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(最終チェック・修正日 2013年12月07日)

ドイツのコーヒー消費量は世界第3位で、1人当たり消費量も世界第7位と、いずれも日本よりも多い。
コーヒー好きの多いドイツで、エスプレッソマシンに関して気になる報道があった。

ドイツ連邦リスク評価研究所(Bundesinstitut für Risikobewertung (BfR))の調査では、除石灰をすると鉛が溶け出し、その濃度は水質基準を超えているとのことだ。

この情報を報じた SPIEGEL Online の記事は次の通り。
www.spiegel.de/gesundheit/ernaehrung/gesundheitsgefahr-teure-espressomaschinen-setzen-blei-frei-a-936624.html

調査対象のエスプレッソマシンの機種は非公開だが、高額機種とのことだ。
3台のうち2台で、除石灰操作で鉛が溶出していることが認められ、ヨーロッパの基準値の100倍近い濃度になったという。
洗浄から数日経つと鉛濃度は低下するものの、それでも基準値の5倍を超えていた。

同時に調査したカプセル式やパッド式のコーヒーメーカーでは、痕跡量検出しただけであった。
ただ、抽出方法に依るのではなく、エスプレッソマシンの部品自体が鉛を多く含むからだと推測されている。

ドイツ人は心配しすぎだとよく言われるが、日本で販売されている機種かもしれないので、続報をチェックしよう。

追記(12月4日):
BfRのサイトで、12月2日付けの見解が公開された。
www.bfr.bund.de/de/start.html (BfRのHP)
www.bfr.bund.de/cm/343/freisetzung-von-blei-aus-kaffee-und-espressomaschinen.pdf (エスプレッソマシンでの鉛溶出について、PDF)

この声明を引用している SPIEGEL Online の記事は次の通り。
www.spiegel.de/gesundheit/ernaehrung/blei-in-espressomaschinen-so-landet-das-schwermetall-nicht-im-kaffee-a-936983.html


今回の試験では、実際にコーヒーを抽出するのではなく、機械を通った試験水にどのような金属が溶出するのかを調べた。
除石灰の後に金属の溶出が増加し、特に鉛が多く検出された(1.8 ~ 1,600 μg/kg)。
食品中の鉛基準値は 10 μg/kg だから、一番高濃度の場合で 160倍である。

除石灰操作後に、すすぎ操作を何度か繰り返すと金属濃度は減少する。
そのため、金属暴露を低減することはできる。
ただ、他の食品からも鉛などの重金属を摂取しているため、コーヒーを飲むと基準値を超えてしまうおそれが高い。

成人では鉛は、血圧や腎臓に影響を与える。
特にリスクが高いのは妊婦で、胎盤を通った鉛は胎児の脳の発育に悪影響を及ぼす。

製品名は非公開のため、民間試験機関が調査して、衝撃的なレポートを発表するかもしれない。
ミネラルウォーターのウラン汚染だけではなく、コーヒーも鉛汚染されてしまうとは困ったものだ。
水道水で作るインスタントコーヒーが一番安全なのかもしれないが、それでは味気ないような気もする。

追記2(12月5日):
心配になったので、念のため、デロンギ・ジャパンに問い合わせた。
返信メールには、【弊社の製品には
鉛は使用しておりません】、とあった。

それにしても、飲料と接触する部品の材料に、鉛を含む金属を選択した企業は、リスク管理が甘いとしか言えない。

追記3(12月7日):
BfRが12月4日付けでFAQをHPに掲載していた。
www.bfr.bund.de/de/fragen_und_antworten_zur_freisetzung_von_blei_aus_kaffee__und_espressomaschinen-188539.html

その中から、鉛溶出が認められたエスプレッソマシンのメーカーや機種が非公開になっている理由を探してみた。
検査したサンプル数が少なく、今回の分析結果は代表値では
ないこともあり、公開の予定はないそうだ。
 1つの機種について最低3~5台は検査する必要があるだろうから、最終的な分析結果の公表は、だいぶ先になりそうだ。

ということで現時点では、FAQにもあるように、除石灰操作をした後は、何度もすすいで重金属濃度を下げるという、自衛手段をとるしかないようだ。

ドイツ留学中に観たテレビ番組の中で、「ドイツ人が欲しがる肩書は Dr. 」というものがあった。
住民登録の書類には学位を記入する欄があるし、宛名では Prof. Dr. rer. nat. などの肩書を正確に書かないと失礼になる。
そんな学歴身分社会の環境だからなのか、社会的地位の証しとして欲しがるようだ。
表札に Dr. と書いて自慢するために、東欧などの大学に金を払ってまで、博士号をもらう人もいるとのことだった。

Dr. という肩書を欲しがるのは一般人だけではなく、政治家であっても同じで、権威付けのために欲しいようだ。
アンゲラ・メルケル首相のように、実際に研究者生活をしていたことが明白な場合は信用されるが、歴史学や哲学といった非実験系の学問では、
まじめに研究している人には悪いが、「適当に作ったお話しを書くだけで博士号を取れる」とバカにされることも多い。

アンネッテ・シャヴァーン教育相は、ボン大学とデュッセルドルフ大学で哲学と教育学を学んだ。
博士論文「Person und Gewissen(人間と良心)」を提出し、1980年9月にデュッセルドルフ大学から哲学博士(Dr. phil.)を授与された。

しかしその博士論文について、「他の論文から盗用した部分が多く見られる」という匿名の告発が、2012年4月にインターネット上で公開された。
まとめサイト(ブログ)は次の通り。
schavanplag.wordpress.com/

告発を受理したデュッセルドルフ大学哲学部は、今年2月5日に、シャヴァーン教育相の博士号剥奪を決定した。

博士号剥奪に関する、デュッセルドルフ大学のプレスリリースは次の通り。
www.uni-duesseldorf.de/home/startseite/news-detailansicht/article/aktuelle-sitzung-des-fakultaetsrats-der-philosophischen-fakultaet-und-presseerklaerung-vom-0502.html

日本語記事として、AFPを引用しておこう。
www.afpbb.com/article/politics/2926329/10229791


シャヴァーン教育相は、この決定を認めず、デュッセルドルフ大学に対して司法手続き(告訴)を検討しているとのことだ。
しかし
9日土曜日に、教育相を辞任することを突然発表した。

ドイツ連邦政府のプレスリリースは次の通りで、辞任に触れているものの、タイトルは「閣僚の交代」としている。
www.bundesregierung.de/Content/DE/Meldungen/2013/02/2013-02-09-wanka-folgt-schavan.html

また、メルケル首相とシャヴァーン教育相の声明は次の通り。
www.bundesregierung.de/Content/DE/Mitschrift/Pressekonferenzen/2013/02/2013-02-09-statements-merkel-schavan.html


この声明でもシャヴァーン前教育相は、デュッセルドルフ大学の決定を認めていないことを、明確に主張している。
そして辞任の理由とは、決して論文盗用疑惑ではなく、「
大臣のままで大学側を告訴すると、教育・研究省や政府などに影響するから」だという。

ドイツのメディアでは疑惑発覚時点から継続的に報道されているが、全てを網羅できないので、最近の SPIEGEL Online の記事を引用しておこう。
www.spiegel.de/politik/deutschland/schavan-tritt-als-bildungsministerin-zurueck-a-882389.html (辞任について)
www.spiegel.de/politik/deutschland/chronologie-die-plagiatsaffaere-von-annette-schavan-a-882397.html
 (告発後の経緯)

シャヴァーン前教育相は、他にも肩書を持っている。
例えば2009年には、ベルリン自由大学名誉教授の称号が授与されている。
外国の複数の大学からは名誉博士号を授与されているので、今回の辞任と博士号剥奪事件は、各方面に影響することだろう。

後任の教育相はヨハンナ・ヴァンカ(Johanna Wanka)で、2010年4月からニーダーザクセン州政府の教育・文化相をしている。
経歴を見ると、ライプツィヒ大学で数学を専攻し、博士号を授与されている。
そしてメルゼブルク大学で技術数学の教授になっているので、肩書は
Prof. Dr. となる。
www.mwk.niedersachsen.de/portal/live.php (経歴)

この大臣交代が次の選挙にどう影響するのか、今後も様々な報道が続くことだろう。

(最終チェック・修正日 2012年12月02日)

今年9月、重い呼吸器障害の治療のためにカタールからイギリスに搬送された患者から、SARS類似の新種コロナウイルス(HCoV-EMC)が発見された。
その後も、サウジアラビアとカタールで発症者が見つかり、そのうち10月に発症したカタールの患者一人がドイツで治療を受けて回復した。

世界保健機構(WHO)は11月23日、この新種コロナウイルス感染について、最新の情報を発表した。
WHOに報告された症例は6件で、そのうち2名の患者が亡くなっている。
感染源や、人から人への感染可能性など、未だに不明な点が多い新種ウイルスのため、各国医療関係者に注意喚起がされている。
www.who.int/csr/don/2012_11_23/en/index.html

日本語報道として、朝日新聞を引用しておこう。
www.asahi.com/science/update/1124/TKY201211240203.html
【……AP通信によると、カタールの患者は10月に発症、搬送されたドイツで感染が確認されたが、回復した。

9月にカタールから英国に搬送された男性で感染が確認されて以降、この新種ウイルスによる感染者は計6人で、うち2人が死亡した。WHOでは「SARSのときと状況は違う」としながらも、「これまで関係した国以外にもウイルスは広まっているとみなした方が賢明だ」として、監視強化を呼び掛けている。】

9月に新種ウイルスが確認されてから、感染の有無を検査する手法としてリアルタイムPCR法の利用が推奨されている。
イギリスで最初に単離されたウイルスの遺伝子塩基配列がデータベースに登録されているから、比較することで迅速に感染の有無が判定できるはずだった。

しかし、カタールの患者を受け入れたドイツ・エッセン大学病院では、4週間もの間、新種コロナウイルス感染者とは知らずに治療をしていた
この件について報道している SPIEGEL Online を引用しておこう。
www.spiegel.de/gesundheit/diagnose/patient-mit-corona-virus-wurde-in-essener-klinik-behandelt-a-869057.html

また、新種コロナウイルスの確認を行ったローベルト・コッホ研究所(RKI)のプレスリリースは次の通り。
www.rki.de/DE/Content/Service/Presse/Pressemitteilungen/2012/18_2012.html

10月に急性肺炎となったカタールの患者は、10月24日にドイツ・エッセン大学病院の肺疾患センターに搬送された。
カタールから同行した医師は、この患者が新種コロナウイルスに感染している可能性について、ドイツ側に何も伝えなかった。

そのためエッセン大学病院では、WHOが推奨している迅速検査プロトコルを行わずに、通常の治療を4週間続けた。
患者は回復して今週退院できたものの、RKIからの情報で新型コロナウイルス感染者だと判明し、病院関係者は緊張した。
前述したように、今年9月に確認されたばかりの新種ウイルスで性質は未知であり、人と人の間で感染するのかどうかも不明だからだ。

ドイツ搬送前にカタールの医師は、患者の体液サンプルをロンドンの Health Protection Agency(HPA)に送り、分析を依頼していた。
結果は陽性であったにもかかわらず、この事実をエッセン大学病院の医師には全く伝えなかったため、重度の肺炎患者としての治療が始まった。
陽性の結果は22日木曜日になって初めて、RKIを通じてエッセン大学病院に伝えられた。

患者と接触した病院関係者について検査を行ったところ、現時点で感染の疑いはないとのことだ。
またRKIは、ドイツでの感染リスクは非常に低いとの見解を発表している。

ただ、たまたま見つかった症例が6件だけで、サウジアラビアやカタールなどの中東地域で既に感染が広がっている可能性も指摘されている。
海外旅行の前には、厚生労働省や外務省だけでなく、WHOの緊急発表も確認した方がよいだろう。


追記(12月02日):
新種コロナウイルスの検出は9月とされていたが、WHOの11月30日付けプレスリリースでは、実は4月にヨルダンで死者2名が出ていたとのことだ。
保存されていた血液サンプルを検査したところ、感染していたことが確認された。

シリアやイラクからの難民がヨルダンにも流入しているため、難民キャンプでの健康管理対策が必要になるかもしれない。

8月16日に世界的バイオリニストの堀米ゆず子さんの「ガルネリ」が、ドイツ・フランクフルト空港の税関で押収された。
バイオリンの所有証明書を所持していなかったため、税関当局は輸入申告のない密輸品扱いとして没収、そして19万ユーロの関税の支払いを求めていた。

税関での押収事件を報じた記事の中から、ウォールストリートジャーナル日本語版を引用しておこう。
jp.wsj.com/japanrealtime/blog/archives/13577/
【…
堀米さんが保有する1741年製のガルネリ(時価約1億円)がドイツの税関当局に押収された。…同当局は、返還に際して19万ユーロ(1900万円)の輸入関税を求め、さらに罰金を科す可能性もあるとしている。

…当局は堀米さんが16日に経由地のフランクフルト空港を出発する際、正式な所有者であることを示す書類がないとの理由でバイオリンを押収した。

堀米さんによると、通常旅行する際は必要書類を携帯しているが、今回は家に置いてきてしまった。翌日急いでブリュッセルの家に書類を取りに帰り、ドイツの税関に提出したが、バイオリンは戻ってきていない。所属事務所によると、申告をすべきだったというのが税関側の考えだという。

堀米さんはその後、弁護士を探している。生活に欠かせないものだということが証明できれば、税金や罰金を払わずに済むことも考えられる。
…】

その後、弁護士を通じて所有証明書や各種書類を提出して交渉した結果、ガルネリは本人に返還されると決まった。
朝日新聞の記事は次の通り。
www.asahi.com/national/update/0921/TKY201209210655.html
【独フランクフルト国際空港の税関で押収されていた、ベルギー在住の世界的バイオリニスト、堀米ゆず子さんの愛器「ガルネリ」が返還されることがわかった。…
…輸入税19万ユーロ(約1900万円)の支払いを求められたが、無償で返還されることになった

堀米さんは、正当な購入や所有を証明する書類、自らの財産目録などを提出し、弁護士を通じて交渉を重ねていた。「状況が悪化するばかりだったので、今はホッとしたというより信じられない気持ち」と堀米さん。…】

ドイツの空港に限らず税関では、旅行者の荷物が本当に私物かどうか質問されることがある。
つまり、大量のタバコなどの商品を持っていたりすると、それが輸入品の扱いになるかどうかを確認するためだ。
そのため、私物ならば購入時の保証書を携帯したり、お土産ならばレシートを残しておくことが必要だ。

私はフランクフルト空港の税関で、私物のチェックを2回受けたことがある。
ただしテロ対策前の1990年代でということで、日本人はマークされていないためか、4回のうち2回だけだった。
しかもその2回というのは、旅行客が少なくて、時間に余裕のあるときだった。

最初は、ドイツで開催された国際会議に参加したときで、初めての海外渡航であった(ついでに留学予定先を訪問した)。
ドイツ人の知人に国際会議に参加することを連絡したところ、彼の友人たちから、日本製プラモデルをぜひとも入手してほしいと頼まれていたとのことだった。
それで私は、生産中止となったそのプラモデル(偵察機シュトルヒ)を専門店で3箱探し出して、ドイツに渡航した。
フランクフルト空港の税関で、大きな紙袋を持った私は呼び止められ、職員は中身の確認を始めた。
私が友人へのプレゼントだと説明すると、「ああ、プラモデルか。これならOK。」ということで、何事もなく通してくれた。

2回目はドイツ留学中に、ドイツ国外で行われた学会から戻ったときであった。
このときは旅行者が誰もいなかったため、職員数名が雑談していた。
私が近付くと、ノートPCを入れていた少し大きめのバッグに気付いた職員の一人が、中身の確認をしたいと言った。
私はバッグを開けてノートPCと、たまたま携帯していた保証書を見せた。
保証書は日本語で書かれているが、製造番号と日付を見て、私物であると判断できるとのことで通してくれた。

そのとき職員は、「保証書をPCと一緒に持っている人はほとんどいない。」と言っていた。
私が保証書を持っていたのは、もし学会参加中にPCが壊れた場合に、修理をしてもらうには必要だから。

希少なバイオリンといった高価な品物だけではなく、ノートPCでも税関でチェックされることを知っていた方がいいだろう。
ドイツの税関職員は暇なときには、いろいろと意地悪とも思えるようなことをしてくるから。


19世紀に創業したドイツの化学企業BASFは、今では機能性プラスチックや農薬などの分野で、世界をリードする巨大企業グループとなっている。
日本では1888年から事業を開始し、BSAFジャパンと関連会社が、三重県四日市市などに主要生産拠点を有している。
www.basf.com/group/corporate/en/ (グローバルサイト・英語)

化学企業では危険な薬品・溶媒を使うため、爆発事故や漏洩事故などへの対策をしている。
そのほかにも様々な環境対策をしているものの、漏洩事故がなくなることはない。

BASFの発表によると、9月12日以降、Luswigshafen(ルートヴィヒスハーフェン)工場の排水処理施設を通じて、シクロドデカノン約500kgが、ライン川に流れ込んだとのことだ。

BASFの公式プレスリリースは次の通り(ドイツ語)。
www.basf.com/group/corporate/site-ludwigshafen/de_DE/news-and-media-relations/news-releases/P-12-414

ドイツ語報道として SPIEGEL Online と Rhein Zeigung の記事を引用しておこう。
www.spiegel.de/wissenschaft/technik/unfall-bei-basf-in-ludwigshafen-giftige-chemikalie-laeuft-in-den-rhein-a-855596.html
www.rhein-zeitung.de/regionales_artikel,-Giftige-Chemikalie-im-Rhein-500-Kilo-treten-bei-BASF-aus-_arid,483347.html

工場ではこの日、シクロドデカノンの生産設備を洗浄しており、廃液は処理施設に送られていた。
しかし、シクロドデカノンの分解が全くできず、そのままの汚染廃水がライン川に放流されてしまった。
なぜ分解できなかったのか、現時点では不明だという。

シクロドデカノンは水性生物への影響がある化学物質として登録されており、長期的影響も懸念される物質である。
約500kgもライン川に流れ込んだものの、大量の水で希釈されるため、BASFでは水性生物への影響は起きないと考えている。

BASFのこの工場では、以前から事故が続いたり、塩素ガスが漏れたのに少量ですぐに止まったため、速やかに報告しなかったことがあった。
近くに住宅地があるのに、危険な化学工場が存在しているため、ドイツの環境政党である緑の党(DIE GR?NEN)は、何度も質問状を出したりして抗議している。

BASF本社があるルートヴィヒスハーフェンは、いわゆる企業城下町で、
「化学の街(Stadt der Chemie)」と呼ばれ、約4万人が化学工業関連で雇用されている。

ライン川に面した敷地の北側には、Landeshafen という港があり、ライン川の物流インフラを利用できて便利である。
そして本社・研究所・工場を一か所に集約することで開発スピードは上がるだろうし、周辺の関連産業と共に発展が期待できる。
今回漏洩したシクロドデカノンは、ポリアミド樹脂の合成中間体として重要で、この工場は化成品事業の中心である。

ただし、ライン川対岸にはより人口の多いマンハイムがあるので、事故が起きた場合を想定して、工場だけはもう少し離れたところに移転してもよかったかもしれない。

BASFは化学品だけではなく、遺伝子組み換え作物など、その事業は多岐にわたる。
最近は、遺伝子組み換えジャガイモに対する反対運動が激しくなり、農場が襲われたりしている。

化学物質には危険なものが多いので、細心の注意を払い、設備もきちんと定期点検しているのに、ヒューマンエラーによる事故も含めて、様々なトラブルが発生する。
そして、少しでも漏れると、異臭だけではなく、変異原性の有無などで大騒ぎとなる。

化学の成果は生活を豊かにしているのだが、少しのミスで、環境破壊の悪徳産業代表にされてしまう。
私は職場で、危険物と劇物の管理をしているので、誰かが変なことをしないかと毎日不安を抱えている。
自分の仕事もあるので、常に見ていることは無理だが、法律を守ってもらうように指導するだけではなく、悪臭物質の分解法などの処理についても随時確認していきたい。


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