、発生源を見つける前に検出限界未満に減ってしまうというジレンマもある。

不適切な管理というと、最近ではラジウム入りのビンが見つかったというニュースが続いている。
以前も、大学敷地内の池に捨てたり、JRの駅前で放射性検査薬をばらまいたという事件があった。
今回も処分に困ったある人が、どこかの山にでも捨てたと推測してもよいだろう。
もしかすると、フクシマ事故があったので、捨てても気付かれないと思ったのかもしれない。
チェルノブイリ事故後も、ヨーロッパ各地の核施設で放射性廃棄物の投棄があったという噂が流れたし。

原子力潜水艦の事故では、軍事機密なので情報が出てこないと思われるが、他の核種が検出されない場合は可能性が低いと考えてもよいだろう。

とにかく、発生源の特定がされるまで待つことにしよう。


追記(11月17日):
17日のIAEAプレスリリースによると、ハンガリーの放射性医薬品などのメーカー(The Institute
of Isotopes Co., Ltd., Izotop)が発生源と特定されたそうだ。
漏えいの原因は調査中。
www.iaea.org/newscenter/pressreleases/2011/prn201127.html

そのハンガリー企業 Izotop のHPは次の通り(日本語版あり)だが、今回のヨウ素131の件は、まだ何も出ていない。
www.izotop.hu/

ドイツ語記事として SPIEGEL Online を引用しておく。
www.spiegel.de/wissenschaft/technik/0,1518,798441,00.html

(最終チェック・修正日 2011年11月18日)

3月11日の大地震と巨大津波による東京電力福島第一原発事故(フクシマ事故)では、大量の放射性物質が放出された。
事故直後に注目されたヨウ素131とセシウム134/137について、実際の放出量や汚染状況の推測は、なかなか報告されなかった。
批判の声が高まってからやっと公表したときには既に手遅れで、多数の住民が被ばくしてしまい、数十年続く健康不安が残った。

その後、8月22日の原子力安全委員会定例会議で、独立行政法人・日本原子力開発機構は、大気中へのヨウ素131とセシウム137などの放出量再試算結果についての資料を提出した。
www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan063/siryo5.pdf

そして原子力安全委員会は8月24日の臨時会議で上記報告を了承し、3月11日から4月5日までの総放出量について、ヨウ素131は 1.3×1017Bq(130 PBq)、セシウム137は 1.1×1016Bq(11 PBq)とすることにした。
www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan064/siryo3.pdf

しかし外国の研究者たちは、世界各地での大気サンプル分析値を元にして放出量を計算しており、最近発表された論文では、日本政府の公式発表よりも約3倍多いとのことだ。

その論文は、EGU(European Geosciences Union、ヨーロッパ地球科学連合)のサイトで無料公開されている。
オープンアクセスという形式で公開されており、論文の内容を再検討した専門家がコメントを投稿している。
www.atmos-chem-phys-discuss.net/11/28319/2011/acpd-11-28319-2011.html (論文の要旨)
www.atmos-chem-phys-discuss.net/11/28319/2011/acpd-11-28319-2011.pdf (論文のPDFファイル)

この論文を取り上げた共同通信の配信記事は次の通り。
www.47news.jp/CN/201110/CN2011102801000364.html

【東京電力福島第1原発事故に伴う放射性セシウムの放出量は、日本の原子力安全委員会による推計の3倍近くに達し、チェルノブイリ原発事故の4割を超すとの論文をノルウェーの研究者らが27日までにまとめた。大気物理学の専門誌に投稿され、結果が妥当かどうか専門家らが検証している。

研究チームは、日本国内のデータや、核実験を監視するために世界中に設置された観測網を利用し、事故発生から4月20日までに大気中に放出されたセシウム137は約3万6千テラベクレル(テラは1兆)と推計。放出量の19%が国内に、残りの大部分は海に落ちたとみている。】

日本経済新聞では、日本政府の見解と異なっていることや、放射性キセノン133の放出について言及した部分を残して掲載しているので、引用しておこう。

【…日本政府の見方とは異なり、4号機の使用済み燃料プールから大量の放射性物質が漏れたとの見解を示した。その理由として、4号機に放水を始めた直後から、放射性物質の量が大幅に減ったことを挙げた。

同原発を津波が襲う前から、放射性キセノンが漏れていた証拠があると強調。地震の揺れで原発の放射性物質を閉じ込める機能が壊れた可能性を指摘した。】
本論文では、算定に使った大気サンプルの取得期間が4月20日までと、日本の4月5日までとは異なる。
それに、日本ではモニタリングポストの測定値を主に使っているため、測定方法そのものの違いもある。
誤差範囲が大きいという指摘があるが、それでも日本政府の公式発表の2倍を超えていることは確かだろう。

加えて、放射性キセノン133に言及していることは注目に値する。
日本政府や東京電力などの原子力村・原子力マフィアの関係者は、「想定外の津波による全電源喪失が事故原因」と言い続けている。
それに対して本論文では、地震動によって配管など原発諸設備が破壊されて、キセノン133が放出された可能性を指摘している。
日本の専門家のなかにも、地震動によって原発が損傷したのであって、津波が来てからではないと主張する人もいる。
事故解析の方法は異なるが、本論文でのキセノン133の測定値とシミュレーションが、地震が主原因という仮説を強固に補強することだろう。

また、4号機使用済み核燃料プールからの放出を指摘している点も、見逃してはならない。
日本政府が言っていた、冷却水の水位が下がったが燃料棒は損傷していない、という主張は嘘だという可能性が出てきたからだ。
実際に燃料棒がどうなっているのか、それは現場関係者しか確認していないことだし、映像を公開したとしても、都合のよいところだけ編集したのかもしれないし。

日本政府の公式見解は修正されるのかどうか、この論文を否定するだけの根拠を示すことができるのかどうか、今後の報道をチェックしておこう。


ドイツ・ミュンヘンに本社を置く多国籍企業のジーメンスは、原子力関連事業からの撤退を予定している。
ペーター・ロッシャー
(Peter L?scher)会長が、ドイツの週刊誌 SPIEGEL のインタビューで明らかにした。

9月18日付けで SPIEGEL Online に掲載された要約記事は次の通りで、ロシアのロスアトム(ROSATOM)との
ジョイントベンチャー計画も契約解消の予定だ。
www.spiegel.de/wirtschaft/unternehmen/0,1518,786885,00.html

【Deutschlands größtes Industrieunternehmen vollzieht die Energiewende: Siemens gibt sein 
Geschäft mit der Kernkraft endgültig auf
, erklärt Vorstandschef Peter Löscher im 
SPIEGEL-Interview. Auch das geplante Joint Venture mit dem russischen Rosatom-
Konzern ist kein Thema mehr.】

休日の現時点では、ロッシャー会長のこのインタビューについて、ジーメンスとロスアトムのHPでは何も触れていない。
www.siemens.com/entry/cc/de/
www.rosatom.ru/en/

原子力関係ニュースは日本でも関心が高いと予想されたためか、引用したAFP日本語版では18日中に速やかに記事になっていた。
www.afpbb.com/article/economy/2828751/7793213

【ドイツの電機・金融大手シーメンス(Siemens)のペーター・レッシャー(Peter Loescher)最高経営責任者(CEO)は、18日に出版された独ニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)で、原子力エネルギー事業から撤退する考えを示した。

「われわれは今後、原子力発電所の建設や投資の全体的な運営に関与しない。われわれにとって、この章は閉じられた」とレッシャーCEOは述べ、シーメンス社の活動が今後兼用技術にのみ制限されると説明した。

今後はスチームタービンなど非核の設備のみを供給する。つまり、原子力目的だけでなくガス発電や石炭発電などでも利用できる技術にだけ制限するということだ」…】

東京電力福島第一原発の事故は、ドイツの原子力政策を変えただけでなく、企業の経営方針にまで影響した。
様々な問題をかかえるドイツそしてヨーロッパだが、このように臨機応変に対処できるから、これまで生き残ってきたわけだ。

既に今年3月にジーメンスは、フランスのアレヴァ(Areva)との合弁事業から撤退している。
フィンランドの新原発を共同で建設中だったが、福島第一原発事故発生直後の
3月18日に、34%保有していたアレヴァNPの株式を、親会社アレヴァに売却している。
売却はできたものの、契約解消ということで、6億4800万ユーロをアレヴァに支払うことになっている。

そしてさらに、ロシアのロスアトムとのジョイントベンチャー企業計画も解消する予定のため、一時的に経営状況は悪くなるだろう。

ただしジーメンスの発電用蒸気タービン技術や、大規模プラントの制御システムなどは、既存の発電所で利用できる。
ジーメンスは原子力発電事業だけに頼っているわけではないため、業績への影響は短期間で消えるだろう。
それに、イランの核施設でジーメンスのシステムが使われている言われているので、今のうちに原子力事業から撤退しておくのもリスク回避になるかもしれない。

また、ドイツ政府のエネルギー政策変更に合わせて、新エネルギーの開発にも協力する予定である。
ドイツでは自然エネルギー利用率を、
2020年までに35%にするという目標を掲げているからだ。

これで、エコのドイツと原子力のフランスという対立構図が、よりはっきりしてきたようだ。
日本は今後、ドイツとフランスの、どちらの生き方を選ぶのだろうか。

プルトニウムが大好きな大橋弘忠・東京大学教授は、複数の審議会や委員会に名を連ねているが、東京電力福島第一原発での事故後に表に出なくなった。
九州電力・玄海原発に関するやらせメール事件後も、誰かに止められているのか、全く発言がない。
自説に自信を持つ研究者であれば、
出光一哉・九州大学教授と一緒に堂々とテレビに出て、プルトニウム利用の明るい未来を語ればいいだろう。

その代わりに、班目(まだらめ・通称デタラメ)春樹・東京大学教授は、原子力安全委員会委員長という立場のため、「黒子に徹する」 という逃げ口上も使えなくなり、ほぼ毎日、記者会見をするはめになった。
本人にすれば、「どうしてこんなときに委員長の席が回ってきたのか」 と、その運命を恨んでいることだろう。
NHKの番組でも、「3月11日の前に戻りたい。なかったことにしてほしい。」 という主旨の本音を語っていた。

そして他の原発について、ストレステストを行うという政府方針が出されたため、班目委員長もその点について記者から質問攻めに遭っている。

7月14日には読売新聞の中島記者から、【仮に、震災前の福島第一に、これから導入するストレステストを当てはめた場合は、不合格になるということになるんでしょうか。】 と質問されて、班目委員長は 【明らかに不合格になると思います。】 と答えていた。
www.nsc.go.jp/info/20110714.pdf

ところが翌15日には会見冒頭で、この発言について取り消すことになったから、やはりデタラメ委員長だ。
www.nsc.go.jp/info/20110715.pdf
【すみません、昨日の記者会見での発言を、ひとつだけ、訂正させていただきたいと思います。

読売新聞の中島記者の質問、今日いらっしゃってないみたいですけれども、仮に、震災前の福島第一に、これから導入するストレステストを、当てはめた場合に、不合格になるでしょうか、ということに対して、不合格になる、と答えてしまったんですけれども、ちょっと、これは、全く、私、言葉足らずで、むしろ、震災前にこういうような制度を導入していたら、十分防げたであろうという意味で、あくまでも、ストレステストというのは、今日も申し上げたように、合格、不合格を判断するものではない。むしろ、どれだけ、より安全余裕があるかというもので、合否とは直接的には関係ないので、不合格という表現は申しわけないんですけれども、取り消させていただきたいと思います。

大変失礼いたしました。】

ただしこの日の会見では、震災前に福島第一原発に対してストレステストを行っていた場合、崖っぷちのぎりぎりの危ない設計だったということになると発言している。
「不合格」 という表現を原子力業界では使いたくないのかもしれないが、安全余裕のない原発を 「不合格」 として運転停止にすべきだったのではないだろうか。

【福島第一発電所の事故でよく分かったことは、あれは、例えば、津波の高さが本来5.1mのところを13.1mでしたっけ、大幅に超えたからあのようなことになった、というふうにも理解されがちなんですが、あのような機器配置であると、ほんのわずかでも、津波が想定を上回った場合には、海水冷却系ポンプの浸水であるとか、あるいは、非常用タービンの浸水であるとか、あるいは、メタクラという高圧電源盤の浸水とかまでいった可能性が高いわけですよね。だから、かなり本当に崖っぷちの設計をしていたんだというふうに理解しています。】

この発言の後には、対策をきちんとすればいいと言っているので、運転再開を目指すための手続きの一つという認識をしているように思われる。

【ストップをかけるというよりは、そういうのをちゃんと事業者自身が認識して、対策を打つことが大切なんですよね。今までの規制のあり方としては、崖っぷちの設計であろうとも、基準に適合であるならば合格としていたところ、そこをそうじゃないというのを持ち込んだのが、これの大きな点ですので、ちょっと、そこだけはご理解いただきたい。】

他にも、ストレステストを事業者自身が事前に行うべきだったと、国側の責任を回避するための予防線を張っているような発言も見られた。

【私に言わせれば、事業者はとっくにこんなことをやってなきゃいけないんじゃないですかと。言われるまで、規制当局が言うまで、やってないということ自体が大問題だと思っていますので、万一、こういうことは、ひょっとしたら規制当局がやめたと言うかもしれないから、うちはやらないよという会社があったらば、そんな会社には原子力はやらせてはいけないと思います。】

本人は一日でも早く委員長を辞めたいと思っているだろうが、浜岡原発差し止め訴訟の控訴審で証人申請がされているので、委員長を辞任したとしても、今後も法定の場でデタラメ爆弾発言が期待できるだろう。

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