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雑誌「英語教育」の今年の連載の1つに、「AI技術と外国語学習の未来」(川添愛、元国立情報学研究所特任准教授、作家)がある。
他の連載にも興味を持ったので、今年度は定期購読にした。

6月号の第3回は、「機械翻訳の現状と展望(前編)」で、ニューラルネットワークを利用した機械翻訳を取り上げている。

説明内容は、主に中澤敏明「機械翻訳の新しいパラダイム」、情報管理、vol. 60, No.5, pp. 229-306 に基づいている(記事末尾の引用では、「vol. 6」と誤記がある)。
この論文はフリーアクセスなので、次のリンクで確認してほしい。
doi.org/10.1241/johokanri.60.299

ニューラル機械翻訳(NMT)では、Google 翻訳が事例として取り上げられることが多い。
著者が試した日英翻訳の例では、驚くほど自然で実用的な翻訳が出力されている。

しかし一方では、「奇妙な凡ミス」という不思議な特徴も持つ。
平昌オリンピックでのノルウェー代表団に起きた、卵の発注数の誤訳の例が紹介されている。
1,500個の卵を注文するために Google 翻訳で韓国語にしたところ、一桁多い 15,000個の卵が届いたという。

この誤訳騒動を伝える BBC の記事は次のリンクから。
www.bbc.com/news/world-europe-42978915

この BBC の記事では、1,500 と 15,000 が韓国語でどのように異なるかも示している。
数字のままであれば、一桁違うことに気づいたかもしれない。
しかし、ターゲット言語の知識がないと、出力結果が正しいかどうかを判断できないため、誤訳を放置してしまう。

このような単純ミスが起きるのは、NMTの手法に起因している。
単語を数百の実数値からなる列のベクトルに変換して計算している。
各単語の数値列から文の数値列が計算され、それをもとにして訳文の単語の数値列を出力する。
数値計算であるため、原文のどの部分が訳文に反映されているのか、解釈することが困難になっている。
卵の数が一桁増えたとしても、「原因不明」としか言えない可能性もある。

また、NMTの特徴として、よく知られているが、入力された原文が過不足なく翻訳される保証はなく、重複訳や訳抜けの発生がある。

「AIが発達すれば、外国語の勉強をしなくてすむ」という言説が広まりつつあるようだが、このようなNMTの現状をまず踏まえてから、次回の後編も読んで、これからの外国語学習について考えてほしいものだ。

特許翻訳のセミナーで、前置詞をどのように和訳すると自然な日本語となるのか、という話があった。

例えば、化学実験操作で出てきそうな、ドイツ語の前置詞 mit を含む mit Hexan waschen で考えてみよう。
mit の後の Hexan が waschen という行為の手段を表し、「ヘキサンで洗う」または「ヘキサンを用いて洗う」になる。

mit Hexan füllen だと、「ヘキサンで満たす」の他に、「ヘキサンを満たす」と書いてもよいだろう。
ein mit Hexan gefüllter Kolben になると、「ヘキサンで満たしたフラスコ」、「ヘキサンを満たしたフラスコ」、「ヘキサンが満たされたフラスコ」と書いてもよいだろう。

また、前置詞に限らないが、単語には、その基本的意味から派生した複数の意味があるのが普通だ。

前置詞 mit でも、上に書いた行為の手段の他に、主体に付随するものや一緒にあるもの、行為の結果、共同する相手など、いろいろな意味がある。

それで、そのセミナーでは、ある参加者から、「私が使っている辞書では1番目の意味が〇〇である。この意味で和訳することは不可能なのか」という質問があった。

このときは、明細書のその部分に書かれた技術内容の説明から判断して、質問者の提案した意味にはならないことが確認された。

その質問者は、特許の技術内容が理解できなかったと言っていた。

そのため、文脈に応じた意味を選択できず、辞書に書かれている複数の意味を適用して、いくつかの和訳候補を作り、そのうちどれが適切なのかを確認したかったのだ。

フリーランス翻訳者として、新たに特許翻訳に取り組む意欲はあっても、語学知識だけではなく、特許に書かれている技術内容を理解することも重要だ。

特許翻訳も含めて、産業翻訳で安定した収入が得られることが宣伝されているためなのか、翻訳教室などでは、「理系知識ゼロからでも可能」などと勧めているところもあるようだ。

しかし、高校以降に理科・自然科学を学ばない人もいるわけで、大卒後に勉強を始めて間に合う人はどれだけの割合なのだろうか。
このような現状では、機械翻訳のポストエディットができる人材も集まらないかもしれない。


高校で文系・理系に分けることはせず、幅広い教養と知識を持つ者だけが大学で専門教育を受けるようにした方が、人材不足に陥らないのではないだろうか。

今年の年収はまだ確定していないが、来年の予算のこともあるので、特に給与収入以外の翻訳料金について現状を確認しておこう。

日本の翻訳会社3社との取引では、現時点で約22万円が確定している。
チェック案件が2件くらい増えて、5千円増を想定してもよいが、このまま約22万円で終わるとしよう。

海外の翻訳会社からの仕事が予想外に増えて、10月末までで約$7000で、請求書発行時のレートでの日本円換算額を合計すると、約75万円。
しかし、納品後のキャンセル扱いが2件あり、これがマイナス2万円。

ということで、すべて合計すると、約95万円だ。
予算では30万円だったので、この時点で約3倍だ。
海外の翻訳会社からの仕事が、11月と12月に合計で$500になると想定すると、約5万円増えて、100万円に到達しそうだ。

青色申告しているので、65万円を控除して、書籍などの購入費も申告すると、実質的な収入は20万円となる。
海外の翻訳会社からの収入には源泉徴収がないので、この控除によって、かなり節税となるだろう。
確定申告では寄付金控除もあるので、税金が還付される可能性がある。

弟への仕送りは来年も続くので、給与収入以外の翻訳料金収入が重要となるが、来年は日本国内が12万円、海外が10万円の予算にしている。
今年よりも減るとしても、合計50万円くらいでもよさそうだが、少ないという前提で予算を決めた方がよいだろう。

もし教会の役員に選出された場合、日曜日は教会の仕事で疲れるので、土曜日は完全休日にしたいから、海外の翻訳会社の仕事は受けないことになるかもしれない。

給与以外の収入もほしいが、弟が自治体の就労支援事業などで仕事を見つけるように、なんとか動機づけさせることも続けたい。

überstrahlen
他 (h)
2 ((et.4)) (より強い光によって…を)目立たなくする

Die Entdeckung von RR-Lyrae-Sternen war aber trotz des Infrarotblicks von VISTA kein 
leichtes Unterfangen, da sich die gesuchten Sonnen nicht nur in einer sehr dicht mit Sternen 
bevölkerten Region befinden, sondern auch oft noch von jungen und hellen Sternen überstrahlt 
werden.
しかし、こと座RR型星を発見することは、VISTAの赤外線画像であるにもかかわらず簡単な試みではなかった。なぜなら、探していた恒星は、星が非常に密に群がる領域に存在しているだけではなく、多くの場合、若く明るい星によって目立たなくなっているからである。
("VISTA: Zeugen vom Anfang der Milchstraße", astronews.com, 12. Oktober 2016,
www.astronews.com/news/artikel/2016/10/1610-008.shtml

昨年12月に、私が活動しているプロテスタント教会に所属する神学生から、ドイツ語の神学論文を読めるようになりたいと相談があった。
いきなり論文は大変なので、1年くらいかけて、月に1回ずつ、ドイツ語文法の勉強会をすることにした。

日曜日の教会は様々な奉仕があるので、ドイツ語学習に使える日は、月に1回しかない。
3回やってみたものの、神学生はいろいろと忙しいので、今年5月以降は中断していた。

そして10月から再開したいとの要望があったので、翻訳の仕事の合間に、少しずつ資料を作っている。
初級文法の学習を続けながらも、目標設定となるように、中級レベルの資料も合わせて説明する予定だ。

テキストは、神学生の希望により、「英語と一緒に学ぶドイツ語」(宍戸理佳・ベレ出版)を使っている。
自習用になると思って選択したものの、到達度を確認していないので、再開しても話が通じるかどうか不安である。

ということで、1997年度のドイツ語検定4級の試験問題から、筆記試験の前半部分(問1~問5)を指定して、10月2日までに、テキストを見ながらでも解くように宿題を出した。

わざと新正書法になる前の問題にしたのは、古い文献も読むために、今のうちに慣れてほしいからだ。
大変そうだが、指定した問題に出てくるのは、動詞 essen の現在人称変化のみなので大丈夫だろう。
とりあえず、この問題への取り組みを見てから、今後の学習方針を決めようと思う。

中級レベルの資料とは、ハイデルベルク信仰問答の問1である。
16世紀のドイツ語は大変なので、1997年に改訂された現代ドイツ語版の新正書法版(2012年)を使うことにした。

和訳は既に公開されているものの、語義や文法の解説と共に、私訳を示して、神学生のモチベーションを喚起しようと思う。

例えば、問に出てくる前置詞 in の説明は次の通り。

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Frage 1 Was ist dein einziger Trost im Leben und im Sterben?

問1 生きているとき、そして死に向かうときに、あなたに希望を与える唯一の慰めは何ですか。

im = in dem の融合形。
in 前 ((位置を示すときなどは3格支配、方向を示すときなどは4格支配)) (前置詞の格支配はテキスト146ページ) 
3 ((時間的)) a) ((時点を表す語と)) …〔のうち〕に: 〖3格と〗im entscheidenden Augenblick 決定的瞬間に | im Herbst 秋に

im Leben は「生きている間」。im Sterben は「死ぬとき」としてもよいが、「死ぬ瞬間」というよりも、ある程度の広がりをもった時間として「死に向かうとき」と考えた方がよい(英語ではbe dying)。

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前置詞の格支配を説明するか、それとも名詞の格変化を復習するのか、その日の様子で判断しよう。

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